タカラスタンダード 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

タカラスタンダード 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

タカラスタンダードは東京証券取引所プライム市場に上場する、キッチンや浴室などの製造販売を手掛ける住宅設備機器の総合メーカーです。主力はホーロー技術を活かした水回り設備で、リフォームや新築向けに展開しています。直近の業績は、売上高が2,528億円、営業利益が191億円と過去最高を更新し、増収増益で推移しています。


※本記事は、タカラスタンダード株式会社の有価証券報告書(第152期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. タカラスタンダードってどんな会社?


独自のホーロー技術を活かした住宅設備機器の製造販売を手掛ける総合メーカーです。

(1) 会社概要


1912年に日本エナメルとして設立し、ホーロー鉄器の製造販売を開始しました。1957年にタカラの商標で流し台の製造販売に着手し、1971年に現在のタカラスタンダードへ商号変更しています。その後も順次商品の多角化を進め、2025年には初の海外拠点となる台湾支店を設立し、2026年には家事代行サービスの提供を開始するなど事業領域を拡大しています。

同社グループの従業員数は、連結で6,505名、単体で6,445名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主はタカラベルモントアセットマネジメントで、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行となっています。また、第3位にはタカラスタンダード持株会が名を連ねています。

氏名 持株比率
タカラベルモントアセットマネジメント 10.28%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.32%
タカラスタンダード持株会 8.40%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長社長執行役員を小森大氏が務めています。取締役11名のうち3名が社外取締役となっています。

氏名 役職 主な経歴
小森大 代表取締役社長社長執行役員 1994年同社入社。東京支社長、執行役員、常務執行役員、取締役常務執行役員などを歴任。2024年より現職。
渡辺岳夫 代表取締役会長 1994年同社入社。取締役、常務、専務を経て、2003年より代表取締役社長、2012年より社長執行役員を歴任。2024年より現職。
井東洋司 代表取締役副会長執行役員 1977年同社入社。取締役、常務、専務、取締役副社長、代表取締役副社長、副社長執行役員を経て、2020年より代表取締役、2024年より現職。
白坂佳道 取締役副社長執行役員管理本部管掌 1984年同社入社。執行役員総務部長、常務執行役員、専務執行役員管理本部長、取締役専務執行役員などを経て、2026年より現職。
吉川秀隆 取締役 1974年タカラベルモント入社。取締役、常務を経て、1989年より同社代表取締役社長。1996年より同社取締役、1999年よりタカラベルモント代表取締役会長兼社長として現職。


社外取締役は、前田和美(元日本ハイアット人事・総務担当)、澤村環(元アフラック生命保険執行役員)、飯村幸生(元東芝機械代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「住宅設備関連」および「その他」事業を展開しています。

住宅設備関連


同社グループの中核事業として、キッチン、浴室、洗面化粧台などの住宅設備機器の開発、製造、販売を行っています。システムキッチン、システムバスを中心に、独自のホーロー技術や木製パネルを活用した幅広い製品ラインナップを展開し、新築およびリフォーム市場の顧客に対して多様な空間提案を行っています。

主に顧客である代理店、販売店、ゼネコンなどに製品を販売することで収益を得ています。事業の運営はタカラスタンダードおよび連結子会社のタカラ化工が共同で行っており、タカラ化工がプラスチック成型品や複合材料などの部品製造を担い、タカラスタンダードが製品の最終組み立てと販売を担当しています。

その他


同社が保有する事業拠点の跡地などを活用し、不動産賃貸事業を展開しています。

主に関連会社以外の外部テナントに対して物件を貸し出し、賃貸収入を得ることで収益を確保しています。本事業の運営はタカラスタンダードが単独で行い、資産の有効活用による収益基盤の多様化と安定化を図っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5年間で2,116億円から2,528億円へと順調に拡大しており、安定した成長基盤を築いています。経常利益も149億円から197億円へと増加傾向にあり、利益率も5%台から7%台へと改善が進んでいます。収益構造の改革や資材コストの低減効果が業績の向上に寄与していることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,116億円 2,274億円 2,347億円 2,434億円 2,528億円
経常利益 149億円 115億円 128億円 160億円 197億円
利益率(%) 7.0% 5.1% 5.4% 6.6% 7.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 109億円 84億円 95億円 111億円 151億円

(2) 損益計算書


売上高は前期から約94億円の増収となり、それに伴い売上総利益も拡大しています。資材価格や物流費の上昇といったコスト増加要因がありましたが、生産性の向上やマネジメントの強化により、営業利益は前期比で22%以上増加し、営業利益率も改善しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,434億円 2,528億円
売上総利益 845億円 901億円
売上総利益率(%) 34.7% 35.7%
営業利益 156億円 191億円
営業利益率(%) 6.4% 7.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料賃金及び賞与手当が289億円(構成比41%)、運賃及び保管荷役料が143億円(同20%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の住宅設備関連事業は、新築市場での戸建や集合住宅向けの販売が好調に推移し、リフォーム市場でも顧客ニーズに沿った提案が浸透したことで増収増益となりました。その他の不動産賃貸事業等の売上は子会社の清算により減少したものの、不動産収入の増加に伴い増益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
住宅設備関連 2,431億円 2,525億円 154億円 189億円 7.5%
その他 2億円 3億円 2億円 2億円 88.2%
調整額 -1億円 -1億円 - - -
連結(合計) 2,434億円 2,528億円 156億円 191億円 7.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 234億円 254億円
投資CF -85億円 -125億円
財務CF -65億円 -195億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.8%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、企業理念として「大切な3つのStandard(スタンダード)」を掲げています。具体的には、「Living Standard(住生活水準)」としてホーロー技術の進化を通じた心地良い暮らしの提供、「Ethical Standard(倫理規範)」として社会や環境と調和した持続的な成長、「Quality Standard(品質基準)」として顧客の信頼を第一とした製品・サービスの品質向上を目指しています。

(2) 企業文化


長期ビジョンとして「ホーローと共に、光り輝く魅力ある企業へ」を掲げています。「独自性」を追求して特別な価値を提供することや、「新たな事業領域」に挑戦して顧客を創造する姿勢を重視しています。また、従業員にとって「働きがい」「生きがい」のある企業であり、社会全体から「信頼・尊敬」される企業文化の醸成を全社的な行動指針として据えています。

(3) 経営計画・目標


2024年度を初年度とする3ヵ年計画「中期経営計画2026」において、財務および非財務の両面から明確な経営指標を定めています。持続的な企業価値向上に向けて、以下の数値目標の達成を目指しています。

* 売上高:2,700億円(2027年3月期)
* 営業利益:270億円(2027年3月期)
* 営業利益率:10%(2027年3月期)
* ROE:10%(2027年3月期)

(4) 成長戦略と重点施策


「変革への再挑戦」をテーマに、収益構造改革、財務戦略、サステナビリティ戦略の3つを成長戦略の柱としています。国内事業ではデジタル技術を活用して自動化や省人化を推進し、同時に海外展開や新規事業への投資を加速させます。

* CO2排出量:41,000tCO2(対2020年度比30%削減、2031年3月期)
* 従業員満足度:80%(2027年3月期)
* 女性管理職比率:15%(2027年3月期)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人的資本を最重要の経営資本と位置づけ、全社共通の求める人材像として「チャレンジ人財」「育成/成長人財」「自律自走人財」を定義しています。人事制度では一般職を廃止して総合職に統合し、評価制度と連携させることで従業員の主体的な成長を促進しています。多様な個性を尊重し、働きがいのある職場環境を整備することでイノベーションを創出する組織風土の醸成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.1歳 14.8年 6,285,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.9%
男性育児休業取得率 95.4%
男女賃金差異(全労働者) 69.0%
男女賃金差異(正規雇用) 69.8%
男女賃金差異(パート・有期) 75.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員満足度(77.8%)、新卒採用者に占める女性の割合(38.5%)、キャリア採用管理職比率(15.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 住宅市場の動向による影響


新設住宅着工戸数やリフォーム需要が著しく減少した場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、新築向けとリフォーム向けそれぞれの商品展開を充実させ、独自素材である高品位ホーローの訴求と全国展開するショールームを活用して競争力を高めています。

(2) 資材・原材料の調達リスク


中東情勢などの不安定な国際情勢や市況の高騰により、原材料価格が上昇したりサプライヤーからの供給が不足・停止したりするリスクがあります。対応策として、製造コストの削減による競争力強化のほか、複数社からの購買や与信管理の徹底を通じて安定した部材調達を図っています。

(3) 製品品質とアフターサービスに関するリスク


製品や施工、アフターサービスにおいて重大な事故が発生した場合、社会的信用の低下や業績への悪影響が懸念されます。同社は開発段階から品質管理に万全を期すとともに、万が一の事故発生時にも迅速かつ適切に対応できる社内体制の構築と充実に努めています。

(4) 情報セキュリティのリスク


生産や販売に関わる多数の顧客の個人情報を保有しており、サイバー攻撃や不正アクセス、システム障害などによって内部情報が流出・破損するリスクがあります。セキュリティ人材の育成や体制整備、外部機関との連携を強化し、厳正な情報管理を徹底して被害の防止に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。