今仙電機製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

今仙電機製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

今仙電機製作所は、東証スタンダード市場および名証プレミア市場に上場し、自動車用のシート機構・電装製品及び電子製品の製造販売を主力事業としています。直近の業績では、モデル末期機種の生産終了等の影響で減収となったものの、構造改革や原価低減活動の成果により営業利益は大幅な増益を達成しています。


※本記事は、株式会社今仙電機製作所の有価証券報告書(第89期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 今仙電機製作所ってどんな会社?


自動車用のシート機構・電装製品及び電子製品を中心に製造販売し、海外展開も進める企業です。

(1) 会社概要


同社は1939年に電気機械器具等の製造販売を目的として設立されました。1968年には台湾に子会社を設立し、海外展開を開始しました。1996年の店頭登録を経て、2003年に東証第一部へ上場しました。2020年にはテイ・エステックと資本業務提携を結び、事業基盤の強化を推進しています。

現在の従業員数はグループ全体で2,596名、単体で1,167名です。筆頭株主は資本業務提携先であるテイ・エステックで、第2位は取引先持株会、第3位は従業員持株会となっており、事業パートナーや取引先、従業員を中心とした安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
テイ・エステック 37.58%
IMASEN取引先持株会 4.74%
今仙電機従業員持株会 2.85%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長執行役員最高経営責任者は長谷川健一氏が務めています。社外取締役の比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
長谷川健一 代表取締役社長執行役員最高経営責任者内部統制推進室、シナジープロジェクト 統括 1982年テイ・エステック入社。同社常務取締役営業・購買本部長等を経て、2024年同社代表取締役社長執行役員に就任。2025年より現職。
宮本秀幸 取締役常務執行役員電子事業本部 本部長 1984年同社入社。開発本部R&D部部長、営業本部広島支店支店長等を経て、2024年電子事業本部本部長に就任し、同年より現職。
萩元達也 取締役常務執行役員管理本部 本部長コンプライアンスオフィサー、ESG統括 1991年テイ・エステック入社。2021年同社執行役員事業管理本部副本部長等を経て、2024年同社取締役常務執行役員に就任。2026年より現職。
堀部修一 取締役執行役員シート・電装事業本部 本部長リスクマネジメントオフィサー 1988年同社入社。イマセンビュサイラステクノロジーインク取締役社長等を経て、2021年取締役執行役員に就任。2025年より現職。
井上達嗣 取締役執行役員管理本部 副本部長経理・経営企画、関係会社 統括 1994年同社入社。経営戦略室室長、イマセンビュサイラステクノロジーインク取締役等を経て、2025年取締役執行役員に就任。2026年より現職。


社外取締役は、亀山恭一(元ヒューマンリソースイノベーション社長)、村山隆平(元東京大学特任研究員)、浜崎佳子(元コムシス経営管理部次長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「北米」「アジア」の報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


日本国内において、自動車用のシート機構・電装製品および電子製品の製造販売を行っています。また、自動車部品以外にも、無動力歩行支援機や電動車いす、義手・義足などの福祉機器、各種ワイヤーハーネス、画像・映像処理装置などの製造販売も展開しています。

顧客への製品販売による対価を収益源としています。主力となるシート機構・電装製品および電子製品の製造販売は主に同社が担い、電子製品の技術開発等はマツダイマセンエレクトリックドライブが担当しています。また、福祉機器等は今仙技術研究所などの子会社が運営しています。

(2) 北米


北米地域を対象に、主に自動車用のシート機構製品や電子製品の製造販売を展開しています。現地の自動車メーカーや部品メーカーを顧客としており、地域に密着した生産・供給体制を構築しています。

現地顧客への製品販売による対価を収益源としています。事業の運営は、イマセンビュサイラステクノロジーインクがシート機構製品の製造販売を担い、イマセンメキシコテクノロジーエスエーデシーブイがシート機構製品および電子製品の販売を行っています。

(3) アジア


中国、タイ、フィリピン、インドネシア、インド、台湾などのアジア圏において、自動車用のシート機構製品、電装製品、電子製品の製造販売を展開しています。成長市場であるアジアにおいて生産・販売体制を拡充しています。

アジア各国の顧客への製品販売による対価を主な収益源としています。広州今仙電機有限公司や武漢今仙電機有限公司、イマセンマニュファクチュアリング(タイランド)カンパニーリミテッドなど、多数の現地子会社が各地域での製造および販売活動を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は900億円台で推移していましたが、直近では減収となっています。一方で利益面は改善傾向にあり、経常利益は大幅な増益を達成しました。当期利益は一時的な要因も影響し増減が見られますが、直近は黒字を確保しており、収益力の向上がうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 852億円 997億円 997億円 943億円 871億円
経常利益 6億円 0億円 3億円 5億円 21億円
利益率(%) 0.7% 0.0% 0.3% 0.5% 2.4%
当期利益(親会社所有者帰属) -12億円 -21億円 -1億円 21億円 25億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少したものの、売上総利益は増加しており、売上総利益率が改善しています。販売費及び一般管理費の削減効果もあり、営業利益および営業利益率はともに大きく向上しました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 943億円 871億円
売上総利益 76億円 84億円
売上総利益率(%) 8.0% 9.6%
営業利益 4億円 20億円
営業利益率(%) 0.4% 2.3%


販売費及び一般管理費のうち、荷造運搬費が9億円(構成比15%)、給料手当及び賞与が7億円(同12%)を占めています。売上原価については788億円であり、売上高に対する原価率は90%となっています。

(3) セグメント収益


日本は新規受注があったもののモデル末期機種の生産終了により減収となりましたが、合理化投資の推進で黒字転換しました。北米は為替や減産の影響で減収でしたが、拠点集約などの構造改革により増益を確保しています。アジアは中国やタイの減産により減収でしたが、人員最適化や現地調達化の効果で増益となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
日本 393億円 385億円 -5億円 6億円 1.5%
北米 302億円 250億円 4億円 5億円 2.0%
アジア 248億円 237億円 4億円 10億円 4.0%
連結(合計) 943億円 871億円 4億円 20億円 2.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う積極型です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 28億円 19億円
投資CF 45億円 -17億円
財務CF -50億円 13億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「よい品を より安く より速く」を社是として掲げています。また、「世界的な視野に立ったハイエスト・クオリティー、ローエスト・コスト」を理念とし、独創技術の開発に努め、新技術および新製品を提案できる開発型の企業として社会に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「倍速の経営スピード」を重視し、意思決定のスピードアップと権限移譲の促進を図る文化を持っています。また、「攻めと守りの両面」で環境変化に柔軟かつ迅速に対応し、社員一人ひとりの成長と活躍を促す風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は長期目標を達成するための3年間の中期経営計画を策定し、シート電装事業と電子事業の主要2事業に集中しています。2026年度を最終年度とする中期収益目標として以下の数値を掲げています。

- 売上高860億円
- 営業利益3.5%
- ROE4.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「業績回復と事業成長」に向けた9つの重点施策を実行しています。北米・中国の拠点再編や国内工場再編による収益基盤の強化、調達構造の再構築による材料費率の改善に取り組んでいます。また、インド市場など成長市場への展開や、次世代インバータ製品など高付加価値製品への投資を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を最も重要な経営資源の一つと位置付け、社員の能力と意欲の発揮が企業成長の基盤であると考えています。自律的に学び挑戦し続けられるようOJTや階層別教育を整備するとともに、多様性を強みと捉え、属性に関係なく公正に評価し、働きやすい環境づくりに努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.4歳 22.0年 6,263,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.7%
男性育児休業取得率 76.2%
男女賃金差異(全労働者) 69.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 72.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 92.5%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料や部品の供給状況による影響


市況変化や関税政策、地政学的な資源エネルギーの供給不安による価格高騰の影響を受けるリスクがあります。同社は原価低減活動に加え、調達先の複数化や現地調達化の推進、在庫日数の延長などによるリスク軽減に努めています。

(2) 国家間協定や条約等の影響


世界的な保護主義的経済活動への移行や、米国での追加関税、輸出入規制の強化などが事業計画に影響を及ぼす可能性があります。同社は各国の協定・条約の動向を注視し、地産地消に向けた現地調達・現地生産を検討・実施しています。

(3) 特定の自動車メーカーへの依存


売上高の大部分を自動車部品関連事業が占めており、特定メーカー系列に対する売上比率が高い状況にあります。取引先の事業方針や経営施策の変更、品質問題の発生などによる販売変動が、同社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 人的資源の流出リスク


ライフスタイルの変化や労働力の流動化が加速する中、魅力的な職場環境や処遇を提供できなければ人材が流出するリスクがあります。同社は従来の年功序列型からジョブ型へ移行する新人事制度を導入し、従業員エンゲージメントの向上を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。