エンプラス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エンプラス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のエンジニアリングプラスチック製品メーカー。半導体や自動車、光通信、ライフサイエンス分野で高精度製品を展開しています。直近の連結業績は、売上高381億円、経常利益54億円、親会社株主に帰属する当期純利益39億円で、増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社エンプラス の有価証券報告書(第64期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エンプラスってどんな会社?


エンジニアリングプラスチックの精密加工技術を核に、半導体や自動車、バイオ等の先端分野へ製品を提供する企業です。

(1) 会社概要


1962年に第一精工として設立され、1990年に現商号へ変更しました。2000年に東証一部(現プライム)へ上場し、2002年には半導体機器事業部を分社化(後に再編)するなど事業基盤を強化してきました。2015年には監査等委員会設置会社へ移行し、ガバナンス体制を整備。近年はライフサイエンス分野などの成長領域への展開を加速しています。

連結従業員数は1,478名、単体では327名です。大株主構成については、筆頭株主は代表取締役社長の横田大輔氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
横田 大輔 16.11%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 10.95%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 6.01%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は横田大輔氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
横田 大輔 代表取締役社長 1993年入社。米国現地法人社長、自動車機器事業部長などを経て、2006年常務取締役事業本部長。2008年4月より現職。
椎名 聡 取締役 2003年入社。エンプラ事業部営業部門長、QMS代表取締役社長などを歴任。Energy Saving Solutionカンパニープレジデント等を経て、2025年6月より現職。
藤田 慈也 取締役 2003年入社。経営企画管理本部コーポレートセンター長、財務経理本部本部長などを歴任。2025年4月より現職。
沓沢 茂雄 取締役(監査等委員) 1989年入社。エンプラスディスプレイデバイス代表取締役社長、インダストリー事業本部事業本部長などを歴任。2024年6月より現職。


社外取締役は、赤塚孝江(プレミア国際税務事務所代表)、井植敏雅(元三洋電機社長)、久田眞佐男(元日立ハイテクノロジーズ社長)、天羽稔(元デュポン株式会社社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「Semiconductor事業」「Life Science事業」「Digital Communication事業」「Energy Saving Solution事業」および「その他」事業を展開しています。

**(1) Semiconductor事業**
各種ICテスト用ソケットやバーンインソケットの製造・販売を行っています。半導体の製造工程における検査・試験で使用される重要部品であり、サーバーや自動車用途などの需要に対応しています。
収益は、主に半導体メーカーや検査会社等の顧客に対する製品販売代金から得ています。運営は、国内では株式会社エンプラス半導体機器などが、海外ではENPLAS TECH SOLUTIONS, INC.などが担っています。

**(2) Life Science事業**
ライフサイエンス関連製品の製造・販売を行っています。遺伝子検査市場の拡大に伴い、マイクロ流路技術をベースとしたバイオ関連製品や消耗品デバイスなどを提供しています。
収益は、医療・バイオ関連の顧客に対する製品販売代金から得ています。運営は、国内ではQMS株式会社、海外ではENPLAS LIFE TECH, INC.などが行っています。

**(3) Digital Communication事業**
光通信デバイスおよびLED用拡散レンズの製造・販売を行っています。データセンター向けの光トランシーバー用レンズや、液晶テレビのバックライト向けレンズなどを扱っています。
収益は、通信機器メーカーや電機メーカー等への製品販売から得ています。運営は、ENPLAS HI-TECH(SINGAPORE)PTE.LTD.などの海外拠点が中心となって行っています。

**(4) Energy Saving Solution事業**
高精度ギヤを核とした自動車機器、OA機器、計器、住宅機器向け製品の製造・販売を行っています。自動車の電装化に対応した低騒音・高効率なギヤソリューションなどを提供しています。
収益は、自動車部品メーカーやOA機器メーカー等への製品販売代金から得ています。運営は、国内のQMS株式会社や、海外のENPLAS PRECISION(MALAYSIA)SDN.BHD.などが行っています。

**(5) その他**
全事業分野にわたる研究開発活動や地域統括業務を行っています。新技術や新製品の開発、および北米・欧州地域のグループ会社統括機能を担っています。
収益源としての直接的な外販よりも、グループ全体の技術力向上や経営効率化を目的としています。運営は、同社および株式会社エンプラス研究所、ENPLAS AMERICA, INC.などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は2023年3月期に422億円まで拡大した後、380億円前後で推移しています。経常利益は2023年3月期に利益率20%超の高水準を記録しましたが、その後は14%前後で安定しています。当期利益は変動が見られますが、安定した黒字経営を継続しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 294億円 329億円 422億円 378億円 381億円
経常利益 19億円 35億円 88億円 53億円 54億円
利益率(%) 6.5% 10.5% 20.8% 13.9% 14.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 42億円 40億円 17億円 83億円 28億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高は微増し、営業利益も増加しました。売上総利益率は45%台を維持しており、高い収益性を確保しています。営業利益率も10%台前半で推移しており、安定した本業の収益力がうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 378億円 381億円
売上総利益 170億円 175億円
売上総利益率(%) 45.0% 45.9%
営業利益 46億円 53億円
営業利益率(%) 12.3% 13.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当・賞与が約45億円(構成比約37%)、研究開発費が15億円(同12%)を占めています。売上原価は206億円で、売上高に対する構成比は約54%となっています。

(3) セグメント収益


Semiconductor事業は半導体需要の調整により減収となりましたが、利益は確保しています。Life Science事業は売上が大幅に増加し、黒字転換しました。Digital Communication事業は在庫調整等の影響で減収減益、Energy Saving Solution事業は自動車市場の変動があるものの増収増益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
Semiconductor事業 167億円 161億円 15億円 15億円 9.5%
Life Science事業 24億円 31億円 -6億円 5億円 14.8%
Digital Communication事業 56億円 49億円 30億円 25億円 50.8%
Energy Saving Solution事業 131億円 140億円 7億円 8億円 5.9%
連結(合計) 378億円 381億円 46億円 53億円 13.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、安全性及び流動性を確保する効率的な資金管理を基本方針としております。
営業活動では、利益の積み上げにより収入を得ております。投資活動では、将来の事業展開に向けた設備投資や研究開発投資を実施しております。財務活動では、配当金の支払い等を行っております。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 82億円 71億円
投資CF -41億円 -69億円
財務CF -10億円 -8億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「独創的アイデアを総合技術で価値ある製品に変え、より良い未来を支える」ことを使命として掲げています。強靭な経営基盤をもとに、創造と挑戦を繰り返し、自ら変革し続けることを経営姿勢とし、技術力と提案力による社会貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「信頼こそ全ての基本」を行動指針としています。具体的には、謙虚な姿勢と感謝の心を大切にし、公明正大に行動すること、そして新たな価値の創造に挑戦することを重視しています。グローバルな事業展開の中で、国籍や背景の異なる人々との相互理解を深めることも大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は「人と地球のQOLを高めるEssential領域への貢献」を最重要課題とし、2030年度および2032年度に向けた具体的な数値目標を掲げています。

* 新製品比率(3年以内に量産開始した製品):50%以上(2030年度目標)
* GHG排出量削減(Scope1~2):2023年度比40%削減(2032年度目標)
* GHG排出量削減(Scope3):2023年度比25%削減(2032年度目標)
* 樹脂材料廃棄率:3%(2030年度目標)

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、成長市場でありQOLを高める「Essential領域」への事業ポートフォリオ転換を進めています。Semiconductor事業とLife Science事業を成長牽引役とし、他事業も要素技術開発により同領域へ転換を図ります。また、AI社会実装に向けたソリューション提案や、グローバルガバナンスの強化にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、中長期的な企業価値向上に向けて多様性の確保を重視しています。「エンプラスの目指す姿」に合わせた人材ポートフォリオ策定を進め、性別や国籍、中途・新卒の区別なく、能力や適性に基づき優秀な人材を積極的に登用しています。特に女性管理職や海外拠点の外国人管理職比率の向上を目標に掲げています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.5歳 15.0年 6,561,000円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 76.3%
男女賃金差異(正規雇用) 79.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 37.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率目標(15%)、海外拠点外国人管理職比率目標(75%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場競争と在庫調整リスク


同社が属する電子部品業界は技術革新が速く、製品サイクルの短期化や価格競争の激化が進んでいます。市場での急激な在庫調整や予想以上の価格低下が発生した場合、同社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、同社は高付加価値技術の開発や新製品比率の向上に取り組んでいます。

(2) 為替レート変動リスク


同社グループの海外売上高比率は約82%と高く、為替レートの変動が業績や財務状況に影響を与える可能性があります。特に米ドルに対する急激な円高は業績への悪影響となり得ます。同社は為替予約によるリスクヘッジを行っていますが、リスクを完全に回避できる保証はありません。

(3) 棚卸資産の陳腐化リスク


製品ライフサイクルの短縮や価格競争により、保有する棚卸資産(製品、仕掛品、原材料など)の市場価値が下落するリスクがあります。非流動化や陳腐化が進んだ場合、評価減や廃棄処理が必要となり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。