日本精密 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本精密 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する日本精密は、時計バンドや時計外装部品の製造販売を主力とし、メガネフレームや釣具用部品なども展開しています。直近の業績は、時計関連や釣具・応用品の受注増や生産性向上により増収となり、経常利益は過去最高を更新する大幅な増益を達成し、好調に推移しています。


※本記事は、日本精密の有価証券報告書(第48期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本精密ってどんな会社?


同社は時計関連部品、メガネフレーム、釣具・応用品の製造販売をグローバルに展開する精密部品加工企業です。

(1) 会社概要


1978年に設立され、大手メーカー向けの金属製時計バンドの製造を開始しました。その後、1994年にベトナム、2013年にカンボジアへ生産子会社を設立して海外展開を強化しています。2004年には株式上場を果たし、現在はメガネフレームや釣具・応用品の製造販売など事業の多角化を進めています。

同社グループは連結で1,700名、単体で41名の従業員を擁しています。筆頭株主は事業会社のジエンコで、第2位も事業会社のキュロホールディングスとなっています。また、第3位には同社役員である權經訓氏が名を連ねています。

氏名 持株比率
ジエンコ 21.12%
キュロホールディングス 10.54%
權 經訓 8.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は井藤秀雄氏が務めています。社外取締役は1名で、全取締役に占める比率は14.3%です。

氏名 役職 主な経歴
井藤秀雄 代表取締役社長 元萬世工業営業部長。2001年同社入社、第二グループ営業部長などを経て、2018年より現職。村井代表取締役も兼任。
白坂敬次 取締役 元萬世工業統括本部技術部長。2001年同社入社、開発2部部長や上席執行役員を経て、2009年より現職。
權經訓 取締役 2001年に全北科学大学理事長に就任(現任)。2004年より駐韓ラトビア共和国名誉領事を務め、2009年より現職。
金亨錫 取締役 JEONBUK SCIENCE COLLEGEチーム長を経て、2019年より現職。2025年からは同国際教育院の院長も兼任。
權昱 取締役 元全羅南道議会議員。ホンイル財団企画室長を経て2011年に同社取締役へ。2023年よりMBC放送局理事および現職。
權起煥 取締役 2025年3月よりS&P Global Inc.に勤務し、同年6月より現職。


社外取締役は、李鎭鎔(インターコンサービス代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「時計関連」「メガネフレーム」「釣具・応用品」事業を展開しています。

(1) 時計関連


ウレタン製や金属製の時計バンドのほか、ステンレスやチタニウム製のベゼル・ケースなど時計外装部品を製造販売しています。高度な精密加工技術を活かし、主に国内外の大手時計メーカーに対して製品を供給しています。

メーカーへの製品納入による販売代金が主な収益源です。製造および販売の運営は、同社を中心に、生産子会社であるNISSEY VIETNAM CO.,LTD.およびNISSEY CAMBODIA CO.,LTD.が連携して行っています。

(2) メガネフレーム


チタニウムフレームやコンポジットフレーム、サングラスなどの企画および仕入販売を行っています。「アニエスベー」や「ジルスチュアート」など、有名ブランドのライセンス製品も広く取り扱っています。

小売店や代理店等への製品の卸売りによって収益を得ています。事業の運営は、主に同社の子会社である村井と、持分法適用関連会社であるモンドティカジャパンが担っています。

(3) 釣具・応用品


釣具用部品や、静電気除去器などの製造販売を展開しています。時計関連事業で培った精密な金属加工および樹脂加工のノウハウを応用し、高品質で価格競争力のある製品を供給しています。

釣具メーカー等に対する部品の納入や、製品の販売代金が収益の柱となっています。運営は、同社とNISSEY VIETNAM CO.,LTD.、およびNISSEY CAMBODIA CO.,LTD.が共同で手掛けています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は緩やかな拡大傾向にあり、当期は79.0億円に達しています。経常利益は一時落ち込みましたが当期に過去最高となる大幅増益を達成しました。最終利益も黒字転換を果たしています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 57.4億円 69.0億円 67.3億円 71.6億円 79.0億円
経常利益 1.9億円 2.6億円 4.5億円 300万円 5.3億円
利益率(%) 3.3% 3.7% 6.7% 0.0% 6.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -1.4億円 -0.6億円 0.3億円 -2.0億円 0.6億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しており、売上総利益率は安定して推移しています。外注生産高などの増加を吸収して営業利益も拡大し、本業の収益性が向上しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 71.6億円 79.0億円
売上総利益 15.0億円 16.6億円
売上総利益率(%) 21.0% 21.0%
営業利益 2.8億円 3.7億円
営業利益率(%) 3.9% 4.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が4.7億円(構成比37%)、役員報酬が1.3億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


時計関連は国内取引先の受注増により増収増益となりました。釣具・応用品も堅調な受注に支えられ大幅な増益を記録しました。一方メガネフレームは減収となったものの、損益重視の営業が奏功し増益を果たしています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
時計関連 52.5億円 58.8億円 1.4億円 1.7億円 3.0%
メガネフレーム 9.0億円 8.5億円 500万円 0.1億円 1.8%
釣具・応用品 10.1億円 11.6億円 1.3億円 1.9億円 16.5%
連結(合計) 71.6億円 79.0億円 2.7億円 3.8億円 4.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 2.5億円 1.9億円
投資CF -1.1億円 -0.6億円
財務CF -2.1億円 -1.0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は33.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


企業理念として「“夢を持って、美を求め、形にする”」を掲げています。この「夢・美・形」の追求が企業の継続と社員の幸せ、社会への貢献を実現する原動力であると信じています。また「手のひらロマンで世界を刻む」というコーポレートスローガンのもと、確かな技術に裏打ちされた製品を提供することを使命としています。

(2) 企業文化


実践のための4つの行動指針として、「発展(常に発展する企業である)」「安定(永く安定した企業である)」「幸福(全社員が幸福感を持てる)」「安全(安全でクリーンなもの作りの実現)」を定めています。これらを基盤として、社員の幸福感の醸成と社会全体の持続的な発展に貢献する文化を育んでいます。

(3) 経営計画・目標


親会社株主に帰属する当期純利益の継続的拡大と企業価値の向上を目的とし、翌年度の経営計画目標である売上高、営業利益、売上高営業利益率を重視しています。

* 売上高:76.5億円
* 営業利益:3.2億円
* 売上高営業利益率:4.1%

(4) 成長戦略と重点施策


成長に向けた最優先施策として、「既存事業の維持拡大と事業領域の拡大・営業強化」「ASEAN生産拠点の体制強化」「財務基盤の拡充の継続」に取り組んでいます。特にベトナムとカンボジアの工場の役割を明確化して生産効率を高め、為替変動リスクに対応しながら収益力と財務基盤の安定化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


市場競争力の核は技術開発力であるとし、専門技術者の確保と製造拠点の環境改善を重要課題と位置付けています。現地社員への教育機会の提供や多様な人材の採用・育成、待遇改善を進め、高いモチベーションを持つ社員が多様なキャリアパスや働き方を実現できる職場環境の整備を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 49.0歳 12.0年 6,270,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は常時雇用する労働者が300人以下等の理由により公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「従業員の状況」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員数(9名)、外国人労働者数(4名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 外国為替変動のリスク


アジアに生産拠点があり、海外の取引先とも外貨建てで決済を行っています。為替予約などでリスク軽減に努めていますが、急激な外国為替レートの変動が発生した場合、同社グループの財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 大口取引先の戦略変更等のリスク


時計関連事業の売上高が全体の7割以上を占めており、特定の取引先への依存度が高くなっています。新規開拓などによる営業力強化でバランスの適正化を図っていますが、大口取引先の戦略変更や注文の解約があった場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。

(3) 人件費の高騰・人員不足のリスク


ベトナムおよびカンボジアに主要な生産拠点を持っています。賃金ベースアップや賞与支給などで安定雇用と生産性向上に努めていますが、現地での人件費の高騰や人員不足による稼働率の低下が起きた場合、収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 人的資本に関するリスク


市場競争力の源泉である技術開発力を維持するため、国内外での専門性の高い技術者の確保が不可欠です。働き方改革や多様な人材の確保に向けた職場環境の改善を進めていますが、これらが計画通りに進まない場合、事業運営に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。