重松製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 重松製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

重松製作所は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、防じん・防毒マスクなど呼吸用保護具を中心とする労働安全衛生保護具の製造販売を主力としています。直近の業績は、製造業からの受注好調により売上高156億円(前期比10.5%増)と増収でしたが、原価上昇等の影響で当期純利益は7億円(同10.0%減)と減益でした。


**記事タイトル:重松製作所転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態**

※本記事は、株式会社重松製作所の有価証券報告書(第80期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 重松製作所ってどんな会社?


防じん・防毒マスクをはじめとする呼吸用保護具などの労働安全衛生保護具を製造販売する専業メーカーです。

(1) 会社概要


1917年に個人商店として発足し、防じん・防毒マスク等の製作販売を開始しました。1942年に重松製作所へ改組し、1963年に店頭売買銘柄として登録されました。その後、2004年にはジャスダック証券取引所への株式上場を果たし、働く人々を職業病から守る専門企業として事業基盤を拡大してきました。

従業員数は単体で399名です。筆頭株主は同社に自給式呼吸器の国内販売総代理権を付与する事業会社のエア・ウォーター防災で、第2位は事業会社の千代田テクノル、第3位は代表取締役の重松宣雄氏となっています。

氏名 持株比率
エア・ウォーター防災 10.32%
千代田テクノル 9.93%
重松宣雄 6.28%

(2) 経営陣


同社の役員は男性15名、女性1名の計16名で構成され、女性役員比率は6.3%です。代表取締役は重松宣雄氏および森田隆氏です。社外取締役比率は16.7%です。

氏名 役職 主な経歴
重松宣雄 取締役社長代表取締役 1979年同社入社。常務取締役生産本部長兼技術研究所長、代表取締役副社長等を経て、1998年より現職。
森田隆 取締役副社長代表取締役 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)を経て2004年同社入社。常務取締役管理本部長兼経理部長等を経て2020年より現職。
小野研一 専務取締役設計担当 1983年同社入社。設計部長、常務取締役開発設計部長兼量産設計部長等を経て、2019年より現職。
工藤心平 専務取締役生産担当兼第二生産本部長 1984年同社入社。取締役生産技術部長兼姫路製造部長、常務取締役第二生産本部長等を経て2024年より現職。
二戸応典 専務取締役営業本部長兼海外事業本部長 1993年同社入社。東京営業所長、常務取締役マーケティング本部長等を経て、2023年より現職。
野口真 専務取締役研究部長 1995年同社入社。品質保証部品質管理室長、常務取締役研究部長等を経て、2025年より現職。
坂野信 常務取締役管理本部長兼総務部長 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)を経て2013年同社入社。取締役総務部長等を経て、2023年より現職。
小西晶彦 常務取締役第一生産本部長 1988年同社入社。取締役第一生産本部組立部長兼資材部長等を経て、2025年より現職。
谷和生 常務取締役経理部長 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)を経て2023年同社入社。取締役経理部長を経て、2026年より現職。
今村太陸 取締役営業部長 1999年同社入社。上越営業所長、マーケティング部長等を経て、2023年より現職。


社外取締役は、佐山利夫(元中野冷機専務取締役)、飛田成史(群馬大学名誉教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「労働安全衛生保護具の製造販売」の単一セグメントで事業を展開しています。

同社は、働く人々を職業病や危険から守るための防じんマスク、防毒マスク、送気マスクといった呼吸用保護具を中心とする、各種労働安全衛生保護具の製造販売を行っています。また、エア・ウォーター防災製自給式呼吸器の国内販売総代理店としての販売、さらにこれら各種保護具の保守点検整備および修理なども手掛けています。

収益モデルは、自社製品の販売や他社商品の仕入販売による売上が中心です。技術研究所での研究開発から、独自の機械装置を導入する船引事業所などでの生産、そして全国の営業拠点を通じた販売までを一貫して行っています。同社は関係会社を一切持たず、これらの事業活動を重松製作所単独で運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の単体業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は主力顧客である製造業からの受注好調や法改正に伴う需要増加を背景に、順調な拡大基調で推移しています。一方、利益面は材料費や労務費の上昇、新工場稼働に伴う設備移設などの費用負担の影響を受け、増減を繰り返す傾向にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 119億円 129億円 130億円 141億円 156億円
経常利益 6.5億円 10億円 8.0億円 11億円 9.3億円
利益率(%) 5.5% 8.0% 6.2% 7.8% 6.0%
当期純利益 5.9億円 7.5億円 5.8億円 7.8億円 7.0億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は堅調に増加して過去最高を更新したものの、原価率の悪化により売上総利益の伸びは小幅にとどまっています。積極的な営業活動に伴う広告宣伝費や人件費などの増加により、営業利益はわずかに減少しました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 141億円 156億円
売上総利益 44億円 46億円
売上総利益率(%) 31.4% 29.6%
営業利益 11億円 11億円
営業利益率(%) 7.6% 6.8%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が9億円(構成比24%)、役員報酬が4億円(同11%)、研究開発費が4億円(同10%)を占めています。売上原価については、当期商品仕入高が34億円(売上原価合計の31%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は労働安全衛生保護具の製造販売という単一セグメントであるため、主要な製品・商品区分別の売上高を比較します。法改正に伴うリスクアセスメント対象物質の追加や危機管理対策の需要を背景に、主力である防じんマスク、自給式呼吸器、防毒マスクのいずれも売上を順調に伸ばしています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
防毒マスク 31億円 36億円
防じんマスク 36億円 40億円
自給式呼吸器 31億円 37億円
送気マスク 5.3億円 6.8億円
その他の呼吸用保護具 18億円 18億円
保護衣・保護手袋 9.8億円 9.4億円
酸素計・ガス検知器 2.4億円 1.9億円
めがね・シールド 1.7億円 1.8億円
その他 5.8億円 5.3億円
連結(合計) 141億円 156億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 2.3億円 12億円
投資CF -22億円 -27億円
財務CF 18億円 25億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「働く人の安全衛生の向上に寄与し、社会へ貢献する」を基本方針として掲げています。国内外の働く人々の健康と幸福を支え、かつ、省資源などの環境問題にも配慮した地球の環境保全に貢献することに、誇りと責任を持って仕事に取り組んでいます。

(2) 企業文化


同社は1917年の創業以来、一貫して労働安全衛生保護具の普及に努力を重ねてきたという使命感と責任感を大切にする文化を持っています。また、「より良く、より安い製品を、より速く」をモットーに、常に創造と改善に努め、品質や性能にこだわる行動様式を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、収益性と資本効率を高めることを重視しており、中長期的な経営戦略の実現を通じて企業価値の向上を目指しています。そのための定量的な経営指標として、以下の数値を掲げています。

* 経常的にROE(自己資本利益率)10%以上の達成

(4) 成長戦略と重点施策


今後は、多様なユーザーニーズにタイムリーに対応するため、研究開発の充実と環境問題に配慮した技術開発に積極的に取り組みます。また、生産性および品質の維持向上と原価削減を進め、市場競争力の強化と経営全般の合理化、効率化を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は経営ビジョンの実現に向け、人材育成と能力開発を重要課題と位置付けています。職場ごとの知識・技能の明確化による従業員の主体的な成長促進や、適材適所の配置による個人の強みを活かした組織運営を推進し、業務効率化と付加価値向上を図る方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.3歳 16.9年 6,179,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.1%
男性育児休業取得率 57.1%
男女賃金差異(全労働者) 73.3%
男女賃金差異(正規雇用) 77.9%
男女賃金差異(パート・有期) 57.0%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用者に占める女性比率(52.6%)、従業員一人あたりの月間時間外労働(16.1時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済環境および主要仕入先への依存リスク

同社の経営成績は民間企業や官公庁の動向に影響を受けやすく、景気低迷や財政悪化が業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、主力商品の大部分をエア・ウォーター防災からの仕入に依存しており、販売状況の変化によってこの比率が変動するリスクがあります。

(2) 製品の品質管理に関するリスク

同社は厳格な品質マネジメントシステムに基づいて製品を製造販売していますが、予期せぬ要因により国家検定規格や国際標準に不適合と指摘されたり、製品の欠陥等の不具合が発生したりする可能性があります。製品の回収や修理などの対応により、業績に影響が及ぶ恐れがあります。

(3) 自然災害等による事業活動への影響

同社の製造・販売拠点が地震、火災、テロ攻撃等の災害によって物的・人的被害を受けた場合、生産や販売などの事業活動が中断または影響を受ける可能性があります。これにより、製品の安定供給に支障をきたすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。