黒田精工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

黒田精工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場し、精密技術を核とした駆動システム、金型システム、機工・計測システム事業を展開しています。2025年3月期の連結業績は、売上高が前期比6.6%減の173億円、経常利益が同50.4%減の4億円となり、減収減益でした。EVシフトの減速や中国経済の影響を受けました。


※本記事は、黒田精工株式会社の有価証券報告書(第81期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 黒田精工ってどんな会社?


精密技術を基盤に、半導体製造装置向け駆動システムや自動車用モーターコア金型などを製造販売する企業です。

(1) 会社概要


1925年に各種ゲージの製造販売を行う黒田挾範製作所として創業し、1949年に現会社を設立しました。1961年に東証二部に上場し、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しました。2012年には英国持株会社を通じてドイツのボールねじメーカーを買収するなど、グローバル展開を進めています。

同グループは連結641名、単体434名の従業員を擁しています。筆頭株主は事業経営や投資を行う株式会社日本共創プラットフォームで、2022年に資本業務提携を締結しています。第2位は代表取締役社長の黒田浩史氏、第3位は株式会社みずほ銀行となっています。

氏名 持株比率
日本共創プラットフォーム 19.88%
黒田 浩史 5.17%
みずほ銀行 4.84%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は黒田浩史氏です。社外取締役比率は27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
黒田 浩史 代表取締役社長 新日本製鐵(現 日本製鉄)入社、日本ゼネラル・エレクトリック事業開発部長等を経て、2005年同社取締役就任。2009年6月より現職。
石井 克則 専務取締役金型事業部長 ソニーグループ生産システムビジネスセンター精密機器事業部長等を経て、2013年同社入社。2023年6月より現職。
紫波 文彦 常務取締役駆動システム事業部長 1982年同社入社。経営企画部長、韓国黒田精工取締役社長等を歴任し、2023年6月より現職。
米川 泉 取締役技術本部長 1983年同社入社。駆動システム事業部技術部長、技術本部長等を歴任し、2021年6月より現職。
荻窪 康裕 取締役管理本部長 1986年同社入社。経理部長、情報システム部長等を歴任し、2021年6月より現職。


社外取締役は、冨山和彦(㈱IGPIグループ会長)、稲川文雄(元みずほ銀行常務取締役)、水品朱美(工機ホールディングス㈱法務部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「駆動システム」「金型システム」および「機工・計測システム」事業を展開しています。

(1) 駆動システム


精密研削ボールねじ、転造ボールねじ、ボールねじアクチュエータ、XYステージ、ガイド、ギアなどを製造販売しています。半導体製造装置や各種分析関連装置、電子・デバイス分野などが主な顧客です。

収益は製品の販売により得ています。黒田精工およびドイツのJenaer Gewindetechnik GmbHが製造販売を行うほか、韓国黒田精工、米国のKURODA JENA TEC, INC.、中国の平湖黒田精工有限公司が販売を担っています。

(2) 金型システム


積層精密プレス型、精密金属プレス商品、モーターコアなどを製造販売しています。特に高効率モーターコアは、ハイブリッド車や電気自動車などの自動車業界向けに展開されています。

収益は製品の販売により得ています。黒田精工およびマレーシアのクロダプレシジョンインダストリーズ(M)が製造販売を行っています。また、一部のプレス製品は持分法適用関連会社の紅忠黒田ラミネーションから納入を受けています。

(3) 機工・計測システム


保持工具、ゲージ、平面研削盤、超精密鏡面研磨装置、超精密表面形状測定装置などを製造販売しています。工作機械や測定機器として、幅広い産業の加工・計測現場で使用されています。

収益は製品の販売およびコンプレッサーのメンテナンス等から得ています。黒田精工が製造・販売・メンテナンスを行うほか、一部製品については株式会社ゲージングにおいて製造・販売を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2023年3月期をピークに減少傾向にあります。利益面では、2023年3月期に高い利益率を記録しましたが、その後は減益が続いています。2025年3月期は減収に加え、為替差益の縮小などにより経常利益も大きく減少しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 133億円 180億円 227億円 185億円 173億円
経常利益 4億円 14億円 15億円 8億円 4億円
利益率(%) 2.7% 8.0% 6.7% 4.6% 2.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 -0.2億円 13億円 4億円 2億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較すると、売上高の減少に伴い売上総利益、営業利益ともに減少しています。売上総利益率は24.0%から23.7%へと微減しました。販管費は微減しましたが、売上高の減少幅が大きかったため、営業利益率は3.2%から1.8%へと低下しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 185億円 173億円
売上総利益 44億円 41億円
売上総利益率(%) 24.0% 23.7%
営業利益 6億円 3億円
営業利益率(%) 3.2% 1.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当などの人件費が16億円(構成比42%)、運賃荷造費・輸出諸掛が4億円(同10%)を占めています。売上原価では、材料費や外注加工費などが主な構成要素です。

(3) セグメント収益


駆動システムは半導体市場の回復が緩やかで減収、ドイツ子会社の赤字などが響き営業損失となりました。金型システムはEVシフト減速の影響等で減収減益となりました。機工・計測システムは工作機械の売上寄与案件が少なく減収、営業損失となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
駆動システム 67億円 64億円 -0.9億円 -1億円 -2.0%
金型システム 83億円 76億円 8億円 6億円 7.7%
機工・計測システム 35億円 34億円 -0.5億円 -1億円 -3.1%
連結(合計) 185億円 173億円 6億円 3億円 1.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

黒田精工グループは、事業運営に必要な資金の流動性と源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

営業活動によるキャッシュ・フローは、日々の事業活動から生み出される資金の流れを示します。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や有価証券の取得・売却など、将来の事業基盤強化に向けた資金の動きを表します。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入や返済、配当金の支払いなど、資金調達や返済に関する動きを示しており、有利子負債は増加傾向にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 4億円 12億円
投資CF -13億円 -16億円
財務CF 2億円 5億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「精密化(PRECISION)」と「生産性の向上(PRODUCTIVITY)」を意味する「P&P」を経営理念として掲げています。「精密技術を通じて、世界の産業の高度化をサポートする」ことを使命とし、広く産業社会の進歩に貢献し、関係者各位との相互の発展に寄与することを目標としています。

(2) 企業文化


行動理念として「Challenge & Create(C&C)」の精神を掲げています。常に新しい技術と商品・サービスを開発し挑戦し続けること、そして「精密のクロダ」を品質と信頼のブランドとして世界中で確立することを目標としています。

(3) 経営計画・目標


2021年度から2025年度までの5年間を対象とする中期経営計画「Vision 2025」を策定しています。3つの事業分野で世界的にニッチ・トップとなることを目指し、中期的に以下の経営指標を安定的に確保する体制の確立を図っています。
* 営業利益率:4%超~8%

(4) 成長戦略と重点施策


DX化推進を3事業共通の基盤とし、収益力、技術力、顧客関係の強化を図ることで、各事業において「ニッチ・トップ」を目指します。環境面では2050年度のカーボンニュートラル達成に向けたロードマップを実行します。人的資源においては、DX化やダイバーシティ推進、働き方改革を進め、企業価値の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「社員一人ひとりの成長が会社の発展につながる」との考えのもと、多様な人材の確保と育成を重視しています。「チャレンジ60」等の資格取得制度や「クロダものづくり道場」を通じた技能伝承、女性のキャリア形成支援、ジョブリターン制度や奨学金返還支援制度の導入など、働きがいと働きやすさを両立する環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.5歳 16.3年 5,904,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.1%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 62.3%
男女賃金差異(正規雇用) 83.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 63.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員に占める女性比率(11.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 販売市場の特定業種依存


主力製品の販売先は特定業種への依存度が高く、ボールねじ等は半導体・電子デバイス分野、金型システム等は自動車業界向けが中心です。これらの業界の景気変動や技術革新、あるいは顧客の海外生産移行などが予想を超えて加速した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 生産体制と短納期化への対応


製品の多くは顧客仕様による受注生産品であり、在庫リスクは低いものの、市場の短納期化ニーズへの対応が求められています。顧客動向の把握と短納期生産体制の確保が十分にできない場合、受注機会を逃し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 技術力および研究開発競争


アジア諸国の技術力向上により競争が激化しており、製品寿命も短縮傾向にあります。市場の変化を予測し、魅力ある新製品をタイムリーに開発・提供できない場合、将来の成長と収益性が低下する可能性があります。技術・技能の継承も重要な課題と認識しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。