※本記事は、株式会社今仙電機製作所の有価証券報告書(第88期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 今仙電機製作所ってどんな会社?
自動車用シート機構部品や電子製品、福祉機器等の製造販売を行う独立系自動車部品メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1939年に電気機械器具の製造を目的に設立され、1954年に自動車用ランプ、1965年にシートアジャスタの生産を開始しました。2003年に東証一部へ上場し、グローバル展開を加速。2011年には画像処理関連のシーマイクロを子会社化しました。2020年には同業のテイ・エス テックと資本業務提携を行い、関係を強化しています。
連結従業員数は2,828名、単体では1,198名です。筆頭株主は資本業務提携先である事業会社のテイ・エス テックで、第2位は取引先による持株会、第3位は従業員持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| テイ・エス テック株式会社 | 36.66% |
| IMASEN取引先持株会 | 4.47% |
| 今仙電機従業員持株会 | 3.00% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長執行役員最高経営責任者は長谷川健一氏です。社外取締役比率は23.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 長谷川 健一 | 代表取締役社長執行役員最高経営責任者内部統制推進室、シナジープロジェクト 統括 | テイ・エス テックにて技術営業本部二輪技術部長、常務取締役、代表取締役専務などを歴任。2024年6月より同社代表取締役社長執行役員、2025年4月より現職。 |
| 宮本 秀幸 | 取締役常務執行役員電子事業本部 本部長 | 1984年入社。開発本部R&D部部長、営業本部広島支店長などを経て、2022年より取締役執行役員。2024年6月より現職。 |
| 萩元 達也 | 取締役常務執行役員管理本部 本部長コンプライアンスオフィサー、国内・海外関係会社 統括 | テイ・エス テックにて事業管理本部経理部部長、執行役員などを歴任。2023年4月同社常務執行役員就任。2024年6月より現職。 |
| 木澤 豊 | 取締役常務執行役員シート・電装事業本部 副本部長 開発 担当 | テイ・エス テックにて開発試験部部長、執行役員などを歴任。2021年4月同社常務執行役員就任。2024年6月より現職。 |
| 櫻井 孝充 | 取締役執行役員電子事業本部 副本部長 開発・戦略 担当 | 1985年入社。開発本部栃木設計部部長、名古屋工場長などを経て、2017年より取締役執行役員。2025年4月より現職。 |
| 堀部 修一 | 取締役執行役員シート・電装事業本部 本部長、リスクマネジメントオフィサー | 1988年入社。開発本部生産技術部部長、イマセンビュサイラステクノロジー社長などを歴任。2021年6月より取締役執行役員。2025年4月より現職。 |
社外取締役は、亀山恭一(元JFEスチール専務執行役員)、村山隆平(元石油資源開発執行役員)、浜崎佳子(元パナソニックセンター東京所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「北米」「アジア」の各報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。
■(1) 日本
シートアジャスタ(リクライニング、スライド等)やウインドレギュレータ等の自動車用シート機構・電装製品、および電子製品の製造販売を行っています。また、航空機用・工作機械用ワイヤーハーネスや、電動車いす・義手・義足等の福祉機器関連事業も展開しています。
収益は主に自動車メーカーやシートメーカーへの製品販売から得ています。運営は主に今仙電機製作所が行い、ワイヤーハーネス関連は東洋航空電子や岐阜東航電、福祉機器は今仙技術研究所が製造販売を担当しています。電子製品の開発はMazda Imasen Electric Drive等が協力しています。
■(2) 北米
米国およびメキシコにおいて、自動車用シート機構製品(リクライニングアジャスタ、スライドアジャスタ等)の製造販売を行っています。また、電子製品の販売も行っています。現地の自動車メーカーや日系自動車メーカーの現地法人などが主要な顧客です。
収益は製品の販売により得ています。運営は、米国ではイマセン ビュサイラス テクノロジー インクが製造販売を行い、メキシコではイマセン メキシコ テクノロジー エス エー デ シー ブイが販売(一部製造)を担うなど、現地子会社が主体となって事業を展開しています。
■(3) アジア
中国、タイ、インド、フィリピン、インドネシア、台湾等において、自動車用シート機構製品、電装製品、電子製品の製造販売を行っています。各国の自動車市場に向けた製品供給を行い、グローバルなサプライチェーンの一翼を担っています。
収益は製品の販売により得ています。運営は、広州今仙電機有限公司、武漢今仙電機有限公司、イマセン マニュファクチュアリング(タイランド)、イマセン マニュファクチュアリング インディア、今仙電機股份有限公司などの現地子会社が行っています。
■(4) その他
報告セグメントに含まれない事業として、画像・映像処理装置の製造販売や、グループ従業員に対する福利厚生サービスなどを行っています。これらは特定の地域に限定されない、あるいはグループ全体の支援機能としての役割を持っています。
収益は、画像・映像処理装置の販売やサービスの提供から得ています。画像・映像処理装置はシーマイクロが製造販売を行い、福利厚生サービスは非連結子会社のナイトが運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの5期間を見ると、売上高は800億円台後半から900億円台で推移し、直近では943億円となっています。利益面では、経常利益は変動がありつつも黒字を確保していますが、当期純利益は過去の赤字計上から直近2期では黒字化しており、回復傾向が見られます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 871億円 | 852億円 | 997億円 | 997億円 | 943億円 |
| 経常利益 | -6億円 | 6億円 | 0.3億円 | 3億円 | 5億円 |
| 利益率(%) | -0.7% | 0.7% | 0.0% | 0.3% | 0.5% |
| 当期純利益(親会社所有者帰属) | -21億円 | -6億円 | -15億円 | 6億円 | 33億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、売上高は997億円から943億円へと減少しました。一方で、売上総利益率は7.7%から8.0%へと改善しています。営業利益は前期の0.1億円から当期は4億円へと増加し、利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 997億円 | 943億円 |
| 売上総利益 | 76億円 | 76億円 |
| 売上総利益率(%) | 7.7% | 8.0% |
| 営業利益 | 0.1億円 | 4億円 |
| 営業利益率(%) | 0.0% | 0.4% |
販売費及び一般管理費のうち、その他経費が30億円(構成比41%)、給料手当及び賞与が24億円(同33%)を占めています。売上原価においては、材料費などが主要な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
当期は、北米セグメントが増収となった一方、日本とアジアセグメントでは減収となりました。特にアジアでは中国市場の不振による影響が見られます。北米は為替の円安効果もあり売上が増加しました。全体としては減収となりましたが、各地域での収益性改善に向けた取り組みが進められています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 403億円 | 393億円 |
| 北米 | 289億円 | 302億円 |
| アジア | 306億円 | 248億円 |
| 連結(合計) | 997億円 | 943億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、運転資金を自己資金および金融機関からの借入で調達しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の減少により増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却収入により増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純減や長期借入金の返済により減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 10億円 | 28億円 |
| 投資CF | -12億円 | 45億円 |
| 財務CF | -50億円 | -50億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「世界的な視野に立ったハイエスト・クオリティー、ローエスト・コスト」を理念とし、独創技術の開発に努め、新技術及び新製品を提案できる開発型企業を目指しています。「よい品を より安く より速く」顧客に提供することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は「経営スピード」「攻めと守り」「シナジー」をテーマに掲げ、企業価値向上を目指す文化を持っています。また、法令遵守に基づく企業倫理を重視し、コンプライアンス委員会やメールによる目安箱の設置などを通じて、風通しの良い企業風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期会社目標として「業績回復と事業成長」を掲げ、2026年度に向けた収益目標を設定しています。長期目標達成のための3年間の中期経営計画では、シート電装事業・電子事業への集中や、資本コスト・株価を意識した経営の実現を目指しています。
* 2026年度売上高:910億円
* 2026年度営業利益率:4.0%
* 2026年度ROE:4.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「9つの重点施策」を掲げ、意思決定の迅速化、営業機能強化、北米・中国拠点の再編、調達構造の見直し等に取り組んでいます。特に北米ではオハイオ工場の拡張による物流合理化、インドでは増産対応と現調化を推進。また、テイ・エス テックとの共同拡販や、電子事業でのインバータ製品開発等により、新たな事業基盤の創出を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材戦略を経営の中核に位置付け、社員一人ひとりの成長と活躍を目指しています。OJTや階層別教育等のプログラムを整備し、自律的な学びと挑戦を支援しています。また、多様性を企業の成長の源泉と捉え、性別や国籍に関わらず能力や人格を公正に評価し、働きやすい環境づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.4歳 | 21.3年 | 6,254,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.2% |
| 男性育児休業取得率 | 67.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 71.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 77.7% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料、部品の供給状況による影響
原材料や部品の調達において、市況変化や資源エネルギーの供給不安による価格高騰、関税政策の影響を受ける可能性があります。事態が悪化した場合、業績や財務状況に影響を及ぼす恐れがあります。同社は調達先の複数化や在庫の適正化、現地調達への切り替えなどを進めています。
■(2) 国家間協定・条約等の影響
保護主義的な経済活動や国家政策の変化、特に米国等の追加関税や輸出入規制の強化は、事業計画に影響を与える可能性があります。同社は各国の動向を注視し、地産地消に向けた現地調達・現地生産の検討・実施を通じて影響の最小化に努めています。
■(3) 特定得意先への依存について
自動車部品関連事業が売上の大半を占めており、特に本田技研工業系列、マツダ系列、SUBARU系列への売上割合が高くなっています。これら主要顧客の事業方針や経営施策、品質問題等が発生した場合、同社グループの経営成績が影響を受ける可能性があります。
■(4) 経済状況の変化について
欧州・中東の地政学リスクや各国の経済情勢、資源価格の高騰、金融市場の変動等が経営成績に影響を与える可能性があります。また、SDGsや電動車市場の急成長といった社会・業界の変化も重要です。同社はこれらの影響を注視し、サステナビリティ活動や電動化対応を進めています。



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