※本記事は、ZACROS株式会社の有価証券報告書(第96期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ZACROSってどんな会社?
同社は包装材や電子部材を中心とする事業を展開し、独自の技術で社会の課題解決に貢献する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1936年に東京府で藤森工業所として設立され、防水防湿紙等の製造を開始しました。1944年に藤森工業へ商号を変更し、その後プラスチック容器や剥離フィルム等の製造を開始して事業を拡大しました。2004年に東京証券取引所市場第一部へ銘柄指定され、2024年にはZACROSへ商号を変更しています。
現在、同社グループは連結で2,747名、単体で1,388名の従業員を擁し、グローバルに事業を展開しています。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行であり、第2位および第3位には事業関連の法人であるキャドとエッチエヌカンパニーが名を連ねており、安定した株主構成のもとで経営が行われています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.20% |
| キャド | 4.00% |
| エッチエヌカンパニー | 4.00% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は下田拓が務めており、社外取締役比率は33.3%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 下田拓 | 代表取締役社長 | 2010年同社入社。先端医療事業推進部長、ウェルネス事業本部長などを経て、2024年4月より現職。 |
| 佐藤道彦 | 取締役専務執行役員管理部門統括 | 1987年日本興業銀行入行。2016年同社入社。総務部長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 藤森明彦 | 取締役会長 | 1969年同社入社。協和工業代表取締役社長、同社代表取締役社長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 布山英士 | 取締役相談役 | 1977年同社入社。研究所長、ライフサイエンス事業本部長、代表取締役社長などを経て、2025年6月より現職。 |
| 久下典宏 | 取締役 | 2016年フジモリ産業入社。同社化成品事業部長代行などを経て、2023年6月より現職。 |
| 藤森伸彦 | 取締役(常勤監査等委員) | 1987年ニッカ入社。同社代表取締役副社長、代表取締役副会長などを経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、伊澤久美(ScholeDesign代表)、坂井学(元第一三共副社長)、竹内さと子(フォアサイト・アンド・カンパニー取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ウェルネス」「環境ソリューション」「情報電子」「産業インフラ」の報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) ウェルネス
同セグメントでは、医薬・医療用包装材やバイオ医薬品等製造用シングルユースバッグをはじめ、医療機器や体外診断薬関連製品などを提供し、医療機関や製薬会社などの顧客を対象としています。
事業運営は主にZACROSやAvesta Continental Packなどの国内外のグループ会社が行っており、製品の製造および販売を通じて対価を得る収益モデルとなっています。
■(2) 環境ソリューション
同セグメントでは、環境負荷低減を志向したつめかえ包装や粧業包装、OA機器関連包装のほか、プラスチック製液体容器などを提供し、日用品や食品などを扱う一般消費財メーカーなどを顧客としています。
事業運営はZACROSやフジモリ産業などが担っており、循環型社会の実現に寄与する包装材や容器の製造・販売による収益を基盤としています。
■(3) 情報電子
同セグメントでは、ディスプレイ関連のプロテクトフィルムや半導体パッケージ基板用などの情報記録用材、各種電子部材向け剥離フィルムを提供し、電子機器や部材メーカーを顧客としています。
事業の運営はZACROSや台湾賽諾世などが中心となって展開しており、超スマート社会に不可欠な高機能部材の製造および販売により収益を得ています。
■(4) 産業インフラ
同セグメントでは、建築向けのビル用煙突や空調用配管、ボイドスラブのほか、トンネル用資材やプラスチック原料などの化成品を提供し、主に建設会社やインフラ関連企業を顧客としています。
事業運営はZACROSやフジモリ産業などが担当しており、製品の製造・販売および関連する施工やシステム提供などを通じて収益を獲得しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績をみると、売上高は安定して成長を続けており、各期の経常利益も底堅く推移しています。利益面では一時的な変動が見られるものの、全体として増収基調を維持しており、着実な事業成長が伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,278億円 | 1,294億円 | 1,362億円 | 1,507億円 | 1,585億円 |
| 経常利益 | 111億円 | 68億円 | 89億円 | 104億円 | 123億円 |
| 利益率(%) | 8.7% | 5.3% | 6.5% | 6.9% | 7.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 77億円 | 49億円 | 45億円 | 65億円 | 77億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益状況をみると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しています。営業利益率も改善傾向にあり、コストコントロールと収益性の向上が両立していることが分かります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,507億円 | 1,585億円 |
| 売上総利益 | 347億円 | 368億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.0% | 23.2% |
| 営業利益 | 101億円 | 111億円 |
| 営業利益率(%) | 6.7% | 7.0% |
販売費及び一般管理費のうち、荷造・保管・運搬費が51億円(構成比20.0%)、研究開発費が45億円(同17.5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの売上動向をみると、情報電子事業や産業インフラ事業が好調に推移し、全体の増収を牽引しました。一方で環境ソリューション事業は前年並みの売上水準を維持しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ウェルネス | 271億円 | 278億円 |
| 環境ソリューション | 327億円 | 326億円 |
| 情報電子 | 539億円 | 568億円 |
| 産業インフラ | 370億円 | 413億円 |
| 連結(合計) | 1,507億円 | 1,585億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で安定した資金を獲得しつつ、借入等によって将来の成長に向けた積極的な投資を継続する積極型のキャッシュ・フロー状況となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 66億円 | 118億円 |
| 投資CF | -175億円 | -201億円 |
| 財務CF | 3億円 | 2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「ZACROS VISION」として、「『つつむ心』で寄り添い、なくてはならない豊かさへ。私たちは、次の世代に誇れる未来をつくり続けます。」を掲げています。創業以来の技術をさらに進化させ、事業を通じて社会の持続的な発展と企業価値の向上を両立させることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、顧客や社会の潜在的な「困りごと」に先行して挑み、独自の技術やサービスを組み合わせてユニークな解決策を創出する「ソリューション創造活動」を重視しています。新しい価値や文化を生み出し続ける姿勢が、従業員の行動様式として組織に根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2030年度までの「中長期経営計画―ソリューション創造活動の進化―」を推進し、資本効率の向上と持続的な企業価値の向上を目指しています。2030年度を最終年度とする具体的な数値目標を設定し、構造改革を進めています。
・売上高:2,200億円
・営業利益率:10.0%
・ROE:12.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「ビジネスモデルの進化」「事業ポートフォリオ変革」「バランスシート改革」の3つを基本方針として掲げています。既存事業や生産拠点の増強に加えて、海外での製造・販売拠点の拡充などに積極的な先行投資を行い、高付加価値創造体質への構造変革を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、従業員一人ひとりを新たな価値を創造する大切な「人財」と位置づけています。各人の個性に向き合い、能力向上とキャリアアップを支援することで、従業員が仕事のやりがいを感じながら成長できる環境を整備し、イノベーションを生み出せる職場風土の醸成に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.7歳 | 15.3年 | 7,534,967円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.1% |
| 男性育児休業取得率 | 67.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 78.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 69.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(20.0%)、障がい者雇用率(2.8%)、有休取得率(70.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 情報電子関連市場の影響
同社は液晶ディスプレイ用のプロテクトフィルムや情報記録用材などの生産・販売を行っており、これらの情報電子関連市場において急激な需要の変動が生じた場合、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。これに対し、市場状況の監視と事業の多角化に努めています。
■(2) 設備投資に伴う影響
同社グループでは生産力強化や差別化を目的とした設備投資を継続的に実施していますが、市場環境の変化や設備コストの増大、工事遅延等により投資回収期間が長期化した場合、収支の悪化を招き業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 競合状況、価格動向
同社グループが属する業界には多数の企業が存在しており、競合他社による独自技術の開発や模倣などによって市場シェアや価格が低下する可能性があります。競争激化が価格転嫁や収益力の維持に影響を与えるリスクに対して、技術向上や差別化を図っています。



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