ジャパン・ティッシュエンジニアリング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジャパン・ティッシュエンジニアリング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジャパン・ティッシュエンジニアリングは東京証券取引所グロース市場に上場し、再生医療製品事業、再生医療受託事業、ラボサイト事業を展開しています。業績トレンドとしては、研究開発への先行投資などにより営業損失を計上しており、直近では減収および赤字幅拡大の傾向にあります。


※本記事は、株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリングの有価証券報告書(第28期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ジャパン・ティッシュエンジニアリングってどんな会社?


日本初の再生医療等製品を開発し、組織再生による根本治療を目指す企業です。

(1) 会社概要


1999年にティッシュエンジニアリングをベースとする再生医療事業を目的に設立されました。2007年には日本初の再生医療等製品である自家培養表皮の製造承認を取得し、株式を上場しています。2014年に再生医療受託事業を開始し、2021年には公開買付けによって帝人のグループ企業となりました。

現在の従業員数は単体で200名となっています。同社の筆頭株主は事業会社である帝人で、第2位も同じく事業会社であるニデックです。長年にわたって培ってきた細胞培養のノウハウを活かし、再生医療の産業化を牽引するリーディングカンパニーとして事業を展開しています。

氏名 持株比率
帝人 57.71%
ニデック 10.40%
前田 陽子 0.84%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は山田一登氏が務めています。全取締役6名のうち、社外取締役は2名です。

氏名 役職 主な経歴
山田一登 代表取締役社長執行役員 2000年同社入社。信頼性保証部長や副社長執行役員などを経て、2025年6月より現職。
大須賀俊裕 取締役専務執行役員 ニデックを経て同社に入社。経営管理部長や営業推進本部長を歴任し、2021年6月より現職。
若林晃伸 取締役執行役員 帝人ファーマなどを経て、2023年に帝人から出向。戦略企画室長等を務め、2025年10月より現職。
中野貴之 取締役(非業務執行) 武田薬品工業を経て帝人に入社。帝人のコーポレート新事業部門長等を務め、2021年6月より現職。


社外取締役は、正井俊之(元ニコン執行役員)、北島康雄(一般財団法人誠仁会理事長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「再生医療製品事業」「再生医療受託事業」および「ラボサイト事業」を展開しています。

再生医療製品事業


ヒトの細胞を培養して組織や臓器を作り出す技術を活用し、医療機関向けに再生医療等製品を提供しています。自家培養表皮「ジェイス」や自家培養軟骨「ジャック」、自家培養角膜上皮「ネピック」など、主に患者本人の細胞を培養して移植する自家移植用の製品を開発・製造しています。

収益源は、医療機関向けに製造販売する再生医療等製品の販売代金です。主に保険適用された製品を提供し、患者の治療に使用されることで売上を計上しています。事業の運営はジャパン・ティッシュエンジニアリングが主体となって行っており、販売の一部においてはニデックなどの提携先と連携しています。

再生医療受託事業


再生医療等製品の実用化を目指すアカデミアや企業向けに、開発製造受託(CDMO)サービスおよび開発業務受託(CRO)サービスを提供しています。シーズの開発段階から実用化後までをシームレスに支援するほか、再生医療の提供機関に対するコンサルティングや特定細胞加工物の製造受託も実施しています。

収益源は、顧客である企業や研究機関からの受託開発費や製造受託費、およびコンサルティング報酬です。開発段階の設計から商用生産までの支援を一気通貫で請け負うことで収益を得ています。事業の運営はジャパン・ティッシュエンジニアリングが行っており、CDMO事業においては帝人リジェネットと連携して展開しています。

ラボサイト事業


医薬品や化粧品の開発において動物実験の代替となる、研究用ヒト培養組織「ラボサイトシリーズ」を開発・製造・販売しています。ヒトの正常な表皮細胞を培養して重層化した3次元表皮モデルなどを揃え、化学物質の安全性・有効性評価などの用途向けに提供しています。

収益源は、日用品、医薬品、化粧品および化学品メーカーなどの企業に対する研究用培養組織モデルや作製キットの販売代金です。国際的なテストガイドラインに収載された標準試験法用のモデルを国内外の顧客に提供することで収益を得ています。事業の運営はジャパン・ティッシュエンジニアリングが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の単体業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移をみると、売上高は20億円から25億円の間で推移していますが、当期は減収となっています。利益面では研究開発費や事業基盤強化への先行投資により経常損失が続いており、一時的に黒字化した期もありましたが、直近では赤字幅が拡大する状況にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 21.0億円 20.3億円 25.1億円 24.6億円 21.8億円
経常利益 -4.9億円 -7.3億円 1.5億円 -2.3億円 -5.4億円
利益率(%) -23.5% -35.7% 5.8% -9.5% -24.6%
当期純利益 -5.0億円 -7.3億円 1.4億円 -2.6億円 -7.3億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少しており、これに伴って売上総利益も減少しています。研究開発活動や事業拡大に向けた先行投資が継続しているため、営業赤字幅が拡大しており、収益性の改善が急務となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 24.6億円 21.8億円
売上総利益 15.1億円 12.7億円
売上総利益率(%) 61.5% 58.1%
営業利益 -2.4億円 -5.5億円
営業利益率(%) -9.7% -25.2%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が7.7億円(構成比42%)、研究開発費が5.0億円(同27%)を占めています。売上原価の主な内訳としては、当期製品製造原価のうち労務費が3.6億円(構成比50%)、材料費が2.0億円(同27%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の再生医療製品事業は、既存製品の対象患者一巡などの影響により減収となりました。再生医療受託事業も特定顧客のスポット案件剥落などが響き売上が減少したものの、ラボサイト事業は海外展開の進展により増収を果たしています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
再生医療製品事業 14.9億円 13.5億円
再生医療受託事業 7.1億円 5.5億円
ラボサイト事業 2.5億円 2.8億円
連結(合計) 24.6億円 21.8億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはマイナス、投資CFはプラス、財務CFはゼロ(マイナス同等)の状況です。本業が低迷し、定期預金の払い戻し等の資産の取り崩しで資金を確保しており、事業の見直しが迫られる「事業検討型」のキャッシュ・フローとなっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -1.5億円 -4.9億円
投資CF -2.3億円 2.5億円
財務CF 0.0億円 0.0億円


企業の財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は89.6%で市場平均を上回っています。一方、当期は純損失を計上しているためROE(自己資本利益率)は算出されておらず、収益力の改善が課題となっています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「再生医療の産業化を通じ、社会から求められる企業となる。法令・倫理遵守の下、患者様のQOL向上に貢献することにより、人類が生存する限り成長し続ける企業となる」ことを理念に掲げています。また、「再生医療をあたりまえの医療に」というビジョンのもと、組織再生による根本治療を目指し、21世紀の医療そのものを変えていく事業を展開しています。

(2) 企業文化


同社の行動指針には、「一貫性と柔軟性のバランス感覚を持つ」「勇気を持って変化に挑戦する」「異なる文化や考え方を尊重する」「徹底的に現場を重視する」「J-TECを代表する社員として深く考え行動する」の5つが掲げられています。多様な人材を集め、一人ひとりが自分のキャリアに向き合い、将来を見据えて挑戦していく社内風土の醸成を目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、既存事業の売上・利益を最大化して黒字体質の基盤を確立し、新たな製品・領域への展開を実現することを目指しています。中期的な数値目標として以下を掲げています。

* 売上高50億円
* 営業利益率10%超

(4) 成長戦略と重点施策


各事業の収益基盤確立と新領域開拓を進めます。再生医療製品事業では、変形性膝関節症への適応拡大を受けた「ジャック」の販売拡大や、他家培養表皮の開発に注力します。再生医療受託事業では、商用生産を見据えた高付加価値サービスへの移行を図ります。

* 主力製品の適応拡大と販売体制強化
* 新規パイプラインの上市
* 海外市場への展開と安定供給体制の構築

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「再生医療をあたりまえの医療に」というビジョンの実現に向け、多様な背景を持つ人材を集め、専門性の深化と自己成長を支援しています。個々の専門性の向上や、仕事を通じた自己成長の促進、多様な働き方が選べる「ワークライフマネジメント」の推進により、社員が安心して生き生きと働ける職場環境の実現と、中長期的な企業価値の向上を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.7歳 12.0年 6,112,834円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 36.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 76.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 77.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 43.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(64ポイント)、正社員離職率(2.0%)、有給休暇取得率(82.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 対象患者数や競合参入による市場変動


同社の再生医療等製品の市場規模は限定的です。医療機関と連携して対象患者を適切に把握していますが、患者の発生状況や他社の参入によって売上高が大きく変動するリスクがあります。

(2) 法改正や医療行政の環境変化


予測できない法改正や医療行政の方針変更等による急激な環境変化が生じた場合、事業に影響を及ぼす可能性があります。薬事承認の経験を活かし、規制当局と緊密に相談して影響の最小化を図っています。

(3) 特定の原材料等の調達難による製造停止


代替の利かない原材料や資材等を一定数使用しているため、これらが調達できない場合、自社製品や受託製品の製造が中止となるリスクがあります。サプライヤーとの安定供給契約や代替品の選定を進めています。

(4) 高度な専門人材の流出


競合企業の増加やテレワークの普及による在宅希望者の離職などにより、専門人材が流出するリスクがあります。専門性の高い従業員の離職は育成に時間がかかるため、働きがいのある業務設計や制度整備に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。