タカノ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

タカノ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。オフィス用椅子等の住生活関連機器、検査計測機器、産業機器などを展開しています。直近の第72期連結業績は、主力事業の需要変動を受け、売上高240億円で減収、経常利益5億円で減益となりました。中期経営計画では研究開発とグローバル展開を推進しています。


※本記事は、タカノ の有価証券報告書(第72期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. タカノってどんな会社?


タカノは、オフィス用椅子や半導体検査装置、電磁アクチュエータなど、多岐にわたる製品の開発・製造を手掛ける企業です。

(1) 会社概要


同社は1941年に個人創業し、1953年にタカノ製作所として設立されました。1962年に折畳ばね椅子を開発して家具事業へ進出し、1980年代には電磁アクチュエータや画像処理装置の開発を開始するなど事業を多角化しました。1997年に株式を上場し、その後東証一部指定を経て現在はスタンダード市場に上場しています。

現在の従業員数は連結729名、単体615名です。大株主構成は、筆頭株主および第2位株主がいずれも同社と取引関係にある事業会社であり、第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
コクヨ 14.13%
日本発条 14.13%
堀井 朝運 9.77%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性0名の計14名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は鷹野雅央氏が務めています。社外取締役比率は21.4%です。

氏名 役職 主な経歴
鷹野 雅央 代表取締役社長経営全般 東芝、浜銀総合研究所を経て同社入社。取締役、台湾子会社董事長等を歴任し、2025年6月より現職。
鷹野 準 代表取締役会長 日発販売を経て同社入社。常務、専務、代表取締役社長を経て、2025年6月より現職。
鷹野 力 専務取締役社長補佐TQM推進室管掌 牧野フライス製作所を経て同社入社。家具事業部開発部長、常務を経て、2015年6月より現職。
大原 明夫 常務取締役経営企画本部、人事部、アグリ事業推進室管掌 日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。同社企画室長、経理部長等を経て、2007年6月より現職。
久留島 馨 取締役メディカル部門管掌 日発販売を経て同社入社。画像計測部門画像営業部長等を経て、2006年6月より現職。
下島 久志 取締役ファニチャー部門、ヘルスケア部門、エクステリア部門管掌 同社入社。産業機器部門部長、ファニチャー部門管理部長、執行役員等を経て、2016年6月より現職。
植田 康弘 取締役薬事室、技術開発本部管掌 オリンパス光学工業(現オリンパス)入社。同社執行役員、ヘルスケア部門副部門長等を経て、2017年6月より現職。
山本 幸康 取締役画像計測部門管掌 同社入社。経営企画本部副本部長、技術開発本部長等を経て、2025年6月より現職。
黒田 康裕 取締役 コクヨ入社。同社代表取締役副社長執行役員、取締役副会長等を経て、2018年6月より現職。
堀江 雅之 取締役 日本発条入社。同社常務執行役員、専務執行役員等を経て、2025年6月より現職。
髙嶋 厚 取締役(監査等委員) 同社入社。人事部部長、アグリ事業推進室室長等を経て、2020年6月より現職。


社外取締役は、鈴木浩(元富士重工業代表取締役副社長)、長谷川洋二(弁護士)、小松哲夫(長野計器常務取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「住生活関連機器」「検査計測機器」「産業機器」「エクステリア」「機械・工具」の5つの報告セグメントを展開しています。

(1) 住生活関連機器


オフィス用椅子(事務用回転椅子、会議用椅子)や福祉・医療施設用椅子(車椅子等)、臨床検査薬などを製造・販売しています。主要顧客はオフィス家具メーカーや医療機関等です。

収益は、製品の販売代金として顧客から受け取ります。運営は主に同社が行い、子会社の上海鷹野商貿が中国での販売を、ユーキ・トレーディングが福祉用具等の販売を担当しています。

(2) 検査計測機器


半導体やフラット・パネル・ディスプレイ(FPD)、電池部材などの製造工程で使用される画像処理検査装置および計測装置を製造・販売しています。

収益は、装置の販売代金やメンテナンスサービス料として顧客から受け取ります。運営は同社が主体となり、子会社のタカノ機械が一部ユニットの供給を、台湾鷹野が台湾でのメンテナンスサービスを行っています。

(3) 産業機器


産業用機械に用いられる電磁アクチュエータ(ソレノイド)およびそのユニット品、ばね製品などを製造・販売しています。

収益は、製品の販売代金として顧客から受け取ります。運営は同社が行うほか、海外市場では子会社の香港鷹野国際、鷹野電子(深圳)、Takano of Americaが販売活動を展開しています。

(4) エクステリア


オーニング(日よけ)、パラソル、跳ね上げ式門扉、その他ガーデンエクステリア製品を製造・販売しています。

収益は、製品の販売代金として顧客から受け取ります。運営は主に同社が行っています。

(5) 機械・工具


機械や工具などの仕入販売を行っています。

収益は、商品の販売代金として顧客から受け取ります。運営は子会社のニッコーが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移です。売上高は200億円台前半から中盤で推移していましたが、第72期は前期比で減収となりました。利益面では、経常利益および当期利益ともに第69期をピークに減少傾向にあり、第72期は利益率も低下しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 201億円 227億円 230億円 252億円 240億円
経常利益 1.5億円 12億円 11億円 10億円 5億円
利益率(%) 0.7% 5.4% 4.8% 4.1% 2.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.1億円 9億円 7億円 6億円 5億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較します。売上高の減少に伴い売上総利益が縮小し、営業利益率は低下しました。販管費などのコスト負担が相対的に重くなり、利益を圧迫する要因となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 252億円 240億円
売上総利益 59億円 54億円
売上総利益率(%) 23.5% 22.5%
営業利益 9億円 5億円
営業利益率(%) 3.5% 1.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が16億円(構成比33%)、研究開発費が6億円(同13%)を占めています。売上原価は186億円で、売上高に対する構成比は77%です。

(3) セグメント収益


各セグメントの状況を分析します。住生活関連機器や機械・工具、エクステリアは増収増益となりましたが、検査計測機器と産業機器は大幅な減収減益となり、特に産業機器は赤字に転落しました。これにより連結全体での業績が押し下げられています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
住生活関連機器 120億円 128億円 -0.5億円 5億円 3.7%
検査計測機器 75億円 60億円 3億円 0.6億円 1.0%
産業機器 32億円 23億円 6億円 -3億円 -11.3%
エクステリア 9億円 13億円 -0.1億円 0.9億円 7.0%
機械・工具 15億円 17億円 0.8億円 1億円 5.8%
連結(合計) 252億円 240億円 9億円 5億円 1.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

タカノのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

同社は、新規顧客開拓と既存顧客の需要掘り起こしに注力した結果、機械・工具事業において増収増益を達成しました。営業活動によるキャッシュ・フローは、仕入債務の減少等により前年比で減少しましたが、税金等調整前当期純利益や売上債権・棚卸資産の減少等により資金が増加しました。投資活動では、有価証券の売却等により資金が増加した一方、有形・無形固定資産の取得により資金が減少しました。財務活動では、親会社による配当金の支払い等により資金が減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 17億円 8億円
投資CF -5億円 -3億円
財務CF -4億円 -4億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「常に高い志を持ち、社会のルールを守り、世の中の変化を見すえ、持続的成長・発展を通じ、豊かな社会の実現に貢献する。」を経営の基本的な考え方として掲げています。株主、顧客、従業員、社会の視点から企業価値の向上を図ることを基本姿勢としています。

(2) 企業文化


同社グループは、方針診断制度を活用し、各事業部門やグループ会社の年度計画について常勤取締役全員で診断を行う会議体を設けています。数値目標の達成策だけでなく、サステナビリティ関連のリスクや機会についても議論し、事業の発展とリスク管理を組織全体で共有する風土を持っています。

(3) 経営計画・目標


2024年度から2028年度までの5年間を対象とした中期経営計画「ONE TAKANO & Growth」を策定しています。2029年3月期の連結経営目標として以下の数値を掲げています。

* 売上高:300億円以上
* 営業利益:30億円以上(売上高営業利益率 10%以上)
* ROE:6.0%程度

(4) 成長戦略と重点施策


「研究開発型企業」を目指し、構造改革とプロセス改革を進め、高付加価値事業へのシフトを加速させる方針です。2026年度までは積極的な投資で成長基盤を固める期間と位置付けています。

* 住生活関連機器:新製品開発とDX化による生産性向上、「新しいオフィス」に対応した事業展開。
* 検査計測機器:FPD向けから半導体・電池部材関連へのシフトを加速。
* 産業機器:半導体製造装置向け電磁アクチュエータの増産体制構築。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「新役割主義人事制度」を導入し、チャレンジを促進し公正に評価する仕組みを整えています。管理職には人材育成を明確な役割として定義し、次世代幹部の育成や女性活躍推進、教育体系の充実に注力しています。人材の多様性確保を含む育成方針については議論を継続中です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.3歳 15.8年 6,013,062円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 4.1%
男性労働者の育児休業取得率 72.7%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 64.1%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 69.4%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 50.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、次世代幹部育成研修受講者(5名)、社員一人当たり教育研修費(6.2万円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定事業への依存と顧客影響


住生活関連機器事業は同社グループ売上の過半を占め、特にコクヨへの売上比率が4割を超えています。顧客の契約変更や方針転換が業績に大きく影響する可能性があります。また、検査計測機器事業や産業機器事業は半導体業界の設備投資動向の影響を強く受け、市況変動による需要急減のリスクがあります。

(2) 多角化に伴う経営資源の分散


オフィス家具、検査装置、産業機器、エクステリアなど参入分野が多岐にわたるため、経営資源が分散し事業成長が阻害される可能性があります。また、継続的な新規事業開発に取り組んでいますが、これらが必ずしも事業化や収益貢献に結びつく保証はなく、投資が実を結ばないリスクがあります。

(3) 研究開発と人材確保


検査計測機器事業などの先端技術分野では技術優劣が事業を左右するため、技術革新への遅れは業績に悪影響を及ぼします。また、事業成長には有能な技術者や営業・管理スタッフの確保が不可欠であり、人材の確保・育成が困難な場合や大量離職が生じた場合、事業活動が制約を受ける可能性があります。

(4) 海外展開と為替・カントリーリスク


住生活関連機器事業の海外仕入比率は約4割で、主に中国などのアジア地域に依存しています。外貨建て取引の拡大に伴う為替変動リスクに加え、海外拠点における法規制変更や政治的要因、社会的混乱などが、サプライチェーンや業績に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。