※本記事は、株式会社チノー の有価証券報告書(第90期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. チノーってどんな会社?
温度管理を中心とした計測制御機器、計装システム、センサの開発から製造、販売までを一貫して手がけています。
■(1) 会社概要
1936年に千野製作所として設立され、1962年に東京証券取引所市場第二部に上場しました。1979年に同市場第一部へ指定替えとなり、1986年に現在のチノーへと商号を変更しています。その後、米国や中国、インド、タイなどに海外販売子会社を設立し、グループ体制を拡大してきました。国内外でのM&Aや合弁会社の設立を通じて、グローバルな生産・販売網を構築しています。
現在の従業員数は連結で1,125名、単体で693名です。筆頭株主はチノー取引先持株会で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位にはチノー従業員持株会が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| チノー取引先持株会 | 8.97% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.91% |
| チノー従業員持株会 | 3.61% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長執行役員は豊田三喜男が務めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 豊田三喜男 | 代表取締役社長執行役員 | 1981年同社入社。取締役藤岡事業所長、企業戦略本部長などを経て2017年より現職。 |
| 西口明彦 | 取締役専務執行役員営業本部長 | 1982年同社入社。上海大華-千野儀表有限公司董事総経理や海外事業本部長等を経て現職。 |
| 松岡学 | 取締役常務執行役員品質本部長 | 1981年同社入社。藤岡事業所長や生産改革本部長、三基計装代表取締役社長等を経て現職。 |
社外取締役は、三木幸信(元産業技術総合研究所副理事長)、渡真利千恵(元千趣会執行役員)、小野塚邦子(元キリンアンドコミュニケーションズ社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「計測制御機器」「計装システム」「センサ」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 計測制御機器
半導体や電子部品、自動車産業などに向けて、温度を記録する記録計や温度を制御する調節計、サイリスタレギュレータなどの販売を行っています。
事業の運営はチノーが主体となって行い、製品の販売を通じて顧客から対価を受け取っています。海外では米国や中国、タイなどの現地子会社が販売を担っています。
■(2) 計装システム
燃料電池評価試験装置やコンプレッサ性能試験装置をはじめ、計測制御機器やセンサを組み合わせた顧客の課題を解決する各種システムの開発・販売を行っています。
機器の販売やシステムの構築を通じて顧客から代金を受け取る収益モデルです。運営はチノーのほか、国内子会社の三基計装やアドバンス理工などが担っています。
■(3) センサ
接触型の温度センサや熱電対、赤外線技術を応用した非接触型の放射温度計、熱画像計測装置などの開発・製造・販売を展開しています。
製品の販売により顧客から対価を受け取る収益モデルです。運営はチノーが中心となり、浅川レンズ製作所が光学部品を、明陽電機が船舶向けセンサを製造・販売しています。
■(4) その他
報告セグメントに含まれない事業として、製品の修理やメンテナンスサービス、消耗品の販売、自社製品のソフトウェア制作などを提供しています。
サービスの提供やソフトウェアの販売を通じた収益モデルです。ソフトウェア制作はチノーソフテックスが、無線技術を活用した受託開発等はアーズがそれぞれ運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は安定的に成長を続けており、約219億円から約316億円へと拡大しています。経常利益についても堅調な推移を示し、利益率も8.0%から10.5%へと向上傾向にあります。全体として増収増益のトレンドを描いており、事業の安定性と収益力の強化がうかがえます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 219.1億円 | 237.9億円 | 274.3億円 | 293.3億円 | 316.5億円 |
| 経常利益 | 17.4億円 | 22.9億円 | 24.1億円 | 30.3億円 | 33.3億円 |
| 利益率(%) | 8.0% | 9.6% | 8.8% | 10.3% | 10.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8.3億円 | 11.9億円 | 13.4億円 | 16.3億円 | 16.0億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は約32%弱で推移しており、営業利益率も10%台へと向上するなど、効率的な利益創出の体制が維持されています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 293.3億円 | 316.5億円 |
| 売上総利益 | 93.7億円 | 99.6億円 |
| 売上総利益率(%) | 31.9% | 31.5% |
| 営業利益 | 28.8億円 | 32.3億円 |
| 営業利益率(%) | 9.8% | 10.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が15億円(構成比30.0%)、研究開発費が10億円(同21.3%)を占めています。
■(3) セグメント収益
計装システムとセンサ事業が大きく売上を伸ばし、全体を牽引しています。一方で計測制御機器は特定顧客向け需要の一時的な低迷により微減となりましたが、計装システムおよびセンサの好調がグループ全体の増収に貢献しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 計測制御機器 | 97.4億円 | 96.1億円 |
| 計装システム | 99.6億円 | 117.0億円 |
| センサ | 86.0億円 | 91.9億円 |
| その他 | 10.3億円 | 11.6億円 |
| 調整額 | -億円 | -億円 |
| 連結(合計) | 293.3億円 | 316.5億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「計測・制御・監視技術の限界に挑戦し、産業の発展とより良い明日の社会の実現に貢献する」ことを企業の基本理念として掲げています。独創性のある技術とソリューションの創出を通じて社会課題を解決し、豊かな社会の創造への貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
「温度のチノー」として、株主やお客様、取引先、従業員、地域社会などさまざまなステークホルダーから信頼を得ながら中長期的な企業価値の向上に努めています。2026年の創立90周年に向け、「共創」「特長」「信頼」をキーワードに、情熱とチームワークで新しい価値の創造に取り組む文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
「中期経営計画2026」において、持続的成長軌道の構築と中長期的な企業価値の向上に取り組んでおり、最終年度に向けて以下の数値目標を掲げています。
* 売上高:300億円
* 営業利益:27億円
* 営業利益率:9%
* 海外売上高:70億円
* ROE:10%
* ROA:8%
■(4) 成長戦略と重点施策
成長分野への展開と、コア事業の高度化を軸に戦略を推進しています。脱炭素社会や安心・安全な社会の実現にフォーカスし、水素利用技術や半導体・次世代電池分野へのソリューション開発を強化しています。また、海外基盤の強化とグループ収益力の拡大、人材・組織・ICTなど経営基盤の強靭化にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業の持続的成長を支える力の源となる「人財育成」および「強靭な組織づくり」を重要テーマとして推進しています。経営ビジョンを実践するプロフェッショナル人財の確保と育成、組織の活力向上を支える働きがいのある職場環境の整備、公平かつ生産性の向上につながる人事関連諸制度の再構築に重点的に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.0歳 | 18.3年 | 6,599,855円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.7% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 82.5% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 72.2% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 景気の悪化と設備投資の落ち込み
同社グループの製品は国内販売比率が高く、主として設備投資関連や研究開発向けであるため、景気の悪化により国内製造業の設備投資が著しく落ち込んだ場合、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 為替変動や地政学リスクの影響
輸出の外貨建取引等により為替変動(円高)が価格競争力を低下させるリスクがあります。また、中国などアジアを中心に生産・販売を展開しており、現地の政治・経済情勢の悪化や法令の変更等が発生した場合、事業活動が制約を受ける可能性があります。
■(3) 材料・部品等の調達に関するリスク
製品の生産活動において電気・電子部品及び金属等の材料部品を使用しており、半導体をはじめとする部材の供給逼迫や遅延、価格変動が生じた場合、生産停止やコストの増加により業績等に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 競合との競争や品質に関するリスク
競合他社との品質・性能・価格等における競争が収益を圧迫するリスクがあります。また、製品の品質に関する重大な事象が発生した場合、対応費用や損害賠償、ブランド力の低下を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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