※本記事は、株式会社A&Dホロンホールディングスの有価証券報告書(第49期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. A&Dホロンホールディングスってどんな会社?
半導体関連機器、計測・計量機器、医療・健康機器の開発・製造・販売を行うグローバル企業です。
■(1) 会社概要
1977年に電子計測器の製造・販売を目的にエー・アンド・デイとして設立されました。その後、積極的な海外展開と事業拡大を進め、2006年に東京証券取引所市場第一部銘柄に指定されています。2018年には半導体検査装置メーカーのホロンを子会社化し、2022年に株式交換等を経て持株会社体制へ移行し、現在のA&Dホロンホールディングスへ商号変更しました。
現在の従業員数は連結で2,480名です。大株主の筆頭は資産管理業務を行う信託銀行となっており、第2位や第3位には外資系金融機関が名を連ねるなど、機関投資家を中心とした株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 14.42% |
| INTERTRUST TRUSTEES(CAYMAN) LIMITED SOLELY IN ITS CAPACITY AS TRUSTEE OF JAPAN-UP | 7.84% |
| NORTHERN TRUST CO. (AVFC) RE IEDP AIF CLIENTS NON TREATY ACCOUNT | 4.07% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役執行役員社長は森島泰信氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 森島泰信 | 代表取締役執行役員社長 | 1970年タケダ理研工業(現アドバンテスト)入社。1977年同社入社。営業本部長等を経て、2016年代表取締役執行役員社長。2022年エー・アンド・デイ代表取締役より現職。 |
| 張皓 | 取締役執行役員副社長 | 1997年ホロン入社。常務取締役営業担当等を経て、2018年同社代表取締役社長。2021年同社取締役、2022年執行役員副社長より現職。 |
| 高橋浩二 | 取締役常務執行役員 | 1984年足利銀行入行。2015年同社入社。管理本部経営管理部長、総合戦略企画室長等を経て、2022年取締役。2025年常務執行役員より現職。 |
社外取締役は、大聖泰弘(早稲田大学理工学部名誉教授)、重光文明(元ニューフレアテクノロジー社長)、ルディー和子(立命館大学大学院客員教授)、上出邦郎(元日本電子執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「半導体関連事業」「計測・計量機器事業」「医療・健康機器事業」の3つの報告セグメントを展開しています。
■(1) 半導体関連事業
フォトマスク上の半導体設計回路寸法測定装置や欠陥レビュー装置、半導体製造装置に不可欠なA/D・D/A変換器、電子銃などの製造・販売を行っています。半導体メーカー等を主要顧客とし、グローバル市場のニーズに応える最先端の機器を提供しています。
装置やユニットの販売を主な収益源とするモデルです。事業の運営は主にエー・アンド・デイおよびホロンが製造・販売を行い、国内子会社のA&Dマニュファクチャリングが製造を担っています。
■(2) 計測・計量機器事業
計測・制御システム、材料試験機、環境計測機器、電子天びん、ロードセル、異物検査装置などの計測・計量機器を提供しています。自動車、素材、食品など幅広い産業の研究・試験施設や生産ラインにおいて、顧客の課題解決を支援しています。
各種機器の販売から収益を得ています。運営はエー・アンド・デイが製造・販売するほか、国内ではベスト測器やA&Dマニュファクチャリング、海外ではA&D ENGINEERING, INC.などが製造・販売を担っています。
■(3) 医療・健康機器事業
家庭用血圧計、医療用血圧計、生体情報モニタ、精密体重計、超音波吸入器などの医療・健康機器を提供しています。ICT技術を活用し、医療現場の効率化や遠隔医療、世界中の人々の健康寿命の延伸をサポートしています。
機器の販売を主な収益源としています。運営はエー・アンド・デイのほか、国内ではA&Dマニュファクチャリング、海外では愛安徳電子(深圳)有限公司やA&D Vietnam Limitedなどが製造し、各国の販売子会社が展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は直近5期間を通じて継続的な増加傾向にあり、順調な事業成長を示しています。経常利益および利益率も安定して推移しており、堅調な収益基盤を維持しながらグローバル展開を推進していることが伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 517億円 | 590億円 | 620億円 | 671億円 | 693億円 |
| 経常利益 | 56億円 | 76億円 | 82億円 | 90億円 | 95億円 |
| 利益率(%) | 10.8% | 12.9% | 13.3% | 13.3% | 13.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 20億円 | 4億円 | 13億円 | 23億円 | 22億円 |
■(2) 損益計算書
売上高および各種利益は前期と比較して増加しています。売上総利益率および営業利益率も前期からわずかに改善しており、コスト上昇圧力がある中でも収益性の維持・向上が図られています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 671億円 | 693億円 |
| 売上総利益 | 302億円 | 315億円 |
| 売上総利益率(%) | 45.0% | 45.4% |
| 営業利益 | 88億円 | 92億円 |
| 営業利益率(%) | 13.1% | 13.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が67億円(構成比30%)、研究開発費が57億円(同26%)を占めています。
■(3) セグメント収益
半導体関連事業は調整局面に入り売上が減少しましたが、計測・計量機器事業および医療・健康機器事業が海外での堅調な需要や為替の影響により伸び、全体として増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 半導体関連事業 | 123億円 | 111億円 |
| 計測・計量機器事業 | 307億円 | 315億円 |
| 医療・健康機器事業 | 241億円 | 267億円 |
| 連結(合計) | 671億円 | 693億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金で投資と借入金の返済を賄う「健全型」のパターンを示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 66億円 | 65億円 |
| 投資CF | -20億円 | -38億円 |
| 財務CF | -54億円 | -29億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.9%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も65.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「わたしたちは、長年培ってきた『はかる』技術を社会に提供することを通じて、科学技術の発展、産業の高度化、人々の健康な生活に寄与し、豊かで持続的な社会づくりにグローバルに貢献する企業グループを目指します。」をグループ企業理念として掲げています。社会性と経済性の両輪による持続的な価値創出を目指しています。
■(2) 企業文化
人権の尊重を基本理念とする企業文化の下、多様性溢れる社員一人ひとりの自己変革を促進し、自ら考え行動できる人材の育成を目指しています。また、高い倫理観に基づき、良識に従った公正で適法な企業活動を実践するため、「A&Dホロングループ倫理憲章」を制定し、透明性の高い企業経営を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
中長期的な成長の実現に向け、2025年度から2027年度までの中期経営計画を推進しています。直近の環境変化を踏まえて見直された2027年度の経営指標は以下の通りです。
・売上高 755億円
・営業利益 99億円
・営業利益率 13.1%
■(4) 成長戦略と重点施策
事業ポートフォリオを意識したグローバル展開の加速と、事業成長を支える研究開発・生産機能の強化を基本戦略としています。半導体関連事業では次世代製品の投入、計測・計量機器事業では重点地域への展開、医療・健康機器事業では医療DX対応製品の拡充を進め、持続的な成長と収益基盤の強化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材こそが競争力の源泉であり、最も重要な財産であるという考えのもと、女性・外国人・シニア・中途社員の多様な人材が能力を最大限発揮できる環境整備に取り組んでいます。公正な評価と体系的な育成を推進し、時間外労働の短縮や年休取得促進など、安心して働きがいを実感できる職場づくりを進めています。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.6% |
| 男性育児休業取得率 | 87.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 49.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 65.3% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 43.2% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 複雑化する地政学と経済安全保障政策
ロシア・ウクライナ情勢や米中関係等の経済安全保障政策の強化により、グローバル環境は複雑化しています。各国の制裁や法規制に対し適切に対応できない場合、ブランドへの信用失墜や売上減少につながるリスクがあります。
■(2) 法的規制とコンプライアンス対応
国内外において様々な法的規制を受けており、国際機関や各国政府による法規制は厳格化しています。法令・規制を遵守できなかった場合には、課徴金や行政処分による社会的信用の失墜により業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 製品・サービスの品質低下
医療機器から航空宇宙分野まで幅広く製品を提供しているため、製品の欠陥や検査不備等が発生した場合、顧客への損害だけでなく、大規模なリコールや損害賠償等の費用負担が発生し、ブランド価値を毀損するリスクがあります。



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