※本記事は、株式会社ナンシン の有価証券報告書(第79期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ナンシンってどんな会社?
キャスターや台車など物流機器の製造・販売を主力とし、国内外に拠点を展開する老舗メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1947年にゴム製品の製造販売を目的として設立され、1963年にキャスター製造を行う南進製作所を設立しました。1990年にマレーシア現地法人、2004年に中国現地法人を設立し、生産拠点を海外へ展開しています。1996年に日本証券業協会に店頭登録し、現在は東京証券取引所スタンダード市場に上場しています。
2025年3月31日現在、同社グループは連結従業員数397名、単体171名の体制です。筆頭株主は齋藤邦彦氏(13.53%)で、第2位は資産管理業務を行うインタラクティブ・ブローカーズ(8.54%)、第3位は光通信(7.60%)となっています。
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は諏訪隆博氏です。なお、社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 諏訪 隆博 | 代表取締役社長 | 三菱銀行入行、三菱自動車工業コミュニケーション本部長等を経て、2021年同社入社。管理本部長、CFO等を歴任し、2024年4月より現職。 |
| 山本 貴広 | 取締役会長 | 1992年同社入社。営業企画開発部長、営業本部長、専務取締役、代表取締役社長等を歴任し、2024年4月より現職。 |
| 横堀 剛宏 | 常務取締役開発・生産担当 | 1989年同社入社。生産本部技術部長、生産本部長等を歴任。NANSIN(MALAYSIA)SDN.BHD.取締役会長を兼務し、2023年4月より現職。 |
| 大園 岳 | 常務取締役営業本部長 | 1997年同社入社。営業本部本社営業部長、営業統括海外担当、営業統括戦略担当等を歴任し、2024年4月より現職。 |
| 齋藤 聖崇 | 取締役ニュービジネス開発担当 | 2013年同社入社。経営企画室長、営業企画室長、コンシューマー・ビジネス担当等を歴任し、2024年4月より現職。 |
社外取締役は、谷眞人(弁護士)、千倉成示(千倉書房代表取締役社長)、曽我昌子(元アサヒビール品質保証部お客様相談室室長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「マレーシア」「中国」の報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 日本
同社が担当し、キャスター、台車等の物流機器の製造および販売を行っています。国内市場における主力事業として、顧客のニーズに対応した製品の開発・供給を担っています。
主な収益源は、製品の販売による対価です。運営は主にナンシンが行っています。
■(2) マレーシア
連結子会社であるNANSIN (MALAYSIA) SDN.BHD.が担当し、キャスターの製造および販売を行っています。ASEAN地域を中心とした海外市場への製品供給拠点としての役割も担っています。
主な収益源は、キャスター製品の販売による対価です。運営は主にNANSIN (MALAYSIA) SDN.BHD.が行っています。
■(3) 中国
連結子会社である南星物流器械(蘇州)有限公司が担当し、キャスターおよび台車の製造と販売を行っています。中国国内市場および他地域への製品供給を行っています。
主な収益源は、キャスター・台車等の販売による対価です。運営は主に南星物流器械(蘇州)有限公司が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は80億円台後半から90億円台後半で推移しており、当期は前期比増収となりました。利益面では、経常利益率は1〜3%台、最終利益も黒字を維持していますが、原材料価格や為替変動の影響等により変動が見られます。当期は増収に伴い、各利益段階で前期を上回る結果となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 88億円 | 92億円 | 98億円 | 89億円 | 98億円 |
| 経常利益 | 7.7億円 | 1.8億円 | 3.3億円 | 2.5億円 | 2.5億円 |
| 利益率(%) | 8.8% | 2.0% | 3.4% | 2.8% | 2.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3.0億円 | 4.6億円 | 0.9億円 | 1.1億円 | 1.2億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しましたが、販管費の増加や為替差益等の営業外収支の影響もあり、営業利益は減少しました。一方、固定資産売却益の計上などにより、税引前当期純利益および当期純利益は増加しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 89億円 | 98億円 |
| 売上総利益 | 22億円 | 22億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.2% | 22.4% |
| 営業利益 | 2.0億円 | 1.2億円 |
| 営業利益率(%) | 2.2% | 1.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が5.9億円(構成比28.2%)、荷造運送費が2.0億円(同9.6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
当期は全セグメントで増収となりました。特にマレーシアと中国の海外セグメントが大きく伸長しました。日本セグメントは売上が増加したものの、営業損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 83億円 | 92億円 |
| マレーシア | 0.8億円 | 1.2億円 |
| 中国 | 4.8億円 | 5.2億円 |
| 連結(合計) | 89億円 | 98億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
ナンシンは、短期借入金の返済により財務活動による資金が減少しました。営業活動では、主に減価償却費により資金が増加しました。投資活動では、有形固定資産の売却収入により資金が増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7.1億円 | 1.1億円 |
| 投資CF | -3.2億円 | 1.9億円 |
| 財務CF | -3.4億円 | -16.1億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「人づくり、製品(物)づくりを通して広く社会に貢献する」を経営理念として掲げています。顧客満足度を高め、企業価値を向上させることにより、持続可能な企業としての責任を果たしていくことを経営の基本方針としています。社会から頼られ、求められる製品やサービスを提供し、愛される人材の育成に努めています。
■(2) 企業文化
同社グループは、「SUSTAINABLE GROWTH」をスローガンに掲げ、笑顔あふれる会社を目指し、全社一丸となって精進しています。お客様や様々なパートナーと共に、持続的な成長を目指すことを宣言しており、社会から頼られ、愛される企業となるため、世の中から求められる価値を実現し、笑顔をお届けすることに喜びを感じる「人造り」に全力を尽くす文化があります。
■(3) 経営計画・目標
世界的に景気回復への不透明感が拭えない中、産業構造の変化に伴い物流ニーズも大きく変わることが予想されています。このような環境下、持続的な成長軌道の確保を目標としています。具体的な数値目標としてのKPI等は記載されていませんが、適正な利益獲得による還元や、製造原価低減による価格競争力の強化などを掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
持続的な成長軌道の確保に向け、経営基盤の再構築と成長への投資に取り組んでいます。経営基盤については、強みを活かした製品への「選択と集中」を行い、事業全体の効率改善によるコストダウンと適正なマージン確保を進めます。成長投資としては、開発体制強化による新製品展開、ASEANを中心とした海外事業の強化、そして次世代に向けた人財育成に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人造り」を経営理念の中心に据え、企業価値の向上を目指しています。人事評価においては公平かつ透明性が高く、成長を感じられる制度を運用し、活発な人事異動により次世代リーダーを育成しています。また、学びの機会提供としてWebセミナーや資格取得補助制度を導入し、多様な人材が活躍できる環境整備やエンゲージメント向上に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.9歳 | 12.5年 | 5,394,596円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 4.5% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 71.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 68.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規) | 85.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性役員人数(0名)、平均勤続年数(12.47年)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 地政学リスクと海外事業展開
日本をはじめマレーシア、中国で事業を展開しており、各国の政治経済情勢の悪化、輸出入規制、予期せぬ法令改変、治安悪化、テロ・戦争・感染症等の地政学リスクが存在します。これらが発生した場合、海外での事業活動に支障をきたし、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 経済情勢と市場変動の影響
日本、マレーシア、中国それぞれの市場における景気動向や需要変動の影響を受けます。景気の減速、需要構造の変化、価格競争の激化などが進んだ場合、同社グループの経営成績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 調達リスクとサプライチェーン
原材料や部品の一部において特定の調達先に依存する場合があり、予期せぬ事由による供給停止や遅延が発生した場合、生産停止やコスト増加のリスクがあります。自然災害や感染症等の影響も含め、想定を上回る需給逼迫や長期化が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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