※本記事は、株式会社カネミツ の有価証券報告書(第42期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. カネミツってどんな会社?
同社は、独自の回転成形技術による鋼板製プーリを主力製品とし、国内外の自動車メーカーに供給する独立系部品メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1947年に金光銅工熔接所として創業し、1961年に回転成形法によるプーリ開発に成功して事業基盤を確立しました。1984年に現在のカネミツを設立し、2005年に大阪証券取引所市場第二部(現:東京証券取引所スタンダード市場)へ上場しました。1999年以降はタイ、中国、インドネシアに現地法人を設立し、グローバル展開を加速させています。
2025年3月31日現在、グループ全体の従業員数は577名、単体では221名体制です。大株主構成を見ると、筆頭株主は同社代表取締役社長の金光俊明氏で、第2位はカネミツ従業員持株会、第3位はベンチャーキャピタル業務などを行う大阪中小企業投資育成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 金光俊明 | 9.26% |
| カネミツ従業員持株会 | 7.16% |
| 大阪中小企業投資育成 | 6.82% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は金光俊明氏が務めています。取締役7名のうち3名が社外取締役で、社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 金光俊明 | 代表取締役社長 | 1982年入社。取締役管理部業務課長、常務取締役営業技術本部長、タイ現地法人社長などを経て、2009年より現職。 |
| 金光秀治 | 取締役業務本部長 | 1987年入社。経営企画部長、業務本部長等を歴任し、インドネシア現地法人プレジデントコミサリス、松本精工取締役を兼務。2024年より取締役常務執行役員。 |
| 藤井直樹 | 取締役 | 1992年入社。新技術開発室長、タイ現地法人テクニカルセンター所長、技術本部長、先行開発室長を経て、2022年より取締役常務執行役員。 |
| 山川清日 | 取締役 | 2007年入社。海外事業統括室長、執行役員を経て、タイ現地法人社長および中国現地法人董事を兼務。2024年より取締役常務執行役員。 |
社外取締役は、竹治康公(神戸学院大学経済学部教授)、林隆一(神戸学院大学経済学部教授)、石橋正明(元プロネクサス常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「東南アジア」「中国」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 日本セグメント
鋼板製プーリをはじめとする自動車エンジン部品、トランスミッション部品、xEV部品などの製造販売を行っています。主な顧客は国内の自動車メーカーおよび部品メーカーです。
収益は製品販売による対価を得るモデルです。運営は主にカネミツが行い、連結子会社の松本精工や津村製作所も製造・加工を担っています。
■(2) 東南アジアセグメント
タイおよびインドネシアにおいて、自動車用プーリや金属加工製品の製造販売を行っています。成長著しいアジア市場の需要に対応し、日系自動車メーカーの現地拠点等へ製品を供給しています。
収益は製品販売による対価を得るモデルです。運営はタイのKANEMITSU PULLEY CO., LTD.およびインドネシアのPT. KANEMITSU SGS INDONESIAが行っています。
■(3) 中国セグメント
中国市場において、鋼板製プーリや金属加工製品の製造販売を行っています。世界最大の自動車市場である中国での需要取り込みを図っています。
収益は製品販売による対価を得るモデルです。運営は中国現地の佛山金光汽車零部件有限公司が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの5期間を見ると、売上高は70.3億円から111.2億円へと順調に拡大しています。利益面では2021年3月期に損失を計上したものの、翌期以降は黒字回復し、経常利益率は2.7%から7.3%へと改善傾向にあります。直近の2025年3月期は過去最高の売上高を更新し、安定した収益基盤を築いています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 70.3億円 | 87.6億円 | 100.2億円 | 110.9億円 | 111.2億円 |
| 経常利益 | -4.0億円 | 2.4億円 | 4.9億円 | 6.7億円 | 8.1億円 |
| 利益率(%) | -5.7% | 2.7% | 4.9% | 6.1% | 7.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -0.3億円 | 0.2億円 | 4.9億円 | 6.5億円 | 5.0億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比微増ながら、売上総利益および営業利益は増加しました。売上総利益率は20.9%から22.5%へ、営業利益率は5.2%から6.8%へとそれぞれ上昇しており、収益性が向上しています。コスト管理や高付加価値製品へのシフトが進んでいることが窺えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 110.9億円 | 111.2億円 |
| 売上総利益 | 23.2億円 | 25.0億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.9% | 22.5% |
| 営業利益 | 5.8億円 | 7.6億円 |
| 営業利益率(%) | 5.2% | 6.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が4.5億円(構成比26%)、運賃が2.4億円(同14%)、研究開発費が2.4億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
日本セグメントは増収増益となり、全体の利益を牽引しました。東南アジアセグメントは売上高、利益ともに減少し、中国セグメントは売上高が微減したものの黒字を確保しました。日本国内での底堅い需要に加え、トランスミッション部品等の拡販が寄与しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 79.5億円 | 81.6億円 | 4.4億円 | 5.9億円 | 7.2% |
| 東南アジア | 23.2億円 | 21.4億円 | 1.3億円 | 1.1億円 | 5.1% |
| 中国 | 8.2億円 | 8.2億円 | -0.2億円 | 0.1億円 | 1.2% |
| 連結(合計) | 110.9億円 | 111.2億円 | 5.8億円 | 7.6億円 | 6.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
カネミツは、営業活動により資金を創出し、投資活動で設備投資等を行い、財務活動で借入返済や配当支払いを実行する資金繰りをしています。
営業活動では、税金等調整前当期純利益の増加や売上債権の減少、補助金の受取増により、前年を上回る資金を得ました。投資活動では、有形固定資産の取得支出が減少したものの、定期預金の増加により、前年より多くの資金を使用しました。財務活動では、長期借入金の返済や配当金の支払いにより、前年と同様に資金を使用しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 14.2億円 | 16.5億円 |
| 投資CF | -9.9億円 | -10.4億円 |
| 財務CF | -7.3億円 | -8.0億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「カネミツは技術を尊び技術でOnly-Oneを目指す」「カネミツはOnly-One技術で安全と環境に貢献する」を経営理念として掲げています。独自の塑性加工技術を活かした製品開発を通じて、自動車業界の発展とステークホルダーへの価値提供を目指しています。
■(2) 企業文化
創業以来、「技術開発型経営」を志向し、地球環境に配慮したモノづくりに取り組む文化があります。企業倫理を遵守し、社会的責任を果たすことを重視しています。技術力による差別化と環境貢献を両立させる姿勢が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2023年4月から3ヶ年の「第9次中期経営計画」を推進しており、成長投資と新商品の研究開発を支える利益確保を目指しています。最終年度である2026年3月期の数値目標として以下を掲げています。
* 連結売上高 111.7億円
* 連結営業利益 8.3億円
* CO2排出量原単位 2025年3月期比5%減
■(4) 成長戦略と重点施策
「新しい世界に挑戦していきます」をスローガンに、新商品・新事業の創出と既存事業の改革を推進しています。具体的には、新エネ車向け部品やモーターコアなどの開発加速、トランスミッション部品の拡販、サステナビリティへの取り組み強化などを重点施策としています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
自動車の電動化など事業環境の変化に対応するため、持続的成長を支える有能な人材の確保と、年齢・性別・国籍に関わらず挑戦できる体制づくりを進めています。多様性を尊重し、社員一人ひとりが活躍できる環境整備に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.6歳 | 17.1年 | 6,203,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 14.3% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.8% |
| 男女賃金差異(正規) | 78.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 55.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、役員および管理監督者に占める女性労働者の割合(19%)、社員満足度(ES)(47%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自動車業界の需要動向
主力製品であるプーリ等の多くは日系自動車メーカー向けであり、自動車生産台数や電動化の動向、各国の経済政策などが経営成績に大きな影響を与える可能性があります。特に電動化シフトによるエンジン部品需要の変化がリスク要因となります。
■(2) 新商品開発力
市場ニーズに適合した新商品や新技術の開発が遅延した場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。EVシフトに対応するための新事業やxEV部品などの開発競争力維持が課題となります。
■(3) 価格競争
自動車業界における厳しい価格競争や、顧客からの価格低減要求が強まる場合、競争力が低下し業績に影響する可能性があります。生産性向上や原価低減による競争力維持が必要です。
■(4) 海外事業リスク
売上高の約26%を海外市場が占めており、予期しない法規制の変更、政治・経済要因、為替変動などが業績に影響を与える可能性があります。特にアジア地域での事業展開におけるカントリーリスクへの対応が必要です。



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