#記事タイトル:シード転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社シード の有価証券報告書(第69期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. シードってどんな会社?
国産コンタクトレンズのパイオニアとして知られる「眼」の専門総合メーカーです。研究開発から製造販売までを一貫して手掛け、多様な視覚ニーズに応えています。
■(1) 会社概要
1957年に株式会社東京コンタクトレンズ研究所として設立され、1985年にブランド名を現在のシードに変更しました。2007年には埼玉県に国内最大級の製造拠点である鴻巣研究所1号棟を竣工し、生産体制を強化。2011年には同研究所で医療機器の品質マネジメントシステムISO13485を取得しました。2022年には東京証券取引所の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行し、眼鏡事業からは撤退しています。
連結従業員数は985名、単体では746名体制です。大株主構成は、筆頭株主が資産管理業務を行う株式会社SMBC信託銀行(18.01%)、第2位がみずほ信託銀行株式会社(14.28%)、第3位が野村信託銀行株式会社(11.92%)となっており、上位を信託銀行が占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 管理信託(A001)受託者 SMBC信託銀行 | 18.01% |
| みずほ信託銀行有価証券管理信託0700026 | 14.28% |
| 野村信託銀行(信託口2052116) | 11.92% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性4名の計13名で構成され、女性役員比率は30.8%です。代表取締役社長は浦壁昌広氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 浦壁 昌広 | 取締役社長(代表取締役) | 1985年富士銀行(現みずほ銀行)入行。みずほコーポレートアドバイザリー出向を経て、2009年シード取締役、同副社長に就任。2010年1月より現職。 |
| 杉山 哲也 | 取締役専務執行役員管理本部長 | 1986年富士銀行入行。みずほ銀行秋田支店長等を歴任後、2017年シード入社。執行役員経理部長、常務執行役員管理本部長等を経て、2025年4月より現職。 |
| 五十嵐 淳 | 取締役常務執行役員営業本部長 | 1985年シード入社。眼鏡部長、執行役員関連事業部長、常務執行役員商品本部長、事業開発本部長等を歴任。2023年6月より現職。 |
| 福田 猛 | 取締役常務執行役員生産技術本部長 | 1992年シード入社。技術本部生産部長兼技術部長、執行役員生産技術本部長等を経て、2018年4月より現職。 |
| 佐藤 隆郎 | 取締役常務執行役員研究開発本部長 | 1998年シード入社。開発部長、執行役員技術本部開発部長、常務執行役員研究開発本部長等を経て、2024年4月より現職。 |
| 中村 きく江 | 取締役執行役員研究開発本部 副本部長 | 1988年シード入社。臨床研究部長、学術部長、執行役員学術部長を経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、小原之夫(元みずほ情報総研社長)、大竹裕子(公認会計士・税理士)、小泉範子(同志社大学教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「コンタクトレンズ・ケア用品」および「その他」事業を展開しています。
■(1) コンタクトレンズ・ケア用品事業
コンタクトレンズ(ハード、ソフト、使い捨て、乱視用・遠近両用等のスペシャリティレンズ、オルソケラトロジーレンズ等)およびそのケア用品(保存液、洗浄液等)を取り扱っています。一般消費者、医療機関、販売店等が主な顧客です。
収益は、製品の販売に伴う対価として販売先から受領します。運営は、シード本体のほか、国内ではシードアイサービス、海外では台湾、シンガポール、ドイツ、イギリス等の現地法人が行っています。
■(2) その他事業
コンタクトレンズ以外の眼科関連製品などを取り扱っており、具体的には眼鏡フレーム、眼鏡備品、眼内レンズなどが含まれます。
収益は、商品の販売対価として顧客から受領します。運営は主にシードおよびシードアイサービス等が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は着実に増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。一方、利益面では変動が見られ、直近の2025年3月期は増収ながらもコスト増等の影響で減益となりました。利益率は一桁台前半から中盤で推移しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 286億円 | 288億円 | 306億円 | 324億円 | 332億円 |
| 経常利益 | 12億円 | 11億円 | 6億円 | 21億円 | 13億円 |
| 利益率(%) | 4.2% | 3.9% | 1.8% | 6.4% | 4.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 11億円 | 12億円 | -3億円 | 20億円 | 11億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費も増加したため、営業利益は減少しました。売上総利益率は44.0%と前期比でほぼ横ばいを維持しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 324億円 | 332億円 |
| 売上総利益 | 142億円 | 146億円 |
| 売上総利益率(%) | 43.8% | 44.0% |
| 営業利益 | 21億円 | 16億円 |
| 営業利益率(%) | 6.3% | 4.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が28億円(構成比21%)、業務委託費が16億円(同12%)、広告宣伝費が13億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のコンタクトレンズ・ケア用品事業は、オルソケラトロジーレンズ等の伸長により増収となりましたが、原価高騰等により減益となりました。その他事業も増収で、営業損失は縮小しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| コンタクトレンズ・ケア用品 | 323億円 | 331億円 | 33億円 | 32億円 | 9.7% |
| その他 | 1.2億円 | 1.3億円 | -0.1億円 | -0.1億円 | -7.1% |
| 調整額 | - | - | -12億円 | -16億円 | - |
| 連結(合計) | 324億円 | 332億円 | 21億円 | 16億円 | 4.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
健全型(営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業)
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 60億円 | 30億円 |
| 投資CF | -38億円 | -46億円 |
| 財務CF | 26億円 | -11億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「『眼』の専門総合メーカー」として、人々の多様な「みえる」喜びを創造できる社会の実現を目指しています。企業ビジョンの最上位概念として「パーパス」を掲げ、その実現のための行動方針として経営理念を定めています。
■(2) 企業文化
パーパスの実現に向け、社員が日常の業務レベルで持つべき価値観・行動基準を「カルチャー」として設計し、順守すべき規範を「行動規範」として定めています。これらを基盤に、ステークホルダーとの信頼構築や社会課題への対応を進める企業風土の醸成を図っています。
■(3) 経営計画・目標
2024年4月から2027年3月までの中期経営計画を推進しており、連結売上高500億円の達成を目指しています。また、環境目標として2050年のカーボンニュートラル実現を掲げ、中間目標として2030年における鴻巣研究所でのCO2排出量原単位を2022年度比で50%改善することを設定しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向け、鴻巣研究所での新棟建設による生産能力の抜本的引き上げに取り組んでいます。商品戦略では、乱視用や遠近両用といった高付加価値なスペシャリティレンズの販売強化、成長著しいオルソケラトロジーレンズの拡販、シリコーンハイドロゲルレンズの開発・上市を推進します。海外市場においても販売促進とラインアップ拡充により売上拡大を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
変化の激しい環境下で業績伸長や新領域開拓を支えるため、「広い視野」を持つ人材の確保と育成に注力しています。専門性を持ちつつ柔軟に活躍できる人材や、多角的な視点を持つ人材を求め、人事ローテーションやポストチャレンジ制度、公募制プロジェクトなどを通じて経験の幅を広げる機会を提供しています。また、フレックスタイムや在宅勤務、企業主導型保育所の設置など、多様な働き方を支援する環境整備も進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 36.4歳 | 12.6年 | 5,798,346円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 22.1% |
| 男性育児休業取得率 | 77.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 82.2% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 需要動向と特定取引先への依存
国内市場における人口減少や高齢化による需要減少、特定の取引先への依存や大口取引先の方針転換などがリスクとして挙げられます。これに対し、海外展開の強化、遠近両用レンズ等の高付加価値製品への注力、取引先の分散化などを進めています。
■(2) ガバナンスと子会社管理
投資判断の誤りによる損失や、国内外の子会社における管理不全がグループ全体の業績や評判に影響を与える可能性があります。投資基準の明確化、専門部署による子会社統制の強化、グループ内での役割明確化などを通じて管理体制を強化しています。
■(3) 新商品開発力
市場ニーズとの不一致や開発の遅れにより販売機会を逸失するリスクがあります。市場ニーズに基づいたテーマ選定、オープンイノベーションの活用、戦略的M&Aの推進などにより、開発スピードと競争力の向上を図っています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。