ムロコーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ムロコーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、自動車用エンジン・駆動系部品を中心とする金属関連部品事業を主力としています。そのほか、樹脂関連部品や自動ねじ締め機なども展開しています。直近の決算では、自動車業界の減産影響や海外市場の低迷等を受け、売上高は減少、各利益段階でも減益となり、減収減益で着地しました。


#記事タイトル:ムロコーポレーション転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社ムロコーポレーション の有価証券報告書(第68期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ムロコーポレーションってどんな会社?


精密プレス加工技術を核に、自動車用エンジン部品や駆動系部品などを製造・販売する独立系部品メーカーです。

(1) 会社概要


1958年に室金属工業として設立され、翌年には自動車・産業機械向け「マレットシム」を開発しました。1990年に現社名へ変更し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しています。2012年にはインドネシアとタイに拠点を設立するなどグローバル展開を推進し、2022年の市場区分見直しに伴い東証スタンダード市場へ移行しました。

現在の連結従業員数は1,096人(単体611人)です。筆頭株主は経営コンサルタント業等を行う有限会社インテレクチュアルで、第2位は三菱UFJ銀行、第3位は創業家出身の個人株主となっています。

氏名 持株比率
有限会社インテレクチュアル 27.15%
三菱UFJ銀行 4.96%
室信子 4.85%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長は室雅文氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
室雅文 代表取締役社長 1998年入社。経営企画室長、管理本部長、常務取締役製造本部長、専務取締役管理本部長などを歴任。2013年に代表取締役社長に就任し、2017年より現職。
藤田英貴 常務取締役 1985年入社。特販部長、ムロテックベトナムコーポレーション代表取締役などを経て、2021年より常務取締役生産管理本部長。
荻野目久行 常務取締役 1978年入社。大阪支店長、生産管理本部長兼調達部長などを経て、2025年より常務取締役営業本部長兼宇都宮営業部長。
小谷俊夫 取締役 1995年入社。経営企画室長兼情報システム室長などを経て、2021年より取締役経営企画室長。
伊沢浩明 取締役 1995年入社。北関東プレーティング代表取締役、生産技術部長、清原本社工場長などを経て、2024年より取締役製造本部長。
大島和幸 取締役 1995年入社。生産技術部長、ムロテックオハイオコーポレーション代表取締役などを経て、2024年より取締役技術本部長。
矢野嘉行 取締役 1984年入社。烏山製造部長、清原製造部長、執行役員烏山工場長などを経て、2025年より取締役烏山工場長。
松嶋則之 取締役 1982年入社。技術部長、製造本部長兼烏山工場長などを歴任。2019年常勤監査役を経て、2022年より取締役常勤監査等委員。


社外取締役は、間中和男(元ニッシントーア・岩尾社長)、藤原秀之(経営コンサルタント)、多田智子(多田国際社会保険労務士法人代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「金属関連部品事業」「樹脂関連部品事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 金属関連部品事業


自動車用電動化部品、パワートレイン部品、操舵・制御部品、車体・空調部品などを中心に、二輪車や産業機械向けの部品を製造しています。精密プレス加工を強みとし、国内外の自動車メーカーや部品メーカーを顧客としています。

製品の販売によって収益を得ています。運営はムロコーポレーションのほか、米国、ベトナム、インドネシア、中国の海外子会社(ムロテック オハイオ コーポレーションなど)や、国内子会社の北関東プレーティング株式会社等が製造・販売を行っています。

(2) 樹脂関連部品事業


自動車およびカメラ向けの樹脂成形部品、医療機器関連成形部品、OA機器向けギア部品、ビニール製品の加工等を行っています。金属部品事業の顧客基盤を活用し、樹脂単体だけでなく金属との複合部品の拡販も進めています。

製品の販売が主な収益源です。運営は主に国内子会社のいがり産業株式会社が行っており、海外ではムロ アジア パシフィックが製造・販売を担っています。

(3) その他事業


建築業界等で使用される連続ねじ締め機「ビスライダー」やねじ連綴体、および業務用・家庭用の柑橘類皮むき機などの開発・製造・販売を行っています。

製品の販売によって収益を得ています。運営はムロコーポレーションおよび海外子会社のムロ ノース アメリカ インクが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの5期間を見ると、売上高は2024年3月期まで増加傾向にありましたが、直近の2025年3月期は減少に転じました。利益面では、2023年3月期に利益率が低下した後、翌期に回復しましたが、直近では再び減益となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 190億円 205億円 218億円 237億円 226億円
経常利益 16億円 20億円 8億円 20億円 11億円
利益率(%) 8.4% 9.6% 3.5% 8.2% 4.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 15億円 3億円 13億円 5億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の減少に伴い売上総利益および営業利益が減少しています。売上原価率は80%台前半で推移していますが、直近では若干上昇しました。販管費は増加傾向にあり、営業利益率の低下要因となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 237億円 226億円
売上総利益 45億円 39億円
売上総利益率(%) 19.2% 17.4%
営業利益 14億円 8億円
営業利益率(%) 6.1% 3.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が約10億円(構成比30%)、運搬費が約4億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の金属関連部品事業は、自動車業界の生産調整等の影響により減収減益となりました。樹脂関連部品事業およびその他事業も市場環境の悪化等により減収となり、セグメント損失を計上しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
金属関連部品事業 206億円 199億円 23億円 18億円 9.2%
樹脂関連部品事業 17億円 14億円 0.1億円 -1.6億円 -11.0%
その他事業 14億円 12億円 0.1億円 -0.4億円 -2.9%
調整額 - - -8億円 -9億円 -
連結(合計) 237億円 226億円 14億円 8億円 3.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 39億円 7億円
投資CF -22億円 -14億円
財務CF 4億円 -7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「ものづくりを通して社会に貢献すること」を最大の使命と認識し、顧客をはじめとする全てのステークホルダーに信頼される会社を目指して事業活動を行うことを基本方針としています。

(2) 企業文化


技術開発を重視し、「真にお客様に求められるものづくり」を目指す文化があります。問題解決型・提案型の事業展開を進めるとともに、変化する環境に対応するため、従来のやり方や考え方を見直し、変革に挑戦する活動を全社的に推進しています。

(3) 経営計画・目標


環境に見合った利益を確保しつつグループ全体価値を高め、事業の幅を広げながらグローバル展開を進めることを目指しています。中長期的には以下の指標を目標として掲げています。

* 営業利益率:8%以上

(4) 成長戦略と重点施策


脱炭素化の進展を見据え、EV化などの市場変化に対応した事業領域の拡大と見直しを進めています。金属関連部品では電動車向け製品への対応強化、樹脂関連部品では金属との複合部品の拡販、その他事業では新商品開発やグローバル拡販を推進しています。

また、中国拠点の収益改善、コスト競争力の強化、人材確保と働き方の見直し、自動化・合理化投資の推進、変動に合わせた柔軟な生産対応、カーボンニュートラルへの対応などを重点課題として取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


労働人口減少への対応として、中長期的な視野で人への投資を厚くし、待遇改善と働き方の見直しを進めることで人材確保と生産性向上を図っています。また、付加価値の低い業務の自動化・IT化を積極的に行い、人材が付加価値の高い仕事に従事できる環境づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.5歳 16.5年 5,589,495円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.5%
男性育児休業取得率 40.0%
男女賃金差異(全労働者) 70.0%
男女賃金差異(正規) 73.2%
男女賃金差異(非正規) 65.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(21.4%)、障がい者雇用率(2.83%)、外国人雇用数(3名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海外での事業展開リスク


生産・販売において海外比率が高まる傾向にあり、進出国(北米、アジア等)での自然災害、テロ、政情不安、労働争議、疫病などの事象が発生した場合、事業遂行に支障が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定産業への依存度が高いことへのリスク


自動車産業への依存度が高く、自動車メーカーの生産台数増減の影響を受けます。また、EV化に伴う動力・伝達機構の変更により、同社主力製品(エンジン・変速機向け)の需要構造が変化するリスクがあります。これに対し、EV向けや非自動車分野への展開を進めています。

(3) 在庫リスク


顧客の生産計画や内示情報に基づく見込生産を行っているため、実際の受注量と見込みに大きな差異が生じた場合、過剰在庫が発生し、業績および財務状況に影響を与える可能性があります。

(4) 為替変動リスク


海外取引や外貨建資産・負債を有しており、為替変動の影響を受けます。円安は基本的にプラス要因ですが、急激な変動や円高転換時には評価損等が発生する可能性があります。外貨資産の調整等によりヘッジを行っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。