小松ウオール工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

小松ウオール工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する、可動間仕切やトイレブース等の製造・販売・施工を行う専門メーカーです。2025年3月期の業績は売上高446億円(前期比2.4%増)、経常利益38億円(同0.6%増)と増収増益でした。オフィスの底堅い移転需要を背景に、主力の可動間仕切や固定間仕切が堅調に推移しています。


※本記事は、小松ウオール工業株式会社 の有価証券報告書(第58期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 小松ウオール工業ってどんな会社?


石川県小松市に本社を置く、間仕切(パーティション)の総合メーカーです。製造から施工までの一貫体制を強みとしています。

(1) 会社概要


1968年に石川県小松市で設立され、スチールおよびアルミ製間仕切の製造販売を開始しました。1971年には可動間仕切「マイティウォール」を開発し、事業を拡大。1999年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、翌2000年には同市場第一部へ指定替えとなりました。2022年の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しています。2016年には石川県加賀市に新工場を建設するなど、生産体制の強化を継続しています。

2025年3月31日現在、従業員数は単体で1,399名です(連結子会社はありません)。筆頭株主は創業家資産管理会社のKANOで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
KANO 19.29%
日本マスタートラスト信託銀行 11.94%
日本カストディ銀行 5.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長社長執行役員は加納慎也氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
加納慎也 代表取締役社長社長執行役員 2011年大和証券退職後、同社入社。営業本部、企画本部長、技術開発本部長などを歴任し、2023年6月より現職。
山田新一 取締役常務執行役員営業本部長 1991年同社入社。関西・中京ブロック長、営業本部副本部長などを経て、2020年6月より現職。
綾由紀夫 取締役常務執行役員管理本部長 1985年同社入社。販売部長、技術本部長などを経て、2023年6月より現職。
比嘉正人 取締役(常勤監査等委員) 1988年同社入社。福岡支店長、大阪支店長、執行役員生産管理部長などを経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、蜂谷俊雄(金沢工業大学建築学部教授)、古谷まゆみ(古谷まゆみ公認会計士事務所所長)、中田浩一(元株式会社北國銀行常務取締役)、松山純子(香林坊法律事務所所長)です。

2. 事業内容


同社は、「間仕切関連事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 間仕切関連事業


オフィスビル、工場、学校、病院、商業施設などで使用される可動間仕切、固定間仕切、トイレブース、移動間仕切、ロー間仕切などの製造、販売および施工を行っています。顧客は主にゼネコンや設計事務所、施主などの建設関連業者です。ビルの高層化や工期短縮のニーズに対応し、製品の提供を通じて快適な空間創りを支援しています。

収益は、顧客に対する製品の販売代金および施工料から得ています。受注から設計、製造、販売、施工、サービスまでを自社一貫システムで行うことで、品質の確保と納期の短縮を実現しています。運営は主に小松ウオール工業が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。なお、同社は連結財務諸表を作成していないため、単体の数値を記載しています。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績推移です。売上高は着実に増加傾向にあり、特に2024年3月期以降は400億円台で推移しています。利益面でも、経常利益率は5%〜8%台を維持しており、安定した収益力を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 336億円 345億円 378億円 436億円 446億円
経常利益 24億円 18億円 24億円 37億円 38億円
利益率(%) 7.2% 5.3% 6.3% 8.6% 8.4%
当期利益 16億円 12億円 16億円 28億円 27億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較します。売上高は前期比で増加し、売上総利益も増加しました。これに伴い売上総利益率は改善しています。一方、営業利益はほぼ横ばいで推移しており、販管費の増加が利益の伸びを抑制した形となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 436億円 446億円
売上総利益 147億円 158億円
売上総利益率(%) 33.9% 35.3%
営業利益 36億円 36億円
営業利益率(%) 8.4% 8.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が40億円(構成比33%)、荷造運搬費が12億円(同10%)、賃借料が13億円(同11%)を占めています。売上原価においては、材料費が91億円(構成比54%)、外注費が37億円(同22%)を占めています。

(3) セグメント収益


品目別の売上高を見ると、主力である可動間仕切と固定間仕切が増加し、全体の増収を牽引しました。移動間仕切も微増となりましたが、トイレブースとロー間仕切は減少しました。オフィスの移転需要等が堅調に推移したことが背景にあります。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
可動間仕切 183億円 197億円
固定間仕切 92億円 94億円
トイレブース 80億円 78億円
移動間仕切 60億円 60億円
ロー間仕切 6億円 6億円
その他 14億円 12億円
合計 436億円 446億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、内部留保の充実を図りつつ、運転資金、設備投資、株主還元等へ資金を充当しております。
営業活動では、税引前当期純利益の計上や売上債権の減少等により資金が増加しました。
投資活動では、固定資産の取得による支出があったものの、定期預金の預入及び払戻による純収入等で資金の減少は抑えられました。
財務活動では、自己株式の取得や配当金の支払いにより資金が減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 43億円 33億円
投資CF -12億円 -5億円
財務CF -11億円 -27億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は間仕切の専門メーカーとして、受注から設計、製造、販売、施工、サービスまでの「自社一貫システム」を通じて新製品を提供し、社会に貢献することを経営指針としています。今後も新製品開発とサービス向上により、取引先・従業員・株主との共存共栄を図り、安定した収益を継続して上げることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「Value Up from Creativity」をテーマに掲げ、顧客ニーズや市場環境の変化に柔軟に対応する姿勢を重視しています。また、サステナビリティ推進として、環境問題への対応や多様な人材が活躍できる職場環境の整備、ガバナンスとリスク管理体制の強化に取り組むなど、ESG経営を推進する文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は2028年3月期を最終年度とする中期経営計画「NEXT VISION 2028」を策定しています。定量目標として以下を掲げています。

* 売上高年平均成長率:4%~6%(2023年3月期基準)
* 売上高営業利益率:8%~10%
* ROE:8%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画に基づき、「既存間仕切事業の成長」「新規製品の創出」「生産・物流オペレーションの高度化」の3つの基本方針を掲げています。首都圏を中心としたオフィス市場への更なる進出や、製品用途の拡大、ブランディング強化に加え、自動化設備の導入やDX推進による生産性向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材育成方針及び環境整備方針として、積極的な女性採用の推進、女性従業員の育成と管理職登用の推進、仕事と家庭の両立支援による働きやすい職場環境の構築を掲げています。また、多様な視点を取り入れるため、リファラル採用を含めた中途採用活動にも注力し、性別や国籍に関わらず活躍できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 38.0歳 14.1年 6,357,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.4%
男性育児休業取得率 42.0%
男女賃金差異(全労働者) 78.8%
男女賃金差異(正規) 79.2%
男女賃金差異(非正規) 64.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒女性採用比率(29.8%)、中途採用管理職者の割合(54.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内情勢及び経済動向


同社製品は民間および官公庁の建物に使用されており、当期の売上高の約77%が民間向け、約23%が官公庁向けです。そのため、民間設備投資の減少や公共投資の削減が行われた場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料等の価格


原材料価格の上昇や自然災害による資材高騰に対し、仕入先の分散や在庫確保等の対策を講じています。しかし、想定を超える価格上昇が発生し、その分を販売価格に転嫁できない場合には、同社の業績や利益率に悪影響を与える可能性があります。

(3) 施工能力


都市再開発等の需要に対応するため、施工現場の人員確保や育成に努めています。しかし、想定以上の現場数となり、それに見合う十分な人員を確保できず少人数での対応を余儀なくされるような場合には、工期の遅延等により業績に影響が出る可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。