ブイ・テクノロジー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ブイ・テクノロジー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する、FPD(フラットパネルディスプレイ)及び半導体製造装置メーカーです。液晶・有機EL等のディスプレイ製造装置と半導体・フォトマスク関連装置を2本柱としています。2025年3月期は、中国市場でのFPD需要回復等により売上高462億円、経常利益19億円と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社ブイ・テクノロジー の有価証券報告書(第28期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ブイ・テクノロジーってどんな会社?


同社はFPD製造装置および半導体・フォトマスク製造装置の開発・製造・販売を行う企業です。「ファブレス」方式を基本とし、高付加価値製品を提供しています。

(1) 会社概要


1997年に設立され、2000年に東証マザーズへ上場しました。その後、2011年に東証一部へ市場変更し、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。M&Aや子会社設立を通じて事業領域を拡大しており、2023年にはジャパンクリエイトを子会社化するなど、半導体関連事業の強化を進めています。

同社グループの連結従業員数は968名、単体では257名です。筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は創業者の杉本重人氏、第3位は日本カストディ銀行となっており、創業者と機関投資家が主要株主となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.36%
杉本 重人 12.27%
日本カストディ銀行(信託口) 4.39%

(2) 経営陣


同社の役員は男性3名、女性2名、計5名で構成され、女性役員比率は40.0%です。代表取締役兼社長執行役員は杉本重人氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
杉本 重人 代表取締役兼社長執行役員 1981年トプコン入社。1997年同社代表取締役社長に就任。開発本部長等を歴任し、現在は同社代表取締役兼社長執行役員を務めるほか、グループ会社の董事長等を兼任し、2019年より現職。
神澤 幸宏 取締役兼専務執行役員 1987年住友信託銀行(現三井住友信託銀行)入社。2005年同社入社後、財務部長等を歴任。管理本部長や経営企画室長を務め、現在は生産本部上席本部長等を兼務し、2023年より現職。


社外取締役は、若林秀樹(東京理科大学大学院教授)、立山純子(第一中央法律事務所弁護士)、小川加織(小川公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「FPD装置事業」「半導体・フォトマスク装置事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) FPD装置事業


液晶ディスプレイ(LCD)や有機ELディスプレイ(OLED)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)製造工程における製造装置、検査装置、修正装置等を提供しています。装置サイズが大きく広大な生産スペースを要するため、すべての製品において協力会社へ製造を委託する「ファブレス」体制をとっています。

主な収益源は、パネルメーカー等の顧客に対する装置の販売代金や、OLED用蒸着マスクなどの部材提供、関連サービスによる収益です。運営は主にブイ・テクノロジー(同社)が行っているほか、海外子会社等が販売やメンテナンスを担っています。

(2) 半導体・フォトマスク装置事業


半導体製造工程で使用される製造装置、検査装置、およびフォトマスク用装置等の開発、設計、製造を行っています。市場投入初期の製品や高収益製品については自社のイノベーションセンターで製造を行い、それ以外は協力会社に委託する体制を採用しています。

収益は、半導体メーカーやフォトマスクメーカー等への装置販売および関連サービスの提供から得ています。運営は主に同社が行うほか、ナノシステムソリューションズやオー・エイチ・ティーなどのグループ会社も各専門分野の装置開発・製造を担っています。

(3) その他


IT事業、有機EL(OLED)照明事業、農業事業などを展開しています。農業分野では「Vトマト」ブランドの生産・販売を行い、IT分野ではソフトウェア関連ビジネスを手掛けています。

収益は、農産物の販売やソフトウェア開発・サービス提供等から得ています。運営は、農業事業についてはImec Agricultural Technology (Suzhou)などが、IT事業はアイテックやその傘下のクリマ・ソフトなどが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2024年3月期はFPD装置の端境期や半導体市況の減速により減収減益となりましたが、2025年3月期はFPD市場の設備投資回復等により増収増益に転じました。売上高は回復基調にあり、利益面でも黒字を確保しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 552億円 514億円 431億円 373億円 462億円
経常利益 68億円 59億円 17億円 11億円 19億円
利益率(%) 12.4% 11.4% 3.9% 3.0% 4.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 54億円 38億円 10億円 -32億円 2億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で約24%増加し、売上総利益も増加しました。営業利益率は4%台に改善しています。原価率の上昇が見られますが、増収効果により利益額は拡大しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 373億円 462億円
売上総利益 106億円 121億円
売上総利益率(%) 28.4% 26.3%
営業利益 8億円 18億円
営業利益率(%) 2.3% 3.9%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が22億円(構成比21%)、従業員給料手当が13億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


FPD装置事業はパネル市況の回復により大幅な増収増益となりました。半導体・フォトマスク装置事業もAI関連需要などにより堅調に推移し、増収増益を達成しました。その他事業も増収となりましたが、全体への寄与は限定的です。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
FPD装置事業 223億円 298億円 -0.3億円 9億円 3.1%
半導体・フォトマスク装置事業 141億円 149億円 12億円 12億円 8.3%
その他 10億円 15億円 -4億円 -3億円 -22.7%
調整額 -4億円 -3億円 -億円 -億円 -
連結(合計) 373億円 462億円 8億円 18億円 3.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ現金を借入金の返済や投資に充てている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -48億円 53億円
投資CF -4億円 -15億円
財務CF 15億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.8%で市場平均(プライム製造業平均46.8%)とほぼ同水準です。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「大いなる志と溢れる情熱で、世界最高のイノベーションを創造し、社会に貢献します。」という経営理念を掲げています。独自の技術開発を通じて、半導体やディスプレイといった電子デバイスの製造に不可欠な高付加価値製品やサービスを提供し、社会への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、法令遵守、公正な取引、人権や多様な価値観の尊重を基本方針としています。また、顧客満足度の向上と関係性の深化を図るため、連続的かつ迅速なオペレーションとマーケティング活動を重視しています。リスク管理やコンプライアンス体制の強化にも取り組み、持続的な成長を支える基盤としています。

(3) 経営計画・目標


同社は中期経営計画を策定し、Webサイトにて進捗情報を公開しています。具体的な数値目標等は有価証券報告書の記述内には明記されていませんが、電子デバイス製造における課題をトータルで解決する「パッケージ戦略」や、ニッチ分野での差別化製品の展開により、グループ事業の規模拡大を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


成長分野での「パッケージ戦略」の展開と、ニッチ分野への差別化製品の投入を掲げています。半導体分野ではアドバンスドパッケージや真空プロセス技術の強化、FPD分野では高シェア製品の差別化と中国現地生産による対応を進めています。また、生産体制の最適化やM&A、他社との協業も推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、多様な価値観や国・地域の文化・慣習を尊重し、能力や識見に基づいた公正な評価による管理職登用を行っています。特にアジアを中心にグローバル展開していることから、外国人社員の登用を推進しています。また、従業員の健康・安全を第一に考え、休日取得の徹底や職場環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 48.2歳 8.4年 7,162,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める中途採用者比率(90%以上)、有給休暇の早期取得率(83.7%)、管理職に占める外国人登用比率(4%程度)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場変化に関するリスク


同社グループは電子デバイス製造装置市場で事業を展開していますが、この市場は需要動向や技術進化、世界経済の変化の影響を受けやすい特性があります。設備投資計画の延伸や受注キャンセル等の予期せぬ市場変化が発生した場合、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(2) 生産の外部委託に関するリスク


同社グループはFPD用大型設備などを中心に生産を外部委託(ファブレス化)しています。協力会を通じた情報共有や部材調達の多角化を進めていますが、取引先の経営状態の急変や事故による生産・供給体制への支障が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 知的財産権等に関するリスク


製品生産を委託する協力会社との間で秘密保持契約を締結し、特許出願も積極的に行っていますが、技術やノウハウの流出、模倣行為による損害のリスクがあります。また、第三者の知的財産権を侵害しないよう管理していますが、万が一抵触した場合は多額の係争費用や損害賠償が発生する可能性があります。

(4) 研究開発に関するリスク


先進的な技術開発に継続的に取り組んでいますが、競合技術の早期登場や開発の大幅な遅延が発生した場合、あるいは開発成果が収益獲得に結びつかない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。技術革新のスピードが速い業界であるため、常に技術的な優位性を維持する必要があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。