テイン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テイン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する自動車用サスペンション専門メーカーです。自社ブランド製品の開発・製造・販売を一貫して行い、グローバルに展開しています。第42期の連結業績は、売上高が前期比9.3%増と伸長しましたが、為替影響やコスト増により経常利益は41.4%減の増収減益となりました。


※本記事は、株式会社テイン の有価証券報告書(第42期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. テインってどんな会社?


自動車用サスペンションの専業メーカーとして、ストリート用から競技用まで高性能な製品を世界展開する企業です。

(1) 会社概要


1985年、ラリー競技の車両規定改正を機に、現社長の市野諮氏が休眠会社を譲り受ける形で横浜市にて設立されました。2001年の米国現地法人設立を皮切りに海外展開を本格化させ、2004年にジャスダック証券取引所へ上場を果たしました。その後、中国や英国、タイなどへ拠点を拡大し、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しました。

2025年3月末時点の連結従業員数は399名(単体88名)です。筆頭株主は、資産管理会社とみられる株式会社イチノホールディングスであり、第2位は創業者の市野諮氏、第3位は専務取締役の藤本吉郎氏と、経営陣およびその関連会社が上位を占めています。

氏名 持株比率
イチノホールディングス 36.69%
市野 諮 13.77%
藤本 吉郎 10.43%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は市野 諮氏が務めています。取締役6名のうち社外取締役は1名で、社外取締役比率は16.7%です。

氏名 役職 主な経歴
市野 諮 代表取締役社長 1979年有限会社松本自動車用品入社。1985年同社入社。同年より代表取締役社長を務める。
藤本 吉郎 専務取締役 1982年新日本鋼球(現AKS東日本)入社。1985年同社入社。1994年専務取締役。米国・英国・中国など海外子会社のトップを歴任し、2021年より現職。
古林 泰 専務取締役 2003年日本アイリッヒ入社。2005年同社入社。海外営業担当執行役員などを経て、2019年より現職。中国・豪州子会社の役員も兼任。
那須 賢司 取締役 1987年トヨタカローラ横浜入社。1991年同社入社。1998年より現職。
後藤 浩昭 取締役 1997年同社入社。開発課、品質保証課、生産管理課の担当執行役員を経て、2016年より現職。


社外取締役は、武井 共夫(市民総合法律事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「自動車用サスペンションの製造・販売事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

自動車用サスペンションの製造・販売事業


スポーツ走行や快適性を重視するドライバー向けに、車高調整式ショックアブソーバーやスプリング、電子制御デバイスなどを提供しています。主な顧客は、カー用品店やチューニングショップを通じて製品を購入する一般のエンドユーザー(カーアフターマーケット)です。

製品の販売による代金を主な収益源としています。開発は主に国内で同社が行い、製造は横浜本社工場および中国工場が担っています。販売は、国内では同社が、海外では米国、英国、中国、タイ、オーストラリア、ポーランドの現地法人が担当しており、グローバルな体制で運営されています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移において、売上高は概ね増加傾向にあり、特に当期は過去最高水準の53億円に達しました。一方、利益面では、第38期をピークに減少傾向が続いています。当期は経常利益率が7.4%まで低下しており、原材料価格の高騰や為替変動の影響を受け、収益性の確保が課題となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 47億円 50億円 52億円 49億円 53億円
経常利益 11億円 10億円 7億円 7億円 4億円
利益率(%) 23.7% 19.9% 12.6% 13.7% 7.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 5億円 3億円 3億円 2億円

(2) 損益計算書


前期と比較すると、売上高は増加しましたが、売上総利益および営業利益は減少しました。これは、売上原価の増加率が売上高の増加率を上回ったためであり、原価率の上昇が見て取れます。営業利益率は前期の10.7%から6.0%へと低下しており、収益構造の変化が顕著です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 49億円 53億円
売上総利益 22億円 21億円
売上総利益率(%) 44.8% 39.6%
営業利益 5億円 3億円
営業利益率(%) 10.7% 6.0%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が5億円(構成比26%)、研究開発費が2億円(同12%)を占めています。売上原価では、材料費や外注加工費などが主な構成要素となります。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、地域別の売上動向を見ると、日本、米国、アジア・オセアニア地域での売上が堅調に推移しました。特に米国は前期比で大きく伸長しています。一方、中国市場では成長鈍化の影響を受け、売上が減少しました。全体としては、海外市場の拡大が全体の増収に寄与しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
自動車用サスペンションの製造・販売事業 49億円 53億円
連結(合計) 49億円 53億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

テインは、事業運営に必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。

同社の営業活動によるキャッシュ・フローは、日々の事業活動から生み出される資金の流れを示しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や資産の取得・売却に伴う資金の動きを表しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入や返済、配当金の支払いなど、資金調達や返済に関する活動による資金の増減を示しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 6億円 7億円
投資CF -3億円 -3億円
財務CF -5億円 -6億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、カーアフターマーケット向けサスペンションの専門メーカーとして、「世界戦略に相応した品質、性能、価格の製品を作り上げ、カーアフターマーケット、プレミアム・リプレースメント市場におけるサスペンション事業の売上高100億円を目指す。」ことを長期経営ビジョンとして掲げています。

(2) 企業文化


長期経営ビジョン実現のため、4つの基本経営方針を行動指針としています。具体的には、「ROA重視の経営」「セイフティー、ハイクオリティー、リーズナブルプライスの商品製造による新市場創造」「必要なものを必要な時に必要なだけ提供する生産体制」「客観的データに基づく判断」を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、事業効率を重視する観点から「ROA(総資産利益率)」を重要な経営指標として位置付けています。また、次期の連結業績見通しとして以下の数値を掲げています。

* 売上高:58億7,400万円
* 経常利益:4億500万円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:3億1,800万円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は売上拡大に向け、「高付加価値製品の開発」「海外市場の拡大」「コスト削減」「品質向上」の4つの課題に取り組んでいます。特にグローバル市場への対応を強化しており、新規拠点であるオーストラリアや欧州を早期に軌道に乗せるとともに、「EnduraPro」シリーズや「4x4DAMPER」といった市場ニーズの高い製品ラインアップの拡充を進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材力の向上において、特に新卒採用を重視し、業務体験などを通じて事業内容への高い志向性を形成するよう努めています。人材育成ではOJTを中心に、主要職種を擬似体験できる研修制度などを提供しています。また、国籍、性別、年齢等によらず適性や実力に応じた処遇を行い、自己申告書制度などを用いて社内環境の継続的な改善に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.0歳 15.4年 6,006,000円


※平均年間給与は賞与および基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※男性労働者の育児休業取得率については、対象者がいなかったため記載されておりません。男女の賃金の差異については、公表義務の対象ではないため記載されておりません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(70.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定製品への依存と市場動向


同社は自動車用サスペンションという単一セグメントに特化しているため、ユーザーの趣味・嗜好の変化や経済状況の影響を強く受けます。市場競争が激化し、製品が販売不振となった場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外展開に伴うリスク


事業拡大のため世界各地で展開していますが、各国の法規制変更、政治・経済情勢の悪化、ビジネス慣習の違い、テロや紛争などのカントリーリスクが存在します。予期せぬ事象により、投資回収が計画通り進まない可能性があります。

(3) 自然災害による生産停止


生産拠点は横浜本社工場と中国工場の2か所に集約されています。地震や台風などの自然災害、あるいは設備破損やインフラ供給停止などにより生産活動が継続困難となった場合、業績に悪影響が生じる可能性があります。

(4) 人材確保の難航


グローバル展開には優秀な人材の確保が不可欠ですが、国内外で求める人材や労働力の確保・育成が計画通りに進まない場合、事業展開に支障をきたし、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。