※本記事は、株式会社ブイ・テクノロジーの有価証券報告書(第29期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. ブイ・テクノロジーってどんな会社?
半導体およびFPD(フラットパネルディスプレイ)の製造装置や検査装置の開発、設計、製造、販売を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1997年に設立され、2000年に東証マザーズへ上場を果たしました。その後、2011年に東証一部への指定変更を経て、2013年にはオムロンレーザーフロント等からFPD・半導体業界向けリペア装置事業を譲り受けて事業を拡大してきました。直近では2023年にLE-TECHNOLOGYを設立するなど、新規事業領域への展開を積極的に進めています。
同社グループは連結で1,027名、単体で246名の従業員を擁しています。筆頭株主は創業者の杉本重人氏であり、第2位および第3位には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 杉本重人 | 12.27% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.86% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.03% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性3名、女性2名の計5名で構成され、女性役員比率は40.0%です。代表取締役兼社長執行役員は杉本重人氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 杉本重人 | 代表取締役兼社長執行役員 | 1981年測機舎(現トプコン)入社。同社計測営業部部長などを経て、1997年12月にブイ・テクノロジー代表取締役社長に就任。2019年6月より現職。 |
| 神澤幸宏 | 取締役兼専務執行役員 | 1987年住友信託銀行入社。2005年に同社へ入社し、財務部長等を歴任して2017年に取締役へ就任。2023年6月より現職。2024年10月より生産本部上席本部長を兼務。 |
社外取締役は、若林秀樹(熊本大学卓越教授・JEITA半導体部会座長)、立山純子(第一中央法律事務所所属弁護士)、小川加織(小川公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「半導体・フォトマスク装置事業」「FPD装置事業」および「その他」事業を展開しています。
■半導体・フォトマスク装置事業
半導体製造工程における製造装置、検査装置、およびフォトマスク用装置等の開発、設計、製造、販売、ならびに関連サービスの提供を行っています。昨今では、AI用半導体向けを中心としたアドバンストパッケージ分野に特に注力し、ダイレクト露光装置などの最先端技術を展開しています。
収益は、半導体メーカー等に対する製造装置・検査装置の販売やサービスの提供から得ています。事業の運営は、ブイ・テクノロジーをはじめ、子会社のLE-TECHNOLOGY、オー・エイチ・ティー、ジャパンクリエイトなどが連携して行っています。
■FPD装置事業
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなど、FPD製造工程における製造装置、検査装置等の開発、設計、製造、販売、および関連サービスを提供しています。また、有機EL用蒸着マスクをはじめとする高精細な部材等も取り扱っています。
収益は、パネルメーカー等に対する装置や部材の販売代金から獲得しています。中国などの現地拠点を活用した受注・生産体制を構築し、製品の性能向上とコストダウンを進めながら、ブイ・テクノロジー及び各子会社を通じてグローバルに事業を展開しています。
■その他事業
IT事業や農業事業などを展開し、同社グループの事業領域の多角化を担っています。
IT技術や農業に関する製品・サービスの提供を通じて収益を得ており、同社グループの広範なポートフォリオの一部を形成しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、一時期減収減益となったものの、その後は明確な回復傾向にあります。特に直近の事業年度では、半導体・フォトマスク装置事業の力強い牽引により、売上高および経常利益ともに前期を大きく上回り、成長軌道への復帰を示しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 514億円 | 431億円 | 373億円 | 462億円 | 530億円 |
| 経常利益 | 59億円 | 17億円 | 11億円 | 19億円 | 35億円 |
| 利益率(%) | 11.4% | 3.9% | 3.0% | 4.1% | 6.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 38億円 | 10億円 | -32億円 | 2億円 | 15億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も拡大しています。また、高採算案件の増加などにより売上総利益率が向上しており、販売費及び一般管理費の増加を吸収して営業利益および営業利益率ともに大幅な改善を達成しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 462億円 | 530億円 |
| 売上総利益 | 121億円 | 147億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.3% | 27.8% |
| 営業利益 | 18億円 | 38億円 |
| 営業利益率(%) | 3.9% | 7.1% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が23億円(構成比21%)、従業員給料手当が14億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
半導体・フォトマスク装置事業は、アドバンストパッケージ向け装置などが牽引し、前年比で大幅な増収を達成しています。FPD装置事業も大型パネル向けを中心に市況が堅調に推移し、着実な増収を確保しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 半導体・フォトマスク装置事業 | 149億円 | 196億円 |
| FPD装置事業 | 298億円 | 320億円 |
| その他 | 15億円 | 14億円 |
| 連結(合計) | 462億円 | 530億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 53億円 | 57億円 |
| 投資CF | -15億円 | -17億円 |
| 財務CF | -5億円 | -16億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「大いなる志と溢れる情熱で、世界最高のイノベーションを創造し、社会に貢献します。」を経営理念として掲げています。電子デバイス製造に関わる生産工程の課題をトータルで解決するパッケージ戦略を通じて、技術革新により社会と地球の持続可能な発展に寄与することを目指しています。
■(2) 企業文化
従業員および関係者の多様な価値観、個性、プライバシーを尊重する文化を重視しています。また、アジアを中心にグローバル展開する企業として、個々人の価値観にとどまらず、国や地域の文化や慣習を尊重した相互理解に努める姿勢を企業行動指針として根付かせています。
■(3) 経営計画・目標
持続的な企業価値の向上と資本効率を意識した経営を推進するため、「ROE(自己資本利益率)」を最重要の数値目標として位置付けています。
* 2029年3月期(中期経営計画最終年度)にROE 20%以上の達成
■(4) 成長戦略と重点施策
成熟化するFPD市場における安定的な収益基盤を維持しつつ、急成長が見込まれるAI用半導体向けを中心とした「アドバンストパッケージ分野」へ経営資源をダイナミックに集中させることで、事業ポートフォリオの転換を推進します。さらに、グループシナジーによる高収益化や、最先端技術の研究開発・M&Aへの優先的な資金配分による最適なキャピタルアロケーションを実行します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業構造の転換と拡大を見据え、ビジネス分野の変化を恐れず受け入れることができる人材の採用・育成を重視しています。若手の中途採用や新卒採用の再開により組織の活性化とスキル継承を図るとともに、グループ全体の人材情報をシステム化して適正な人員配置を推進し、多様性確保に向けた施策を展開しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 47.5歳 | 8.6年 | 6,724,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める中途採用者の比率(90%以上)、管理職に占める外国人の比率(3%程度)、有給休暇の計画的取得率(80.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場環境の変動と新規領域展開
同社が展開する電子デバイス製造装置市場は需要動向や技術進化の影響を受けやすく、市場変化による投資計画の延伸や受注キャンセルが生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、次世代技術を見据えた新領域への展開において市場の立ち上がりが遅れた場合も、収益貢献に時間を要するリスクがあります。
■(2) 生産外部委託とサプライチェーンの混乱
主にFPD用大型設備の生産を外部委託しており、委託先の経営急変や不測の事故に加え、地政学的要因による物流網の混乱や部材供給の遅滞、輸送コストの高騰が生じた場合、製品の安定供給や利益率に重大な支障をきたし、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 知的財産権の流出および侵害
競争優位性を維持するため特許等の出願を積極的に行っていますが、人員の退職や模倣行為等による知的財産権の社外流出リスクが存在します。また、第三者の知的財産権を意図せず侵害してしまった場合、多額の係争費用や損害賠償金などが発生し、業績に影響を及ぼすリスクがあります。



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