シード 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シード 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シードは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、コンタクトレンズの研究開発から製造販売、ケア用品の販売までを幅広く手がける専門メーカーです。主力の「シード1dayPureシリーズ」や乱視・遠近両用などの高付加価値商品の販売が堅調に推移し、直近の業績では増収および経常増益を達成しています。


※本記事は、株式会社シードの有価証券報告書(第70期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. シードってどんな会社?


同社はコンタクトレンズとケア用品を中心に、多様な「みえる」喜びを創造する眼の専門総合メーカーです。

(1) 会社概要


1957年に東京コンタクトレンズ研究所として設立され、1985年にブランド名をマイコンからシードへ変更しました。1987年に現在の社名へ商号変更し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しました。その後、東証二部、東証一部を経て、2026年に東京証券取引所スタンダード市場へ移行しています。

同社グループは連結従業員数1,048名、単体774名の体制で事業を展開しています。大株主については、筆頭株主ならびに第2位、第3位のいずれもが、信託業務や資産管理業務を行う金融機関および信託銀行等によって構成されています。

氏名 持株比率
管理信託(A001)受託者 SMBC信託銀行 18.00%
みずほ信託銀行 有価証券管理信託0700026 14.27%
野村信託銀行(信託口2052116) 11.91%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性4名の計14名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長は佐藤隆郎氏が務めており、社外取締役の比率は28.6%となっています。

氏名 役職 主な経歴
佐藤 隆郎 代表取締役社長 1998年同社入社。開発部長、執行役員技術本部開発部長、常務執行役員研究開発本部長兼開発部長等を経て2025年より現職。
杉山 哲也 代表取締役副社長 兼管理本部長 1986年富士銀行入行。秋田支店長等を経て2017年同社入社。専務執行役員管理本部長等を経て2025年より現職。
五十嵐 淳 取締役常務執行役員営業本部長 1985年同社入社。眼鏡部長、関連事業部長、常務執行役員商品本部長、常務執行役員事業開発本部長等を経て2023年より現職。
新庄 信孝 取締役常務執行役員国際事業本部長 1987年富士銀行入行。2018年同社入社。経営企画部長、常務執行役員海外事業本部担当兼事業戦略部長等を経て2025年より現職。
福田 猛 取締役常務執行役員生産技術本部長 1992年同社入社。技術本部生産部長兼技術部長、執行役員生産技術本部長等を経て2018年より現職。
中村 きく江 取締役常務執行役員研究開発本部長 1988年同社入社。臨床研究部長、学術部長、執行役員学術部長、取締役執行役員研究開発本部副本部長等を経て2025年より現職。


社外取締役は、小原之夫(元みずほ情報総研社長)、大竹裕子(プロビタス設立代表取締役)、小泉範子(同志社大学生命医科学部教授)、藤田礼次(元ミットサイアム社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コンタクトレンズ・ケア用品事業」および「その他事業」を展開しています。

コンタクトレンズ・ケア用品事業


同社グループの中核を担い、ハード・ソフト系のコンタクトレンズや使い捨てレンズ、オルソケラトロジーレンズ、光学器械などの関連製品に加え、保存液や洗浄液といったコンタクトレンズケア用品を広く提供しています。国内外の一般消費者や眼科・眼鏡店などの小売店を主な顧客としています。

収益は、製品の販売代金から得ており、販売目標達成に応じたリベートなどの条件も組み込まれています。事業の運営は同社を中心に、シードアイサービスや台湾、シンガポール、イギリス、ドイツ、中国など世界各国に展開する多数の連結子会社が担っています。

その他事業


コンタクトレンズ以外の領域として、眼鏡フレームや眼鏡備品、眼内レンズなどの製品を取り扱っています。眼科や眼鏡店などの医療関係者および販売店を主要な顧客とし、眼に関する多様なニーズに応える事業を展開しています。

収益は、眼鏡フレームや眼内レンズなどの商品販売代金によって構成されています。本事業の運営は、同社のほか、シードアイサービス、横浜近視予防研究所、および台湾やシンガポール、香港などに所在する複数の子会社が連携して行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績を見ると、売上高は安定して成長を続け、直近の2026年3月期には339億円に達しています。経常利益は一時的な減少があったものの、直近2期間では回復傾向を示し、14億円水準へと復調しています。利益率は一時的に低下した時期を経て、足元では4%台を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 288億円 306億円 324億円 332億円 339億円
経常利益 11億円 6億円 21億円 13億円 14億円
利益率(%) 3.9% 1.8% 6.4% 4.0% 4.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 7億円 18億円 11億円 13億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しており、売上総利益率は45%前後で安定しています。一方で、人件費等の増加により販売費及び一般管理費が膨らんだため、営業利益および営業利益率は前年度からやや低下する結果となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 332億円 339億円
売上総利益 146億円 152億円
売上総利益率(%) 44.0% 44.8%
営業利益 16億円 14億円
営業利益率(%) 4.7% 4.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が30億円(構成比22%)、業務委託費が15億円(同11%)、広告宣伝費が12億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のコンタクトレンズ・ケア用品事業は、国内でのスペシャリティレンズの拡販や、ベトナム・マレーシアなど東南アジアでの輸出伸長により売上高が増加しました。一方、その他事業は眼内レンズの売上減少等により、前年度に比べ売上が縮小しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
コンタクトレンズ・ケア用品 331億円 338億円
その他 1.3億円 0.9億円
連結(合計) 332億円 339億円


営業活動によるキャッシュ・フローは27億円のプラス、投資活動によるキャッシュ・フローは38億円のマイナス、財務活動によるキャッシュ・フローは19億円のマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型の状態です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も30.8%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「『眼』の専門総合メーカー」として、人々の多様な「みえる」喜びを創造できる社会の実現を目指しています。この最上位概念を「パーパス」と位置づけ、そのキャッチコピーとして「まだみぬ、世界は、美しい」を掲げています。社会に必要とされる企業であり続けることを使命として事業を展開しています。

(2) 企業文化


同社は、パーパスの実現に向けて、会社としての行動方針や意思決定の基準となる「経営理念」、社員が日常の業務レベルで持つべき価値観や行動基準となる「カルチャー」、そして順守すべき規範を表した「行動規範」を設計しています。多様なステークホルダーと協働し、社会の発展に貢献する文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、中期経営計画(2024年4月〜2027年3月)において、「連結売上高500億円を達成し、世界のコンタクトレンズ市場でプレゼンスを発揮するための生産基盤を確保する」という目標を掲げています。また、2050年のカーボンニュートラル実現を見据え、2030年を中間目標とした環境関連の削減目標も設定しています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向け、国産の「シード1dayPureシリーズ」の乱視用・遠近両用といった高付加価値商品の販売に注力し、ブランドイメージの再構築を図ります。また、海外市場では中国での完全子会社化による意思決定の迅速化や、シンガポールの新物流拠点を活かした東南アジア地域での販売強化を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を最重要の経営資本と位置づけ、グローバルな人的資本経営を推進しています。新領域開拓を支える広い視野と柔軟な思考を持つ人材の確保・育成に注力しており、人事ローテーションやポストチャレンジ制度、公募制プロジェクトなどを通じて、多様なステークホルダーと向き合える組織の構築を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 36.8歳 12.8年 6,002,763円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 24.6%
男性労働者の育児休業取得率 77.8%
労働者の男女の賃金差異(全労働者) 71.7%
労働者の男女の賃金差異(正規雇用労働者) 79.2%
労働者の男女の賃金差異(パート・有期労働者) 77.3%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 為替や金利等のファイナンスリスク


急激な為替変動が発生した場合、海外からの製品輸入や現地での販売活動等に伴う外貨建決済に影響が及ぶ可能性があります。また、金融情勢の変化により金利が大きく上昇した際には資金調達コストが増大するリスクがあり、同社は為替予約や固定・変動金利の組み合わせ等でリスクの軽減を図っています。

(2) 天災や感染症等の環境・災害リスク


大規模な地震、台風、水害等の自然災害や、新たな感染症の発生などにより、コンタクトレンズの生産および物流機能が低下するリスクがあります。特に製造拠点において甚大な被害が生じた場合、製品供給が滞る可能性があるため、同社は設備の分散化やBCP(事業継続計画)の対応強化に努めています。

(3) 情報セキュリティ等のオペレーションリスク


サイバー攻撃や内部の不正アクセスなどにより、個人情報や研究開発に関わる機密情報が漏洩するリスクが内在しています。情報漏洩が発生した際には、対応負担の増加や企業ブランドの失墜を招く恐れがあるため、同社はセキュリティ対策の徹底や社員教育を通じて厳重な管理体制を構築しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。