※本記事は、株式会社TBK の有価証券報告書(第89期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. TBKってどんな会社?
TBKは、大型トラック・バス等の商用車向け重要保安部品であるブレーキや、エンジン冷却用ポンプ等を製造・販売する独立系自動車部品メーカーです。
■(1) 会社概要
1949年にいすゞ部品工業として設立され、1956年に東京部品工業として合併設立されました。1971年に東京証券取引所市場第二部に上場し、2005年には市場第一部銘柄指定と共に現商号へ変更しました。近年では2024年に連結子会社の東京精工およびティービーアールを吸収合併するなど、組織再編を進めています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は1,880名、単体では713名です。筆頭株主は主要取引先でもあるいすゞ自動車で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は三井住友銀行となっています。事業会社や金融機関が上位を占める安定した株主構成です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| いすゞ自動車 | 9.54% |
| 朝日生命保険 | 5.49% |
| 三井住友銀行 | 4.85% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は尾方 馨氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 尾方 馨 | 代表取締役社長 | 1986年入社。米国・タイ現地法人社長などを経て、2022年4月より現職。 |
| 丁 旭威 | 取締役 | 1994年入社。中国現地法人総経理などを経て、2021年6月より現職。 |
| 小林 正登 | 取締役 | 2014年入社。開発部門、海外営業担当などを経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、千代田 有子(千代田法律事務所代表)、村田 恵一(元日産自動車執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「アジア」「中国」「北米」の報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 日本
小型車から大型トラック・バス用のブレーキ(重要保安部品)、エンジン冷却用ウォーターポンプ、潤滑用オイルポンプ等を製造・販売しています。また、リターダ(補助ブレーキ)や工作機械の製造販売も行っています。
主な収益は自動車部品の製品販売による対価です。運営はTBKが主体となり、一部部品等の製造を木村可鍛やサンテック、販売をTBK販売などの国内グループ会社が担当しています。
■(2) アジア
タイやインドを中心とするアジア地域において、ブレーキ部品やエンジン用ウォーターポンプ、オイルポンプ等を製造・販売しています。現地の自動車メーカー等への供給拠点としての役割を担っています。
主な収益は製品販売による対価です。運営はタイのTBKK(Thailand)、インドのTBK Indiaなどの現地法人が担当しており、日本本社と連携しながら事業を展開しています。
■(3) 中国
中国市場向けに、商用車用ブレーキ等の製造・販売を行っています。現地需要に対応した生産体制を構築しており、一部製品は日本へも供給しています。
主な収益は製品販売による対価です。運営はDongguan TBKなどの現地法人が行っており、現地の商用車市場動向に応じた事業活動を展開しています。
■(4) 北米
北米市場において、エンジン用ウォーターポンプ等の製造・販売を行っていましたが、生産の最適化によりインドへの移管を進めています。なお、北米子会社は2024年12月に解散を決議し、清算手続き中です。
主な収益は製品販売による対価です。運営は米国のTBK Americaが担当していましたが、前述の通り事業再編の対象となっています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は500億円台中盤で推移していますが、直近では減少傾向にあります。利益面では、原材料価格高騰や海外事業の再編などの影響を受け、変動が大きくなっています。2025年3月期は北米事業撤退に伴う特別損失等を計上した結果、大幅な最終赤字となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 440億円 | 512億円 | 535億円 | 567億円 | 544億円 |
| 経常利益 | 13億円 | 12億円 | -6億円 | 8億円 | 3億円 |
| 利益率(%) | 3.0% | 2.4% | -1.2% | 1.5% | 0.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -2億円 | 8億円 | -21億円 | 3億円 | -12億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は4.0%減少し、売上総利益も減少しました。営業利益は微増を確保しましたが、持分法投資損失の増加や為替差損の発生により経常利益は大きく減少しました。さらに特別損失の計上が響き、最終損益は赤字に転落しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 567億円 | 544億円 |
| 売上総利益 | 60億円 | 58億円 |
| 売上総利益率(%) | 10.6% | 10.6% |
| 営業利益 | 9億円 | 9億円 |
| 営業利益率(%) | 1.6% | 1.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与等が16億円(構成比33%)、運搬費が9億円(同19%)を占めています。売上原価においては、材料費等の変動費が大きな割合を占めています。
■(3) セグメント収益
日本セグメントはコスト転嫁を進めましたが輸出低調で減収となりました。アジアはインドが増収増益の一方、タイが不振で全体では減収減益です。中国は需要低迷が続き減収かつ赤字でした。北米は撤退決定済みですが、当期は黒字を確保しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 297億円 | 287億円 | 2億円 | 2億円 | 0.5% |
| アジア | 192億円 | 180億円 | 10億円 | 9億円 | 5.2% |
| 中国 | 35億円 | 33億円 | -1億円 | -1億円 | -3.2% |
| 北米 | 42億円 | 43億円 | -0.3億円 | 0.2億円 | 0.4% |
| 連結(合計) | 567億円 | 544億円 | 9億円 | 9億円 | 1.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ資金で借入金の返済や投資を行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 32億円 | 39億円 |
| 投資CF | -25億円 | -23億円 |
| 財務CF | -4億円 | -19億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-4.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.2%で市場平均(スタンダード製造業平均57.5%)をやや下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「お客様に喜んで頂く商品をつくり、社会に貢献する。」を経営理念に掲げています。自動車業界の変革期において、社会的課題解決に寄与する安全で高品質な製品を提供し続け、持続的な成長と価値創造を実現することを目指しています。
■(2) 企業文化
「We Are One TBK」をスローガンに掲げ、グローバルで一体感のある組織運営を重視しています。顧客満足と価値創造を追求し、アジアのリーディングカンパニーを目指す姿勢を持っています。変革を実行し、社会にとって必要な企業であり続けることを重視する文化です。
■(3) 経営計画・目標
2025年4月より第16次中期経営計画をスタートさせ、最終年度となる2028年3月期に向けた財務目標を設定しています。
* 連結営業利益率:3~5%
* ROE:5.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
「コア技術・コア製品の強化」「事業基盤の変革」「新領域への挑戦」を基本方針としています。電動化対応を見据えつつ、既存のドラムブレーキやポンプ等の付加価値向上を図るとともに、アルミ製品事業を拡大し素形材事業を再定義します。また、北米撤退や中国事業再構築などの構造改革を進め、新規市場開拓やシステム製品開発に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「主体性・創造性・責任感・実行力を持った人材」を目指すべき人材像と定め、キャリア形成に向けた計画的な育成やグローバル人材の育成に注力しています。また、多様性を尊重し、性別等に関わらず長く働き続けられる環境整備を進め、従業員の健康やワークライフバランスの推進にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.9歳 | 16.0年 | 5,538,523円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.0% |
| 男性育児休業取得率 | 60.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 81.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 76.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 89.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(75.4%)、入社3年後の離職率(12.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) トラック需要への依存
同社グループの業績は、国内普通トラック(積載量4トン以上)関連事業への依存度が高く、当該市場の動向に大きく左右される可能性があります。また、建設・産業機械関連についても公共投資や民間設備投資等の需要動向の影響を受けやすい構造にあります。
■(2) 製品構成の変化(電動化・ディスクブレーキ化)
主力のドラムブレーキがディスクブレーキへ移行するリスクや、商用車のEV化によるポンプ需要減少のリスクがあります。これらの技術変化や市場環境の急変に対し、新製品開発や技術提携等の対応が遅れた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 海外事業のカントリーリスク
タイ、中国、インド等に生産拠点を有しており、各国の経済状況、法規制変更、政情不安等の影響を受ける可能性があります。特に中国事業の不振長期化やタイのローン審査厳格化による販売減などが顕在化しており、海外拠点の動向が業績に影響を与えるリスクがあります。



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