※本記事は、黒田精工株式会社の有価証券報告書(第82期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 黒田精工ってどんな会社?
同社は、ボールねじやモーターコア金型などの精密機器・部品を製造販売するグローバル企業です。
■(1) 会社概要
1925年に黒田挾範製作所として創立し、各種ゲージの製造販売を開始しました。1961年に東京証券取引所に上場し、1965年に現在の黒田精工へ商号を変更しています。以降、マレーシアや中国、欧米に拠点を設立してグローバル展開を推進し、2024年には子会社のクロダインターナショナルを吸収合併しました。
現在の従業員数は連結で641名、単体で436名です。大株主については、筆頭株主が資本業務提携を結ぶ事業会社の日本共創プラットフォームで、第2位は創業家出身で代表取締役社長の黒田浩史氏、第3位は金融機関のみずほ銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本共創プラットフォーム | 20.30% |
| 黒田 浩史 | 5.46% |
| みずほ銀行 | 4.94% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は黒田浩史氏が務めています。社外取締役の比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 黒田 浩史 | 代表取締役社長 | 1981年新日本製鐵(現日本製鉄)入社。1999年日本ゼネラル・エレクトリック事業開発部長等を経て、2005年同社取締役就任。2009年より現職。 |
| 石井 克則 | 専務取締役金型事業及び機工・計測システム事業管掌 | 2000年ソニーグループ生産システム等を経て、2003年ソニーマニュファクチュアリングシステムズ事業部長等を歴任。2013年同社入社。2025年より現職。 |
| 紫波 文彦 | 常務取締役全社営業担当 | 1982年同社入社。2009年経営企画部長、2014年韓国黒田精工取締役社長等を経て、2017年同社取締役駆動システム事業部長就任。2025年より現職。 |
| 荻窪 康裕 | 取締役管理本部長 | 1986年同社入社。2011年経理部長等を経て、2021年取締役管理本部長就任。その後、営業業務部長や経営企画部長等を兼任し、2025年11月より現職。 |
| 沢尾 貴志 | 取締役駆動システム事業部長 | 1997年ソニー入社。2013年ベンキュージャパン代表執行役社長等を経て、2024年日本共創プラットフォーム入社と同社へ出向。2025年10月より現職。 |
社外取締役は、冨山和彦(日本共創プラットフォーム代表取締役会長)、稲川文雄(海外交通・都市開発事業支援機構専務取締役出身)、水品朱美(工機ホールディングス法務部長出身)です。
2. 事業内容
同社グループは、「駆動システム」、「金型システム」、「機工・計測システム」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 駆動システム
精密研削ボールねじ、転造ボールねじ、ボールねじアクチュエータなどの直動システム関連製品を製造・販売しています。主に半導体・液晶関連装置市場や電子・デバイス分野の顧客に対して、高精度な位置決めを可能にする駆動部品を提供しています。
製品の販売や保守サービスから収益を得るモデルです。事業の運営は主に黒田精工が行うほか、ドイツのJenaer Gewindetechnik GmbHで製造販売し、韓国、米国、中国の子会社でも販売や一部の組立・加工を担っています。
■(2) 金型システム
積層精密プレス型、精密金属プレス商品、モーターコアなどの製品を製造・販売しています。主に自動車業界におけるハイブリッド車向けや家電向けのモーターコア金型などを提供し、環境対応に貢献する高効率な製品を展開しています。
金型やプレス製品の販売代金から収益を得るモデルです。事業の運営は主に黒田精工とマレーシアの子会社が製造販売を行うほか、中国の子会社で金型の販売やメンテナンスを担い、関連会社からの製造工具やプレス製品の仕入も行っています。
■(3) 機工・計測システム
保持工具、ゲージ、平面研削盤、超精密鏡面研磨装置などの各種工作機械や計測システムを製造・販売しています。主に金型関連業界や自動車関連産業などに向けて、生産性の向上に寄与する高精度なシステムや要素機器を提供しています。
機械装置や計測システムの販売、およびコンプレッサーのメンテナンスなどから収益を得るモデルです。事業の運営は主に黒田精工が行うほか、国内子会社のゲージングが製造販売を担い、中国の子会社でも一部商品の販売を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は年度により増減がありますが、直近では金型システムの設備需要増などにより増収に転じました。一方、経常利益および利益率は、欧米子会社の不振や関連会社向け低利益率設備の増加、減価償却費の増大などが影響して大幅な低下傾向にあり、当期は最終赤字となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 180億円 | 227億円 | 185億円 | 173億円 | 195億円 |
| 経常利益 | 14億円 | 15億円 | 8億円 | 4億円 | 0.1億円 |
| 利益率(%) | 8.0% | 6.7% | 4.6% | 2.4% | 0.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -0.2億円 | 13億円 | 4億円 | 2億円 | -1億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加したものの、製品構成の変化や原価率の高い関連会社向け設備の売上が寄与したことで売上総利益は減少し、利益率も低下しました。これに加えて運賃や人件費などの増加もあり、営業利益は大幅に縮小しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 173億円 | 195億円 |
| 売上総利益 | 41億円 | 39億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.7% | 20.0% |
| 営業利益 | 3億円 | 0.3億円 |
| 営業利益率(%) | 1.8% | 0.2% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が16億円(構成比42%)、運賃荷造費・輸出諸掛が4億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
駆動システムは半導体市況の回復等で増収となるも、欧米子会社の不振により営業赤字が拡大しました。金型システムは関連会社向け設備等の売上増で大幅増収ですが、利益率の低い商品構成で減益です。機工・計測システムは工作機械を中心に増収となり、黒字転換しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 駆動システム | 64億円 | 65億円 | -1億円 | -2億円 | -2.9% |
| 金型システム | 76億円 | 91億円 | 6億円 | 0.5億円 | 0.5% |
| 機工・計測システム | 34億円 | 39億円 | -1億円 | 2億円 | 4.5% |
| 連結(合計) | 173億円 | 195億円 | 3億円 | 0.3億円 | 0.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがマイナス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、本業で現金が流出しているものの、借入等の資金調達によって将来に向けた投資を継続している「勝負型」の状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 12億円 | -6億円 |
| 投資CF | -16億円 | -12億円 |
| 財務CF | 5億円 | 19億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は前期実績で1.5%となり市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も39.2%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
“精密化(PRECISION)”と“生産性の向上(PRODUCTIVITY)”を意味する「P&P」の経営理念の下、「精密技術を通じて、世界の産業の高度化をサポートする」ことを使命として掲げています。広く産業社会の進歩に貢献し、関係者各位との相互の発展に寄与することを目標に活動しています。
■(2) 企業文化
行動理念として「Challenge & Create(C&C)」の精神を掲げています。常に新しい技術と商品・サービスを開発し挑戦し続けること、そして「精密のクロダ」を品質と信頼のブランドとして世界中で確立することを重視して事業を推進する企業文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「Vision2030」を策定し、精密領域および金型領域の2つの領域において産業の高度化や環境・社会への対応を進めています。成長戦略の実行と収益力の強化、人材育成により、企業価値の継続的な向上を図ることを目指しています。
* 中期的に営業利益率4%~5%の安定的な確保
* ROE7~8%を安定的に確保する体制の確立
■(4) 成長戦略と重点施策
駆動システムでは生産効率の改善と増産を図り、顧客ポートフォリオの見直しで半導体市況の変動リスクを分散します。金型システムではモーターコアの大型量産プロジェクトの立ち上げに注力し、中国市場での試作体制・リードタイムの短縮を加速させます。機工・計測システムでは新製品の販売拡大と効率化で収益性の高い事業モデルへ転換します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
DX時代を牽引する人財の育成に加え、女性管理職の登用、高齢者雇用、働き方改革を推進しています。社員一人ひとりが高い意欲を持って働ける環境を整えることが企業の競争力の源泉であるとの認識のもと、属性や価値観によらず多様な人材が活躍でき、ワークライフバランスを保ちながら安心して働き続けられる職場環境の整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.2歳 | 15.8年 | 5,902,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 61.8% |
※男性労働者の育児休業取得率については、有報には具体的な数値の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 大規模災害等による生産能力低下リスク
同社グループは生産性向上のため、一品種一工場生産または一業種一工場生産を行っています。そのため、特定の工場が存在する地域において大規模な地震や風水害等が発生し操業が中断した場合、当該工場で製造する品種や業種の生産能力が著しく低下するリスクがあります。
■(2) 製品の不具合等に伴う品質リスク
同社グループは製品の品質に細心の注意を払って製造を行っていますが、万が一製品に不具合等が生じ、販売停止や製品の回収、あるいは顧客からの損害賠償請求等が発生した場合、同社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 貿易ルールの変更による影響リスク
世界的な貿易環境の変化において、米国での追加関税の導入や、中国におけるレアアース(希土類)などの輸出規制の実施といった関税・貿易ルールの予期せぬ変更が行われた場合、サプライチェーンや部材の調達に支障をきたし、同社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。



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