※本記事は、メディキット株式会社 の有価証券報告書(第42期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. メディキットってどんな会社?
人工透析用留置針や静脈留置針などの血管・血液関連分野に強みを持つ、研究開発型の医療機器メーカーです。
■(1) 会社概要
1973年に宮崎県で人工透析用留置針の製造を目的に設立されました。1976年には国内初のフッ素樹脂を用いた一体血管留置針を開発し、技術力を確立。2005年にジャスダック証券取引所へ上場を果たしました。2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行し、同年にはBolt Medicalを完全子会社化するなど、事業基盤の強化を進めています。
同社グループは連結従業員数989名、単体従業員数178名の体制で運営されています。大株主構成については、筆頭株主はナカジマコーポレーション、第2位は証券業務を行うゴールドマン・サックス、第3位は資産管理業務を行うNORTHERN TRUSTとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ナカジマコーポレーション | 36.54% |
| GOLDMAN,SACHS & CO.REG | 9.40% |
| NORTHERN TRUST CO.(AVFC) RE FIDELITY FUNDS | 6.50% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は景山 洋二氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 景山 洋二 | 代表取締役社長 | 1986年同社入社。東日本営業部長、営業部長西日本担当などを歴任。常務取締役を経て2021年6月より現職。 |
| 中島 崇 | 取締役副社長管理部門担当 | 1995年同社入社。経営企画室担当部長などを経て、2013年東郷メディキット代表取締役社長に就任(現任)。2021年6月より現職。 |
| 堀之内 広 | 取締役営業管理部担当薬事/教育担当 | 1986年同社入社。西日本営業部長、顧客サービス部長などを歴任。2015年取締役就任。2021年6月より現職。 |
| 中島 史博 | 取締役経営企画担当 | 朝日生命保険、東京海上日動火災保険を経て2017年同社入社。執行役員経営企画室担当部長を経て2019年6月より現職。 |
社外取締役は、吉田 安幸(元旭化成顧問)、大瀧 敦子(石本哲敏法律事務所パートナー弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「医療機器の製造・販売」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 人工透析類
慢性腎不全の血液透析時に使用する人工透析用留置針を中心とした製品の製造・販売を行っています。透析は頻繁に行われるため、穿刺時の苦痛が少なく血管を傷めない針が求められます。主要製品は「ハッピーキャス」です。
収益は、国内外の医療機関や代理店等からの製品販売代金によって得ています。製造は連結子会社の東郷メディキットやMedikit Vietnamが行い、販売は主に同社が担っています。
■(2) 静脈留置針類
輸血や輸液を末梢静脈経由で投与する際に使用する静脈留置針の製造・販売を行っています。医療事故防止の観点から誤刺防止機能付き製品の需要が高まっており、市場ニーズを反映した製品を提供しています。主要製品は「スーパーキャス」です。
収益は、医療機関等への製品販売代金から得ています。開発・製造は主に連結子会社の東郷メディキットが行い、同社が仕入れて販売する体制をとっています。
■(3) インターベンション類
血管造影や血管内治療に用いるシースイントロデューサーやカテーテル等の製造・販売を行っています。これらは血管を通じて病変部の検査や治療を行う際に使用される高度な医療機器です。主要製品には「スーパーシース」などがあります。
収益は、製品の販売代金から得ています。製造は連結子会社の東郷メディキットなどが担い、同社が国内外のユーザーへ販売を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は193億円から226億円へと着実に増加傾向にあります。経常利益は40億円台後半で推移しており、安定した収益性を維持しています。当期利益についても25億円から30億円前後の水準を確保しており、堅調な業績推移と言えます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 193億円 | 201億円 | 216億円 | 219億円 | 226億円 |
| 経常利益 | 39億円 | 45億円 | 42億円 | 48億円 | 47億円 |
| 利益率(%) | 20.0% | 22.6% | 19.3% | 21.9% | 20.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 27億円 | 30億円 | 29億円 | 31億円 | 30億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期の219億円から226億円へ増加しましたが、売上原価の上昇により売上総利益は微減となりました。これに伴い、売上総利益率も40.1%から38.4%へと低下しています。営業利益についても前期の47億円から45億円へと減少し、営業利益率は20%前後を維持しているものの、やや低下傾向が見られます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 219億円 | 226億円 |
| 売上総利益 | 88億円 | 87億円 |
| 売上総利益率(%) | 40.1% | 38.4% |
| 営業利益 | 47億円 | 45億円 |
| 営業利益率(%) | 21.4% | 19.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が12億円(構成比28%)、運賃及び荷造費が5億円(同13%)を占めています。売上原価については、商品及び製品が139億円(構成比100%)を占めています。
■(3) セグメント収益
当期は、主力の人工透析類と静脈留置針類が伸長し、全体として増収となりました。人工透析類は4.7%増、静脈留置針類は8.4%増と好調でしたが、インターベンション類は海外販売契約の終了等の影響で3.1%減となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 人工透析類 | 76億円 | 80億円 |
| 静脈留置針類 | 68億円 | 74億円 |
| インターベンション類 | 74億円 | 71億円 |
| その他 | 0.1億円 | 0.1億円 |
| 連結(合計) | 219億円 | 226億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFで得た資金を元に、設備投資などの投資活動を行いつつ、配当支払いや自己株式取得などの財務活動で還元を行う、典型的な「健全型」のキャッシュ・フロー構造となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 48億円 | 36億円 |
| 投資CF | 32億円 | -39億円 |
| 財務CF | -66億円 | -19億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.8%で市場平均(スタンダード市場7.2%)をやや下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は86.1%で市場平均(スタンダード市場製造業57.5%)を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「医療機器メーカーとして、医療を通じて社会に貢献し、共感いただける企業を目指します」という経営理念を掲げています。また、ビジョンとして「信頼と共感」を世界の医療従事者から獲得すべく、安全性・有効性に優れた日本発の医療機器を普及させることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「創造・迅速・確実」を行動指針のモットーとしています。高品質の製品・サービスを提供し、日々進歩する医療現場のために有益な提案を実行することを重視しており、株主や医療関係者からの信頼を高める姿勢を企業文化の根底に置いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、新中期経営計画“NEXT 300 Neo”において、2028年度(2029年3月期)に向けた数値目標を掲げています。
* 売上高:290~320億円
* 売上高年平均成長率:5.5~8.5%
* 営業利益率:18%程度
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は目標達成のため、インターベンション分野を中心とした自社製品開発と高付加価値製品の提供、欧米・中国市場を中心とした海外展開の強化、および生産効率化による原価低減を重点課題としています。また、医療を通じた社会貢献や多様な人財が活躍できる職場づくりなど、5つのマテリアリティ(重要課題)への取り組みも推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「多様な人財が活躍できる職場づくり」をマテリアリティの一つに掲げています。具体的には、「やりがいと誇りを持てる組織風土の醸成」および「ダイバーシティ&インクルージョン」を推進しており、フレックスタイム制の導入や女性活躍推進プロジェクトなどを通じて、働きやすい環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.0歳 | 13.9年 | 6,182,579円 |
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.4% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 63.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | 69.2% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 医療制度改革による価格低下リスク
日本の医療環境の変化に伴い、厚生労働省による特定保険医療材料の償還価格改定が原則2年に1度実施されています。これにより保険償還価格および製品販売価格が低下傾向にあり、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、生産効率化による原価低減や高付加価値製品の販売に注力しています。
■(2) 原材料価格の変動リスク
製品の主要原材料であるプラスチックやステンレス鋼の調達価格は、ナフサや原油価格に連動する傾向があります。これらの価格が高騰した場合、業績に影響を与える可能性があります。同社グループは複数業者からの購買や新規ルート開拓により、調達コストの削減に努めています。
■(3) 生産拠点の集中リスク
主力製品の開発・製造を担う連結子会社の東郷メディキットの主要工場は宮崎県日向市に集中しています。地震や津波等の災害により同拠点が被災した場合、生産停止や出荷遅延が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、ベトナム工場での生産増加や津波避難棟の活用、在庫の分散保管などのリスク分散を進めています。



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