A&Dホロンホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

A&Dホロンホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のA&Dホロンホールディングスは、半導体関連機器、医療・健康機器、計測・計量機器の製造・販売を行うグループの持株会社です。半導体関連や計測・計量機器事業が堅調に推移し、当連結会計年度は売上高671億円、営業利益88億円と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社A&Dホロンホールディングス の有価証券報告書(第48期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. A&Dホロンホールディングスってどんな会社?


同社グループは、アナログ・デジタル変換技術を核に、計測・計量機器や医療・健康機器、半導体関連機器を展開する企業グループです。

(1) 会社概要


1977年に電子計測器の製造・販売を目的として設立され、1982年には米国に販売拠点を設立するなど早期から海外展開を進めました。2003年の株式上場を経て、2006年に東証一部(現プライム市場)へ指定替えを行いました。2018年には半導体検査装置メーカーのホロンを連結子会社化し、2022年に持株会社体制へ移行して現在の商号となりました。

2025年3月31日現在の連結従業員数は2,438名、単体での従業員数は0名(純粋持株会社のため)です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行の常任代理人となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 17.54%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 7.80%
日本カストディ銀行(信託口) 7.03%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役執行役員社長は森島泰信氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
森島 泰 信 代表取締役執行役員社長 1970年タケダ理研工業(現アドバンテスト)入社。1977年同社入社。営業本部長等を経て2016年6月代表取締役、同年7月より現職。2022年4月よりエー・アンド・デイ代表取締役を兼務。
張   皓 取締役執行役員副社長 1997年ホロン入社。取締役営業部長等を経て2018年同社代表取締役社長。2021年6月同社取締役、2022年6月より現職。
高 橋 浩 二 取締役常務執行役員 1984年足利銀行入行。2015年同社入社。管理本部経営管理部長、総合戦略企画室長等を経て2022年6月取締役。2025年6月より現職。


社外取締役は、大聖泰弘(早稲田大学理工学部名誉教授)、重光文明(元ニューフレアテクノロジー代表取締役社長)、ルディー和子(ウィトン・アクトン代表取締役)、上出邦郎(元日本電子執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「半導体関連事業」「医療・健康機器事業」および「計測・計量機器事業」を展開しています。

(1) 半導体関連事業


フォトマスク上の半導体設計回路寸法測定および欠陥レビュー・分析装置や、半導体製造装置に不可欠なユニットであるA/D・D/A変換器、電子銃などを提供しています。主な顧客は半導体デバイスメーカーや半導体製造装置メーカーです。

収益は、これらの製品販売および保守サービス等から得ています。運営は、ホロンおよびエー・アンド・デイが製造・販売を行い、A&Dマニュファクチャリングが製造を行っています。

(2) 医療・健康機器事業


家庭用血圧計、医療用血圧計、生体情報モニタ、精密体重計、超音波吸入器などを提供しています。家庭向けには日々の健康管理をサポートする機器を、医療機関向けには診断や治療を支援する専門的な機器を供給しています。

収益は、これらの機器の販売から得ています。運営は、エー・アンド・デイが製造・販売するほか、国内ではA&Dマニュファクチャリングが製造を行っています。海外では愛安徳電子(深圳)有限公司などが製造し、A&D ENGINEERING, INC.などの現地法人が販売を担当しています。

(3) 計測・計量機器事業


計測・制御・シミュレーションシステム、材料試験機、環境計測機器、電子天秤、ロードセル、異物検査装置などを提供しています。研究開発部門から生産ライン、物流現場まで幅広い産業分野の顧客を対象としています。

収益は、これらの機器およびシステムの販売から得ています。運営は、エー・アンド・デイが製造・販売するほか、国内ではベスト測器が製造・販売を行っています。海外ではA&D SCALES CO.,LTD.などが製造し、A&D Technology Inc.などの現地法人が販売等を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は右肩上がりの傾向にあり、第48期には671億円に達しています。経常利益も順調に増加を続けており、利益率も10%台を維持しています。当期純利益に関しては、第46期に大きく伸長した後、高い水準を保っています。全体として、収益規模の拡大とともに利益創出能力も向上していることがうかがえます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 484億円 517億円 590億円 620億円 671億円
経常利益 46億円 56億円 76億円 82億円 90億円
利益率(%) 9.4% 10.8% 12.9% 13.3% 13.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 21億円 20億円 42億円 13億円 23億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しており、売上総利益率は45%前後で安定しています。営業利益および経常利益も前期比で増加しており、収益性は底堅く推移しています。販管費の増加を売上総利益の増加で吸収し、営業利益率も13%台を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 620億円 671億円
売上総利益 276億円 302億円
売上総利益率(%) 44.6% 45.0%
営業利益 80億円 88億円
営業利益率(%) 12.8% 13.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が63億円(構成比30%)、研究開発費が60億円(同28%)を占めています。売上原価については、商品及び製品期首たな卸高や当期製品製造原価等の詳細な内訳データがないため、構成比は省略します。

(3) セグメント収益


当期は全セグメントで増収となりました。特に半導体関連事業は売上高が約19%増加し、利益も堅調に推移しています。計測・計量機器事業も増収増益となり、利益率は8.8%まで向上しました。医療・健康機器事業は増収ながらも、利益率は前期より低下しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
半導体関連事業 103億円 123億円 38億円 41億円 33.5%
医療・健康機器事業 236億円 241億円 42億円 41億円 17.0%
計測・計量機器事業 281億円 307億円 18億円 27億円 8.8%
調整額 -247億円 -284億円 -18億円 -21億円 -
連結(合計) 620億円 671億円 80億円 88億円 13.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

A&Dホロンホールディングスは、当期純利益が前期比で増加しました。
同社の営業活動によるキャッシュ・フローはプラスで、事業活動を通じて資金を生み出しています。
一方、投資活動によるキャッシュ・フローはマイナスであり、将来の成長に向けた設備投資などを行っていることがうかがえます。
財務活動によるキャッシュ・フローもマイナスとなっており、借入金の返済や配当金の支払いなど、資金調達や返済に関する活動があったことを示唆しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 72億円 66億円
投資CF -20億円 -20億円
財務CF -57億円 -54億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、長年培ってきた「はかる」技術を社会に提供することを通じて、科学技術の発展、産業の高度化、人々の健康な生活に寄与し、豊かで持続的な社会づくりにグローバルに貢献する企業グループを目指すことを理念としています。アナログ情報を計測し、デジタル変換する技術を原点とし、顧客による新しい価値の創出を支援します。

(2) 企業文化


同社グループは、創業以来こだわりを持って育ててきた「はかる」技術を究め、マーケット目線を最重要視する考えを持っています。『Sensing the Future ~「はかる」を究め、世界を支える~』を長期ビジョンのスローガンとし、グローバル市場を舞台として社会や顧客の課題解決に貢献する企業グループとなることを目指しています。

(3) 経営計画・目標


2034年度までの長期ビジョンおよび2027年度を最終年度とする中期経営計画を策定しています。長期ビジョンの実現に向けたSTEP1として、現在の事業を見つめ直し経営基盤を強固にすることを目指しています。

* 売上高(2034年度):1,500億円
* 営業利益(2034年度):300億円
* 営業利益率(2034年度):20.0%
* 売上高(2027年度):800億円
* 営業利益(2027年度):117億円

(4) 成長戦略と重点施策


半導体関連事業では次世代装置の開発や新工場建設などを推進し、需要増に対応します。医療・健康機器事業では販売エリアの拡大や生産性向上を図ります。計測・計量機器事業ではファクトリーオートメーション市場やエネルギーシフトに対応する新製品開発を推進し、海外重点地域での販売等を強化します。

* 中期経営計画(2027年度)の営業利益率:14.6%
* 中期経営計画(2027年度)の配当性向:30%

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を競争力の源泉と位置づけ、女性・外国人・中途社員の採用や教育訓練に注力しています。変化に柔軟に対応し、自ら考え行動できる人材の育成を目指しています。また、人権尊重を基本に、安全衛生や健康増進活動を推進し、多様な人材が能力を最大限発揮できる職場環境づくりに取り組んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.6%
男性育児休業取得率 56.3%
男女賃金差異(全労働者) 47.2%
男女賃金差異(正規雇用) 65.6%
男女賃金差異(非正規) 41.4%


※上記は連結子会社である株式会社エー・アンド・デイの数値です。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 地政学リスク


世界各国に拠点を有しており、ロシア・ウクライナ情勢や米中関係などの影響を受ける可能性があります。制裁や法規制への不適切な対応は社会的信用の失墜や収益悪化につながり、従業員の安全や資産が脅かされることで事業継続に支障をきたす恐れがあります。

(2) 情報セキュリティリスク


サイバー攻撃や不正アクセスにより業務システムが停止したり機密情報が流出したりした場合、社会的信用の失墜や事業活動の混乱、損害賠償費用の発生などにより、事業継続に悪影響を及ぼす可能性があります。セキュリティ対策や管理体制の整備を進めています。

(3) 環境規制、気候変動リスク


温室効果ガス排出規制の強化やカーボンプライシング導入などの規制強化に対し、対策が遅れた場合、社会的信用の失墜や取引停止、株価低迷などを招き、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。サステナビリティ委員会を中心にリスク対応を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。