※本記事は、ZACROS株式会社 の有価証券報告書(第95期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ZACROSってどんな会社?
同社は「究極の先端」を追求し、医薬・医療、環境、電子、インフラ分野で独自の製品を提供するメーカーです。
■(1) 会社概要
1936年に株式会社藤森工業所として設立され、1944年に藤森工業へと商号変更しました。1993年の店頭登録を経て、2004年に東京証券取引所市場第一部へ銘柄指定されています。2022年の市場区分見直しによりプライム市場へ移行し、創業110周年を迎えた2024年10月に、長年ハウスネームとして使用してきたZACROSへと商号を変更しました。
同グループの従業員数は連結で2,648名、単体で1,305名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第3位は有限会社キャドです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.60% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.00% |
| 有限会社キャド | 3.90% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は下田拓氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 下田 拓 | 代表取締役社長 | 2010年同社入社。先端医療事業推進部長、ウェルネス事業本部長、社長室長などを経て、2024年4月より現職。 |
| 藤森 明彦 | 取締役会長 | 1969年同社入社。常務、専務を経て1991年社長に就任。2013年代表取締役会長、2024年6月より現職。 |
| 布山 英士 | 代表取締役品質統括 | 1977年同社入社。ライフサイエンス事業本部長等を経て2013年社長就任。2024年4月より現職。 |
| 佐藤 道彦 | 取締役専務執行役員管理部門統括 | みずほ銀行出身。2016年同社入社。粘着ソリューション事業部長、総務部長等を経て2024年6月より現職。 |
| 久下 典宏 | 取締役 | 2016年フジモリ産業入社。2023年6月より同社代表取締役社長およびZACROS取締役(現任)。 |
| 藤森 伸彦 | 取締役(常勤監査等委員) | ニッカ入社後、フジモリプラケミカル社長・会長等を歴任。2002年同社代表取締役副社長、2014年副会長を経て2024年6月より現職。 |
社外取締役は、伊澤久美(ScholeDesign合同会社代表)、坂井学(元第一三共代表取締役副社長)、竹内さと子(問題解決力検定協会理事・指名報酬委員長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ウェルネス」「環境ソリューション」「情報電子」及び「産業インフラ」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。
■ウェルネス事業
医薬・医療用包装材、医薬向け剥離フィルム、バイオ医薬品製造用シングルユースバッグ(BioPhaS)、医療機器、体外診断薬関連および検査薬関連製品などを提供しています。主な顧客は医薬品メーカーや医療機器メーカーです。
収益は、これらの製品の販売により顧客から対価を得ています。運営は主にZACROS、ZACROS(THAILAND)CO.,LTD.などのグループ会社が行っています。
■環境ソリューション事業
つめかえ包装、粧業包装、その他軟包装、OA機器関連包装、プラスチック製液体容器(バッグインボックス等)などを提供しています。環境問題に向き合い、循環型社会に必要な価値を提供することを目的としています。
収益は、各種包装資材や液体容器の販売により顧客から対価を得ています。運営はZACROS、フジモリ産業、まつやセロファン、ZACROS AMERICA,Inc.などが担っています。
■情報電子事業
プロテクトフィルム(偏光板用プロテクト等)、ディスプレイ関連の剥離フィルム、情報記録用材(層間絶縁フィルム等)、電子部材関連等の剥離フィルムなどを提供しています。超スマート社会に必要な高機能部材を供給しています。
収益は、高機能フィルム等の製品販売により顧客から対価を得ています。運営はZACROS、フジモリ産業、台湾賽諾世股份有限公司などが行っています。
■産業インフラ事業
ビル用煙突、ボイドスラブ、空調用配管、トンネル用資材、プラスチック原料・商品及び関連機械などを提供しています。生活を支える産業インフラの強化と企画提案商品による価値提供を推進しています。
収益は、建築・土木資材や化成品、機械の販売および一部の工事請負契約に基づく対価を得ています。運営は主にZACROS、フジモリ産業が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあります。2023年3月期に一時的な利益率の低下が見られましたが、直近の2025年3月期では売上高、利益ともに伸長し、過去最高の売上高を記録しました。当期利益も回復基調にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,173億円 | 1,278億円 | 1,294億円 | 1,362億円 | 1,507億円 |
| 経常利益 | 107億円 | 111億円 | 68億円 | 89億円 | 104億円 |
| 利益率(%) | 9.1% | 8.7% | 5.3% | 6.5% | 6.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 52億円 | 54億円 | 26億円 | 39億円 | 50億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。営業利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,362億円 | 1,507億円 |
| 売上総利益 | 297億円 | 347億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.8% | 23.0% |
| 営業利益 | 83億円 | 101億円 |
| 営業利益率(%) | 6.1% | 6.7% |
販売費及び一般管理費のうち、荷造・保管・運搬費が49億円(構成比20.1%)、研究開発費が47億円(同19.2%)、従業員給料が40億円(同16.4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
当期は、情報電子事業と産業インフラ事業が大きく伸長しました。情報電子事業は売上・利益ともに大幅増となり、全社の利益成長を牽引しました。環境ソリューション事業は減収減益となりましたが、ウェルネス事業は増収ながら開発費用の増加等により減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ウェルネス | 261億円 | 271億円 | 8億円 | 5億円 | 1.9% |
| 環境ソリューション | 335億円 | 327億円 | 14億円 | 13億円 | 4.0% |
| 情報電子 | 449億円 | 539億円 | 30億円 | 42億円 | 7.8% |
| 産業インフラ | 317億円 | 370億円 | 31億円 | 41億円 | 11.1% |
| 連結(合計) | 1,362億円 | 1,507億円 | 83億円 | 101億円 | 6.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローの状況は、本業で得た資金と借入等による資金調達を合わせ、将来の成長に向けた投資に積極的に振り向けている「積極型」です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 101億円 | 66億円 |
| 投資CF | -61億円 | -175億円 |
| 財務CF | -35億円 | 3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.4%でプライム市場平均(9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.5%でプライム市場平均(製造業平均46.8%)を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「ZACROS VISION」として『「つつむ心」で寄り添い、なくてはならない豊かさへ。私たちは、次の世代に誇れる未来をつくり続けます。』を掲げています。顧客や社会の潜在的な困りごとに先行して挑み、ユニークな解決策を創出することで、新しい文化や価値を生み出し続けることを目指しています。
■(2) 企業文化
創業以来、社内外の様々な製品や技術、サービスを組み合わせて独自の解決策を生み出す「ソリューション創造活動」を進化させ続けることを重視しています。また、「つつむ心」を持って社会や顧客に寄り添う姿勢を大切にし、持続的な企業価値向上を図る風土があります。
■(3) 経営計画・目標
2030年度を最終年度とする中長期経営計画において、以下の目標を掲げています。
* 売上高:2,200億円
* 営業利益率:10.0%
* ROE:12.0%
* EBITDA:330億円
■(4) 成長戦略と重点施策
2024年度から2026年度までの3年間を「積極的な先行投資」の時期と位置づけ、「ビジネスモデルの進化」「事業ポートフォリオ変革」「バランスシート改革」を断行します。具体的には、既存事業や生産拠点の増強、新規事業の加速に加え、バイオ医薬品製造用バッグの供給体制強化や、電子部材のシェア拡大、環境対応製品のラインアップ強化などを推進します。
* 2024-26年度の投資額:700億円超(M&A費用含む)
* 配当性向:40%目安
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
少子高齢化の中で人材を希少な資源と捉え、従業員の育成、活躍、定着、健康維持を推進するとともに、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。キャリア支援やジョブローテーションによる早期マネジメント任用、多様な働き方の推進を通じて、中長期の成長を支える強固な経営基盤の構築を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.3歳 | 15.6年 | 6,956,035円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.8% |
| 男性育児休業取得率 | 40.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 76.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 78.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 71.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(19.9%)、有休取得率(67.8%)、平均残業時間(24.9時間/月)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 電気・電子関連市場の影響
同社グループは、液晶ディスプレイ用フィルムや電子部材などを生産・販売しており、電気・電子関連市場の急激な需要変動が業績に大きな影響を与える可能性があります。これに対し、市場状況のモニタリングや迅速な対応、事業の多角化に努めています。
■(2) 競合状況、価格動向
同社グループが属する業界には多数の企業が存在し、競合他社の模倣や技術革新によりシェアを奪われる可能性があります。競合状況の変化による価格やシェアの低下は業績に影響を及ぼすため、一層の技術向上や信頼確保、差別化に取り組んでいます。
■(3) 原材料の価格変動及び調達
製品に使用する原材料価格は原油・ナフサ等の国際市況の影響を受けます。価格上昇や為替変動、供給不足が発生した場合、業績や生産活動に影響を及ぼす可能性があります。市況情報の収集、先行購買、新素材開発、サプライヤーとの関係構築等によりリスク低減を図っています。
■(4) 設備投資に伴う影響
生産力強化や差別化のための設備投資を実施していますが、市場環境の変化や工事遅延、償却費負担の増大などが業績に悪影響を及ぼす可能性があります。投資計画時のリスク検討や採算性分析、進捗モニタリングを通じてリスク管理を行っています。



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