TBK 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

TBK 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

TBKは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、小型車から大型トラック・バス用ブレーキやエンジン用ウォーターポンプ等の自動車部品製造を主力事業としています。直近の業績では、価格転嫁や収益性向上施策が奏功し、売上高が前期比で増加、営業利益も大幅な増益を達成しており、堅調な回復傾向を示しています。


※本記事は、株式会社TBKの有価証券報告書(第90期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. TBKってどんな会社?


自動車向けブレーキやエンジン用ポンプ等を製造・販売する独立系の自動車部品メーカーです。

(1) 会社概要


1956年10月にいすゞ部品工業と東京ブレーキ工業が合併して設立されました。1971年11月に東京証券取引所に上場を果たし、1990年代以降はタイや中国、インドに製造拠点を設立して海外展開を推進しました。2005年7月に現在の社名へ変更し、2025年11月にはインドの企業と資本業務提携を行いました。

同社グループの従業員数は連結で1,893名、単体で713名です。筆頭株主は事業提携先であるBRAKES INDIA PRIVATE LIMITEDで、第2位は主要な取引先であるいすゞ自動車、第3位は資産管理を行う外国法人が名を連ねています。

氏名 持株比率
BRAKES INDIA PRIVATE LIMITED 10.03%
いすゞ自動車 8.59%
SKANDINAVISKA ENSKILDA BANKEN AB FBO ATHANASE INDUSTR. PARTNERS FUND Ⅱ 6.45%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は尾方馨氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
尾方 馨 代表取締役社長 1986年同社入社。TBK America代表取締役社長、タイ子会社代表取締役社長、同社執行役員、常務執行役員を経て、2022年4月より現職。
小林 正登 取締役常務執行役員 2014年同社入社。新製品開発部長、執行役員開発部門担当、海外営業担当等を経て、2024年6月より現職。
久保 隆 取締役常務執行役員 ピーピージー・ジャパン代表取締役社長を経て2024年同社入社。社長室長、常務執行役員営業本部長等を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、千代田有子(千代田法律事務所代表)、村田恵一(元日産テクノ代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「アジア」「中国」「北米」の事業を展開しています。

日本


同社が展開する日本事業では、小型車から大型トラック・バス向けの制動装置(ドラムブレーキ等)や、エンジン冷却用ウォーターポンプなどの製造販売を行っています。主要顧客として、いすゞ自動車や三菱ふそうトラック・バスなどの大手商用車メーカーへ製品を供給しています。

収益は、これらの自動車メーカー等に対する自動車部品の販売代金から得ています。製品の製造および販売の運営は、同社ならびに連結子会社である木村可鍛やサンテック、TBK販売が主体となって行っています。

アジア


タイやインドを中心に展開するアジア事業では、小型車から大型トラック・バス向けのエンジン用ウォーターポンプやオイルポンプをはじめとするエンジンコンポーネントなどの製造および販売を主に行っています。

収益は、現地の完成車メーカー等に対する各種ポンプおよび部品の販売代金から得ています。事業の運営は、タイのTBKK(Thailand)や、インドのTBK India Private等の現地法人が行っています。

中国


中国事業では、現地の大型トラック市場向けを中心に、重要保安部品であるドラムブレーキなどの制動装置や関連部品、エンジンコンポーネントなどの製造および販売を行っています。

収益は、現地の商用車メーカー等に対するブレーキ部品などの販売代金から得ています。事業の運営は、Dongguan TBKやChangchun TBK SHILI Auto Parts等の現地法人が担っています。

北米


北米事業では、かつて現地において商用車向けのエンジンコンポーネントなどの製造販売を行っていましたが、生産の最適化を目的として、主力製品の生産をインド子会社へ移管しました。

これに伴い、事業の運営を行っていた米国子会社のTBK Americaは生産を終了し、2025年11月に清算を結了して同地域での生産拠点からは撤退しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は500億円台で安定的に推移していますが、原材料価格やエネルギーコストの高騰などの影響により、利益面では一時的に落ち込みが見られました。しかし、直近では販売価格への転嫁や合理化効果が表れ、経常利益が大幅に改善しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 512億円 535億円 567億円 544億円 548億円
経常利益 12億円 -6億円 8億円 3億円 17億円
利益率(%) 2.4% -1.2% 1.5% 0.6% 3.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.5億円 -16億円 16億円 -11億円 -1億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微増となりましたが、販売価格へのコスト転嫁を進めたことで売上総利益が増加し、売上総利益率は上昇しました。これにより営業利益も前期の9億円から15億円へと大きく改善し、収益性の回復傾向が確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 544億円 548億円
売上総利益 58億円 68億円
売上総利益率(%) 10.6% 12.5%
営業利益 9億円 15億円
営業利益率(%) 1.7% 2.7%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬・従業員給料・賞与が16億円(構成比31%)、運搬費が10億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別に見ると、日本やアジアでは価格改定やコスト改善効果により増収増益を達成しました。一方、中国では自動化による原価改善を進めたものの、原材料高騰の長期化が響き増収ながら赤字が継続しています。北米は生産拠点の閉鎖に伴い売上が減少しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
日本 287億円 316億円 2億円 5億円 1.7%
アジア 180億円 191億円 9億円 12億円 6.5%
中国 33億円 41億円 -1億円 -1億円 -2.6%
北米 43億円 0.1億円 0.2億円 0.1億円 100.0%
連結(合計) 544億円 548億円 9億円 15億円 2.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期の営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはプラスとなっており、営業活動で生み出した資金を原資としつつ、必要に応じて借入等の外部調達を行いながら積極的な設備投資を進める「積極型」のキャッシュ・フロー状況を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 39億円 40億円
投資CF -23億円 -16億円
財務CF -19億円 5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-0.4%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も55.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「お客様に喜んで頂く商品をつくり、社会に貢献する。」を経営理念に掲げています。技術革新と環境対応の変革期にある自動車業界において、社会的課題の解決に寄与する製品開発を進め、安全で高品質な製品を提供し続けることで持続的な成長と価値創造の実現を目指しています。

(2) 企業文化


全社員が共有する価値観として「TBK WAY」という行動指針を策定しています。この価値観のもと、変化に挑戦し続ける意志を体現し、多様な価値観を持った従業員が主体性や創造性を発揮してイノベーションを生み出せる環境と企業文化の醸成に努めています。

(3) 経営計画・目標


第16次中期経営計画(2025年〜2027年)において、「VISION 2030」に向けたバックキャストに基づき、最終年度となる2028年3月期の財務目標として以下を掲げています。

* 連結営業利益率3〜5%
* ROE5.0%

(4) 成長戦略と重点施策


「コア技術・コア製品の強化」「事業基盤の変革」「新領域への挑戦」を基本方針としています。既存主力製品の収益基盤安定化に加え、素形材事業の高付加価値化やグローバルな生産体制の最適化を進めています。また、インド企業との資本業務提携等によりグローバルアライアンスを強化します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様な価値観を持った従業員が主体性や創造性を持ち、経営ビジョンを実現できる体制を目指しています。「主体性・創造性・責任感・実行力を持った人材」を育成するため、各キャリア階層に応じた計画的育成や人事ローテーションを実施し、次世代リーダーやグローバル人材の輩出と定着を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.3歳 15.7年 5,845,205円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.3%
男性育児休業取得率 77.8%
男女賃金差異(全労働者) 75.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 79.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 83.6%


また、同社は「人的資本」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(71.2%)、入社3年後の離職率(7.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内外の経済状況に関わるリスク


自動車業界や建設産業機械業界の需要変動、米国や主要な海外市場(タイ、中国、インド等)の経済状況、インフレの進行や地政学的リスクの高まりが同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) トラック及び建設・産業機械需要の動向に関わるリスク


同社グループは国内普通トラック(積載量4トン以上)関連事業への依存度が高く、また製品のマーケットシェアも高いため、これら商用車市場や建設・産業機械市場の投資動向・需要変動に業績が大きく左右されるリスクがあります。

(3) 製品構成の変化に関わるリスク


主要な販売先である国内外の商用車メーカーの技術開発動向や調達方針の変更による影響を受けます。特に、国内普通トラック市場でディスクブレーキが普及した場合、同社主力のドラムブレーキと競合し、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(4) 製品の品質・安全性に関わるリスク


主力製品である商用車用ブレーキなどは重要保安部品に該当します。万が一、予期せぬ品質不良が発生した場合は重大な事故につながる恐れがあり、多額のコスト発生や同社グループの社会的信用の低下を招き、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。