リンテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

リンテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するリンテックは、印刷材・産業工材、電子・光学関連、洋紙・加工材を主力事業とする企業です。粘着応用技術を基盤に多彩な製品を展開し、直近の業績ではAI関連需要の増加により半導体・電子部品関連製品が好調に推移し、増収ならびに最終増益を達成するなど堅調な推移を見せています。


**記事タイトル:リンテック転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態**

※本記事は、リンテック株式会社の有価証券報告書(第132期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. リンテックってどんな会社?


印刷材や電子・光学関連、洋紙・加工材などの製造・販売を手がけ、独自の粘着応用技術に強みを持つ企業です。

(1) 会社概要


1934年に不二合名会社を改組し不二紙工として設立され、包装用ガムテープ等の製造を開始しました。1986年に東京証券取引所市場第二部へ上場後、1989年に市場第一部銘柄に指定されています。1990年に四国製紙および創研化工と合併し、現在のリンテックに商号変更して事業領域を拡大してきました。

現在、従業員数は連結で5,237名、単体で2,549名体制で事業を展開しています。筆頭株主は日本製紙で、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位も同じく信託業務を行う日本カストディ銀行となっています。国内外に多数の拠点を持ち、グローバルな事業展開を推進しています。

氏名 持株比率
日本製紙 30.02%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.98%
日本カストディ銀行(信託口) 5.78%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.6%です。取締役社長(代表取締役)社長執行役員は服部真氏が務めています。社外取締役の比率は41.7%です。

氏名 役職 主な経歴
服部真 取締役社長(代表取締役)社長執行役員 1980年入社。半導体材料部長、アドバンストマテリアルズ事業部門長などを経て2020年より現職。
大内昭彦 取締役会長(代表取締役) 1967年入社。名古屋支店長等を経て2004年代表取締役社長に就任。2014年より現職。
海谷健司 取締役専務執行役員総務・人事本部長 1984年入社。アドバンストマテリアルズ事業部門長等を経て2025年より現職。
松尾博之 取締役専務執行役員生産本部長兼品質保証本部管掌兼環境・安全統括本部管掌 1982年入社。生産本部吾妻工場製造部長、同工場長等を経て2025年より現職。
吉武正昭 取締役専務執行役員事業統括本部長 1984年入社。事業統括本部印刷・情報材事業部門長などを経て2025年より現職。
柴野洋一 取締役常務執行役員管理本部長 1987年入社。管理本部長兼経理部長などを経て2023年より現職。
木村雅昭 取締役(監査等委員) 1988年入社。監査室長、総務・人事本部総務・法務部長などを歴任し2021年より現職。


社外取締役は、佐野孝典(日本製紙執行役員企画本部長)、奥島晶子(ジェイビートゥビー代表取締役社長)、白幡清一郎(ナブテスコ社外取締役)、大澤加奈子(梶谷綜合法律事務所弁護士)、杉本茂(さくら綜合事務所代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「印刷材・産業工材関連」「電子・光学関連」「洋紙・加工材関連」の報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 印刷材・産業工材関連


シール・ラベル用粘着製品、ラベリングマシン、自動車用粘着製品、工業用粘着テープ、ウインドーフィルム、屋外看板・広告用フィルム、内装用化粧フィルムなどの製造・販売を行っています。多岐にわたる産業に向けて機能性の高い製品を提供しています。

顧客から製品の販売代金を受け取るモデルです。運営は主に同社が担うほか、海外市場ではLINTEC USA HOLDINGなどの現地子会社を通じて製造および販売を行っており、各地域のニーズに応じた事業展開を推進しています。

(2) 電子・光学関連


半導体関連粘着テープ、半導体関連装置、積層セラミックコンデンサ関連テープ、光学ディスプレイ関連粘着製品などを製造・販売しています。高性能半導体やAI向けデータセンター、スマートフォン、車載ディスプレイ向けの先端材料を提供しています。

電子部品メーカー等の顧客から製品や装置の販売代金を受け取るモデルです。運営は同社のほか、LINTEC SINGAPORE PRIVATE LIMITEDやLINTEC KOREAなどの海外グループ会社が担い、グローバルな供給体制を構築しています。

(3) 洋紙・加工材関連


カラー封筒用紙、色画用紙、特殊機能紙、高級印刷用紙、建材用紙、粘着製品用剥離紙、光学関連製品用剥離フィルム、合成皮革用工程紙、炭素繊維複合材料用工程紙などの製造・販売を行っており、環境配慮型製品の開発にも注力しています。

加工メーカーや消費財メーカー等の顧客から製品の販売代金を受け取ります。運営は同社を中心に、湘南リンテック加工やLINTEC (THAILAND) CO., LTD.などの子会社と連携しながら、国内および海外市場に向けて幅広く製品を供給しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は安定して推移しており、直近の期にかけてわずかに増収となりました。経常利益は横ばい圏内で推移しつつも利益率は8%台を維持しています。また、当期利益は前期から大幅に増加しており、収益力の改善傾向が伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3160億円 3194億円
経常利益 261億円 257億円
利益率(%) 8.3% 8.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 104億円 199億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も着実に拡大しており、売上総利益率は25%台を維持しています。営業利益についても増益を達成しており、安定した本業の稼ぐ力を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3160億円 3194億円
売上総利益 798億円 815億円
売上総利益率(%) 25.3% 25.5%
営業利益 246億円 252億円
営業利益率(%) 7.8% 7.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が143億円(構成比25%)、研究開発費が113億円(同20%)を占めています。売上原価は2,379億円で、主に製造等に係る費用が含まれています。

(3) セグメント収益


電子・光学関連はAI関連の需要増や半導体関連製品の好調に支えられ、増収および大幅な増益を達成しました。一方、印刷材・産業工材関連は、国内需要は堅調なものの海外子会社の影響等により減益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
印刷材・産業工材関連 1846億円 1826億円 55億円 20億円 1.1%
電子・光学関連 963億円 1007億円 185億円 221億円 21.9%
洋紙・加工材関連 350億円 360億円 5億円 10億円 2.8%
連結(合計) 3160億円 3194億円 246億円 252億円 7.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フローの状況となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 337億円 335億円
投資CF -247億円 -146億円
財務CF -123億円 -156億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループの経営理念は、社名の由来である「リンケージ(結合)」と「テクノロジー」、および社是「至誠と創造」に裏付けされる人の和と技術開発力を基軸としています。国内・海外の業界において誰からも信頼される力強い躍動感あふれる会社として社会に貢献し、株主、顧客、社員家族の期待に応える斬新な経営を推進することを基本方針として掲げています。

(2) 企業文化


同社は社是「至誠と創造」を掲げ、すべての社員に対して誠意をもち、多様性を尊重する文化を重視しています。社員の多様性はイノベーションの源泉であり、企業価値向上に資するという価値観の下、さまざまな立場の人材の採用・登用を積極的に進めています。また、高い倫理観に基づきCSRの精神を徹底し、社会から信頼される企業たるべく邁進する組織風土が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2030年3月期を最終年度とする長期ビジョン「LINTEC SUSTAINABILITY VISION 2030(LSV 2030)」を策定し、持続的成長に向けたマイルストーンとして3か年ごとの中期経営計画を推進しています。2030年3月期に向けた具体的な財務指標として以下の数値を掲げています。

* 売上高営業利益率:12%以上
* ROE(自己資本利益率):10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「LSV 2030」の基本方針に基づき、イノベーションによる企業体質の強靭化と新製品・新事業の創出に注力しています。具体的には、DXによる業務プロセスの変革や、戦略的投資の拡大と機動的なM&A、さらなるグローバルプレーヤーへの飛躍を推進しています。各セグメントにおいて、環境配慮型製品の開発や先進半導体向けの新たなテープ・装置の開発など、付加価値の高いソリューションの提供を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、長期ビジョンや中期経営計画に基づき、多様性を尊重した人材の確保・育成・適正配置を進めています。定期採用に加え、キャリア採用や高度専門人材の採用を積極的に行い、ジョブリターン制度やアルムナイ・キャリアリターン制度などの多様な採用手法を導入しています。また、サクセッションプランを通じた中核人材の計画的育成や、ライフステージの変化に合わせた社内環境整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.8歳 20.0年 7,243,084円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.6%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 72.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 72.5%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 50.6%


※男性育児休業取得率については、データが記載されていないため省略しています。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(大卒・院卒・短大卒)(43.9%)、障がい者雇用率(2.53%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済情勢・市場環境の変動


同社グループは多業種に事業を展開しており、世界的な経済変動や地政学リスク、国内の少子高齢化や消費動向により業績が影響を受ける可能性があります。特に半導体・電子部品関連の需要変動や物流コストの上昇などが懸念材料となります。

(2) 販売価格の変動リスク


国内外市場における競争激化や原材料価格の変動により、販売単価やシェアの維持が困難となるリスクがあります。同社は高付加価値製品の開発や価格転嫁の適正化、顧客との関係強化や差別化戦略により収益の安定確保に努めています。

(3) 原材料等価格の変動リスク


紙や石化製品など市況変動の影響を受けやすい原材料を多く使用しているため、国際市況や為替、環境規制による価格変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は仕入先の分散や在庫調整などでリスク管理を強化しています。

(4) 海外事業展開に関するリスク


海外売上高比率が高いため、各国の政治・経済情勢の変化や法規制の強化、為替相場の急変などにより事業活動に影響を受けるリスクがあります。分散投資や現地情報の収集、為替予約の活用などで影響の最小化を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。