※本記事は、リンテック株式会社 の有価証券報告書(第131期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. リンテックってどんな会社?
粘着応用技術を核に、シール・ラベル素材から半導体関連テープまで幅広い製品を展開する中間素材メーカーです。
■(1) 会社概要
1934年に不二紙工として設立し、包装用ガムテープの製造を開始。1984年にFSKへ商号変更後、1990年に四国製紙および創研化工と合併し、現在のリンテックへ商号変更しました。2016年に米国のMACTAC AMERICAS, LLCを買収するなど海外展開を加速し、2022年に東証プライム市場へ移行しました。
従業員数は連結5,311名、単体2,518名です。筆頭株主は同社の製品販売先かつ仕入先でもある日本製紙で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本製紙 | 30.51% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.84% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.82% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.6%です。代表取締役社長 社長執行役員は服部真氏です。社外取締役比率は41.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 服部 真 | 取締役社長(代表取締役)社長執行役員 | 1980年入社。アドバンストマテリアルズ事業部門長、常務執行役員事業統括本部長などを経て、2020年4月より現職。 |
| 大内 昭彦 | 取締役会長(代表取締役) | 1967年入社。生産本部長、代表取締役社長などを経て、2014年4月より現職。 |
| 海谷 健司 | 取締役専務執行役員総務・人事本部長 | 1984年入社。アドバンストマテリアルズ事業部門長、事業統括本部長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 松尾 博之 | 取締役専務執行役員生産本部長兼品質保証本部管掌兼環境・安全統括本部管掌 | 1982年入社。吾妻工場長、生産本部副本部長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 吉武 正 昭 | 取締役専務執行役員事業統括本部長 | 1984年入社。印刷・情報材事業部門長、事業統括本部副本部長などを経て、2025年6月より現職。 |
| 柴野 洋 一 | 取締役常務執行役員管理本部長 | 1987年入社。LINTEC ASIA PACIFIC REGIONALHEADQUARTERS取締役、上席執行役員管理本部長などを経て、2023年4月より現職。 |
| 木村 雅 昭 | 取締役(監査等委員) | 1988年入社。監査室長、総務・人事本部総務・法務部長などを経て、2021年6月より現職。 |
社外取締役は、佐野孝典(日本製紙 参与)、奥島晶子(ジェイビートゥビー社長)、白幡清一郎(元日本ペイントHD取締役)、大澤加奈子(弁護士)、杉本茂(公認会計士・税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「印刷材・産業工材関連」「電子・光学関連」および「洋紙・加工材関連」事業を展開しています。
■(1) 印刷材・産業工材関連
本セグメントでは、シール・ラベル用粘着製品、ラベリングマシン、自動車用粘着製品、工業用粘着テープ、ウインドーフィルム、屋外看板・広告用フィルム、内装用化粧フィルムなどを製造・販売しています。主な顧客は印刷業界や自動車業界、建設業界など多岐にわたります。
収益は主に製品の販売代金から得ています。運営は、同社および、米国のMACTAC AMERICAS, LLC、MADICO, INC.、中国の琳得科(蘇州)科技有限公司、東南アジアの各拠点など、国内外のグループ会社が製造・販売を行っています。
■(2) 電子・光学関連
本セグメントでは、半導体製造プロセスで使用される各種粘着テープや装置、積層セラミックコンデンサ関連テープ、光学ディスプレイ関連粘着製品などを製造・販売しています。エレクトロニクス業界や半導体メーカーが主要な顧客となります。
収益は主に製品の販売代金から得ています。運営は、同社および、LINTEC ADVANCED TECHNOLOGIES(SINGAPORE) PRIVATE LIMITED、台湾や韓国、マレーシア等の各現地法人が担っています。
■(3) 洋紙・加工材関連
本セグメントでは、カラー封筒用紙、色画用紙、特殊機能紙、高級印刷用紙、建材用紙、粘着製品用剥離紙、光学関連製品用剥離フィルム、合成皮革用工程紙、炭素繊維複合材料用工程紙などを製造・販売しています。
収益は主に製品の販売代金から得ています。運営は、同社を中心に、琳得科(蘇州)科技有限公司、LINTEC (THAILAND) CO., LTD.などのグループ会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は増減を繰り返しながらも2025年3月期には3,000億円を超え過去最高を記録しました。利益面では2024年3月期に落ち込みが見られましたが、2025年3月期には大幅な回復を果たしています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,359億円 | 2,568億円 | 2,846億円 | 2,763億円 | 3,160億円 |
| 経常利益 | 168億円 | 227億円 | 156億円 | 115億円 | 261億円 |
| 利益率 | 7.1% | 8.8% | 5.5% | 4.2% | 8.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 146億円 | 174億円 | 109億円 | 120億円 | 104億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益が増加しました。販売費及び一般管理費も増加しましたが、増収効果により営業利益は大幅に伸長し、営業利益率は前期より改善しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,763億円 | 3,160億円 |
| 売上総利益 | 614億円 | 798億円 |
| 売上総利益率 | 22.2% | 25.3% |
| 営業利益 | 106億円 | 246億円 |
| 営業利益率 | 3.8% | 7.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が140億円(構成比25%)、研究開発費が101億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで増収となりましたが、特に電子・光学関連は半導体・電子部品関連製品の需要増により大幅な増収増益となりました。印刷材・産業工材関連も米国での販売増により堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 印刷材・産業工材関連 | 1,690億円 | 1,846億円 |
| 電子・光学関連 | 739億円 | 963億円 |
| 洋紙・加工材関連 | 335億円 | 350億円 |
| 連結(合計) | 2,763億円 | 3,160億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、自己キャッシュ・フローにより流動性を確保し、主な設備投資や借入金の返済を実施しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、前期比で減少しましたが、これは主に売上債権や棚卸資産、仕入債務の増減によるものです。投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の払戻や有形固定資産の取得による支出が減少した一方で、事業譲受による支出が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入や自己株式の取得による支出が減少した結果、前期比で減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 392億円 | 337億円 |
| 投資CF | -215億円 | -247億円 |
| 財務CF | -13億円 | -123億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
社名の「リンテック」すなわち"リンケージ(結合)"と"テクノロジー"、および社是「至誠と創造」に裏付けされる人の和、技術開発力を基軸とし、信頼される会社として社会に貢献し、ステークホルダーの期待に応える斬新な経営を推進することを経営理念としています。
■(2) 企業文化
同社は、粘着応用技術、表面改質技術、システム化技術、特殊紙・剥離材製造技術という四つの固有技術を基盤とし、それらを融合させることで独自性の高い製品創りを進めることを重視しています。また、高い倫理観の下、CSRの精神を徹底し、社会から信頼される企業を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
2030年3月期を最終年度とする長期ビジョン「LINTEC SUSTAINABILITY VISION 2030」(LSV 2030)を掲げ、3か年ごとの中期経営計画を推進しています。最終年度の財務指標として以下を目標としています。
* 売上高営業利益率:12%以上
* ROE(自己資本当期純利益率):10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
長期ビジョン実現のため、「社会的課題の解決」「イノベーションによる企業体質の強靭化」「持続的成長に向けた新製品・新事業の創出」を重点テーマとしています。DXによる業務変革や生産プロセスの革新、グローバル展開の加速、技術革新による新製品創出などを進める方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「至誠と創造」の社是のもと、社員の多様性をイノベーションの源泉と捉え、多様な人材の確保と育成を目指しています。女性活躍推進やキャリア採用の強化、ジョブリターン制度などを導入し、環境整備に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.6歳 | 19.9年 | 6,882,961円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 3.6% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 82.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 71.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 71.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 46.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(37.8%)、障がい者雇用率(2.23%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済情勢、市場環境の変動リスク
あらゆる産業に展開しているため、国内外の経済情勢や市場環境の影響を受けます。国内では少子高齢化による市場縮小、電子・光学関連では世界のIT産業の動向が業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 販売価格の変動リスク
国内外の市場において厳しい競合状態にあり、十分な利益を確保できる販売単価の維持やシェアの確保が困難になる場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 原材料等価格の変動リスク
製紙用パルプや石化製品などを原材料・燃料として使用しており、これらの価格は市況により変動します。価格の急激な変動は、同社の業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 海外事業展開に関するリスク
海外売上高比率が高く世界各地で事業を展開しているため、各国の政情不安、治安悪化、法規制の変更、為替相場の変動などが事業活動や業績に影響を及ぼす可能性があります。



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