ナンシン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ナンシン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ナンシンは東京証券取引所 スタンダード市場に上場する、キャスターや台車の製造・販売を手掛ける企業です。直近の業績は、売上高が微減となったものの、生産・販売体制の効率化や製品構成の見直しにより、営業利益・経常利益ともに大幅な増益を達成しました。国内外の拠点を活かし、さらなる収益力向上を目指しています。


※本記事は、ナンシンの有価証券報告書(第80期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ナンシンってどんな会社?


キャスターや台車など物流機器の製造・販売を主力とし、グローバルに事業を展開するメーカーです。

(1) 会社概要


同社は1947年に南進ゴム工業所として設立され、1963年にキャスターの製造販売を目的とする南進製作所を設立しました。1987年に現在のナンシンへと社名を変更し、1990年にはマレーシアに現地法人を設立して海外展開を本格化させました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場を果たしています。

同社グループは連結で438名、単体で173名の従業員を擁しています。筆頭株主は創業家出身とみられる齋藤邦彦氏で、第2位はINTERACTIVE BROKERS LLC、第3位は投資ファンドであるUH Partners2投資事業有限責任組合となっています。

氏名 持株比率
齋藤邦彦 13.50%
INTERACTIVE BROKERS LLC 10.68%
UH Partners2投資事業有限責任組合 7.49%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は諏訪隆博氏が務めており、社外取締役の比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
諏訪隆博 代表取締役社長 1991年三菱銀行入行、三菱自動車工業財務統括室室長等を経て2021年同社入社。2023年代表取締役副社長CFOを務め、2024年より現職。
山本貴広 取締役会長 1992年同社入社。営業企画開発部長、取締役営業本部長、専務取締役などを経て、2021年代表取締役社長を務め、2024年より現職。
横堀剛宏 常務取締役開発・生産担当 1989年同社入社。執行役員生産本部技術部長、取締役生産本部長、常務取締役生産本部長などを経て、2023年より現職。
大園岳 常務取締役営業本部長 1997年同社入社。営業本部本社営業部長、常務取締役営業本部長、取締役営業統括戦略担当などを経て、2024年より現職。
齋藤聖崇 取締役ニュービジネス開発担当 2013年同社入社。経営企画室長、取締役営業企画室長、取締役コンシューマー・ビジネス担当などを経て、2024年より現職。
井川裕介 取締役管理本部長 1986年三菱銀行入行。セレスポ執行役員等を経て、2022年同社入社。内部監査室長を務め、2025年より現職。


社外取締役は、谷眞人(弁護士)、千倉成示(千倉書房代表取締役社長)、曽我昌子(元アサヒビール品質保証部お客様相談室室長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「マレーシア」「中国」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

日本


同社が中心となり、日本の市場向けにキャスターや台車、ロールボックスパレット、店舗用品、医療用樹脂部品などの物流関連機器の製造および販売を行っています。

収益源はこれらの製品の販売代金です。事業の運営は主にナンシンが単体で行っており、顧客の多様なニーズに応える新製品の開発や販売網の強化に注力しています。

マレーシア


マレーシアを含むASEAN地域などを対象に、主にキャスターの製造および販売を行っています。グループ内の重要な生産拠点としても機能しています。

収益源は製品の販売代金です。運営は同社の100%連結子会社であるNANSIN (MALAYSIA) SDN.BHD.が行っており、効率的な生産体制の維持とコストダウンを進めています。

中国


中国市場およびグローバル市場に向けたキャスターや台車の製造および販売を行っています。現地の需要に合わせた製品供給と生産効率の向上を図っています。

収益源は製品の販売代金です。運営は同社の100%連結子会社である南星物流器械(蘇州)有限公司が行っており、グループ全体の供給網における一翼を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は89億円から98億円の間で安定して推移しています。経常利益も底堅く推移しており、当期は生産体制の効率化等が寄与し、利益率が3.0%に改善しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 92.0億円 98.1億円 89.2億円 98.2億円 97.8億円
経常利益 1.8億円 3.3億円 2.5億円 2.5億円 3.0億円
利益率(%) 2.0% 3.4% 2.8% 2.5% 3.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 4.6億円 0.9億円 1.1億円 1.2億円 3.6億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微減となったものの、売上総利益は24.1億円へと増加し、売上総利益率も22.4%から24.7%へと改善しました。これにより営業利益は大幅に増加しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 98.2億円 97.8億円
売上総利益 22.0億円 24.1億円
売上総利益率(%) 22.4% 24.7%
営業利益 1.2億円 2.1億円
営業利益率(%) 1.2% 2.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が6.4億円(構成比29%)、荷造運送費が1.9億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本セグメントは売上が横ばいながら、営業利益が黒字転換しました。マレーシアセグメントは売上が微減し営業損失が続いていますが、中国セグメントは安定した利益を確保しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
日本 91.7億円 91.7億円 -0.7億円 0.6億円 0.6%
マレーシア 1.2億円 1.2億円 -0.5億円 -0.3億円 -27.5%
中国 5.2億円 4.9億円 2.2億円 2.0億円 40.9%
連結(合計) 98.2億円 97.8億円 1.2億円 2.1億円 2.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は本業の営業活動で安定したキャッシュを生み出し、その資金で投資や借入金の返済・配当を行っている健全型のキャッシュ・フロー構造となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 1.1億円 6.5億円
投資CF 1.9億円 -0.2億円
財務CF -16.1億円 -2.1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は83.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人づくり、製品(物)づくりを通して広く社会に貢献する」を経営理念としています。顧客満足度を高め、企業価値を向上させることにより、持続可能な企業としての責任を果たしていくことを経営の基本方針に掲げています。

(2) 企業文化


「社会から頼られる企業」「求められる製品やサービスの提供」「愛される人材の育成」を3本柱としています。「SUSTAINABLE GROWTH」をスローガンに、コミュニケーションの活性化や学びの機会の提供を通じ、次世代に向けた人材の充実を図る文化が醸成されています。

(3) 経営計画・目標


持続的な成長軌道の確保に向け、経営基盤の再構築に取り組んでいます。強みを活かした製品への選択と集中や、事業全体の効率改善によるコストダウンを通じて収益力の改善を目指しています。

* 高機能キャスター販売数目標(2026年度):30,000個

(4) 成長戦略と重点施策


成長への投資として、開発体制を強化し、市場で求められる新製品の展開に注力します。また、海外事業においてはASEANを中心に、同社グループ製品の強みを活かせる産業分野の顧客開拓を推進し、さらなる市場拡大を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材への投資と活用を重要な経営課題と位置づけ、次世代リーダーの育成やスキルピラミッドの導入による能力開発を進めています。また、ジョブローテーションによる多様な経験の提供や、即戦力となる中途採用を主体とした採用活動を通じて、競争力の強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.2歳 12.3年 5,754,893円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 75.3%
男女賃金差異(正規雇用) 75.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 73.8%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、平均勤続年数(12.34年)、高機能キャスター販売数(25,363個)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 地政学リスクと海外情勢の悪化

日本、マレーシア、中国で事業を展開しているため、各国の政治経済情勢の悪化、輸出入規制の変更、経済制裁の発生などが、グローバルな事業活動や財務状態に支障をきたす可能性があります。

(2) 経済情勢と市場の需要変動

各市場の景気動向や需要変動の影響を大きく受けます。景気の減速や産業構造の変化、価格競争の激化が進むことで、同社グループの経営成績や財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 特定調達先への依存

高い品質や競争力のある価格を求める過程で、特定の調達先に材料や部品の供給が集中することがあります。予期せぬ事態による供給停止が生じた場合、生産停止や製造コストの増加につながる恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。