マースグループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マースグループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の同社は、パチンコホール向けの周辺機器やシステムを提供するアミューズメント関連事業を主力としています。RFIDやX線検査等のスマートソリューション事業、ホテル運営も展開。直近の業績は、主力事業での新紙幣改刷対応や新製品の好調により、2期連続で過去最高業績を達成し、増収増益となりました。


※本記事は、株式会社マースグループホールディングス の有価証券報告書(第51期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. マースグループホールディングスってどんな会社?


パチンコホール向け周辺機器の大手システムメーカーです。自動認識システムやホテル運営など多角化も推進しています。

(1) 会社概要


1974年に電子機器の設計・製造を目的に設立され、1980年に遊技場向け景品管理システムを開発して主力事業の基盤を築きました。1996年に東証二部へ上場し、2001年には東証一部(現プライム)へ指定替えを果たしました。2018年には持株会社体制へ移行し、現社名に変更。2024年には新製品「EVOALL」シリーズをリリースするなど、業界のシステム化を牽引しています。

同社グループは連結従業員数630名、単体6名の体制で運営されています。筆頭株主は法人(株式会社イー・エムプランニング)で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は代表取締役社長の松波明宏氏です。

氏名 持株比率
イー・エムプランニング 11.77%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.04%
松波 明宏 3.69%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は松波明宏氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
松波 明宏 取締役社長(代表取締役) 1995年入社。営業企画部長、常務取締役製販統括本部長等を経て、2004年より現職。現在はマースエンジニアリング取締役会長も兼任。
秋山 学 取締役 1988年入社。執行役員首都圏営業部長等を経て、2020年マースシステムズ東日本代表取締役社長に就任(現任)。2022年より現職。
高橋 丈治 取締役 1987年入社。執行役員総務部長等を経て、2019年マースプランニング代表取締役社長に就任(現任)。2022年より現職。
小平 尚 取締役 2003年東研入社。マーストーケンソリューション取締役技術開発本部長等を経て、2021年同社代表取締役社長に就任(現任)。2022年より現職。


社外取締役は、洞口治夫(法政大学経営学部教授)、山下善久(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「アミューズメント関連事業」「スマートソリューション関連事業」「ホテル・レストラン関連事業」を展開しています。

(1) アミューズメント関連事業


パチンコホール向けに、プリペイドカードシステムやホールコンピュータ、景品管理POSシステムなどの周辺機器やソフトウェアを開発・製造・販売しています。ホールの省力化や効率化を支援するトータルソリューションを提供しており、顧客は全国のパチンコホールです。

収益は、製品の販売代金およびアフターサービス料、データ管理料などから構成されます。運営は主に、開発・製造をマースエンジニアリングが担い、販売・サービスをマースシステムズ東日本、マースシステムズ東海、マースシステムズ西日本などが担当する体制で行っています。

(2) スマートソリューション関連事業


製造・物流・医療業界などを対象に、RFID(ICタグ)やバーコードを活用した自動認識システム、X線検査装置などを提供しています。AI画像認識システムやIoT対応の冷蔵物販自販機、無人チェックイン端末など、省人化・効率化に貢献するソリューションを展開しています。

収益は、各種システム機器やデバイスの販売、ソリューション提供に伴う対価から得ています。運営は、自動認識システムの提案販売を行うマーストーケンソリューションや、IoT対応製品等の製造・販売を行うマースウインテックなどが担っています。

(3) ホテル・レストラン関連事業


「マースガーデンホテル博多」(福岡市)および「マースガーデンウッド御殿場」(静岡県御殿場市)のホテル運営を行っています。また、鉄板焼「銀明翠GINZA」などの飲食店経営も展開し、宿泊および飲食サービスを提供しています。

収益は、ホテル宿泊客やレストラン利用者からの宿泊料、飲食代金などです。運営は、マースプランニングが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高、利益ともに拡大傾向にあります。特に2024年3月期以降は売上高が大幅に伸長し、利益水準も高いレベルで推移しています。直近の2025年3月期も増収増益となり、売上高・各利益ともに過去最高を更新しました。利益率も30%前後という高い水準を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 148億円 151億円 203億円 366億円 423億円
経常利益 15億円 25億円 47億円 125億円 131億円
利益率(%) 10.4% 16.6% 23.2% 34.2% 31.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 19億円 31億円 86億円 87億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も拡大しています。売上総利益率は50%前後で推移しており、高い収益性を維持しています。営業利益率も約30%と極めて高く、効率的な事業運営が行われていることがわかります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 366億円 423億円
売上総利益 198億円 208億円
売上総利益率(%) 54.2% 49.3%
営業利益 117億円 123億円
営業利益率(%) 32.0% 29.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料が29億円(構成比34%)、賞与引当金繰入額が4億円(同5%)を占めています。

(3) セグメント収益


アミューズメント関連事業は新紙幣対応や新製品効果により増収増益となり、全社の利益を牽引しています。スマートソリューション関連事業も増収し、利益率10%以上を確保しました。ホテル・レストラン関連事業はインバウンド需要の回復等により増収となり、黒字転換を果たしています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
アミューズメント関連事業 286億円 335億円 114億円 119億円 35.6%
スマートソリューション関連事業 57億円 61億円 6億円 7億円 11.7%
ホテル・レストラン関連事業 23億円 26億円 -1億円 1億円 2.9%
連結(合計) 366億円 423億円 117億円 123億円 29.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 64億円 107億円
投資CF -16億円 -6億円
財務CF 18億円 -31億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は89.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「企業の安全を図り、経営の安定を図り、共に生活の向上を図る。そして、事業を通じて社会に貢献する」ことを経営理念としています。すべての顧客満足を勝ち取るため、顧客本位のシステム作りと行き届いたサービスの提供を基本とし、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


「開発型企業グループ」として、顧客ニーズを取り込んだ製品開発を重視しています。「お客様お役立ち精神」のもと、新たな付加価値を追求し続ける姿勢を持っています。また、グループ会社間の連携や人的融合を図り、柔軟な組織体制で経営資源を集約し、タイムリーな製品提供に努める風土があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、営業利益拡大による強固な財務体質の維持と、成長事業への機動的な投資による企業価値の増大を目指しています。株主還元を重要な資本政策と位置づけ、配当性向30%を基準とした安定的かつ適正な利益配分を目標として掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


アミューズメント関連事業では、新製品「EVOALLシリーズ」を中心としたトータルシステムの販売や、スマート遊技機対応の強化により市場シェア拡大を図ります。スマートソリューション関連事業では、AIやIoT技術を活用した省人化・自動化ソリューションの開発・販売を推進します。ホテル事業では、価格戦略や高付加価値サービスの提供で収益最大化を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


企業の成長を支える人材の育成と効率的な配置転換を推進しています。特に「DX人材の育成」に注力しており、全社員対象のDX基礎研修や応用研修を実施しています。また、「健康経営」を掲げ、心身の健康保持と働きやすい職場環境の整備を重要課題とし、ワークライフバランスの実現に向けた制度整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.2歳 22.0年 8,242,282円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 50.7%
男女賃金差異(正規) 65.8%
男女賃金差異(非正規) 86.5%


※女性管理職比率については、公表義務の対象ではないため記載を省略しています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、DX応用研修受講者数(累計350名)、DXデータ分析研修受講者数(50名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制等の変更


主要販売先であるパチンコ業界は風営法等の法的規制を受けています。これらの規制改正が行われた場合、製品の導入・設置に影響が生じ、同社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。同社は顧客ニーズに合った製品開発と柔軟な体制構築で対応しています。

(2) 競合との競争激化


開発型企業として製品力やサービス体制で差別化を図っていますが、販売競争の激化により利益率や市場シェアが低下した場合、業績に影響が出る可能性があります。これに対し、迅速できめ細かい対応に努めています。

(3) 情報管理とセキュリティ


企業機密や顧客データ等が流出した場合、社会的信用の失墜により営業活動に支障をきたす可能性があります。同社は情報管理規程の遵守やISMSに準拠した体制構築により、情報の厳重な管理を行っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。