**GMB転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態**
※本記事は、GMBの有価証券報告書(第64期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. GMBってどんな会社?
自動車部品の独立系メーカーとして、新車用・補修用部品をグローバル市場へ供給しています。
■(1) 会社概要
1962年に大阪府で浪速精密工業所として設立されました。その後、1979年の韓国進出をはじめ、米国、中国、タイ等へ拠点を拡大しグローバルな生産・販売体制を構築しています。2004年に大阪証券取引所市場第二部へ上場し、2013年に東京証券取引所市場第一部への上場を経て、現在はスタンダード市場に上場しています。
同社グループは、連結従業員数2,499名、単体従業員数307名の体制で事業を運営しています。大株主については、筆頭株主は創業家出身で現相談役の松岡信夫氏であり、第2位も創業家関係者の松岡栄子氏、第3位には現代表取締役社長の松岡祐吉氏が名を連ねており、創業家が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 松岡信夫 | 18.46% |
| 松岡栄子 | 4.40% |
| 松岡祐吉 | 2.89% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は松岡祐吉氏が務めており、社外取締役の比率は18.2%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松岡祐吉 | 代表取締役社長 | 1998年に同社へ入社し、営業第3部長、執行役員営業副本部長、専務取締役営業本部長、代表取締役副社長などを経て、2022年より現職。 |
| 大瀧民也 | 取締役副社長 | 1982年に同社へ入社。営業第2部長、常務取締役営業副本部長、専務取締役事業企画本部長などを歴任し、2025年より現職。 |
| 善田篤志 | 専務取締役 経営企画本部長 | 1995年住友銀行に入行し、2004年同社入社。経営管理室長、常務取締役経営管理本部長などを経て、2023年より現職。 |
| 文ヨンジュ | 専務取締役 R&D本部長 | 1984年韓国GMB工業に入社。青島吉明美汽車配件有限公司総経理、同社常務取締役製品開発本部長などを経て、2025年より現職。 |
| 伊藤孝治 | 取締役 営業本部長 | 1983年に伊藤繊維工業所へ入社し、1987年に同社へ入社。第二営業部長、上級執行役員営業副本部長などを経て、2024年より現職。 |
| 嶋田高寛 | 取締役 生産本部長 | 1987年本田技研工業に入社。同社品質保証部顧問、執行役員品質保証部担当役員、執行役員生産本部長などを経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、梁亨恩(大阪商業大学アミューズメント産業研究所研究員)、岡本依子(DTS代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「米国」「韓国」「中国」「タイ」「欧州」「豪州」「インド」の報告セグメントで自動車部品事業を展開しています。
**日本**
自動車の冷却装置部品(ウォーターポンプ等)や駆動・伝達・操縦装置部品(ユニバーサルジョイント等)を中心とした部品の製造・販売を展開しています。主に海外の補修用部品市場向けに製品を供給しており、グループの中核企業として先行研究開発や商品開発機能も担っています。
収益は、主に海外の補修用市場向けの自動車部品の販売により得ています。事業の運営は同社が行っており、各海外子会社の製品の販売も営むなど、グローバルな販売戦略の要として機能しています。
**韓国**
自動車部品等の各種ベアリング製品や冷却装置部品(ファンクラッチ、電動ウォーターポンプ等)、駆動・伝達・操縦装置部品の製造・販売を展開しています。グループ最大の売上規模を持ち、先行研究開発も行っています。
収益は、主に韓国国内の自動車完成車メーカーや系列各社への新車用部品の販売により得ています。事業の運営は、GMB KOREA CORP.、GMB AGtech Corp.、GMB ELPIS CORP.が行っています。
**中国**
ベアリング、ユニバーサルジョイント、ウォーターポンプなどの自動車部品の製造および販売を行っています。中国国内での新車用部品市場や、海外・中国国内の補修用部品市場に向けて製品を供給し、物流・品質管理拠点の役割も担っています。
収益は、部品および製品の製造・販売により得ています。運営は、青島吉明美机械制造有限公司、青島吉明美汽車配件有限公司、吉明美(杭州)汽配有限公司、吉明美汽配(南通)有限公司の4社が行っています。
**米国**
同社グループ各社が製造した製品を、米国を中心とした北米各国へ補修用部品として販売する機能と、米国の完成車メーカー向けの新車用電動化対応製品などの製造機能を担っています。
収益は、補修用部品の販売および新車用部品の製造・販売により得ています。運営は、販売会社のGMB NORTH AMERICA INC.、製造会社のGMB USA INC.およびGMB USA ALABAMA INC.が行っています。
**タイ・欧州・豪州・インド**
タイとインドでは、ウォーターポンプなど新車用・補修用部品の製造・販売を行っています。欧州では欧州完成車メーカー向け新車用部品の製造、豪州では補修用部品の販売を行っています。
各地域における自動車部品等の製造・販売による収益が主な収益源です。運営はTHAI GMB INDUSTRY CO.,LTD.、GMB RUS AUTOMOTIVE LLC、GMB OCEANIA PTY.LTD.等の各現地法人が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高はグローバル市場での販売拡大や為替の影響もあり、一貫して増加傾向にあります。経常利益は一時的に落ち込んだ時期もあったものの、直近では販売価格の見直しやコスト削減の取り組みが奏功し増益となりました。一方で、最終損益は減損損失等の影響で赤字が続いています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 714億円 | 872億円 | 963億円 | 1,037億円 | 1,053億円 |
| 経常利益 | 20億円 | 33億円 | 13億円 | 18億円 | 29億円 |
| 利益率(%) | 2.7% | 3.8% | 1.4% | 1.7% | 2.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -8億円 | -19億円 | -7億円 | -5億円 | -25億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微増となったものの、売上総利益はそれ以上の伸びを示しており、収益性の改善が見られます。営業利益についても、販売価格の見直しや生産性向上、韓国での退職給付費用の減少等が寄与し、大幅な増益を達成して営業利益率も向上しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,037億円 | 1,053億円 |
| 売上総利益 | 181億円 | 194億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.5% | 18.4% |
| 営業利益 | 19億円 | 33億円 |
| 営業利益率(%) | 1.9% | 3.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給与が33億円(構成比20%)、荷造発送費が15億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である韓国セグメントは微増収となっています。また、日本および中国セグメントも堅調に増収を達成しました。一方で、米国セグメントについては販売先の見直しや物流最適化の費用増などが響き、減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 160億円 | 176億円 |
| 米国 | 74億円 | 56億円 |
| 韓国 | 674億円 | 675億円 |
| 中国 | 74億円 | 77億円 |
| タイ | 12億円 | 13億円 |
| 欧州 | 38億円 | 45億円 |
| 豪州 | 5.8億円 | 5.4億円 |
| インド | 0.2億円 | 3.8億円 |
| 調整額 | -0.7億円 | 0.7億円 |
| 連結(合計) | 1,037億円 | 1,053億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で得た資金を元に、借入も活用しながら投資活動を積極的に行う「積極型」のキャッシュ・フロー状況となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 68億円 | 14億円 |
| 投資CF | -60億円 | -36億円 |
| 財務CF | 5億円 | 31億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-4.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は23.7%であり、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、グローバルな市場における自動車部品メーカーとして目指すべき企業理念として「技術革新と新製品開発を通じ、自動車部品産業のオンリーワン企業として国際社会に貢献する」を掲げています。部品を通じて、環境にやさしく安心・安全なモビリティ社会に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
創業以来の社訓である「和」の精神を基礎とし、グループ内の協調を高めることを重視しています。この企業理念のもと、「地球の成功が、私たちの未来」をスローガンに掲げ、環境への配慮と地球環境に対して責任あるモノ作りを推進する組織文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
中長期的な経営目標として、電動化対応製品の研究開発や生産体制の強化、顧客の現地納入ニーズへの対応によるグローバル事業の拡大を掲げています。また、将来の事業展開に必要な内部留保を確保しつつ、株主還元に関する指標として年間40円を最低配当金とし、連結配当性向25%を目標とする配当の実施を掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
3ヶ年の中期経営計画において4つの重点戦略を推進しています。電動化対応として電動ウォーターポンプ等の開発強化を進めるとともに、ルーマニアや米国、インドの新工場立ち上げでグローバル戦略を推し進めます。また、大型車等への補修用部品の適用範囲拡大や、欧米を中心としたOEM外注化需要の取り込みに注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
セルフマネジメントできる人材の育成を通じて、個人の人材価値を向上させることを主眼としています。性別・年齢・国籍等に依らず多様な人材を積極的に採用し、階層別・職能別の研修やe-learning等の教育体制を整備しています。柔軟な働き方ができる環境を整え、従業員エンゲージメントの向上と生産性の改善を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.0歳 | 17.7年 | 6,033,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.5% |
| 男性育児休業取得率 | 83.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 82.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 82.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 67.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、昇給実績(2.02%)、女性の採用人数(10人)、女性の昇格人数(2人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 海外市場への事業展開
同社は海外比率が高く、各国市場の経済情勢、諸法令、慣行等により事業計画が影響を受けるリスクがあります。特に、売上比率の高い現代自動車グループの動向や、中国での人件費上昇・環境規制強化、米国補修用部品市場における低価格競争の激化などの影響を強く受ける可能性があります。
■(2) 為替変動
海外売上高の比率が90.9%と非常に高く、直接輸出による売上高も51.4%を占めています。取引通貨バランスの改善や円建て取引の増加、海外調達の拡大などの為替リスク軽減策を講じていますが、急激な為替変動が発生した場合には業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 情報セキュリティリスク
サイバー攻撃やインターネット環境の障害により社内システムが停止した場合、生産・販売等の業務活動が中断するリスクがあります。また、取引先情報や技術情報などの重要情報が漏洩した場合、顧客等に対する賠償責任の発生や信頼低下につながる可能性があります。



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