チノー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

チノー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の計測制御機器メーカーです。温度計測・制御技術を核に、記録計やセンサ、燃料電池評価装置などの計装システムを展開しています。2025年3月期は、半導体や電子部品向けの需要が堅調に推移し、製品価格改定の効果もあって増収増益を達成。売上高、各利益ともに過去最高を更新しました。


※本記事は、株式会社チノー の有価証券報告書(第89期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. チノーってどんな会社?


温度計測・制御技術をコアとし、産業用計測機器やセンサ、試験装置などを提供する老舗メーカーです。

(1) 会社概要


1913年に千野製作所として創業し、理化学器械等の製造を開始。1936年に株式会社化しました。1962年に東証二部へ上場し、1979年に東証一部指定替えを経て、1986年に現社名へ変更。2022年の市場区分見直しによりプライム市場へ移行しました。近年は燃料電池評価などの計装システム分野を強化しています。

連結従業員数は1,093名、単体では678名です。筆頭株主は同社の取引先で構成される持株会で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は従業員持株会となっており、安定的な株主構成が特徴です。

氏名 持株比率
チノ-取引先持株会 9.52%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 8.68%
チノー従業員持株会 3.75%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長執行役員は豊田三喜男氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
豊田 三喜男 代表取締役社長執行役員 1981年同社入社。藤岡事業所長、機器開発センター長、企業戦略本部長などを歴任し、2017年より現職。
清水 孝雄 取締役専務執行役員グループ技術統括担当イノベーションセンター長 1976年同社入社。技術開発センター長、スマートソリューション開拓統括部長などを経て、2023年より現職。
西口 明彦 取締役専務執行役員営業本部長東日本支店長 1982年同社入社。大阪支店長、上海大華-千野儀表有限公司董事総経理などを経て、2023年より現職。
松岡 学 取締役常務執行役員品質本部長 1981年同社入社。藤岡事業所長、イノベーションセンター長、生産改革本部長などを経て、2023年より現職。


社外取締役は、吉池達悦(元日置電機社長)、三木幸信(元産業技術総合研究所副理事長)、渡真利千恵(元千趣会執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「計測制御機器」「計装システム」「センサ」および「その他」事業を展開しています。

(1) 計測制御機器


半導体・電子部品、鉄鋼、自動車産業向けに、温度を記録する「記録計」、制御する「調節計」、熱源を操作する「サイリスタレギュレータ」などを提供しています。製造現場における温度管理の要となる製品群です。

製品の販売(引渡)により収益を得るモデルです。国内では主に同社が製造・販売を行い、海外では米国、中国、韓国、インド、タイなどの連結子会社(CHINO Works America Inc.など)および同社が販売を担っています。

(2) 計装システム


燃料電池の性能を評価する「燃料電池評価試験装置」や、エアコン用コンプレッサの性能試験装置、計測機器等を組み合わせたシステム製品などを提供しています。半導体、自動車、家電産業などが主要顧客です。

システム製品が顧客に検収された時点で収益を認識します。運営は主に同社が行うほか、三基計装、アドバンス理工などの連結子会社も製造・販売を担っています。

(3) センサ


温度計測用の接触型「温度センサ」「熱電対」や、非接触型の「放射温度計」「熱画像計測装置(サーモグラフィー)」などを提供しています。半導体製造装置や熱処理加工などの分野で使用されています。

製品の販売(引渡)により収益を得ています。国内では同社、浅川レンズ製作所、明陽電機などが製造・販売を行い、海外では韓国チノーなどが販売を行っています。

(4) その他


上記セグメントに含まれない事業として、計測制御機器やセンサ等の修理・メンテナンスサービス、消耗品の販売、ソフトウェア制作などを行っています。

サービスの提供や消耗品の販売により対価を得ています。運営は同社のほか、ソフトウェア制作を行うチノーソフテックス、無線技術開発を行うアーズなどが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの5期間において、売上高は211億円から293億円へと右肩上がりで成長しています。経常利益も13億円から30億円へと順調に拡大しており、利益率も改善傾向にあります。当期純利益についても増加基調を維持しており、全体として安定した成長を遂げています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 211億円 219億円 238億円 274億円 293億円
経常利益 13億円 17億円 23億円 24億円 30億円
利益率(%) 6.1% 8.0% 9.6% 8.8% 10.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 11億円 15億円 18億円 20億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高は19億円増加し、売上総利益も10億円増加しました。売上総利益率は30.6%から31.9%へ上昇しています。営業利益は7億円増加し、営業利益率も7.9%から9.8%へと改善しており、収益性が高まっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 274億円 293億円
売上総利益 84億円 94億円
売上総利益率(%) 30.6% 31.9%
営業利益 22億円 29億円
営業利益率(%) 7.9% 9.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が24億円(構成比36%)、研究開発費が11億円(同17%)を占めています。売上原価においては、これらの費目以外の製造費用が計上されています。

(3) セグメント収益


各セグメントともに増収増益となりました。計測制御機器は半導体等の需要増と価格改定効果で利益が大幅増。計装システムは大型案件の売上計上と利益率改善が寄与しました。センサは電子部品向けや子会社の船舶向け製品が好調で増収増益でした。その他は減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
計測制御機器 92億円 97億円 12億円 15億円 15.5%
計装システム 97億円 100億円 13億円 16億円 15.6%
センサ 75億円 86億円 14億円 17億円 19.8%
その他 10億円 10億円 3億円 3億円 24.4%
調整額 - - -20億円 -21億円 -
連結(合計) 274億円 293億円 22億円 29億円 9.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.4%で市場平均(9.4%)と同水準である一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.2%で市場平均(46.8%)を上回っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1億円 25億円
投資CF 1億円 -7億円
財務CF -11億円 -11億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「計測・制御・監視技術の限界に挑戦し、産業の発展とより良い明日の社会の実現に貢献する」ことを基本理念としています。独創的な技術とソリューションで社会課題を解決し、「温度のチノー」としてステークホルダーからの信頼を得ながら、豊かな社会の創造に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


創立90周年に向けた経営ビジョンとして、「共創」「特長」「信頼」を掲げています。ステークホルダーと共に新しい価値を創造し、卓越した技術によるソリューションで感動を届け、情熱とチームワークで信頼の絆を強めながら未来へ成長し続ける姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2026年度を最終年度とする「中期経営計画2026」を推進しており、以下の数値目標を掲げています。

* 売上高:300億円
* 営業利益:27億円
* 営業利益率:9%
* 海外売上高:70億円
* ROE(自己資本純利益率):10%

(4) 成長戦略と重点施策


「成長分野の開拓」「コア事業の高度化」「海外基盤の強化」「経営基盤の強靭化」の4つを基本戦略としています。具体的には、半導体や脱炭素(水素関連)分野へのソリューション提供加速、独自の温度計測技術とIoT等を組み合わせた「ループソリューション力」の強化、海外市場ごとの最適戦略の展開などに注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


経営ビジョン「共創、特長、信頼」に基づき、プロフェッショナル人財の確保・育成、働きがいのある職場環境整備、公平で生産性向上につながる人事制度の再構築に取り組んでいます。次世代リーダー育成や自律学習支援、健康経営の推進、エンゲージメント向上施策などを通じて、人的資本の強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.5歳 16.4年 6,277,343円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.2%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 68.4%
男女賃金差異(正規雇用) 81.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 74.0%


※男性育児休業取得率について、該当者がいないため「-」と表示しています。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気変動の影響


同社グループの売上高の多くは製造業が占めており、設備投資関連や研究開発向けの製品比率が高い特徴があります。そのため、景気悪化により国内製造業の設備投資が著しく落ち込んだ場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替変動の影響


海外売上高の拡大を目指す中、一部外貨建輸出取引を行っており、また海外連結子会社の財務諸表を円換算して連結しています。そのため、大幅な円高などの為替変動が生じた場合、価格競争力の低下や換算上の目減りにより、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 地政学リスク


中国などアジアを中心に生産・販売拠点を展開しています。各地域における政治・経済情勢の悪化、法令や通商政策の変更、紛争等の発生により事業活動が制約を受けた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 原材料・部品調達のリスク


製品生産において半導体や金属、プラスチックなどの材料部品を使用しています。これらの供給逼迫や遅延、価格高騰が生じた場合、生産停止やコスト増により業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。