長野計器 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

長野計器 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する圧力計測・制御機器の専業メーカー。圧力計、圧力センサ、計測制御機器、ダイカスト等の製造販売を主力とし、半導体業界や産業機械向けに製品を展開しています。第103期の連結業績は、円安効果や産業機械関連の好調により増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社長野計器 の有価証券報告書(第103期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 長野計器ってどんな会社?


圧力計測・制御分野のリーディングカンパニーとして「安全・安心・信頼」を使命とし、日本・米国を主要拠点にグローバル展開する企業です。

(1) 会社概要


1948年に長野計器製作所として発足し、1989年に丸子電子機器工場を新設して圧力センサの本格生産を開始しました。1998年に株式を店頭登録し、2004年にジャスダック、2005年に東証二部、2007年に東証一部へ上場。2006年には米国Ashcroft社を買収してグローバル展開を加速し、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。

同社の連結従業員数は2,388名、単体では771名です。大株主構成は、筆頭株主および第2位が資産管理業務を行う信託銀行であり、第3位は取引先持株会となっています。また、事業会社としては産業ガス大手のエア・ウォーターが第4位株主として名を連ねており、安定した株主基盤を有しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.50%
日本カストディ銀行(信託口) 7.97%
長野計器取引先持株会 7.71%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は佐藤正継氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
佐藤 正継 代表取締役社長取締役会議長、経営委員会議長、監査部担当 1973年同社入社。事業本部事業管理部長、丸子電子機器工場長などを経て、2011年取締役就任。製造本部担当などを歴任し、2018年代表取締役社長に就任。2024年4月より現職。
角龍 徳夫 常務取締役サステナビリティ委員会委員長、事業強化推進委員会、経営統括本部、管理本部担当 1979年同社入社。経理部長を経て2018年取締役就任。2023年常務取締役。2025年5月よりサステナビリティ委員会委員長等を兼務し現職。
小林 豊茂 取締役 1985年八十二銀行入行。執行役員人事部長、監査部長等を経て2020年同行取締役。2021年同社取締役就任。総務統括部、営業本部担当などを経て2025年5月より現職。
小野 明彦 取締役製品判定会議議長、営業本部担当 1986年同社入社。販売戦略部長、上席執行役員経営統括部長等を経て2023年取締役就任。サステナビリティ委員会委員長等を歴任し、2025年5月より現職。
諏訪 明久 取締役執行役員会議長、技術本部、製造本部担当 1995年同社入社。上田計測機器工場長、上席執行役員製造本部長等を経て2024年取締役就任。2025年5月より執行役員会議長等を兼務し現職。


社外取締役は、鈴木正徳(元中小企業庁長官)、寺島義幸(元衆議院議員)、梅澤佳子(多摩大学教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「圧力計」「圧力センサ」「計測制御機器」「ダイカスト」および「その他」事業を展開しています。

(1) 圧力計事業


一般産業用から特殊用途まで幅広い圧力計、圧力スイッチ、温度計などの製造・販売を行っています。主な顧客はFA・空圧機器業界、空調管材業界、産業機械業界、半導体業界など多岐にわたります。

収益は、国内外の顧客への製品販売による対価です。運営は、同社のほか、連結子会社の長野汎用計器製作所、ナガノ、米国子会社Ashcroft Inc.などのグループ各社が行っています。

(2) 圧力センサ事業


各種産業機械や自動車、半導体製造装置などに搭載される圧力センサの製造・販売を行っています。建設機械や空調機器、自動車など、高い信頼性が求められる分野で採用されています。

収益は、製品の販売による対価です。運営は、同社およびナガノ計装、米国子会社Ashcroft Inc.、ドイツ子会社JADE Sensortechnik GmbHなどのグループ各社が担っています。

(3) 計測制御機器事業


空気圧機器、エアリークテスタ、圧力試験器、圧力発生器などの製造・販売を行っています。自動車・電子部品関連業界向けや生産自動化用の機器として利用されています。

収益は、製品の販売による対価です。運営は、主に同社および連結子会社のニューエラー、フクダ、双葉測器製作所などが行っています。

(4) ダイカスト事業


自動車業界などを主要な取引先として、ダイカスト製品の製造・販売を行っています。金属成形技術を活かした部品供給を行っています。

収益は、製品の販売による対価です。運営は、連結子会社の中村金型製作所、サンキャスト、ヤハタが行っています。

(5) その他事業


不動産賃貸・管理および自動車用電装品の製造・販売を行っています。

収益は、不動産の賃貸料収入および製品販売による対価です。運営は、同社および連結子会社のニューエラーが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


第99期から第103期にかけて、売上高は着実に増加傾向にあり、第103期には過去最高の695億円に達しました。利益面でも、経常利益率が3%台から10%台へと大幅に改善しており、収益性が向上しています。当期利益も順調に伸長し、安定した成長軌道を描いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 448億円 550億円 605億円 679億円 695億円
経常利益 15億円 43億円 50億円 74億円 76億円
利益率(%) 3.4% 7.8% 8.2% 10.9% 10.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 11億円 21億円 32億円 51億円 53億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は増加し、売上総利益率も改善傾向にあります。増収効果に加え、原価管理の徹底等により営業利益も増加し、営業利益率は11.0%と高水準を維持しています。堅調な本業の収益力が確認できます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 679億円 695億円
売上総利益 214億円 222億円
売上総利益率(%) 31.4% 31.9%
営業利益 72億円 77億円
営業利益率(%) 10.5% 11.0%


販売費及び一般管理費のうち、給与諸手当が65億円(構成比45%)、研究開発費が14億円(同10%)を占めています。売上原価は売上高の68%を占めています。

(3) セグメント収益


圧力計事業はプロセス業界の保守需要や米国での販売増、円安効果により増収となりました。圧力センサ事業は半導体業界の在庫調整等の影響で減収となりました。計測制御機器事業はほぼ横ばい、ダイカスト事業は自動車業界の減産影響を受けつつも微増、その他事業は自動車用電装品の減少により減収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
圧力計 341億円 370億円
圧力センサ 227億円 214億円
計測制御機器 40億円 40億円
ダイカスト 52億円 53億円
その他 20億円 19億円
連結(合計) 679億円 695億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.8%で市場平均を上回っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 62億円 61億円
投資CF -20億円 -4億円
財務CF -34億円 -35億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「一芸を極めて世界に挑戦」を企業理念として掲げています。圧力計測・制御分野でのリーディングカンパニーとして、「安全・安心・信頼」を届けることを使命とした製品の提供を通じ、社会貢献を継続することをグループ全体の基本方針としています。

(2) 企業文化


「モノづくりのあくなき探求心を礎に強靭な経営基盤を構築し、社会的課題への貢献と企業価値向上に取り組む」をスローガンとしています。また、サステナビリティ・ESG経営を重視し、環境への配慮、社会の充実、ガバナンス強化に取り組む姿勢を明確にしています。

(3) 経営計画・目標


第2次中期経営計画(2023~2025年度)において、最終年度の2025年度見通しとして以下の目標を設定しています。なお、当初計画からは、製造業における設備投資の抑制傾向を受けて売上高見通しを修正しています。

* 売上高:671億円
* 営業利益率:12.9%
* ROE:10%確保

(4) 成長戦略と重点施策


「既存事業の競争力強化」「グローバル戦略の強化」「新たな事業領域の拡大」「経営基盤の強化」の4つを成長戦略としています。具体的には、製品の事業採算性向上、水素・アンモニアビジネス等の成長分野における商品開発、海外拠点の生産拡大と地産地消の推進、光学式圧力センサ等の新技術による事業領域拡大に注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


女性の活躍促進を含む社内の多様性確保を重視し、女性管理監督者の積極的登用や性別によらない適所配置を推進しています。人材育成では、経営戦略に照らした人事制度改正や人材公募制度を活用し、自律的なキャリア形成を促進します。また、ワーク・ライフ・バランス実現のため、長時間労働の是正や柔軟な働き方の環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.1歳 18.1年 5,711,000円


※平均年間給与は、税込給与額であり、時間外手当等の基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.2%
男性育児休業取得率 61.9%
男女賃金差異(全労働者) 75.5%
男女賃金差異(正規) 80.9%
男女賃金差異(非正規) 75.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 気候変動に関するリスク


地球温暖化や異常気象による大規模な自然災害が発生した場合、人的・財産的被害により経営成績及び財務状況に重大な影響が生じる可能性があります。また、GHG排出による環境への影響もリスク要因です。これに対し、環境負荷低減製品の推進やBCP策定に取り組んでいます。

(2) 投資等に係るリスク


新会社の設立や企業買収などの事業投資において、投資先の業績悪化や経営方針転換により、撤退困難や追加資金拠出が必要となる可能性があります。投資先企業のガバナンス強化やアライアンス関係の定期的見直しによりリスク回避を図っています。

(3) 災害や停電等の影響


大規模な地震、風水害等の自然災害や停電、火災等により、調達・生産・販売活動に遅延や停滞が生じた場合、業績に影響が生じる可能性があります。受圧部生産設備の保護を重視し、グループ会社や同業者への生産委託体制の整備を進めています。

(4) 情報セキュリティに関するリスク


サイバー攻撃や情報セキュリティ事故により、システム停止や信用毀損が生じる可能性があります。セキュリティシステムの導入やマネジメント体制の強化に加え、工場のIoT化に伴うリスク対策も検討しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。