SCREENホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SCREENホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のSCREENホールディングスは、半導体製造装置を主力とする産業用機器メーカーです。洗浄装置で世界トップシェアを誇り、直近の業績は売上高6,253億円、経常利益1,383億円と増収増益を達成しました。AI普及やDX進展を背景に、過去最高の売上と利益を記録しています。


※本記事は、株式会社SCREENホールディングス の有価証券報告書(第84期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. SCREENホールディングスってどんな会社?


半導体洗浄装置や印刷関連機器などを手掛けるグローバル企業です。持株会社体制のもと、各事業会社が専門的なソリューションを提供しています。

(1) 会社概要


1943年に設立され、1946年に写真製版機械の生産を開始しました。1970年に東京・大阪証券取引所市場第一部に上場。2014年には持株会社体制へ移行し、現在の商号に変更するとともに、半導体や印刷などの各事業を分社化しました。近年は彦根事業所に新工場を建設するなど、生産能力の増強を進めています。

同社グループは連結従業員数6,415名、単体547名の体制です。筆頭株主は信託銀行の信託口で、第3位には日本生命保険が名を連ねています。金融機関や機関投資家が上位を占める安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 19.74%
日本カストディ銀行(信託口) 9.06%
日本生命保険相互会社 3.82%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表者は代表取締役取締役社長最高経営責任者(CEO)の廣江敏朗氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
廣江 敏朗 代表取締役取締役社長最高経営責任者(CEO) 1983年入社。半導体機器カンパニー副社長、技術開発センター副センター長などを経て、SCREENファインテックソリューションズ社長に就任。2019年6月より現職。
垣内 永次 取締役会長 1981年入社。メディアテクノロジーカンパニー社長、半導体機器カンパニー社長などを歴任。2014年に社長就任、2016年CEOを経て、2023年6月より現職。
近藤 洋一 代表取締役専務取締役最高財務責任者(CFO) 1982年東京銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2013年同社入社。管理本部長、常務取締役などを経て、2023年6月より現職。
石川 義久 取締役 1986年入社。執行役員、経営戦略担当、常務執行役員などを経て、2022年6月より現職。総務・人事戦略を担当。


社外取締役は、高須秀視(元ローム常務取締役)、奥平寛子(同志社大学大学院准教授)、楢原誠慈(東洋紡会長)、佐藤文一(九州大学教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「半導体製造装置事業(SPE)」、「グラフィックアーツ機器事業(GA)」、「ディスプレー製造装置および成膜装置事業(FT)」、「プリント基板関連機器事業(PE)」および「その他」事業を展開しています。

(1) 半導体製造装置事業(SPE)


半導体製造プロセスの洗浄、塗布現像、熱処理などの装置を開発・製造・販売しています。主な顧客は世界の半導体メーカーやファウンドリーです。特に枚葉式洗浄装置などの洗浄分野で高いシェアを持っています。

収益は、顧客への装置販売および保守サービスから得ています。運営は主に株式会社SCREENセミコンダクターソリューションズが行っています。AIやデータセンター向けの需要増加を背景に、同社グループの売上の大半を占める主力事業です。

(2) グラフィックアーツ機器事業(GA)


商業印刷やパッケージ印刷向けのインクジェット印刷装置(POD)や関連ソフトウエアなどを提供しています。印刷会社やパッケージ製造会社が主な顧客です。

収益は、印刷装置の販売に加え、専用インクや保守サービスなどのリカーリングビジネス(継続収益)から得ています。運営は主に株式会社SCREENグラフィックソリューションズが行っています。

(3) ディスプレー製造装置および成膜装置事業(FT)


液晶や有機ELディスプレーの製造装置、および成膜装置を提供しています。ディスプレーパネルメーカーなどが主な顧客です。塗工技術を活かした製品展開を行っています。

収益は、装置の販売および保守サービスから得ています。運営は主に株式会社SCREENファインテックソリューションズが行っています。

(4) プリント基板関連機器事業(PE)


プリント基板製造工程で使用される直接描画装置などを提供しています。電子機器メーカーや基板メーカーが主な顧客です。

収益は、装置の販売および保守サービスから得ています。運営は主に株式会社SCREEN PE ソリューションズが行っています。

(5) その他


ライフサイエンス分野の細胞検査・評価機器、水素関連事業における水電解用部材、ソフトウエア開発、ドキュメント制作などを展開しています。

収益は、製品販売やサービス提供から得ています。運営は、株式会社AFIテクノロジーや株式会社SCREENアドバンストシステムソリューションズなど、複数のグループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は右肩上がりに成長し、当期は6,000億円台を突破しました。利益面でも拡大傾向にあり、特に当期は経常利益、当期純利益ともに大幅な増益となり、高い利益率を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,203億円 4,119億円 4,608億円 5,049億円 6,253億円
経常利益 227億円 594億円 774億円 943億円 1,383億円
利益率(%) 7.1% 14.4% 16.8% 18.7% 22.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 152億円 455億円 575億円 706億円 995億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益、営業利益ともに大きく伸長しています。売上総利益率は約1ポイント改善し、営業利益率も20%を超える高水準となりました。コスト管理と売上拡大が両立していることがわかります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,049億円 6,253億円
売上総利益 1,825億円 2,353億円
売上総利益率(%) 36.1% 37.6%
営業利益 942億円 1,357億円
営業利益率(%) 18.7% 21.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当・賞与が291億円(構成比29.2%)、委託サービス費が116億円(同11.6%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の半導体製造装置事業(SPE)が大幅な増収増益となり、全社の成長を牽引しました。ディスプレー製造装置事業(FT)も黒字化を果たしています。一方、プリント基板関連機器事業(PE)は投資停滞の影響で減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
半導体製造装置事業(SPE) 4,177億円 5,195億円 970億円 1,370億円 26.4%
グラフィックアーツ機器事業(GA) 475億円 529億円 43億円 43億円 8.1%
ディスプレー製造装置および成膜装置事業(FT) 224億円 328億円 -4億円 31億円 9.3%
プリント基板関連機器事業(PE) 145億円 141億円 19億円 11億円 7.6%
その他 28億円 60億円 -9億円 -18億円 -30.4%
調整額 -192億円 -234億円 -77億円 -79億円 -
連結(合計) 5,049億円 6,253億円 942億円 1,357億円 21.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスであるため、本業で稼いだ資金で投資を行い、借入返済や株主還元も進めている「健全型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 963億円 712億円
投資CF -435億円 -218億円
財務CF -351億円 -465億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は25.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「ソリューションクリエーター」としての役割を果たすことを目指しています。これは、ひたむきな探求心と柔軟な発想を持って社会課題に立ち向かい、事業を通じて「新しい価値(CSV)」を提供することで、持続可能な社会の実現に貢献するという考え方です。

(2) 企業文化


同社は10年後のありたい姿として「Be a Solution Creator -共に歩む人たちと、世界が求める存在に-」を掲げています。企業理念の浸透を図りながら、全てのステークホルダーからの信頼と共感を得ることを重視し、社会的価値と経済的価値の両立を目指す姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「Value Up Further 2026」において、長期の成長を支える経営基盤の構築を目指しています。最終年度となる2027年3月期に向けた主な財務目標は以下の通りです。

* 売上高:3カ年累計1.8兆円以上
* 営業利益率:3カ年通算19%以上
* ROIC:最終年度15%以上
* 株主還元方針:連結配当性向30%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「事業成長戦略」「経営基盤強化戦略」「共通戦略」の3つを柱としています。主力の半導体製造装置事業では海外研究開発拠点の設置やシェア拡大を図り、新規事業では水素関連や先端パッケージ領域への投資を強化します。また、DX推進や人的資本への投資も積極的に行っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「組織の活性化と個の成長」を掲げ、経営戦略と連動した人財ポートフォリオの充実に注力しています。自律型人材「ソリューションクリエーター」の育成を重要施策とし、エンゲージメント向上や多様性の確保、高度専門人材の獲得を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.4歳 13.3年 10,625,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.6%
男性育児休業取得率 88.3%
男女賃金差異(全労働者) 75.7%
男女賃金差異(正規) 74.3%
男女賃金差異(非正規) 128.1%


※女性管理職比率はグループ主要7社計の数値です。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、好意的回答率(66%)、女性新卒採用比率(19.9%)、全社員に占める高度専門人財比率(1.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 外部要因に関するリスク


地政学リスクの高まりや米中関係の悪化により、輸出入規制が強化された場合、同社グループの売上が減少する可能性があります。また、海外売上比率が高いため、急激な為替変動は業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 業界動向に関するリスク


半導体・ディスプレー市場は技術革新が速く、需給バランスの変動も激しい産業です。市況が悪化した場合や、特定の大手顧客からの受注が減少した場合、業績に影響が出る可能性があります。また、開発競争において新製品の市場投入が遅れるリスクもあります。

(3) サプライチェーンに関するリスク


主要部材の需給逼迫や製造委託先の確保に支障が生じた場合、生産活動の中断やコスト増につながる恐れがあります。自然災害やパンデミックによる生産拠点の操業停止リスクに対しても、生産補完体制の構築を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。