メディキット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

メディキット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場するメディキットは、人工透析用留置針や静脈留置針など血管・血液分野の医療機器の開発・製造・販売を主力としています。直近の業績では、国内外での製品需要の高まりから増収を達成した一方、設備投資に伴う減価償却費の増加等の影響により利益面では減益となっています。


※本記事は、メディキットの有価証券報告書(第43期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. メディキットってどんな会社?


血管・血液分野に特化した医療機器メーカーとして、製品の開発から製造、販売までを一貫して手掛けています。

(1) 会社概要


同社の前身は1971年に発足し、1973年に人工透析用留置針の製造を目的にメディキット(現東郷メディキット)が設立されました。1984年に製造と販売を分離して現在の販売会社が設立され、2005年にはジャスダック証券取引所に上場しました。その後、ベトナムやドイツに子会社を設立して海外展開を進め、2022年にスタンダード市場へ移行しています。

同社グループの従業員数は連結で994名、単体で179名です。筆頭株主は事業会社のナカジマコーポレーションであり、第2位および第3位には外資系の金融機関が名を連ねています。

氏名 持株比率
ナカジマコーポレーション 40.69%
GOLDMAN,SACHS & CO.REG 9.68%
NORTHERN TRUST CO.(AVFC) RE FIDELITY FUNDS 6.22%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は景山洋二氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
景山洋二 代表取締役社長 1986年同社入社。執行役員東日本営業部長、取締役、常務取締役海外事業部担当などを歴任し、2021年より現職。
中島崇 取締役副社長管理部門担当 1995年同社入社。東郷メディキット取締役、同社経営企画室担当部長、東郷メディキット代表取締役社長などを経て、2021年より現職。
中島史博 取締役経営企画担当営業管理部担当薬事/教育担当 朝日生命保険相互会社、東京海上日動火災保険を経て2017年同社入社。執行役員経営企画室担当部長などを歴任し、2025年より現職。


社外取締役は、吉田安幸(元旭化成取締役)、大瀧敦子(石本哲敏法律事務所パートナー弁護士)、入江敏之(筑波大学附属病院教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、医療機器の製造・販売事業の単一セグメントですが、主に3つの製品区分とその他事業を展開しています。

人工透析類


慢性腎不全の血液透析時に使用する人工透析用留置針を提供しています。年間150回程度行われる人工透析において、穿刺時の苦痛が少なく血管を傷めない「ハッピーキャス」などの製品を医療機関向けに展開しています。

医療機関への製品販売により収益を得ています。開発および製造は連結子会社の東郷メディキット等が担い、同社が製品を仕入れて国内外のユーザーに販売する体制を構築しています。

静脈留置針類


輸血や輸液等に使用する静脈留置針を提供しています。栄養補給等の目的で輸液を投与する際に使用され、医療スタッフが安心して使える誤刺防止機能付き留置針「スーパーキャス」などの製品を市場に投入しています。

医療機関等への製品販売により収益を得ています。人工透析類と同様に、東郷メディキットなどの連結子会社で製造された製品を、同社が仕入れて販売を行っています。

インターベンション類


血管造影や血管内治療に用いるシースイントロデューサーやカテーテル等を提供しています。頭、腹部、心臓などを対象部位とし、がんや狭心症の診断および治療に必要とされる医療器具を展開しています。

医療機関への製品販売により収益を得ています。自社製品の開発製造を東郷メディキット等が担うほか、子会社のBolt Medicalによる脳血管用誘導補助器具の研究開発なども進められています。

その他


新たながん治療や高精度医療のニーズに応えるため、放射線科・泌尿器科領域向けの生検針などを提供しています。透析患者のシャント管理を目的とした電子聴診器の販売等も手掛けています。

医療機関への製品販売により収益を得ており、同社および関連子会社が開発・販売を推進しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は安定的な成長を続けており、増収基調を維持しています。経常利益は毎期40億円台の高水準で推移しており、約19%〜23%の高い利益率を確保しています。当期純利益も概ね安定して推移しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 201億円 216億円 219億円 226億円 238億円
経常利益 45億円 42億円 48億円 47億円 45億円
利益率(%) 22.6% 19.3% 21.9% 20.7% 18.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 17億円 17億円 25億円 28億円 30億円

(2) 損益計算書


売上高、売上総利益ともに増加傾向にあり、順調な事業拡大が伺えます。一方で、売上総利益率は微減傾向にあり、販売費及び一般管理費の増加等により営業利益はやや減少しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 226億円 238億円
売上総利益 87億円 90億円
売上総利益率(%) 38.4% 37.9%
営業利益 45億円 43億円
営業利益率(%) 19.9% 17.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が12億円(構成比26%)、運賃及び荷造費が6億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


人工透析類はやや減少したものの、北米など世界的な需要の高まりを捉えた静脈留置針類が大きく伸長しました。インターベンション類も高付加価値製品の販売拡大により増収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
人工透析類 80億円 78億円
静脈留置針類 74億円 84億円
インターベンション類 71億円 75億円
その他 0.1億円 0.3億円
連結(合計) 226億円 238億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 36億円 47億円
投資CF -39億円 -13億円
財務CF -19億円 -18億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は87.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「医療機器メーカーとして、医療を通じて社会に貢献し、共感いただける企業を目指します。」を経営理念として掲げています。また、「信頼と共感」を世界の医療従事者から獲得すべく、安全性・有効性に優れた日本発の医療機器を普及させることをビジョンとしています。

(2) 企業文化


「創造・迅速・確実」をモットーとした行動指針を定めています。高品質の製品・サービスを提供し、日々進歩する医療現場のために有益な提案を実行することを重視しています。また、多様な人材が活躍できる職場づくりや環境負荷の低減などのサステナビリティに関する取り組みも推進しています。

(3) 経営計画・目標


2029年3月期を最終年度とする新中期経営計画「NEXT 300 Neo」を策定し、成長性と収益性の向上に取り組んでいます。

* 売上高:290~320億円
* 売上高年平均成長率:5.5~8.5%
* 営業利益率:18%程度

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画の目標達成に向け、インターベンションを中心に自社製品の開発を進めるとともに、付加価値の高い製品の提供に努めています。また、海外展開においては欧米市場および中国市場を中心に販売を強化し、生産面では効率性をさらに高めて原価低減に取り組む方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは「多様な人財が活躍できる職場づくり」を重要課題(マテリアリティ)の1つとして特定しています。「やりがいと誇りを持てる組織風土の醸成」および「ダイバーシティ&インクルージョン」の実現を重点テーマとし、女性が働きやすい職場づくりや人事制度の改善など社内環境の整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.1歳 13.7年 6,344,778円

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 60.7%
男女賃金差異(正規雇用) 60.8%
男女賃金差異(パート等) 53.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医療制度改革による法的規制

医療費抑制のための特定保険医療材料の償還価格改定により、販売価格が低下するリスクがあります。また、販売先各国における法令・規制が強化される傾向にあり、各種許認可が適時に得られない場合は業績に影響する可能性があります。

(2) 品質保証と製造物責任

高度な技術を要する医療機器を取り扱うため、徹底した品質管理体制を敷いていますが、製造や輸送段階での不良品発生や医療事故が訴訟や製品回収に発展し、多額の費用が発生するリスクがあります。

(3) 原材料・部品の供給と価格高騰

製品の大半を占めるプラスチックやステンレス鋼の調達価格が、原油価格や外部環境の変化により高騰するリスクがあります。また、外部業者からの部品供給に支障が出た場合、製品の生産・出荷が遅延する可能性があります。

(4) 生産拠点の集中

開発・製造の大部分を担う東郷メディキットの主な工場が宮崎県日向市に集中しており、地震や台風、水害などの災害で生産活動が停止し、復旧に時間を要した場合、製品供給が滞り業績に影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。