エンプラス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エンプラス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エンプラスは東京証券取引所プライム市場に上場し、エンジニアリングプラスチックを活用した半導体機器やライフサイエンス関連製品、光通信デバイスなどの製造・販売を展開しています。直近の業績は、半導体市場でのAI関連需要の拡大などを背景に、売上高、経常利益ともに前期を上回り、増収増益と好調に推移しています。


**※本記事は、株式会社エンプラスの有価証券報告書(第65期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。**

1. エンプラスってどんな会社?


エンジニアリングプラスチックの精密加工技術を強みに、半導体や光学、自動車向け部品を展開しています。

(1) 会社概要


同社は1962年にプラスチックねじ等の製造を目的に設立されました。1984年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、1990年に現在のエンプラスに商号を変更しています。2000年には同市場第一部へ指定替えを行いました。2002年には半導体機器事業を分社化し、2012年にはLED関連事業を分社化するなど、各分野で専門的な事業基盤を強化してきました。

現在の従業員数は連結で1,371名、単体で332名体制です。主要な株主構成を見ると、筆頭株主は代表取締役社長の横田大輔氏であり、第2位および第3位には投資信託や年金信託などの資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
横田 大輔 15.54%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.99%
日本カストディ銀行(信託口) 6.19%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は横田大輔氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
横田 大輔 代表取締役社長 1993年同社入社。米国法人プレジデントや自動車機器事業部長、エンプラ事業部長などを歴任し、2008年より現職。
椎名 聡 取締役 2003年同社入社。タイ法人マネージングディレクターや事業本部長などを経て、2026年より現職。
藤田 慈也 取締役 2003年同社入社。経営企画管理本部コーポレートセンター長などを経て、2026年より現職。
沓沢 茂雄 取締役(監査等委員) 1989年同社入社。液晶関連やLED関連の部門長、ディスプレイデバイス社長などを経て、2024年より現職。


社外取締役は、赤塚孝江氏(プレミア国際税務事務所代表)、井植敏雅氏(元三洋電機社長)、久田眞佐男氏(元日立ハイテク社長)、天羽稔氏(元デュポン社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「Semiconductor事業」「Life Science事業」「Digital Communication事業」「Energy Saving Solution事業」および「その他」事業を展開しています。

Semiconductor事業


各種ICテスト用ソケットやバーンインソケットを製造しています。半導体市場において、サーバー用途や自動車用途、モバイル用途のメーカーなどに製品を展開しています。

各種ソケットの販売から収益を得ています。運営は同社のほか、エンプラス半導体機器や海外子会社などが担っています。

Life Science事業


ライフサイエンス関連製品を製造・販売しています。DNA、たんぱく質、細胞などの検査・分析システムやその周辺部品などを展開し、医療・研究機関向けにソリューション活動を推進しています。

製品の販売から収益を得ています。運営は同社のほか、QMSや海外の関係会社が担っています。

Digital Communication事業


光通信デバイスやLED用拡散レンズを製造しています。大規模データセンター向けの光トランシーバー用光学製品や、次世代液晶テレビ向けのバックライト関連製品などを提供しています。

光学デバイスなどの販売から収益を得ています。運営は主に海外子会社が担っています。

Energy Saving Solution事業


高精度ギヤを核とした部品を製造しています。自動車機器、OA機器、計器、住宅機器向けに展開し、自動車の電装化に対応した低騒音・高効率のギヤソリューションなどを提供しています。

各種部品の販売から収益を得ています。運営は同社のほか、QMSや海外の各種関係会社が担っています。

その他


各事業分野を支援する研究開発活動や、海外地域の統括業務などを行っています。

関連する業務を通じてグループ全体を支援しています。運営は同社やエンプラス研究所、海外の地域統括会社などが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は概ね300億円台後半から400億円台で推移し、直近では425億円と成長を示しています。経常利益も安定して計上しており、直近の利益率は15.2%と高い水準を維持し、安定した収益基盤を確立しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 329億円 422億円 378億円 381億円 425億円
経常利益 35億円 88億円 53億円 54億円 65億円
利益率(%) 10.5% 20.8% 13.9% 14.3% 15.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 40億円 17億円 83億円 28億円 33億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も前期から増加しています。売上総利益率は45%台を維持しており、営業利益率も14%台へと改善傾向にあるなど、本業での稼ぐ力が着実に高まっていることがうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 381億円 425億円
売上総利益 175億円 194億円
売上総利益率(%) 45.9% 45.5%
営業利益 53億円 62億円
営業利益率(%) 13.9% 14.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当・賞与が42億円(構成比31.6%)、研究開発費が17億円(同12.9%)を占めています。また、売上原価は232億円で、売上原価合計に対する構成比は100%となっています。

(3) セグメント収益


Semiconductor事業はAI関連需要の拡大などを背景に売上高が前期から大幅に増加し、全体の増収を牽引しました。一方で、Digital Communication事業は既存製品の減少などにより売上高が大きく落ち込んでいます。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
SemiconductorPeripheralsBusinessReportableSegments 161億円 236億円
LifeScienceBusinessReportableSegments 31億円 31億円
DigitalCommunicationBusinessReportableSegments 49億円 17億円
EnergySavingSolutionBusinessReportableSegments 140億円 142億円
連結(合計) 381億円 425億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で安定的に資金を創出し、その資金で設備への投資や株主還元などを賄う「健全型」となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 71億円 70億円
投資CF -69億円 -69億円
財務CF -8.3億円 -11億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は87.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「独創的アイデアを総合技術で価値ある製品に変え、より良い未来を支えます」を使命とし、「強靭な経営基盤をもとに、創造と挑戦を繰り返し、自ら変革し続けます」という経営姿勢を掲げています。また、行動指針として「信頼こそ全ての基本」を据え、謙虚な姿勢と感謝の心、公明正大な行動、新たな価値創造への挑戦を定めています。

(2) 企業文化


経営の生命線は「新規性の追求」にあると考え、顧客との共同開発や秘密保持などを通じた継続的な信頼関係の構築を重視しています。「ソリューションプロバイダーとして顧客価値を創出する」ことを目指し、外部環境の変化を的確に捉えながら自ら変革し続ける組織文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


人々と地球のQOLを高める領域への貢献を最重要課題とし、持続可能な成長を目指して以下の数値目標を掲げています。

* 新製品比率(3年以内に量産開始した製品):50%以上(2030年度目標)
* GHG排出量削減(Scope1〜2):2023年度比40%削減(2032年度目標)
* 樹脂材料廃棄率:3%(2030年度目標)

(4) 成長戦略と重点施策


AIの社会実装に向けた機会を最大限に捉えるため、各事業の領域拡大とニッチトップ戦略による高付加価値化を進めています。

* Semiconductor事業の成長と事業ポートフォリオの分散
* イノベーションセンターによる顧客の需要掘り起こしと価値創出
* 成長分野への経営資源集中と、人材への積極的な投資の継続

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


経営戦略を実現するため、人材を重要な経営資源と位置付けています。各事業に求められる役割や専門性に応じた人材配置と育成を推進するとともに、管理職層や次世代リーダー層を計画的に育成することで組織基盤の強化を図っています。また、国籍や性別に関係なく平等に評価し、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.8歳 14.6年 6,804,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.6%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 78.7%
男女賃金差異(正規雇用) 80.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 32.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率の目標(15%)、海外売上高比率(85%)、海外拠点の管理職に占める外国人比率の目標(75%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場での価格競争激化と在庫調整によるリスク


電子部品業界は新製品への切り替えサイクルが早く、価格競争の激化や急激な在庫調整の影響を受けやすい環境にあります。同社は新製品比率の増加などで研究開発を強化していますが、予想以上の競争激化や急激な在庫調整が発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替レートの変動リスク


同社グループは海外売上高の割合が約85%と高いため、為替レートの変動が外貨建取引から発生する収益や資産・負債の円換算額に影響を及ぼします。為替予約などによるリスクヘッジを行っていますが、急激な円高が進展した場合には業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) カントリーリスク


事業を北米、欧州、アジアなどグローバルに展開しているため、各国の政治・経済状況の変化や法律・税制の改正による影響を受けます。また、地政学的リスクの高まりによるサプライチェーンの混乱やエネルギー価格の変動が、原材料調達や製品供給に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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