マースグループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マースグループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マースグループホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場し、アミューズメント関連、スマートソリューション関連、ホテル・レストラン関連事業を展開しています。主力のパチンコホール向けシステム等の特需一巡により、直近の業績は売上高323億円、経常利益97億円と減収減益の決算となりました。


※本記事は、株式会社マースグループホールディングスの有価証券報告書(第52期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. マースグループホールディングスってどんな会社?


アミューズメント施設向けシステムや自動認識システム、ホテル・レストランの運営を主力としています。

(1) 会社概要


1974年に各種電子機器の設計・製造・販売を目的にマースエンジニアリングを設立しました。1996年に東京証券取引所市場第二部に上場し、2001年に市場第一部へ指定されました。その後、RFID等のスマートソリューション事業やホテル事業へ進出し、2018年には純粋持株会社へ移行して現社名に変更しています。

従業員数は連結で627名、単体で5名です。筆頭株主はイー・エムプランニングで、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行です。第3位には創業家出身で代表取締役社長を務める松波明宏氏が名を連ねており、安定した経営基盤を背景に事業の多角化を推進しています。

氏名 持株比率
イー・エムプランニング 11.76%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.91%
松波 明宏 3.69%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は松波明宏氏が務めています。取締役9名のうち、社外取締役は2名(比率22.2%)です。

氏名 役職 主な経歴
松波 明宏 取締役社長(代表取締役) 1995年同社入社。営業本部営業企画部長兼総合企画室長、常務取締役製販統括本部長等を経て、2004年代表取締役社長就任。2023年マースエンジニアリング取締役会長就任。
秋山 学 取締役 1988年同社入社。執行役員広域営業推進室長等を経て、2020年マースシステムズ東日本代表取締役社長就任。2022年より現職。
高橋 丈治 取締役 1987年同社入社。執行役員総務部長兼内部監査室長、マースエンジニアリング取締役等を経て、2019年マースプランニング代表取締役社長就任。2022年より現職。
小平 尚 取締役 2003年東研入社。同社取締役等を経て、2020年マーストーケンソリューション取締役第二本部長、2021年同社代表取締役社長就任。2022年より現職。


社外取締役は、洞口治夫(法政大学経営学部教授)、山下善久(山下法律事務所開設)です。

2. 事業内容


同社グループは、「アミューズメント関連事業」、「スマートソリューション関連事業」、および「ホテル・レストラン関連事業」を展開しています。

(1) アミューズメント関連事業


パチンコホールを中心としたアミューズメント施設向けに、プリペイドカードシステムや景品管理システム等の専用機器を提供しています。「EVOALL(エヴォール)シリーズ」などの新製品を通じて、ホール運営の業務効率化と売上・利益の最大化を支援し、高い市場シェアを有しています。

製品の販売やアフターサービス、システム保守等から収益を得ています。研究開発・製造はマースエンジニアリング、販売・サービスはマースシステムズ東日本およびマースシステムズ西日本などが担当し、全国のサービス拠点を通じた直販体制により顧客ニーズへ迅速に対応しています。

(2) スマートソリューション関連事業


DX推進や労働力不足といった社会課題を背景に、製造・物流・医療分野向けに自動認識システムを提供しています。RFIDやバーコード、AI画像認識システム、IoT対応の冷蔵物販自販機、無人チェックイン端末などの製品を展開し、業務の省人化・効率化を支援しています。

製品・システムの販売や導入支援などから収益を獲得しています。事業の運営は主にマーストーケンソリューションが自動認識システムの提案販売を担い、マースウインテックがIoT自販機等の製品開発・製造を行うなど、グループの技術力を結集して多様な領域へソリューションを展開しています。

(3) ホテル・レストラン関連事業


インバウンドや観光需要をターゲットに、宿泊・飲食サービスの提供を行っています。ビジネスと観光の双方に対応する「マースガーデンホテル博多」や、リゾート需要を取り込む「マースガーデンウッド御殿場」、さらに東京・銀座等での高級レストラン運営を通じ、高品質な顧客体験を追求しています。

宿泊料金や飲食代金から収益を得ており、立地特性を活かした料金戦略の最適化やサービス品質の維持・向上に取り組んでいます。施設の運営はすべてマースプランニングが担当し、ブランド力の強化と付加価値型サービスの拡充により、安定的な収益基盤の構築を図っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、パチンコ業界の設備投資需要を取り込み大きく成長しましたが、当期は新紙幣対応の特需が一巡したことにより減収減益となりました。一方で、当期利益は特別利益の計上等もあり増益を維持し、利益率は30%程度の高水準で推移しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 151億円 203億円 366億円 423億円 323億円
経常利益 25億円 47億円 125億円 131億円 97億円
利益率(%) 16.6% 23.2% 34.2% 31.0% 30.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 16億円 16億円 21億円 51億円 58億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い、売上総利益および営業利益が減少しています。一方で、高付加価値なシステムの提供等により、売上総利益率は50%を超える高い水準を維持しており、収益性の高さを保っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 423億円 323億円
売上総利益 208億円 172億円
売上総利益率(%) 49.2% 53.3%
営業利益 123億円 88億円
営業利益率(%) 29.1% 27.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料が30億円(構成比36.0%)、賞与引当金繰入額が3.9億円(同4.7%)を占めています。

(3) セグメント収益


アミューズメント関連事業は新紙幣対応の特需が一巡したことで減収となりました。一方でスマートソリューション関連事業はAI画像認識等の堅調な需要に支えられ、ホテル・レストラン関連事業はインバウンド需要の拡大等により増収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
アミューズメント関連事業 335億円 235億円
スマートソリューション関連事業 61億円 60億円
ホテル・レストラン関連事業 26億円 28億円
連結(合計) 423億円 323億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金で投資と株主還元を賄う「健全型」の推移を示しています。豊富な手元資金を背景に、安定した財務基盤を構築しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 107億円 78億円
投資CF -6億円 -25億円
財務CF -31億円 -28億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は91.0%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「企業の安全を図り、経営の安定を図り、共に生活の向上を図る。そして、事業を通じて社会に貢献する」ことを使命とし、「お客様お役立ち精神」のもと、すべてはお客様の満足のために活動することを掲げています。社会が抱える重要課題の解決を図りつつ、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「開発型企業グループ」として、顧客本位のシステム作りや行き届いたサービスを提供することを重視しています。常にチャレンジ精神を持ち、新たな付加価値を追求した製品を生み出す風土があり、社員一人ひとりが才能を十分に発揮して働きがいを持てる「健康経営」にも注力しています。

(3) 経営計画・目標


営業利益拡大により強固な財務体質を維持しつつ、資本の有効活用を踏まえた成長事業への機動的な投資を行うことで企業価値の増大を目指しています。
・配当性向30%を基準とした長期的で安定的な配当

(4) 成長戦略と重点施策


開発・製造・販売・アフターサービスの一貫体制による直接販売を通じ、顧客ニーズを的確に捉えた新製品開発による差別化を図ります。また、長年築き上げたアミューズメント事業を基盤としつつ、M&Aや業務提携を活用して成長分野への事業拡大を推進し、事業ポートフォリオの最適化を進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材の育成を企業経営の重要課題と位置づけ、持続的な成長と中長期的な企業価値向上のため、社内外の研修やOJTによる教育を実施しています。デジタル技術を活用した価値創造を担うDX人材の育成に注力するとともに、社員の健康保持と働きやすい職場環境を整える「健康経営」を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 48.2歳 26.0年 9,441,140円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 49.0%
男女賃金差異(正規雇用) 65.2%
男女賃金差異(パート・有期) 89.4%

※女性管理職比率は、同社および連結子会社が公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、DX応用研修累計受講者数(400名)、DXデータ分析研修受講者数(50名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制等の変更リスク


主要販売先であるパチンコホールは風営法や各種条例等の厳しい法的規制を受けています。法的規制の改正等が行われた場合、パチンコホールへのシステム導入や設置に制約が生じ、同社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 販売競争の激化によるリスク


同社はプロダクトアウト型製品の開発や手厚いサービス体制で他社との差別化を図っています。しかし、販売体制の見直しや迅速な対応を進める中でも、競合他社との販売競争が激化し、利益率や市場シェアが低下した場合、経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) 債権の貸倒れや顧客倒産リスク


パチンコ業界の厳しい経営環境下において、債権残高の大きい主要な顧客が倒産した場合、同社グループの業績に影響を及ぼす恐れがあります。これに対し、与信管理規程に基づく信用限度の慎重な調査や、グループ間での情報共有によりリスクの最小化に努めています。

(4) 企業機密や顧客情報の管理リスク


同社グループが保有する企業機密や顧客データなどの情報が外部へ流出した場合、社会的信用の失墜等により営業活動に支障をきたす可能性があります。情報セキュリティマネジメントシステムに準拠した体制を構築し、各種規程に則って厳重な情報管理を行っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。