※本記事は、株式会社オーバル の有価証券報告書(第103期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. オーバルってどんな会社?
流量計などの流体計測機器を主力とする産業用精密計測機器メーカーです。アジア市場への展開も進めています。
■(1) 会社概要
1949年にオーバル機器工業として設立され、1961年に東京証券取引所市場第二部に上場しました。1992年に現在のオーバルに社名変更し、2014年には東証第一部へ指定替えとなりました。その後、2023年にスタンダード市場へ移行しています。流量計の国産化から始まり、現在はアジアを中心としたグローバル展開を進めています。
2025年3月31日現在の従業員数は連結691名、単体403名です。筆頭株主は金融機関の明治安田生命保険相互会社で、第2位は業務・資本提携先である東京計器です。その他、取引先持株会や関連する事業会社が株主に名を連ねており、安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 明治安田生命保険相互会社(常任代理人 日本カストディ銀行) | 8.48% |
| 東京計器 | 5.84% |
| 轟産業 | 5.09% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名、計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は谷本淳氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 谷本 淳 | 代表取締役社長監査室・経営企画室担当 | 1982年同社入社。技術本部長、商品企画部門部長、新事業推進部門部長等を歴任し、2012年6月より現職。 |
| 浅沼 良夫 | 取締役兼常務執行役員管理部・システムエンジニアリング部担当システムエンジニアリング部門部長 | 1983年同社入社。技術本部長、研究開発部門部長、北京事務所長等を歴任し、2023年6月より現職。 |
| 加藤 芳樹 | 取締役兼常務執行役員営業本部担当営業本部長 | 1992年同社入社。国際営業部長、プラント営業部門部長、東日本営業部門部長等を歴任し、2023年6月より現職。 |
| 新國 誠治 | 取締役兼上席執行役員品質保証部・サービス部・検査部・技術本部担当横浜事業所長 | 1985年同社入社。サービス部門部長、品質保証部担当、製造本部担当等を歴任し、2024年4月より現職。 |
| 小熊 仁 | 取締役兼上席執行役員情報システム部・マーケティング部・製造本部担当横浜事業所副事業所長オーバル北京事務所長 | 1986年同社入社。製造部門部長、情報システム室長、マーケティング部門部長等を歴任し、2024年4月より現職。 |
社外取締役は、高橋靖宏(元明治安田オフィスパートナーズ執行役員)、寺尾吉哉(元産業技術総合研究所研究室長)、松本正(元チノー専務執行役員)、牛島真紀子(牛島会計事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「センサ部門」「システム部門」「サービス部門」の各事業を展開しています。
■センサ部門
産業活動に不可欠な流量計などの工業用計測機器および関連機器の製造・販売を行っています。石油・化学・食品などのプラントや工場向けに製品を提供しており、顧客は国内外の幅広い産業分野にわたります。
製品の販売による収益が主となります。運営は、同社のほか、子会社の山梨オーバルや宮崎オーバル、海外では中国や韓国、シンガポールなどの現地法人が製造・販売を担っています。
■システム部門
計装システムおよび制御・管理装置の製造・販売を行っています。流量計と組み合わせた監視・制御システムなどを提供し、工場の自動化や効率化を支援しています。
システムの設計・製造・販売による収益を得ています。運営は主に同社が行っていますが、海外においてはOVAL ASIA PACIFIC PTE. LTD.などの子会社も一部関与しています。
■サービス部門
工業用計測機器および装置に関するメンテナンス業務や、流量計の検定業務を行っています。納入後の製品の保守・点検、校正サービスなどを顧客に提供しています。
メンテナンスサービスの提供や検定手数料などが収益源です。運営は同社のほか、京浜計測や関連会社の山陽機器検定などが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は103億円から150億円へと順調に拡大傾向にあります。利益面では、2021年3月期は低水準でしたが、その後回復し、近年は経常利益で10億円以上の水準を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 103億円 | 111億円 | 133億円 | 143億円 | 150億円 |
| 経常利益 | 0.4億円 | 4.7億円 | 12億円 | 16億円 | 14億円 |
| 利益率(%) | 0.4% | 4.2% | 9.2% | 11.0% | 9.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.3億円 | 2.9億円 | 6.5億円 | 10億円 | 10億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上原価や販管費の増加により、営業利益および経常利益は減少しました。売上総利益率は約41%と高い水準を維持しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 143億円 | 150億円 |
| 売上総利益 | 60億円 | 61億円 |
| 売上総利益率(%) | 41.5% | 40.8% |
| 営業利益 | 15億円 | 14億円 |
| 営業利益率(%) | 10.3% | 9.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料・賞与が15億円(構成比31.6%)、研究開発費が5億円(同10.5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
センサ部門は半導体関連の反動減等で減収となりましたが、システム部門が大口案件の寄与で大幅な増収となりました。サービス部門も堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| センサ | 99億円 | 95億円 |
| システム | 17億円 | 26億円 |
| サービス | 27億円 | 30億円 |
| 連結(合計) | 143億円 | 150億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
オーバルは、研究開発や新規事業展開、生産効率向上に向けた資金確保を重視しています。
営業活動では、売上債権や契約資産の増加があったものの、堅調な利益や棚卸資産の減少により、前年度を大きく上回る資金を得られました。投資活動では、定期預金の預け入れや有形固定資産の取得により資金支出がありましたが、定期預金の払い戻しにより一部相殺されました。財務活動では、長期借入による収入があった一方で、借入金の返済や配当金の支払いにより資金が減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 10億円 | 20億円 |
| 投資CF | -2億円 | -8億円 |
| 財務CF | -7億円 | -6億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「確かな計測技術で、新たな価値を創造し、豊かな社会の実現に貢献します。」という経営理念を掲げています。流体計測技術を核に事業領域を拡大し、付加価値の高いソリューションを提供することで、地球温暖化問題への取り組みやSDGsの達成に貢献し、あらゆる産業を下支えする「産業界のマザーツール」メーカーを目指しています。
■(2) 企業文化
従業員が遵守すべき指針として「オーバル行動指針」を定めており、法令遵守や公正な企業風土の醸成に努めています。また、「行動指針(コンプライアンス)要領書」を定め、社会規範に則った公明正大な経営を推進しています。毎年、業務指針や企業方針を策定し、全部門・全従業員が目標を持って業務に取り組む体制を整えています。
■(3) 経営計画・目標
中長期経営ビジョンとして「アジアNo.1のセンシング・ソリューション・カンパニーへ」を掲げています。長期的な数値目標として、以下を計画しています。
* 2032年3月期 売上高:200億円
* 2032年3月期 経常利益:29.5億円
* 2032年3月期 親会社株主に帰属する当期純利益:20.0億円
* 2032年3月期 ROE:10.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画PHASE2「Imagination2028」のもと、既存技術を活用した製品開発や生産方式の見直しによる収益基盤の強化、およびアジア市場での販売チャネル強化を推進しています。また、水素・アンモニア計測などの脱炭素関連製品のラインナップ拡充や、水素専用校正設備の稼働計画など、SDGsに資する新分野への戦略的投資も行っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
企業の成長や変革のベースとなる人材育成を重視しており、各種教育・研修制度を充実させています。また、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の推進を通じて、優秀な人材の確保とエンゲージメントの向上を図り、従業員がやりがいを持って働ける職場環境の整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.3歳 | 16.9年 | 6,709,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.0% |
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 76.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 87.5% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済状況の影響
同社グループの業績は景気変動の影響を受けやすく、顧客の設備投資額の減少や経費削減が業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 為替相場の変動
外貨建取引を行っているため、為替予約等でリスクヘッジを行っていますが、想定を超える急激な為替変動があった場合、業績や財務状況に影響を与える可能性があります。
■(3) 新商品開発力
エレクトロニクス技術や顧客ニーズの変化が速い市場において、適切な対応や新商品開発が遅れた場合、競争優位性を失い、成長性や収益性が低下する恐れがあります。
■(4) 価格競争の激化
多くの市場で競合他社との厳しい価格競争に直面しており、常に有利な価格決定を行うことは困難です。競争激化により収益性が低下するリスクがあります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。