※本記事は、SCREENホールディングスの有価証券報告書(第85期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. SCREENホールディングスってどんな会社?
半導体やディスプレーなどの製造装置から印刷関連機器まで幅広く手掛けるグローバルな装置メーカーです。
■(1) 会社概要
1943年に大日本スクリーン製造として設立され、写真製版設備の総合メーカーとしてスタートしました。1962年に大証二部、1967年に東証二部に上場し、1970年には両証券取引所の市場第一部に指定替えされています。2014年に持株会社体制へ移行し、現在のSCREENホールディングスへと社名を変更しました。
筆頭株主および第2位は資産管理業務を行う信託銀行で、第3位は国内大手生命保険会社です。従業員数は連結で6,884名、単体で653名となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 18.33% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 9.09% |
| 日本生命保険相互会社 | 3.85% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役取締役社長最高経営責任者(CEO)は後藤正人氏が務めています。社外取締役は4名です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 後藤正人 | 代表取締役取締役社長最高経営責任者(CEO) | 1990年同社入社。執行役員、SCREENセミコンダクターソリューションズ代表取締役社長などを経て、2025年6月より現職。 |
| 廣江敏朗 | 代表取締役取締役会長 | 1983年同社入社。SCREENファインテックソリューションズ代表取締役社長、同社代表取締役社長(CEO)等を経て、2025年6月より現職。 |
| 近藤洋一 | 取締役副会長 | 1982年東京銀行入行。同社入社後、常務取締役(CFO)、専務取締役、取締役副社長等を経て、2026年4月より現職。 |
| 石川義久 | 取締役 | 1986年同社入社。執行役員、上席執行役員経営戦略担当、常務執行役員等を経て、2022年6月に取締役就任。2026年4月より現職。 |
社外取締役は、高須秀視(元ローム常務取締役)、奥平寛子(同志社大学大学院准教授)、楢原誠慈(東洋紡取締役会長)、佐藤文一(九州大学教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「半導体製造装置事業(SPE)」「グラフィックアーツ機器事業(GA)」「ディスプレー製造装置および成膜装置事業(FT)」「プリント基板関連機器事業(PE)」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 半導体製造装置事業(SPE)
同セグメントでは、半導体製造装置の開発、製造、販売および保守サービスを行っています。データセンター向け高性能半導体などの需要に対応し、特に洗浄装置のマーケットシェア向上や生産キャパシティの拡大を推進しています。
収益は、国内外の主要半導体メーカーに対する製造装置の販売や、保守サービス等の提供から得ています。事業の運営は、主にSCREENセミコンダクターソリューションズが主体となって行っています。
■(2) グラフィックアーツ機器事業(GA)
同セグメントでは、印刷関連機器の開発、製造、販売および保守サービスを手掛けています。商業印刷およびパッケージ印刷向けにPOD(プリント・オン・デマンド)装置の展開を図っています。
収益は、POD装置などの機器販売に加え、インク販売を中心とするリカーリングビジネスから得ています。事業の運営は、主にSCREENグラフィックソリューションズが担っています。
■(3) ディスプレー製造装置および成膜装置事業(FT)
同セグメントでは、ディスプレー製造装置および成膜装置の開発、製造、販売および保守サービスを提供しています。OLEDやLCDディスプレー向け装置のほか、塗工技術の応用による事業領域拡大を進めています。
収益は、中国や台湾などを中心としたディスプレーメーカーへの装置販売と、それに付随する保守サービスから得ています。事業の運営は、主にSCREENファインテックソリューションズが行っています。
■(4) プリント基板関連機器事業(PE)
同セグメントでは、プリント基板関連機器の開発、製造、販売および保守サービスを展開しています。ミドルレンジからハイエンド向けの直接描画露光装置などに注力しています。
収益は、プリント基板メーカー等に対する機器の販売および保守サービスを通じて得ています。事業の運営は、主にSCREEN PE ソリューションズが担当しています。
■(5) その他
報告セグメントに含まれない事業として、半導体先端パッケージ、ライフサイエンス、水素関連の新規事業分野における製品の開発・製造および販売、ソフトウエアの開発・販売などを行っています。
収益はこれらの製品・サービスの販売から得ており、SCREENアドバンストシステムソリューションズなどが運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は前々々々期から前期にかけて順調に拡大していましたが、当期はわずかに減少に転じました。経常利益と当期利益も同様に前期まで力強い増益傾向を示したものの、当期は固定費の増加などの影響を受け、やや減益となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 4,119億円 | 4,608億円 | 5,049億円 | 6,253億円 | 6,057億円 |
| 経常利益 | 594億円 | 774億円 | 943億円 | 1,383億円 | 1,243億円 |
| 利益率(%) | 14.4% | 16.8% | 18.7% | 22.1% | 20.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 169億円 | 294億円 | 482億円 | 523億円 | 743億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期の6,253億円から当期は6,057億円へと減少しました。これに伴い売上総利益も微減となりましたが、売上総利益率は前期とほぼ同水準を維持しています。一方、営業利益は前期の1,357億円から1,225億円に減少し、営業利益率も低下しました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 6,253億円 | 6,057億円 |
| 売上総利益 | 2,353億円 | 2,332億円 |
| 売上総利益率(%) | 37.6% | 38.5% |
| 営業利益 | 1,357億円 | 1,225億円 |
| 営業利益率(%) | 21.7% | 20.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当・賞与が330億円(構成比30%)、研究費が124億円(同11%)、委託サービス費が116億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の半導体製造装置事業は、台湾向けの売上が増加したものの中国や米国向けの減少が響き、減収となりました。一方、グラフィックアーツ機器事業とディスプレー製造装置および成膜装置事業は、装置売上の好調により増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 半導体製造装置事業 | 5,195億円 | 4,853億円 |
| グラフィックアーツ機器事業 | 529億円 | 573億円 |
| ディスプレー製造装置および成膜装置事業 | 328億円 | 405億円 |
| プリント基板関連機器事業 | 141億円 | 145億円 |
| その他 | 60億円 | 81億円 |
| 連結(合計) | 6,253億円 | 6,057億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 712億円 | 927億円 |
| 投資CF | -218億円 | -297億円 |
| 財務CF | -465億円 | -402億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.4%でこちらも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、存在意義として「人と技術をつなぎ、未来をひらく」を掲げています。すべてのステークホルダーや独自技術を広く包含し、人と人、技術と技術をつなぐことで新たな価値を創造することを重視しています。社会課題の解決を通じて持続可能な未来への扉を開き、社会の発展に挑むという使命が込められています。
■(2) 企業文化
同社は、創業の精神である「思考展開」を企業文化の重要なベースとして位置付けています。創業157年の歴史において人と技術を育み続ける礎となった言葉であり、ひたむきな探求心と柔軟な発想を持って課題に立ち向かう姿勢を重んじています。「ソリューションクリエーター」として、社会的価値と経済的価値の創出を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「Value Up Further 2026」において、将来を見据えた成長投資を強化し、長期の成長を支える経営基盤の構築を目指しています。最終年度である2027年3月期に向けた具体的な財務目標は以下の通りです。
・売上高:累計1兆8,000億円以上
・営業利益率:通算19%以上
・ROE(ROIC):最終年度15%以上
・株主還元方針:連結配当性向30%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
ポートフォリオ戦略として成長性とROICの2軸で各事業の位置を見える化し、半導体製造装置事業を中心にM&Aの検討や組織改編を進めています。また、米国に研究開発拠点を設立して技術開発を強化し、新規事業創出につながるイノベーションマネジメントを推進するなど、以下の領域に注力しています。
・先端パッケージ分野の製販体制整備
・グループ横断的な知財戦略の維持・強化
・野洲市等での用地取得による生産能力拡大
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、経営戦略と連動した人材戦略を掲げ、社員一人ひとりが「ソリューションクリエーター」として価値創出に貢献できる組織づくりを推進しています。高度専門人材の確保・育成を進めるとともに、多様な価値観を尊重しグローバルな競争力を強化するため、「獲得・育成・リテンション」の好循環の構築に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.0歳 | 13.9年 | 10,802,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 85.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 78.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 79.6% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 72.4% |
※女性管理職比率について、同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「従業員の状況等」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性新卒採用比率(23.3%)、全社員に占める女性社員比率(11.4%)、エンゲージメントサーベイ好意的回答率(69.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 外部要因に関するリスク
米中貿易摩擦などの政治状況や輸出入規制の強化、為替・金利の急激な変動が業績に影響を与えるリスクがあります。地政学リスクの高まりによる世界的な景気後退や需要縮小、追加関税の賦課などが、同社グループの売上および利益に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 半導体・ディスプレー市場の動向リスク
同社の主力である半導体およびディスプレー市場は、急速な技術革新による成長の一方で、需給バランスの悪化に伴う市況低迷の波に晒されやすい特徴があります。市場環境が予想と乖離した場合、ROIC経営を推進していても収益への影響を完全に避けることは困難な場合があります。
■(3) 特定顧客への取引集中リスク
国内外の主要半導体メーカーに製造装置を納入していますが、巨額の設備投資を背景に業界内で顧客の集約が進んでいます。そのため、特定顧客への売上依存度が高まる傾向にあり、これら顧客の投資動向や受注状況の変化が、直接的に同社グループの業績を左右するリスクとなります。
■(4) サプライチェーンに関するリスク
半導体製造装置などの生産において、主要部材の需給逼迫や適時の供給遅延、製造委託先の確保難などが発生するリスクがあります。大規模災害等によるサプライチェーンの寸断が起きた場合、生産活動の中断や部材・人件費の高騰を招き、利益を圧迫する可能性があります。



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