※本記事は、株式会社安永 の有価証券報告書(第79期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 安永ってどんな会社?
自動車のエンジン部品を中心に、工作機械や環境機器なども手掛けるものづくり企業。海外展開も積極的。
■(1) 会社概要
1949年に設立し、ミシンアームベッドの生産を開始。その後、自動車部品や工作機械へ事業を拡大した。1996年に大証二部に上場し、2013年には東証二部にも上場。2014年の東証一部指定を経て、現在は東証スタンダード市場に上場している。海外展開も積極的に進め、米国やアジアに拠点を構える。
2025年3月31日現在、連結従業員数は1,703名(単体583名)である。筆頭株主は有限会社YASNAGで、第2位は代表取締役社長の安永暁俊氏、第3位は個人株主の浅井裕久氏となっている。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社YASNAG | 11.17% |
| 安永暁俊 | 3.49% |
| 浅井裕久 | 3.45% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は安永暁俊氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 安永暁俊 | 取締役社長代表取締役 | 1998年入社。米国子会社社長、管理本部長等を経て、2011年4月より現職。 |
| 小谷久浩 | 常務取締役社長特命担当 | 1986年入社。工機事業部長、CE事業部長等を歴任し、2025年4月より現職。 |
| 堀江泰三 | 取締役事業本部長兼事業本部管理部門長 | 1992年入社。インドネシア子会社社長、部品事業部長等を経て、2025年4月より現職。 |
| 一柳功 | 取締役技術本部、環境機器事業担当 | 1994年入社。安永エアポンプ社長、安永クリーンテック社長を経て、2025年2月より現職。 |
社外取締役は、小路貴志(公認会計士・税理士)、増田直史(元アドヴィックス副社長)、山本卓(元豊田自動織機取締役・経営役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「エンジン部品」「機械装置」「環境機器」の報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。
■(1) エンジン部品
コネクティングロッド、シリンダーヘッド、シリンダーブロック等の自動車用エンジン部品を製造・販売しています。主な顧客は国内外の自動車メーカーであり、インドネシア、タイ、メキシコ等の海外拠点でも生産を行っています。
収益は、自動車メーカー等への製品販売代金として受け取ります。運営は主に安永、安永インドネシア、安永タイ、安永メキシコなどが行っています。
■(2) 機械装置
トランスファーマシン等の工作機械、ワイヤソー、検査測定装置などの製造・販売を行っています。自動車産業向けの生産設備のほか、半導体業界向けの装置も手掛けています。
収益は、顧客企業への機械装置の販売代金やサービス料として受け取ります。運営は主に安永、上海安永精密切割機有限公司が行っています。
■(3) 環境機器
浄化槽用や医療健康機器用のエアーポンプ、ディスポーザシステム(生ゴミ処理機)等の製造・販売を行っています。住宅設備関連や医療分野など幅広い市場に向けた製品を展開しています。
収益は、製品の販売代金やディスポーザシステムの設計・施工・サービス料として受け取ります。運営は主に安永エアポンプ、安永クリーンテック、安永インドネシアが行っています。
■(4) その他
上記セグメントに含まれない事業として、製品の輸送・梱包を行う運送事業や、ビルメンテナンス・福利厚生サービス等を行っています。
収益は、輸送・梱包業務の対価やサービス料として受け取ります。運営は主に安永運輸、安永総合サービスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は300億円前後で推移しています。2021年3月期と2022年3月期は経常損失を計上していましたが、2023年3月期以降は黒字化し、利益面での回復傾向が見られます。特に当期は売上高が微減となったものの、利益率は改善しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 293億円 | 290億円 | 333億円 | 319億円 | 315億円 |
| 経常利益 | -5.7億円 | -4.3億円 | 13.5億円 | 5.7億円 | 9.4億円 |
| 利益率(%) | -1.9% | -1.5% | 4.0% | 1.8% | 3.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -27.7億円 | -9.1億円 | 13.3億円 | 8.2億円 | 4.6億円 |
■(2) 損益計算書
当期は前期と比較して、売上高はわずかに減少しましたが、売上総利益および営業利益は増加しました。原価低減等の効果により売上総利益率が改善し、営業利益率も上昇しています。採算性の向上が進んでいることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 319億円 | 315億円 |
| 売上総利益 | 44億円 | 47億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.8% | 14.9% |
| 営業利益 | 6.5億円 | 7.6億円 |
| 営業利益率(%) | 2.0% | 2.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び福利費が16億円(構成比40%)、その他が11億円(同29%)を占めています。売上原価は売上高に対して約85%を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のエンジン部品事業は減収減益となりましたが、機械装置事業は増収となり営業損失が縮小しました。環境機器事業は増収増益となり、全社の利益増加に寄与しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| エンジン部品 | 243億円 | 229億円 | 8.0億円 | 5.1億円 | 2.2% |
| 機械装置 | 32億円 | 37億円 | -2.1億円 | -0.0億円 | -0.0% |
| 環境機器 | 42億円 | 46億円 | 0.3億円 | 2.1億円 | 4.6% |
| その他 | 2.9億円 | 2.9億円 | 0.1億円 | 0.2億円 | 7.6% |
| 調整額 | -5.9億円 | -6.8億円 | 0.1億円 | 0.2億円 | - |
| 連結(合計) | 319億円 | 315億円 | 6.5億円 | 7.6億円 | 2.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、運転資金や設備投資資金を営業活動による自己資金および金融機関からの借入で賄う方針です。
営業活動によるキャッシュ・フローは、減価償却費や税金等調整前当期純利益の増加が主な要因となり、資金が増加しました。一方、投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出が主な要因となり、資金が減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入が主な要因となり、資金が増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 32億円 | 22億円 |
| 投資CF | -12億円 | -38億円 |
| 財務CF | -12億円 | 23億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、時代の課題を敏感に捉え、独創的な技術で価値ある製品を提供し、社会文化の豊かさに貢献することを使命としています。グローバルな競争環境において、社会、株主、顧客、従業員など全てのステークホルダーに対し、企業価値を創造し続ける企業を目指しています。
■(2) 企業文化
「技術で世の中を驚かせてやろう!」「何か新しいことに挑戦しよう!」という価値観を全社に広げ、挑戦的な企業風土の浸透を図っています。また、健全な議論が活発に行われる風土への変革を進め、激動の時代を生き抜くとともに、従業員が「働きがい」や「働きやすさ」を感じられる職場環境づくりを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
2023年度から2025年度までの第7次中期経営計画「グローバルニッチ No.1の柱を増やす」を推進しています。自動車産業の電動化やSDGsなどの社会課題に対応しつつ、強みを活かした製品数の拡大と新事業による収益源の育成を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「経営基盤の強化」「グローバルニッチNo.1製品の拡大と充実」「新事業の創造」を重点施策としています。エンジン部品では海外生産拡大やシェア拡大を図り、機械装置では半導体産業への取り組みを強化します。環境機器では利益強化と海外販売拡充を進め、さらに微細形状技術による新事業育成にも注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材の多様性と育成が中長期的な企業価値向上につながると考え、女性、外国人、中途採用者を積極的に採用し、多様性の確保に努めています。また、社員一人ひとりの健康を重要な経営資源と位置づけ、健康経営の推進や、仕事と家庭の両立支援による働きやすい環境づくりに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.8歳 | 19.2年 | 5,984,037円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 69.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 68.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 69.0% |
※女性管理職比率は、同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済及び自動車業界等の動向
各製品を展開する国・地域の経済状況や、主要顧客である自動車業界の生産・設備投資動向の影響を受けます。特に自動車の動力源の変化(電動化等)は、エンジン部品事業等に影響を与える可能性があります。
■(2) 技術革新及び競合
新技術の開発やニーズの変化により、製品の陳腐化や市場性の低下を招く恐れがあります。また、競合会社との価格競争が激化した場合、収益性を維持できなくなる可能性があります。
■(3) 海外事業展開
5カ国に拠点を展開しており、各国の経済環境、法的規制の変更、地政学的リスク、為替変動等の影響を受ける可能性があります。予期せぬ事象が発生した場合、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 原材料の調達
市況変動による品不足や調達先の事故等により原材料・部品の不足が生じた場合、生産に支障をきたす可能性があります。また、価格変動による原価上昇は経営成績に影響を与える可能性があります。



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