ジャパン・ティッシュエンジニアリング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジャパン・ティッシュエンジニアリング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東証グロース市場に上場しており、再生医療製品の開発・製造・販売を行う再生医療製品事業を主力としています。当期は再生医療製品事業が伸長したものの、受託事業の減収や研究開発費の増加が響き、減収および営業赤字・経常赤字・最終赤字となりました。


#ジャパン・ティッシュエンジニアリング転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリングの有価証券報告書(第27期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ジャパン・ティッシュエンジニアリングってどんな会社?


同社は、組織再生による根本治療を目指す再生医療のパイオニアであり、国内初の再生医療等製品を上市した企業です。

(1) 会社概要


同社は1999年、ティッシュエンジニアリング(組織工学)を基盤技術として設立されました。2007年には国内初となる再生医療等製品「自家培養表皮ジェイス」の承認を取得し、JASDAQ(現 東証グロース)へ上場しました。2012年には整形外科領域で「自家培養軟骨ジャック」、2020年には眼科領域で「自家培養角膜上皮ネピック」の承認を取得するなど、製品ラインナップを拡充しています。2021年には帝人の子会社となり、グループの経営資源を活用した事業展開を進めています。

同社(単体)の従業員数は204名です。筆頭株主は親会社である帝人で、第2位は眼科医療機器などを手掛けるニデック、第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
帝人 57.71%
ニデック 10.40%
前田 陽子 0.84%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は山田一登氏が務めています。なお、社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
山田一登 代表取締役社長執行役員 2000年同社入社。品質管理や品質保証の担当を経て、信頼性保証部長などを歴任。2025年より現職。
大須賀俊裕 取締役専務執行役員 1986年ニデック入社。1999年同社へ出向し、経営管理部長、信頼性保証部長、営業部長、生産統括本部長などを歴任。2021年より現職。
中野貴之 取締役(非業務執行) 武田薬品工業を経て2021年帝人入社。同社再生医療新事業部長などを務める。現在は帝人ミッション・エグゼクティブ等を兼務し、2021年より現職。
若林晃伸 取締役執行役員 2007年帝人クリエイティブスタッフ入社。帝人ファーマや帝人経営戦略部を経て2023年同社へ出向。戦略企画室長を務め、2025年より現職。
半田悌彦 常勤監査役 1981年ニデック入社。1999年同社へ出向し、法務企画部長、品質保証部長、経理部長、監査室長などを歴任。2025年より現職。


社外取締役は、正井俊之(元ニコン執行役員)、北島康雄(社会医療法人厚生会中部国際医療センター名誉院長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「再生医療製品事業」、「再生医療受託事業」、「研究開発支援事業」を展開しています。

(1) 再生医療製品事業


ティッシュエンジニアリングを利用した再生医療等製品を開発し、医療機関向けに製造販売しています。主な製品には、重症熱傷などを対象とした「自家培養表皮ジェイス」、外傷性軟骨欠損症などを対象とした「自家培養軟骨ジャック」、角膜上皮幹細胞疲弊症を対象とした「自家培養角膜上皮ネピック」などがあります。

収益は、これらの製品を医療機関へ販売することによる対価として得ています。運営は主に同社が行っています。

(2) 再生医療受託事業


製薬企業やアカデミア向けに、再生医療等製品の開発製造受託(CDMO)や開発業務受託(CRO)サービスを提供しています。また、再生医療等安全性確保法に基づく医療機関へのコンサルティングや、特定細胞加工物の製造受託も行っています。

収益は、委託元からの受託料や、開発段階に応じたマイルストン収入、売上に連動したロイヤルティ収入などで構成されます。運営は同社が行っており、一部は帝人グループと連携しています。

(3) 研究開発支援事業


再生医療技術を応用した研究用ヒト培養組織の開発・製造・販売を行っています。主な製品として、ヒト3次元表皮モデル「エピ・モデル」や角膜モデルなどがあり、これらは化粧品や医薬品の安全性試験における動物実験代替法として利用されています。

収益は、研究機関や企業への製品販売代金として得ています。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は20億円台前半から中盤で推移しています。利益面では、2024年3月期に黒字化を達成しましたが、当期(2025年3月期)は再び赤字に転落しました。利益率は変動が大きく、安定的な収益基盤の確立が課題となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 23億円 21億円 20億円 25億円 25億円
経常利益 -4.6億円 -4.9億円 -7.3億円 1.5億円 -2.3億円
利益率(%) -20.5% -23.5% -35.7% 5.8% -9.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -4.7億円 -5.0億円 -7.3億円 1.4億円 -2.6億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較すると、売上高は微減となりました。売上総利益率が低下したことに加え、販売費及び一般管理費が増加したことで、営業損益は赤字に転じました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 25億円 25億円
売上総利益 17億円 15億円
売上総利益率(%) 67.2% 61.5%
営業利益 1.4億円 -2.4億円
営業利益率(%) 5.7% -9.7%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が5.1億円(構成比29%)、給料及び手当が4.8億円(同27%)を占めています。また、製品製造原価においては、労務費が50%、材料費が27%を占めています。

(3) セグメント収益


再生医療製品事業は、主力製品の販売が堅調で増収となりましたが、再生医療受託事業は親会社グループ関連の案件減少等により減収となりました。研究開発支援事業は微増収でした。全社費用等の調整額が各セグメント利益を上回り、全体として営業損失となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
再生医療製品事業 14億円 15億円 2.7億円 2.2億円 14.6%
再生医療受託事業 9億円 7億円 6.1億円 4.1億円 57.7%
研究開発支援事業 2億円 2億円 0.9億円 0.7億円 27.2%
連結(合計) 25億円 25億円 1.4億円 -2.4億円 -9.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-4.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は89.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「医療の質的変化をもたらすティッシュエンジニアリングをベースに、組織再生による根本治療を目指し、21世紀の医療そのものを変えてゆく事業を展開する」ことを設立趣旨としています。また、「再生医療をあたりまえの医療に」をビジョンに掲げ、再生医療の産業化を通じて社会から求められる企業となることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は行動指針として、一貫性と柔軟性のバランス感覚を持つこと、勇気を持って変化に挑戦すること、異なる文化や考え方を尊重すること、徹底的に現場を重視すること、そして社員として深く考え行動することを掲げています。また、サステナビリティ方針のもと、持続可能な社会の実現に貢献し、企業価値の向上に努める文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、中期的な目標として以下の数値を掲げています。

* 売上高:50億円
* 営業利益率:10%超

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、既存事業の基盤強化、新規自家製品の上市による市場拡大、そして同種製品やがん免疫治療等の新領域への展開を成長戦略として掲げています。具体的には、自家培養軟骨「ジャック」の適応拡大や、メラノサイト含有自家培養表皮「ジャスミン」の普及、他家(同種)培養表皮の開発推進などに注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、ビジョン実現のために多様な人材の専門性向上と自己成長を重視しています。社員一人ひとりの背景や個性に応じた育成を行い、キャリア形成や自己啓発を支援しています。また、ライフステージの変化に対応できる多様な働き方を整備し、社員が生き生きと働ける職場環境の実現を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.4歳 11.3年 6,127,905円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 34.0%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 73.5%
男女賃金差異(正規) 74.5%
男女賃金差異(非正規) 48.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(60ポイント)、正社員離職率(6.4%)、有給休暇取得率(76.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場規模の限定性と変動性


同社製品の対象となる市場規模は限定的であり、一定のシェアを確保しても、対象患者の発生状況や他社の参入により売上高が大きく変動する可能性があります。これに対し、医療機関との連携強化や周知活動により影響の最小化を図っています。

(2) 再生医療受託事業の変動リスク


再生医療受託事業において、委託元の開発状況や方針変更などにより、契約の解約や規模縮小が発生する可能性があります。同社は委託元と密に連携し、意向や計画を把握することで適切な対応を行い、影響を抑えるよう努めています。

(3) 法規制および行政方針の変更


予期せぬ法改正や医療行政の方針変更などの環境変化が生じた場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。同社は薬事承認に関するノウハウを蓄積し、規制当局と緊密に相談を行うことで対応しています。

(4) 製品および原材料の安定供給


代替の利かない原材料や資材を使用しているため、調達困難な状況になった場合、製品製造に支障をきたす可能性があります。サプライヤーとの安定供給契約や代替品の検討、製造技術の開発などを通じてリスク低減に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。