テイン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テイン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テインは東京証券取引所スタンダード市場に上場する、カーアフターマーケット向け自動車用サスペンション専門メーカーです。世界戦略に基づく開発・製造・販売を展開し、直近の業績は国内外での販売好調や為替影響等により増収増益を達成。グローバルな事業基盤の強化とブランド認知の向上を進めています。


※本記事は、株式会社テインの有価証券報告書(第43期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. テインってどんな会社?


同社はカーアフターマーケット向け自動車用サスペンションの開発から製造、販売までを一貫して手掛ける専門メーカーです。

(1) 会社概要


1985年2月に新日本繊業を譲り受け、テインとして自動車部品産業へ進出しました。1990年1月に自社ブランドによる商品展開を開始し、2001年に米国、2003年に英国、2009年に中国などへ子会社を設立して海外展開を推進しています。2004年にはジャスダック証券取引所に上場しました。

現在の従業員数は連結で398名、単体で82名です。筆頭株主はイチノホールディングスで、第2位は創業者の市野諮氏、第3位は専務取締役の藤本吉郎氏が名を連ねており、創業一族および経営陣が上位株主を占める構成となっています。

氏名 持株比率
イチノホールディングス 37.34%
市野諮 14.02%
藤本吉郎 10.61%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は市野諮氏が務めており、社外取締役の比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
市野諮 代表取締役社長 有限会社松本自動車用品を経て、1985年2月に同社へ入社。同年より現職。
藤本吉郎 専務取締役 新日本鋼球(現AKS東日本)を経て、1985年8月に同社へ入社。海外子会社の董事長や取締役社長を歴任し、2021年6月より現職。
古林泰 専務取締役 日本アイリッヒを経て、2005年1月に同社へ入社。海外特任担当執行役員や天御遠東国際貿易(北京)有限公司董事長を務め、2019年6月より現職。


社外取締役は、武井共夫氏(市民総合法律事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、自動車用サスペンションの製造・販売事業を展開しています。

自動車用サスペンション製品の開発、製造、販売を主力事業として展開しています。カーアフターマーケットを対象とし、ドライビングにおける運動性能、快適性、スタイル性などを重視するユーザーからの支持を集めており、国内のみならず北米、欧州、アジアなど世界の広範な地域に向けて製品を提供しています。

収益源は、小売店や海外販売会社を通じたサスペンション製品の販売代金です。開発および国内向けの製造・販売はテインが担い、海外においては北米でTEIN U.S.A.,INC.、欧州でTEIN UK LIMITEDなどが販売を行っています。また、中国では天御減振器制造(江蘇)有限公司などが製造・販売を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は概ね50億円前後で推移し、直近は過去最高水準となる増収を達成しています。利益面では資材価格や人件費の高騰など外部環境の影響により一時的に低下しましたが、直近では為替影響等も寄与して増益に転じました。今後もグローバルでの販売網拡充により事業拡大を目指しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 50億円 52億円 49億円 53億円 56億円
経常利益 10億円 7億円 7億円 4億円 5億円
利益率(%) 19.9% 12.6% 13.7% 7.3% 8.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 3億円 3億円 2億円 3億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、売上原価の増加等により利益率はわずかに低下しています。また、人件費や資材価格の上昇、米国の対中関税政策の影響などにより、営業利益率も低下傾向にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 53億円 56億円
売上総利益 21億円 22億円
売上総利益率(%) 39.9% 39.1%
営業利益 3億円 3億円
営業利益率(%) 6.5% 6.0%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が5億円(構成比26%)、研究開発費が2億円(同12%)を占めています。また、同社の当期総製造費用のうち、材料費が10億円(構成比65%)、労務費が4億円(同26%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントのため、全社の売上増減要因を分析します。中国地域では経済停滞の影響を受けたものの、日本国内やタイへの販売が概ね好調に推移したことにより、全社として売上高は増加しました。海外市場の開拓と販売力の強化が寄与しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
自動車用サスペンションの製造・販売事業 53億円 56億円
連結(合計) 53億円 56億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 7億円 8億円
投資CF -3億円 -5億円
財務CF -6億円 -0.8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「たゆまぬ研鑚と先端を目指した技術力でドライビングプレジャーを創造し、多様化するお客様のニーズに応え、より豊かな社会に貢献する」ことを経営理念に掲げています。技術力に基づく高品質な製品を通じて、新しいカーライフの価値や社会への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


「セイフティー、ハイクオリティー、リーズナブルプライス」の商品を製造し、新たな市場を創造することを基本方針としています。また、「ユーザーの欲するものを、ユーザーの欲するときに必要なだけ提供する」という姿勢や、客観的データに基づいて判断する文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


長期経営ビジョンとして「世界戦略に相応した品質、性能、価格の製品を作り上げ、カーアフターマーケット、プレミアム・リプレースメント市場におけるサスペンション事業の売上高100億円を目指す」ことを掲げています。

・サスペンション事業の売上高100億円
・ROA(総資産利益率)の重視

(4) 成長戦略と重点施策


高付加価値製品の開発とラインアップの多様化、海外市場の拡大、コスト削減の推進、品質の向上を主要課題としています。北米、アジア、欧州でのブランド力強化や、アジア地域における合弁販売会社の設立による販売網の拡充を推進し、スピーディーな供給体制を構築することで中長期的な成長基盤を整えています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な企業価値向上の原動力は、従業員のエンゲージメント向上と心身の健康にあるとの認識のもと、報酬制度の拡充や労働環境の整備を推進しています。性別を問わず活躍できる環境を整えるとともに、新卒採用の強化や研修制度を通じた多様性を支える人材基盤の構築に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.7歳 16.0年 6,054,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
同社および連結子会社は公表義務の対象外に該当するため、有報には男性育児休業取得率や労働者の男女の賃金差異の法定開示としての記載がありません。

項目 数値
女性管理職比率 15.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用労働者) -
男女賃金差異(パート・有期労働者) -


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(66.6%)、役員に占める女性の割合(12.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定製品への依存と市場変化


自動車用サスペンション製品のカーアフターマーケットは、趣味・嗜好性や経済状況の影響を強く受けます。ユーザーニーズが大きく変化した場合や、販売競争が激化し販売不振に陥った場合、同社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外事業展開におけるリスク


同社は国内外で事業を展開しており、為替レートの変動、各国のビジネス慣習や雇用環境の違い、予期せぬ法令や規制の変更、地政学的なリスクなどが潜在しています。為替の変動や不測の事態が発生した場合、海外での事業活動や円換算後の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 原材料等の調達と物価高騰


資材・エネルギーコスト等の高騰に対しては販売価格の見直しを行っていますが、コスト増を価格転嫁によって十分に吸収できない場合、収益構造が悪化し、同社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。