※本記事は、株式会社グローブライド の有価証券報告書(第70期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. グローブライドってどんな会社?
世界的な釣具ブランド「DAIWA」を展開し、ゴルフやテニス用品も手掛けるライフタイム・スポーツ企業です。
■(1) 会社概要
1958年に大和精工として設立され、輸出用釣用品の製造販売を開始しました。1970年に東証第2部、1976年には東証第1部へ上場を果たしています。その後、ゴルフ事業やテニス事業へ進出し、2009年に現在のグローブライドへ商号を変更しました。現在は釣具業界のグローバルリーディングカンパニーとして確固たる地位を築いています。
同グループは連結従業員数6,994名、単体851名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は総合商社の丸紅、第3位は三井住友銀行となっており、機関投資家や取引先が主要株主として名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.96% |
| 丸紅 | 5.04% |
| 三井住友銀行 | 4.89% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長執行役員は鈴木一成氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 鈴木一成 | 代表取締役社長執行役員 | 1984年同社入社。経営企画室長、フィッシング営業本部国内営業部長、スポーツ営業本部長などを歴任。2017年より社長を務め、2022年より現職。 |
| 鈴江浩康 | 取締役常務執行役員フィッシング生産本部長兼品質、法務知財担当 | 1984年同社入社。フィッシング生産本部技術部長、ダイワセイコー(タイランド)社長などを経て、2020年常務取締役。2022年より現職。 |
| 大竹有司 | 取締役常務執行役員サステナビリティ・コーポレートコミュニケーション担当 | 1984年同社入社。フィッシング営業本部マーケティング部長などを経て、2018年常務取締役。サステナビリティ推進室長などを務め、2023年より現職。 |
| 谷口央樹 | 取締役常務執行役員管理本部長兼グローバルリスクマネジメント室長 | 1984年同社入社。ダイワ・コーポレーション副社長、経理部長などを経て、2022年取締役常務執行役員。2024年より現職。 |
| 小林忍 | 取締役常務執行役員フィッシング営業本部長 | 1989年同社入社。スポーツ営業本部長などを経て、2021年取締役。2023年より現職。 |
| 黒澤敬幸 | 取締役常勤監査等委員 | 1984年同社入社。経営企画室長、総務部長、デスコ社長などを歴任。2019年取締役総務部長を経て、2022年より現職。 |
社外取締役は、高橋智隆(ロボットクリエーター)、髙瀬正子(元シスコシステムズ専務執行役員)、村松高男(元高松国税局長)、松井巖(元福岡高等検察庁検事長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「米州」「欧州」「アジア・オセアニア」の4つの地域別セグメントで事業を展開しています。
■(1) 日本
釣用品、ゴルフ用品、テニス用品等の製造および販売を行っています。国内市場においては、旅行など他のレジャーへの消費分散や物価高騰の影響を受けつつも、新製品の投入やサービス提供を進めています。
主な収益源は、製品の販売による対価です。運営は主に同社が行い、ゴルフ用品はフォーティーン、釣用品販売はワールドスポーツ、テニス用品等はウインザー商事などが担っています。また、部品販売や修理はスポーツライフプラネッツが、製造は那須ダイワなどが行っています。
■(2) 米州
米国を中心とした北米地域において、釣用品等の販売を行っています。依然として高い金利水準の影響を受けつつも、バスフィッシング用品や海釣り用リールを中心に販売拡大に取り組んでいます。
主な収益源は、現地顧客への製品販売収入です。運営は、米国に拠点を置く連結子会社のダイワ・コーポレーションが担っています。
■(3) 欧州
欧州地域において、釣用品等の製造および販売を行っています。各国の金利高止まり等の影響を受ける中、地域ニーズに合った製品投入を行っています。
主な収益源は、欧州各国での製品販売収入です。運営は、英国のダイワ・スポーツ・リミテッドが製造・販売を行うほか、フランス、ドイツ、イタリア等に所在する販売子会社が各地域での販売を担っています。
■(4) アジア・オセアニア
アジアおよびオセアニア地域において、釣用品等の製造および販売を行っています。中国・韓国等の景気低迷の影響がある中、日本製の高級品や現地専用品を中心に売上拡大を図っています。
主な収益源は、同地域での製品販売収入です。運営は、タイ、ベトナム、中国等にある製造販売子会社や、オーストラリア、韓国、香港、台湾等の販売子会社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は第68期にピークを迎えた後、ここ2期は減少傾向にあります。利益面でも、第67期・第68期と比較して第69期以降は利益率が低下しており、直近の第70期は減収減益となりました。アウトドア・スポーツ需要の落ち着きやコスト増などが影響しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,003億円 | 1,207億円 | 1,346億円 | 1,260億円 | 1,240億円 |
| 経常利益 | 71億円 | 130億円 | 127億円 | 84億円 | 65億円 |
| 利益率(%) | 7.1% | 10.8% | 9.4% | 6.6% | 5.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 48億円 | 96億円 | 92億円 | 56億円 | 48億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微減となりましたが、売上総利益は微増を維持しました。しかし、販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益は減少しています。売上総利益率は改善傾向にありますが、販管費の負担増が利益を圧迫する構造となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,260億円 | 1,240億円 |
| 売上総利益 | 460億円 | 465億円 |
| 売上総利益率(%) | 36.5% | 37.5% |
| 営業利益 | 75億円 | 65億円 |
| 営業利益率(%) | 5.9% | 5.2% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が116億円(構成比29%)、荷造運搬費が48億円(同12%)、広告宣伝費が44億円(同11%)を占めています。売上原価については、商品及び製品期首たな卸高等の変動が含まれますが、当期商品仕入高や当期製品製造原価が主な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
全てのセグメントで黒字を確保していますが、利益の増減にはばらつきがあります。日本セグメントは増益となりましたが、米州およびアジア・オセアニアは減益となりました。特に米州は利益が大きく減少しています。欧州は前期の損失から黒字転換を果たしました。売上面では、米州と欧州が増収(円安影響含む)となった一方、日本とアジア・オセアニアは減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 684億円 | 662億円 | 41億円 | 45億円 | 6.8% |
| 米州 | 125億円 | 133億円 | 3億円 | 0.4億円 | 0.3% |
| 欧州 | 147億円 | 163億円 | -2億円 | 7億円 | 4.1% |
| アジア・オセアニア | 304億円 | 282億円 | 62億円 | 51億円 | 18.2% |
| その他 | - | - | - | - | - |
| 調整額 | -329億円 | -378億円 | -30億円 | -38億円 | - |
| 連結(合計) | 1,260億円 | 1,240億円 | 75億円 | 65億円 | 5.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
グローブライドは、事業運営に必要な資金の流動性と源泉を安定的に確保することを基本方針としています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主に事業活動から生み出される資金であり、投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資等に充てられる資金です。財務活動によるキャッシュ・フローは、資金調達や返済等に関わる資金の動きを示しています。
同社は、短期運転資金を自己資金と短期借入で賄い、本社管理の下でグループ間での資金融通も実施しています。設備投資や長期運転資金については、金融機関との長期固定資金調達やシンジケート・ローンを活用しています。現金及び現金同等物は前期末と同水準を維持しており、将来の資金調達は安定的に確保できる見込みです。今後も調達方法の多様化を図り、コストを抑えた安定資金の調達を進めていきます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 124億円 | 20億円 |
| 投資CF | -63億円 | -42億円 |
| 財務CF | -64億円 | 10億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「Feel the earth(地球を感じ、生きていく。)」をスローガンに掲げています。地球を舞台に、スポーツを通じて人生の豊かな時間を提供する「ライフタイム・スポーツ・カンパニー」として、自然とスポーツを愛する世界中の人々に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「5 Key Promises(5つの大切な約束)」を行動指針として掲げています。「Make it Wow!(人生の新たな感動を届ける)」「Open Our Minds(自由な発想・多様な価値観)」「Be Innovative(テクノロジーと感性で未知をデザイン)」「Be Earth-Friendly(地球を想い自然を未来へつなぐ)」「Play Fair(常にフェアであり続ける)」という5つの価値観を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2024年5月に「新・中期経営計画2026」を策定し、最終年度である2027年3月期の到達目標を設定しています。また、資本コストや株価を意識した経営指標も掲げています。
* 売上高:1,400億円
* 営業利益:100億円
* ROE:12%以上
* PBR:継続して1.0倍以上
* 配当性向:30%以上を維持
■(4) 成長戦略と重点施策
成長軌道への回帰と企業価値向上に向け、事業別戦略と財務戦略を推進します。フィッシング事業では世界4ブロックでの地域別戦略によりシェア拡大を目指し、ゴルフ・スポーツ事業ではブランド価値の向上を図ります。また、人的資本経営やサステナビリティ戦略を通じて経営基盤を強化し、「人と地球が共に生きる持続可能な社会づくり」に貢献します。
* フィッシング事業:日本・米州・欧州・アジアオセアニアの4ブロック戦略でシェアアップ。
* ゴルフ/スポーツ事業:独自の世界観を持つブランドの価値向上。
* 財務戦略:利益体質改善と資本構成の最適化によるROE12%以上の達成。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「5 Key Promises」に基づき、新たな発想で自発的に行動する人材の育成を基本方針としています。次世代リーダーの育成や、社外交流を通じた「個」の能力向上を重視しています。また、多様な人材が活躍できる職場環境の整備を進め、女性管理職登用やワークライフバランスの充実、従業員の健康維持・増進にも積極的に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.0歳 | 14.0年 | 7,232,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.9% |
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 56.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 66.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 69.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、教育研修費用(68百万円)、一人当たり平均有給休暇取得日数(12.6日)、人間ドック受診者数(263名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市況変動によるリスク
同社グループの製品は世界中で販売されており、各地域の経済状況や自然災害の影響を受けます。主要市場である日本、北米、欧州、アジアにおける景気後退や需要縮小が発生した場合、同社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 為替相場の変動によるリスク
海外での生産・販売を行っているため、為替変動の影響を強く受けます。為替予約等のヘッジを行っていますが、完全にリスクを回避できる保証はなく、急激な為替変動は業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 競争によるリスク
国内外の市場において厳しい競争環境にあり、競合他社や中国製品の台頭による低価格化競争に晒されています。新製品開発やコストダウンを推進していますが、製品価格の下落が進んだ場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 海外進出による事業展開に関するリスク
世界各地に拠点を展開しており、特に製造拠点は中国、タイ、ベトナム等のアジア地域に集中しています。これらの地域での政治・経済の混乱や予期せぬ法規制の変更等が発生した場合、生産・販売に重大な支障をきたし、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。