日本精密 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本精密 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場し、時計バンド製造やメガネフレーム販売、釣具・応用品事業を展開しています。2025年3月期は、円安や受注回復により売上高は増加しましたが、為替差損や支払手数料の増加により経常利益は大幅に減少し、当期純損益は赤字に転落しました。


※本記事は、日本精密株式会社 の有価証券報告書(第47期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本精密ってどんな会社?

日本の技術力を背景に、ベトナムやカンボジアの拠点で時計バンドやメガネフレーム等の精密部品を製造・販売する企業です。

(1) 会社概要

1978年に設立し、カシオ計算機向けの時計バンド製造を開始しました。1994年にベトナム子会社を設立し生産拠点を海外へ展開。2004年にジャスダックへ上場しました。2007年には株式会社村井を子会社化してメガネフレーム事業へ参入し、2013年にはカンボジアに子会社を設立して生産体制を強化しています。

連結従業員数は1,714名、単体では45名です。筆頭株主は韓国でアパレル製造販売を行うジエンコで、第2位は投資会社のキュロホールディングスです。韓国のKOSDAQ上場企業であるジエンコは、その他の関係会社として資本関係を持っています。

氏名 持株比率
ジエンコ 22.98%
キュロホールディングス 11.46%
キュキャピタルパートナーズ 5.08%

(2) 経営陣

同社の役員は男性9名、女性1名、計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は井藤秀雄氏です。社外取締役比率は10.0%です。

氏名 役職 主な経歴
井藤 秀雄 代表取締役社長 都南金属工業、萬世工業を経て2001年入社。営業部長、常務執行役員などを歴任し、2018年より現職。村井代表取締役を兼任。
白坂 敬次 取締役 萬世工業を経て2001年入社。開発2部部長、上席執行役員などを経て2009年より現職。村井代表取締役社長を務める。
權 經訓 取締役 全北科学大学理事長、駐韓ラトビア共和国名誉領事などを務め、2009年より現職。
權 敬 取締役 明信大学校教授などを経て、全北科学大学校幼児教育科教授を務め、2013年より現職。
金 亨錫 取締役 JEONBUK SCIENCE COLLEGEチーム長などを務め、2019年より現職。
權 昱 取締役 ホンイル財団企画室長、全羅南道議会議員などを経て、MBC放送局理事を務め、2023年より現職。


社外取締役は、李鎭鎔(株式会社インターコンサービス代表取締役)です。

2. 事業内容

同社グループは、「時計関連」「メガネフレーム」「釣具・応用品」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 時計関連

金属製やウレタン製の時計バンド、および時計外装部品の製造販売を行っています。主な顧客は国内大手の時計メーカーであるカシオ計算機グループです。

収益は、顧客への製品販売による対価です。運営は、日本精密が仕入・販売を行い、生産は主にベトナムの子会社NISSEY VIETNAM CO.,LTD.およびカンボジアの子会社NISSEY CAMBODIA CO.,LTD.が担当しています。

(2) メガネフレーム

チタニウム製やアルミニウム製などのメガネフレーム、サングラスの企画、仕入、販売を行っています。自社ブランドに加え、ライセンスブランドも取り扱っています。

収益は、製品の販売代金です。運営は、連結子会社の株式会社村井が企画から仕入、販売までを一貫して行っています。一部販売は関連会社のモンドティカジャパン株式会社も行っています。

(3) 釣具・応用品

釣具用部品や静電気除去器などの製造販売を行っています。独自の精密加工技術を活かし、他分野への応用展開を進めています。

収益は、製品の販売代金です。釣具用部品は主にベトナムおよびカンボジアの子会社で製造し日本精密が販売、静電気除去器は日本精密が製造販売を行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり70億円台に乗せましたが、利益面では変動が見られます。特に当期は、経常利益が大幅に減少し、最終損益も赤字に転落しました。利益率も低水準で推移しており、収益性の安定化が課題となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 48億円 57億円 69億円 67億円 72億円
経常利益 -5.3億円 1.9億円 2.6億円 4.5億円 0.0億円
利益率(%) -11.1% 3.3% 3.7% 6.7% 0.0%
当期利益(親会社所有者帰属) -5.9億円 -1.4億円 -0.6億円 0.3億円 -2.0億円

(2) 損益計算書

前期と比較して売上高は増加しましたが、売上原価も増加しており、売上総利益率は微減となりました。販管費が増加したものの、営業利益は増益を確保しています。一方、営業利益率は低水準での推移が続いています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 67億円 72億円
売上総利益 14億円 15億円
売上総利益率(%) 21.2% 21.0%
営業利益 2.5億円 2.8億円
営業利益率(%) 3.8% 3.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が4.7億円(構成比38%)、役員報酬が1.1億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益

時計関連事業は増収となりましたが、利益は微減しました。メガネフレーム事業は減収となり、利益も大幅に減少しました。一方、釣具・応用品事業は売上高が増加し、利益も倍増するなど好調に推移しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
時計関連 49億円 53億円 1.4億円 1.4億円 2.6%
メガネフレーム 10億円 9億円 0.6億円 0.0億円 0.5%
釣具・応用品 8億円 10億円 0.6億円 1.3億円 12.6%
連結(合計) 67億円 72億円 2.5億円 2.8億円 3.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスの「健全型」です。本業で得た現金を、設備投資や借入金の返済に充当しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 4.8億円 2.5億円
投資CF -0.6億円 -1.1億円
財務CF -0.9億円 -2.1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出できませんが、市場平均を下回っています。また、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は26.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「夢を持って、美を求め、形にする」を企業理念として掲げています。「夢・美・形」の追求により輝く明日が来ると信じ、実現できると信じる心が企業の継続と社員の幸せ、社会への貢献を実現する原動力となるとしています。また、「手のひらロマンで世界を刻む」をコーポレートスローガンとしています。

(2) 企業文化

同社は、常に発展する企業である「発展」、永く安定した企業である「安定」、全社員が幸福感を持てる「幸福」、安全でクリーンなもの作りを実現する「安全」の4つを行動指針として掲げています。経験豊富な人間力で企画開発、販売・管理を一元管理し、顧客ニーズに応えることを重視しています。

(3) 経営計画・目標

中長期の経営計画数値は公表していませんが、翌年度の経営計画目標を重視しています。当面の目標数値として、以下の連結業績予想を設定しています。

* 売上高:70億円
* 営業利益:1.8億円
* 営業利益率:2.6%

(4) 成長戦略と重点施策

「NEXT CHINA」の動きに対応し、ASEAN生産拠点を新たな成長エンジンとして活用する方針です。ベトナム工場を高付加価値製品に特化させ、カンボジア工場へ量産品を移管することで効率化を図ります。また、時計関連の提案営業強化や、メガネフレームのブランド育成、釣具用部品のシェア拡大により収益拡大を目指します。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

技術開発力を市場競争力の核と位置づけ、専門技術者の確保と製造拠点の環境改善を重要課題としています。現地社員への教育機会提供や環境改善に投資するとともに、多様な人材の採用・育成と職場環境の整備を進め、高いモチベーションを持つ社員の多様なキャリアパスや働き方の実現を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 50.0歳 13.0年 5,949,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は常時雇用する労働者の数が300人を超えないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 有利子負債への依存

設備・運転資金を主に金融機関からの借入に依存しており、総資産に占める有利子負債の割合は52.6%と高い水準にあります。金利動向の変化や、シンジケートローン契約に付された財務制限条項への抵触などが、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外事業における為替変動

ベトナムやカンボジアに生産拠点、香港に営業拠点を持つため、為替レートの変動リスクがあります。外貨建て取引について為替予約等でリスク軽減を図っていますが、急激な為替変動は業績に影響を与える可能性があります。

(3) 主要顧客への依存と戦略変更

売上高の約7割を時計関連事業が占めており、特定の大口取引先への依存度が高くなっています。取引先の戦略変更や製品仕様の変更、大口注文の解約などが生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) ASEAN地域の人件費高騰

ベトナムやカンボジアの生産拠点において、人件費の高騰や人員不足により稼働率が低下するリスクがあります。生産性の向上等で対応していますが、コスト増が業績に影響する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。