※本記事は、GMB株式会社 の有価証券報告書(第63期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. GMBってどんな会社?
独立系の自動車部品メーカーとして、ユニバーサルジョイントやウォーターポンプ等を主力にグローバル展開する企業です。
■(1) 会社概要
1962年に大阪で浪速精密工業所として設立され、翌年より八尾市で操業を開始しました。1976年に米国子会社、1979年に韓国関連会社(現連結子会社)を設立するなど早期から海外展開を進め、2004年に大証二部へ上場しました。2012年には韓国子会社が韓国証券取引所に上場し、2013年には東証一部(現スタンダード市場)へ銘柄指定されました。
同グループの従業員数は連結2,494名、単体310名です。筆頭株主は相談役の松岡信夫氏で、第2位は個人株主の松岡栄子氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 松岡 信夫 | 18.90% |
| 松岡 栄子 | 4.42% |
| 松岡 祐吉 | 2.82% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名(監査役含む)の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長は松岡祐吉氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松岡 祐吉 | 取締役社長(代表取締役) | 1998年同社入社。GMB NORTH AMERICA INC.副社長、営業本部長などを経て2022年6月より現職。 |
| 善田 篤志 | 専務取締役経営企画本部長 | 住友銀行(現三井住友銀行)出身。2004年同社入社。経営管理室長、経営管理本部長などを経て2023年4月より現職。 |
| 大瀧 民也 | 専務取締役事業企画本部長 | 1982年同社入社。営業第2部長、営業副本部長などを経て2023年4月より現職。 |
| 文 ヨンジュ | 常務取締役R&D本部長 | 韓国GMB工業(現GMB KOREA)出身。中国現地法人の董事長などを歴任し、2025年4月より現職。 |
| 芳村 朋信 | 取締役 | 1985年同社入社。生産技術部長、技術部門統括などを経て2025年4月よりR&D本部試験部担当。 |
| 和田 勝也 | 取締役 | 南都銀行出身。2020年同社入社。総務部長、人事総務本部長を経て2025年4月より経営企画本部特命担当。 |
| 伊藤 孝治 | 取締役営業本部長 | 1987年同社入社。GMB NORTH AMERICA INC.副社長、第二営業部長などを経て2024年6月より現職。 |
| 嶋田 高寛 | 取締役生産本部長 | 本田技研工業出身。2022年同社入社。品質保証部担当役員などを経て2024年6月より現職。 |
社外取締役は、梁亨恩(元アシアナ航空大阪支店長)、岡本依子(シドニー五輪テコンドー銅メダリスト)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」、「米国」、「韓国」、「中国」、「タイ」、「欧州」、「豪州」及び「インド」の各報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 日本
同社が主に担当し、自動車の冷却装置部品であるウォーターポンプや、駆動・伝達部品であるユニバーサルジョイント等を製造・販売しています。また、グループ中核として研究開発を行っています。
製品は主に海外の補修用市場向けに販売されています。また、各子会社の製品販売も行っています。
■(2) 米国
GMB NORTH AMERICA INC.などが担当し、同社グループ製品を米国および北米各国へ補修用部品として販売しています。
また、GMB USA INC.にて完成車メーカー向けの新車用電動ウォーターポンプの製造を行っています。
■(3) 韓国
GMB KOREA CORP.などが担当し、自動車部品の各種ベアリング、ファンクラッチ、ウォーターポンプ、バルブスプール等の製造・販売を行っています。また、先行研究開発も担っています。
主な顧客は韓国国内の自動車完成車メーカーおよびその系列各社です。
■(4) 中国
青島吉明美机械制造有限公司などが担当し、ベアリングやユニバーサルジョイント、ウォーターポンプ等の部品および製品を製造しています。
製品は同社およびGMB KOREA CORP.へ供給されるほか、一部は中国国内でも販売されています。
■(5) タイ
THAI GMB INDUSTRY CO.,LTD.が担当し、ウォーターポンプ、サスペンションパーツ、バルブスプール等の製造を行っています。
製品は同社およびGMB KOREA CORP.へ供給されるほか、一部はタイ国内でも販売されています。
■(6) 欧州
GMB RUS AUTOMOTIVE LLC(ロシア)およびGMB ROMANIA AUTO INDUSTRY S.R.L.(ルーマニア)が担当し、ウォーターポンプ等の製造を行っています。
主に欧州の完成車メーカー向けに新車用部品を供給しています。
■(7) 豪州
GMB OCEANIA PTY.LTD.が担当し、オーストラリア国内において補修用部品の販売を行っています。
主な顧客はオーストラリア国内の市場です。
■(8) インド
GMB AUTOMOTIVE INDIACHENNAI PVT LTDが担当し、冷却装置部品の製造を行っています。
主にインドの完成車メーカー向けに新車用部品を供給しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの5期間を見ると、売上高は増加傾向にあり、直近では1,000億円を突破しました。利益面では、2021年3月期は赤字でしたが翌期以降は黒字化し、直近では増益基調にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 574億円 | 714億円 | 872億円 | 963億円 | 1,037億円 |
| 経常利益 | -4.2億円 | 20億円 | 33億円 | 13億円 | 18億円 |
| 利益率(%) | -0.7% | 2.7% | 3.8% | 1.4% | 1.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -3.2億円 | 7億円 | 12億円 | 4億円 | 6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、売上総利益率も改善しています。営業利益は増益となりましたが、営業利益率は低い水準で推移しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 963億円 | 1,037億円 |
| 売上総利益 | 167億円 | 181億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.3% | 17.5% |
| 営業利益 | 16億円 | 19億円 |
| 営業利益率(%) | 1.7% | 1.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給与が33億円(構成比20%)、荷造発送費が18億円(同11%)を占めています。売上原価においては詳細な内訳データはありませんが、棚卸資産評価損として1.4億円が計上されています。
■(3) セグメント収益
韓国セグメントが売上・利益ともに最大規模で、全社の牽引役となっています。日本や米国、欧州セグメントは赤字または低収益となっており、特に米国セグメントの損失が目立ちます。中国セグメントは利益率が高く貢献しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 162億円 | 160億円 | 3億円 | -0.5億円 | -0.3% |
| 米国 | 75億円 | 74億円 | -4億円 | -3億円 | -3.8% |
| 韓国 | 625億円 | 674億円 | 14億円 | 20億円 | 3.0% |
| 中国 | 63億円 | 74億円 | 5億円 | 7億円 | 8.9% |
| タイ | 10億円 | 12億円 | -1億円 | 0.5億円 | 4.5% |
| 欧州 | 29億円 | 38億円 | -0.7億円 | -1億円 | -2.8% |
| 豪州 | 4億円 | 6億円 | 0.4億円 | 0.1億円 | 1.4% |
| インド | - | 0.2億円 | - | -0.7億円 | -312.4% |
| 調整額 | -6億円 | -0.7億円 | -0.1億円 | -3億円 | - |
| 連結(合計) | 963億円 | 1,037億円 | 16億円 | 19億円 | 1.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、事業運営に必要な流動性と資金源泉の安定確保を基本方針としております。
営業活動によるキャッシュ・フローは、日々の事業活動から生み出される資金の流れを示しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や有形固定資産の取得・売却など、将来の事業基盤強化に向けた資金の動きを表しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入や返済、社債の発行など、資金調達や返済に関する動きを示しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 22億円 | 68億円 |
| 投資CF | -49億円 | -60億円 |
| 財務CF | 4億円 | 5億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「技術革新と新製品開発を通じ、自動車部品産業のオンリーワン企業として国際社会に貢献する」をグループ企業理念として掲げています。新車用・補修用部品の両輪でグローバルに事業拡大を図り、環境にやさしく、安心・安全なモビリティ社会への貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
創業以来の社訓「和」によりグループ内の協調を高めることを基礎としています。また、「地球の成功が、私たちの未来」をスローガンに掲げ、部品を通じて環境対応や安全性向上に取り組み、社会に必要とされる会社を目指す姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2027年3月期を最終年度とする中期経営計画を策定しており、以下の数値目標を掲げています。
* 連結売上高:1,300億円
* 連結営業利益:50億円
* ROE:7.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画の達成に向け、以下の4つの重点戦略を推進しています。
* 電動化対応:電動ウォーターポンプや統合熱管理モジュールなど、電動化対応製品の研究開発と生産体制を強化します。
* 顧客のグローバル戦略対応:ルーマニア工場での生産開始や米国・インドの新工場立ち上げにより、顧客の現地納入ニーズに対応します。
* 補修用部品の拡販:大型車や建機への範囲拡大、新規アイテムの市場投入により販売拡大を図ります。
* OEM外注化対応:欧米を中心に、ユニバーサルジョイントの上位Tierメーカーからの外注受け皿となり販売を強化します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
セルフマネジメントできる人材育成を通じて個人の人材価値を高めることを主眼としています。フリーアドレス制度やテレワーク等の柔軟な働き方の環境整備、e-learningや選抜研修による次世代リーダー育成、公平透明な評価制度の構築を推進し、性別・国籍等を問わず多様な人材が活躍できる体制を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.9歳 | 17.4年 | 6,102,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.7% |
| 男性育児休業取得率 | 33.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 81.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 82.2% |
| 男女賃金差異(非正規) | 69.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、大卒新入社員定着率(100.0%)、ベースアップを含む昇給率(6.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 海外市場への事業展開について
日本、米国、韓国、中国、タイ、欧州、豪州、インドでグローバル展開を行っており、各国の経済情勢や法規制の影響を受ける可能性があります。特に韓国では現代自動車グループへの販売比率が高く、同グループの動向が業績に影響します。また、中国でのコスト上昇や政策変更、米国補修市場での価格競争激化もリスク要因です。
■(2) 為替変動について
連結売上高の91.7%が海外売上高であり、直接輸出比率も高いため、為替変動の影響を受けやすい構造です。取引通貨バランスの改善や現地生産・調達の推進、為替予約等でリスク軽減を図っていますが、急激な変動は業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 製品の品質について
品質保証体制を構築していますが、製品に欠陥が生じリコールや製造物責任賠償が発生する可能性があります。保険に加入していますが、多額のコスト負担や社会的評価の悪化により、業績に影響を与える可能性があります。また、米国市場ではDIYによる部品交換が多く、返品対応コストのリスクもあります。
■(4) 自然災害・戦争・テロ・感染症等について
各拠点の所在地域で予期せぬ災害や戦争等が発生した場合、事業活動が停滞する可能性があります。特にロシア子会社については、ウクライナ情勢の影響で稼働を一時停止していましたが、現在は限定的に再開しています。今後の情勢や制裁等により、業績に影響を受ける可能性があります。



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