カネミツ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

カネミツ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

カネミツは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、自動車や農業機械用の鋼板製プーリの設計、製造、販売を主力事業としてグローバルに展開しています。直近の業績では、海外での自動車販売低迷により売上高は前期比で微減となりましたが、生産性改善やトランスミッション部品等の拡大により営業利益は増益を達成しました。


※本記事は、カネミツの有価証券報告書(第43期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. カネミツってどんな会社?


同社は、独自の塑性加工技術を活かし、自動車用鋼板製プーリを中心にグローバルで事業を展開しています。

(1) 会社概要


1947年に設立され、1961年に独自の回転成形法によるプーリの開発に成功しました。1984年にカネミツを設立し、1999年にはタイ、2006年には中国、2014年にはインドネシアに現地法人を設立しグローバル化を推進しました。2005年に大阪証券取引所市場第二部に上場しています。

従業員数は連結569名、単体218名です。筆頭株主は創業家の金光俊明氏で、第2位は中小企業の育成支援を行う大阪中小企業投資育成、第3位は従業員持株会となっています。

氏名 持株比率
金光俊明 9.28%
大阪中小企業投資育成 6.82%
カネミツ従業員持株会 6.61%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長執行役員は金光俊明氏です。取締役7名のうち、3名が社外取締役です。

氏名 役職 主な経歴
金光俊明 代表取締役 1982年同社入社。常務取締役、KANEMITSU PULLEY代表取締役社長、同社代表取締役専務などを歴任し、2012年4月より現職。
金光秀治 取締役 1987年同社入社。経営企画部長、業務本部長などを経て、KANEMITSU PULLEY代表取締役社長を歴任。2021年7月より現職。
藤井直樹 取締役 1992年同社入社。新技術開発室長やタイのテクニカルセンター所長を経て、技術本部長や先行開発室長を歴任。2022年10月より現職。
山川清日 取締役 2007年同社入社。海外事業統括室長を経て、KANEMITSU PULLEY代表取締役社長や佛山金光汽車零部件の董事長を歴任。2024年6月より現職。


社外取締役は、竹治康公(神戸学院大学経済学部教授)、林隆一(神戸学院大学経済学部教授)、石橋正明(元三菱UFJ銀行支店長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「東南アジア」「中国」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


同社および国内子会社が、自動車用鋼板製プーリをはじめとするトランスミッション部品や関連製品の設計、製造、販売を国内市場向けに行っています。主要顧客は日系の自動車メーカーや自動車部品メーカーなどです。

収益は、完成した製品を顧客に納入し、その対価を受け取ることで得ています。事業の運営は主にカネミツのほか、松本精工や津村製作所が担っています。

(2) 東南アジア


タイおよびインドネシアの現地法人を通じて、自動車用鋼板製プーリ等の製造、販売を行っています。東南アジア地域における日系自動車メーカーおよび現地部品メーカーを主な顧客としています。

収益は、製造した製品を現地の顧客に納入することで得ています。事業の運営は、タイのKANEMITSU PULLEY CO., LTD.およびインドネシアのPT. KANEMITSU SGS INDONESIAが行っています。

(3) 中国


中国の現地法人を通じて、自動車用鋼板製プーリ等の製造、販売を行っています。中国市場に進出している日系自動車メーカーや現地の部品メーカーが主な顧客です。

収益は、製品の納入による対価として得ています。事業の運営は、中国広東省にある佛山金光汽車零部件有限公司が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高が88億円から111億円の範囲で推移し、直近では微減となりましたが、利益面は改善傾向にあり、経常利益率は上昇を続けています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 88億円 100億円 111億円 111億円 110億円
経常利益 2億円 5億円 7億円 8億円 9億円
利益率(%) 2.7% 4.9% 6.1% 7.3% 8.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 5億円 6億円 5億円 7億円

(2) 損益計算書


売上高は微減となったものの、生産性改善等により売上総利益が増加しました。販売費及び一般管理費は増加しましたが、結果として営業利益、営業利益率ともに向上しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 111億円 110億円
売上総利益 25億円 27億円
売上総利益率(%) 22.5% 24.3%
営業利益 8億円 9億円
営業利益率(%) 6.8% 8.0%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が5億円(構成比25%)、運賃が3億円(同14%)、研究開発費が2億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントにおいて売上高は減少または微減となったものの、中国でのプーリ外製品の受注伸長や国内でのトランスミッション部品等の拡大、生産性改善などにより、すべてのセグメントで利益が増加しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
日本 82億円 81億円 6億円 7億円 8.2%
東南アジア 21億円 21億円 1億円 1億円 6.5%
中国 8億円 8億円 0.1億円 0.5億円 6.7%
連結(合計) 111億円 110億円 8億円 9億円 8.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 17億円 21億円
投資CF -10億円 -6億円
財務CF -8億円 -10億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「カネミツは技術を尊び技術でOnly-Oneを目指す」「カネミツはOnly-One技術で安全と環境に貢献する」を経営理念として掲げています。独自の技術を活かした製品を通じて自動車業界の発展の一翼を担い、すべてのステークホルダーにとって存在価値のある企業を目指しています。

(2) 企業文化


創業以来、技術開発志向の経営を重視し、独自の塑性加工(外部から力を加えて変形させる加工方法)技術を活かしたオンリーワン製品の商品化に取り組んでいます。地球環境に配慮したモノづくりを推進し、企業倫理を遵守して社会的責任を果たすことを行動様式としています。

(3) 経営計画・目標


2026年4月から始まる3カ年の「第10次中期経営計画」において、継続的な成長投資と新商品の研究開発を支えるための利益確保を不可欠としています。2029年3月期の定量目標として以下の数値を掲げています。

* 連結売上高:130億円
* 連結営業利益:11億円
* ROE:7%
* DOE(自己資本配当率):2.5%

(4) 成長戦略と重点施策


ものづくりとひとづくりの両面で重点施策を掲げています。複数事業の柱による売上構成比の最適化や、核となる技術の玉成、スマート工場化を推進します。また、EVシフトに対応した新商品開発やロボット部品など他産業への参入により成長を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業戦略と人事戦略を連動させて必要な人材を定義し、グループ全体の能力の統合管理を進めます。リスキリングや階層別教育による学びと挑戦が根付く教育制度の構築や、ITリテラシー教育とAIの有効活用により創造的業務を中心とした働き方へのシフトを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.8歳 18.0年 6,424,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.1%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 71.4%
男女賃金差異(正規雇用) 78.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 51.0%


また、同社はサステナビリティに関する考え方及び取組のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、役員および管理監督者に占める女性労働者の割合(21%)、社員満足度(49%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自動車業界の需要動向


同社の主力製品であるプーリ等の多くは自動車用部品として販売されています。今後の経済情勢、資源価格の高騰、自動車のハイブリッド化や電動化の進展など、自動車業界の動向が同社グループの経営成績や財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(2) 新商品開発の不確実性


独自の技術を活かした新商品開発に注力していますが、新商品の開発は不確実性を伴います。市場ニーズに適合した新商品や新技術の開発が遅延した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、IT等の活用による開発期間短縮や自動車以外の産業への参入を進めています。

(3) 自動車業界の価格競争


自動車業界における価格競争は厳しく、自動車メーカーや部品メーカーからの価格低減要求が一段と強まった場合、同社の価格競争力が低下するリスクがあります。これに対しては、付加価値商品の開発や生産性・品質の向上、生産体制の再構築による原価低減に努めています。

(4) 海外事業展開のリスク


同社の生産、販売、開発活動の一部は海外で行われています。予期しない法律・規制の変更、不利な政治・経済要因、社会的混乱、急激な為替変動などが、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。