※本記事は、株式会社安永の有価証券報告書(第80期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 安永ってどんな会社?
エンジン部品や機械装置、環境機器の製造販売をグローバルに展開する企業です。
■(1) 会社概要
1949年に設立され、家庭用ミシンアームベッドの生産から始まりました。1967年に自動車エンジン部品の本格生産を開始し、1996年には株式上場を果たしています。その後は環境機器事業の会社分割や海外子会社の設立を進め、近年はスマートフォン向け部品の量産を開始するなど新規分野への展開も図っています。
現在の従業員数は連結で1,706名、単体で560名です。大株主の筆頭は有限会社YASNAGで、第2位は資産管理等を行うSBI証券、第3位は経営トップである安永暁俊氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社YASNAG | 11.17% |
| SBI証券 | 4.55% |
| 安永暁俊 | 3.49% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は安永暁俊氏が務めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 安永暁俊 | 取締役社長代表取締役 | 1998年同社入社。米国子会社プレジデント等を経て2011年より現職。 |
| 堀江泰三 | 常務取締役事業本部長 | 1992年同社入社。インドネシア子会社社長等を経て2025年より現職。 |
| 一柳功 | 取締役技術本部、環境機器事業担当 | 1994年同社入社。環境機器子会社社長等を経て2025年より現職。 |
社外取締役は、小路貴志(公認会計士)、山本卓(元豊田自動織機取締役)、小坂純文(元愛三工業取締役専務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、エンジン部品、機械装置、環境機器の3つの報告セグメントおよびその他事業を展開しています。
■エンジン部品
自動車用のコネクティングロッドやシリンダーブロックなどの輸送機器用エンジン部品や、スマートフォン向けベイパーチャンバー用ウィックシートなどの微細形状加工箔の製造販売を行っています。主な顧客は国内外の自動車メーカーです。
収益源はこれらの製品の販売代金です。運営は同社のほか、安永インドネシア、安永タイ、安永メキシコなどの海外子会社が行っています。
■機械装置
工作機械(エンジン部品用生産設備)やワイヤソー、検査測定装置などの機械装置の製造販売を行っています。自動車部品メーカーや電子部品・半導体産業に向けて設備を提供しています。
収益源は装置本体の販売代金や、改造・メンテナンスサービスの提供による対価です。運営は同社および上海安永精密切割機有限公司などが担っています。
■環境機器
浄化槽用や医療健康機器用の各種エアーポンプ、家庭用生ゴミ処理装置であるディスポーザシステムの製造や販売、施工を行っています。
収益は製品の販売代金やシステムの施工・保守サービス料から得ています。運営は主に子会社の安永エアポンプおよび安永クリーンテックが行っています。
■その他
運送事業やビルメンテナンス、工場清掃、社員給食などのサービス事業を展開しています。
収益はエンジン部品等の輸送・梱包費用や、施設管理などの各種サービス提供に対する対価から得ています。運営は子会社の安永運輸および安永総合サービスが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は300億円台で堅調に推移しており、直近では340億円まで拡大しています。利益面では過去に赤字を計上した時期もありましたが、その後黒字転換を果たし、直近の経常利益は22億円、利益率6.4%と大幅な改善を見せています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 290億円 | 333億円 | 319億円 | 315億円 | 340億円 |
| 経常利益 | -4億円 | 13億円 | 6億円 | 9億円 | 22億円 |
| 利益率(%) | -1.5% | 4.0% | 1.8% | 3.0% | 6.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -9億円 | 13億円 | 8億円 | 5億円 | 10億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が前期から増加したことに伴い、売上総利益も拡大しています。これに加えてコスト管理が進んだことで、営業利益は前期の8億円から22億円へと大幅な増益を達成し、営業利益率も向上しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 315億円 | 340億円 |
| 売上総利益 | 47億円 | 63億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.9% | 18.5% |
| 営業利益 | 8億円 | 22億円 |
| 営業利益率(%) | 2.5% | 6.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び福利費が15億円(構成比37%)、試験研究費が5億円(同13%)、荷造及び発送費が5億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
エンジン部品事業は海外子会社での販売増加や新製品の量産開始により増収となりました。機械装置事業は工作機械の販売増により売上を確保し、環境機器事業はエアーポンプの海外向け販売が好調で増収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| エンジン部品 | 229億円 | 257億円 |
| 機械装置 | 37億円 | 28億円 |
| 環境機器 | 46億円 | 52億円 |
| その他 | 3億円 | 3億円 |
| 連結(合計) | 315億円 | 340億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラスで、借入などの財務CFによって資金を調達し、積極的な投資活動(投資CFマイナス)を行っている積極型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 22億円 | 32億円 |
| 投資CF | -38億円 | -47億円 |
| 財務CF | 23億円 | 14億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.8%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「時の課題を敏感に受け止め、独創的な技術により価値ある製品を提供し、社会文化の豊かさに貢献すること」を使命としています。グローバルな競争環境の中で、社会、株主、顧客、従業員など全てのステークホルダーにとって企業価値を創造し続ける企業を目指しています。
■(2) 企業文化
「技術で世の中を驚かせてやろう!」「何か新しいことに挑戦しよう!」という価値観を全社に広げ、挑戦的な企業風土の浸透を重視しています。また、健康経営の推進や地域社会への貢献を通じて、「働きがい」や「働きやすさ」を感じられる職場環境づくりに取り組む文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
第8次中期経営計画(「グローバルニッチ No.1」の柱を太くする)を策定し、企業価値の向上とサステナブルな成長を目指しています。最終年度となる2029年3月期の主たる経営指標として以下の目標を掲げています。
* 売上高450億円
* 営業利益41億円
* ROE15%
■(4) 成長戦略と重点施策
「グローバルニッチNo.1」製品数のさらなる拡大と、新事業による新たな収益源の育成を成長戦略の軸としています。自動車メーカーの外注化需要への対応や海外での生産拡大、微細形状加工技術「微匠」の用途拡大による新事業の創造など、既存事業の強化と新規領域の開拓を並行して推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
個人の成長と組織の成長を両立する人的資本経営を推進しています。次世代経営人材や高度専門人材の育成を通じて持続的な成長を支える人材基盤を強化するとともに、多様な人材が活躍できる職場環境づくりやグローバル事業に対応した人材育成を進め、社員のエンゲージメント向上と組織活性化を図る方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.3歳 | 19.7年 | 6,255,434円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 122.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 71.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 73.9% |
※女性管理職比率については、有報に記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済及び業界等の動向の影響
自動車業界の生産や設備投資の動向、取引先メーカーの取引方針の変更などによる影響を受けるリスクがあります。また、電子・半導体業界や住宅着工件数の動向にも左右され、インフレや金利水準の高止まりが顧客の投資意欲を減退させ、受注や収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 技術革新及び競合による市場競争
新技術の開発やニーズの変化によって、同社製品の急速な陳腐化や市場性の低下を招くリスクがあります。また、競合会社の台頭によって激化する価格低減競争の環境下では、価格競争力の低下や、収益性を保つことが困難になる可能性があります。
■(3) 原材料の調達と価格高騰
原材料や部品を外部のサプライヤーから調達しているため、市況の変動による品不足や調達先の経営問題などにより、安定調達が困難となるリスクがあります。さらに資源やエネルギー価格の高騰が長期化し、コスト上昇分を販売価格に十分転嫁できない場合は、収益性が低下する恐れがあります。



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