ジオマテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジオマテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、真空成膜技術を核とした高機能薄膜製品の製造・販売を行う企業です。スマートフォンや自動車、半導体向け部材などを主力としています。当期はディスプレイ関連や半導体・電子部品向けの受注が堅調に推移し、増収および営業黒字への転換を果たしました。


※本記事は、株式会社ジオマテック の有価証券報告書(第72期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ジオマテックってどんな会社?


独自の真空成膜技術を強みとし、ディスプレイや車載機器、半導体等の基板・部材を提供するメーカーです。

(1) 会社概要


1953年に松﨑光学精密硝子として設立され、光学部品の製造を開始しました。1972年には主力となる透明導電膜(ITO膜)の生産を開始し、薄膜技術の基盤を確立しました。2004年にジャスダック証券取引所へ株式を上場し、2022年の市場区分見直しにより東証スタンダード市場へ移行しています。

同社の従業員数は単体で313名です。筆頭株主は社長の資産管理会社である有限会社松﨑興産で、第2位は社長本人、第3位は銀行となっています。創業家およびその関連会社が株式の一定割合を保有する安定した株主構成です。

氏名 持株比率
有限会社松﨑興産 16.81%
松﨑 建太郎 5.42%
きらぼし銀行 4.99%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長兼CEOは松﨑建太郎氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
松﨑 建太郎 代表取締役社長兼CEO 2000年同社入社。経営企画室長、取締役副社長執行役員等を経て2010年代表取締役社長に就任。2017年より現職。
河野 淳 取締役執行役員兼CFO 1987年同社入社。執行役員経理財務部長等を経て2017年取締役執行役員兼CFOに就任。2024年より経理財務部、人事部、経営総務部を担当し現職。
高橋 一晃 取締役執行役員兼CPO 1990年同社入社。生産管理部長等を経て2022年執行役員兼CPOに就任。2024年より現職。
松本 作太 取締役(監査等委員) 1987年同社入社。執行役員管理部長、執行役員兼CHO人事部長等を歴任。2024年顧問を経て同年6月より現職。


社外取締役は、澤口学(立命館大学大学院教授)、寺西尚人(寺西公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「成膜加工関連事業」の単一セグメントですが、製品用途により「ディスプレイ」「モビリティ」「半導体・電子部品」「その他」に区分して事業を展開しています。

(1) ディスプレイ


主に液晶表示パネル用として、透明導電膜(ITO)やメタル等を成膜した基板や商材を製造・販売しています。主な顧客はパネルメーカー等で、最終製品としてはスマートフォン、タブレット、車載ディスプレイ、その他モバイル機器等に利用されています。

同社が製品を製造し、顧客に対して販売することで対価を得ています。基板等の原材料については、顧客から有償または無償で支給される場合と、自社で調達する場合があります。運営は主に同社が行っています。

(2) モビリティ


交通・移動手段に関連する機器用として、カバーパネル、ヒーター商材、反射防止フィルム(g.moth)等を展開しています。自動車、鉄道、船舶、航空機などの輸送用機器や、道路・交通インフラ設備などが主な用途です。

自動車部品メーカーや機器メーカー等へ製品を販売し、収益を得ています。特に車載用カバーパネルやヒーターなどが主力製品です。運営は主に同社が行っています。

(3) 半導体・電子部品


電気・電子機器、精密機器用として成膜加工を施した基板や商材を提供しています。半導体製造装置用部材、センサー、太陽電池、燃料電池、通信デバイスなどが主な用途となります。

電子部品メーカーやデバイスメーカー等に対し、高機能な薄膜製品を販売することで対価を得ています。半導体やエネルギー分野など、高度な技術が求められる領域です。運営は主に同社が行っています。

(4) その他


上記以外の成膜製品や、成膜加工用部材の販売、表面加工ソリューションサービスなどを展開しています。既存技術の応用や、新たな表面処理技術の提供を含みます。

顧客からの受託加工や部材販売、技術サービス提供により収益を得ています。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は63億円から一時期データなしの期間を経て、直近で53億円となっています。利益面では第71期に大幅な赤字を計上しましたが、第72期には売上高の回復とともに経常利益、当期純利益ともに黒字転換を果たしました。収益性の改善が進んでいることが伺えます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 63億円 63億円 - - -
経常利益 -0.2億円 -0.0億円 - - -
利益率(%) -0.3% -0.0% - - -
当期利益(親会社所有者帰属) -3億円 -5億円 - - -


※第70期(2023年3月期)より連結財務諸表を作成していないため、上記表の後半はデータなしとなっています。参考として単体の数値では、2025年3月期は売上高53億円、経常利益4億円、当期純利益4億円です。

(2) 損益計算書


直近2期間(単体)の損益構成を比較します。売上高は46億円から53億円へと15%近く増加しました。売上総利益率は14.5%から29.1%へと大幅に改善しており、これにより営業損益も前期の赤字から黒字へと転換しています。コスト管理と売上増による利益率向上が顕著です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 46億円 53億円
売上総利益 7億円 15億円
売上総利益率(%) 14.5% 29.1%
営業利益 -7億円 3億円
営業利益率(%) -14.2% 6.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が3億円(構成比24%)、支払手数料が1億円(同9%)を占めています。売上原価においては、労務費が15億円(構成比46%)、経費が10億円(同30%)、材料費が8億円(同24%)となっており、製造業らしく労務費と経費の比率が高い構造です。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、品目別の売上状況を分析します。ディスプレイ向けは液晶パネル関連が堅調で増収となりました。モビリティ向けは中国市場の影響等で減収となりましたが、半導体・電子部品向けはエネルギー関連等の受注増で2割以上の増収となり、全体を牽引しました。その他もソリューション取引等により倍増しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
ディスプレイ 14億円 16億円
モビリティ 15億円 12億円
半導体・電子部品 12億円 15億円
その他 4億円 9億円
合計 46億円 53億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.1%で市場平均(スタンダード市場7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.7%で市場平均(スタンダード市場製造業57.5%)とほぼ同水準です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -10億円 5億円
投資CF -12億円 -10億円
財務CF 1億円 -1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は社会における存在意義として、「薄膜と生産技術のプロとして、社会の進歩に貢献する」ことを自らの使命と定めています。モノづくりとテクノロジーの発展に寄与し、人々の暮らしを支え豊かにすることを目指して事業活動を行っています。

(2) 企業文化


在りたい姿として「新たな価値を共に実現する会社」「生産技術主導の会社」を目指しています。全ての社員が組織と相互に信頼関係で結ばれ、プロとしての自信と誇りを持ち、自律的に楽しく活き活きと働くことで企業成長が実現されると考えており、属性にとらわれず相手を尊重し建設的な意見を話し合える組織風土づくりに取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


具体的な数値目標としての経営計画は記載されていませんが、持続的な企業成長に向けて収益性および資産効率の改善、事業拡大に取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


今後は従来の薄膜技術に加え、顧客ニーズに応じた生産技術の強化と経営資源の活用による「薄膜技術+生産技術」という強みを活かした成長を目指しています。具体的には、ディスプレイ等のコア事業における原価低減と収益性改善、成長が期待される製品・市場への新規事業展開、DX等による経営基盤の強化を重点施策として挙げています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業計画との整合をとりながら、国籍・性別にとらわれず個人の能力に基づく採用を進めています。育成面では、「コミュニケーション」「実務経験」「専門能力」の三本柱を軸とした習得プログラムを提供し、1on1面談やOJT、階層別研修などを通じて、自律的に行動し価値を生む人材の育成に注力しています。また、社員がいきいきと活躍できる職場環境整備にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.7歳 24.0年 4,551,831円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.3%
男性育児休業取得率 40.0%
男女賃金差異(全労働者) 57.1%
男女賃金差異(正規雇用) 61.4%
男女賃金差異(非正規) 95.8%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定市場への依存


主力製品はスマートフォンや自動車などに搭載される液晶ディスプレイパネルへの依存度が高くなっています。これらの最終製品の需要動向が大きく変動した場合、同社の業績や財務状況に重要な影響を与える可能性があります。

(2) 海外メーカーとの競合


主力製品であるディスプレイ用基板等において、中国や台湾などの海外メーカーが台頭しています。競合製品がより低価格で供給され、価格競争が激化した場合には、同社の業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 原材料及びエネルギー価格の変動


主力製品は希少金属であるインジウムを原材料としており、市況により価格が変動します。また、生産設備の動力源である電力料金の高騰は製造コストの上昇につながります。これらを販売価格へ転嫁または吸収できなかった場合、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。