東映アニメーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東映アニメーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する、日本最大級のアニメーション製作会社です。映像製作・販売や版権事業を主力とし、「ワンピース」「ドラゴンボール」等の世界的IPを保有しています。第87期は国内外での配信権販売や版権収入が好調に推移し、売上高1,008億円、経常利益332億円の増収増益となりました。


※本記事は、東映アニメーション株式会社 の有価証券報告書(第87期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東映アニメーションってどんな会社?


1956年の創業以来、「ドラゴンボール」や「ワンピース」など数多くの世界的ヒット作を生み出してきた、日本のアニメーション製作のパイオニアです。

(1) 会社概要


同社は1948年に日本動画として設立され、1956年に東映が買収して東映動画となりました。日本のアニメーション黎明期から数多くの作品を製作し、1998年に現在の東映アニメーションへ商号変更しました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場を果たし、市場統合や区分見直しを経て、現在は東証スタンダード市場に上場しています。

連結従業員数は960名(単体696名)です。筆頭株主は親会社の東映で、第2位は提携関係にあるテレビ朝日、第3位はフジ・メディア・ホールディングスとなっており、映像・放送関連の事業会社が主要株主として名を連ねています。強固な資本関係のもと、メディアミックス展開を行っています。

氏名 持株比率
東映 34.17%
テレビ朝日 20.00%
フジ・メディア・ホールディングス 8.31%

(2) 経営陣


同社の役員は男性17名、女性0名の計17名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は高木 勝裕氏が務めています。社外取締役比率は約23.1%です。

氏名 役職 主な経歴
森下 孝三 代表取締役会長 1970年同社入社。企画営業本部長、取締役副社長、取締役副会長を経て2014年取締役会長。2022年6月より現職。
高木 勝裕 代表取締役社長 1980年同社入社。版権事業部長、企画営業本部長兼経営戦略本部長などを歴任。2012年6月より現職。
篠原 智士 常務取締役営業企画本部長 1986年東映入社。テレビ商品化権営業部長、取締役国際営業部長、映画宣伝部長などを歴任。2022年6月より現職。
山田 喜一郎 常務取締役製作本部長兼営業企画本部副本部長 1995年同社入社。企画営業本部商品事業部長、営業企画本部副本部長などを歴任。2022年6月より現職。
辻 秀典 常務取締役経営管理本部長 1995年同社入社。企画営業本部版権事業部長、営業本部長、営業企画本部長などを歴任。2023年6月より現職。
布施 稔 取締役経営管理本部副本部長兼業務効率改善担当 1993年同社入社。経営管理本部経理部長、業務推進部長などを歴任。2023年6月より現職。
鈴木 篤志 取締役営業企画本部副本部長兼企画特命担当 2008年同社入社。企画営業本部コンテンツ事業部長、業務推進部長、営業企画本部企画部長などを歴任。2023年6月より現職。
伊東 浩治 取締役経営管理本部副本部長兼財務戦略担当、経営戦略部長 1989年三菱銀行入行。2020年同社入社。経営戦略部長を経て2023年6月より現職。
多田 憲之 取締役 1972年東映入社。同社代表取締役社長、映像本部長などを歴任。2023年4月東映代表取締役会長に就任。
吉村 文雄 取締役 1988年東映入社。同社コンテンツ事業部長、常務取締役などを歴任。2023年4月東映代表取締役社長に就任。


社外取締役は、角南源五(テレビ朝日取締役副社長)、清水賢治(フジ・メディア・ホールディングス専務取締役)、重村一(元スカパー社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「映像製作・販売事業」、「版権事業」、「商品販売事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 映像製作・販売事業


劇場・テレビ向けのアニメーション作品の企画・製作を行うほか、国内外への放映権販売、パッケージソフト(ブルーレイ・DVD)の販売、インターネットや携帯端末向けの映像配信権の販売などを行っています。

収益は、テレビ局や配信事業者からの放映権料・配信許諾料、パッケージソフトの売上代金などから構成されます。運営は主に同社が行うほか、海外展開についてはTOEI ANIMATION ENTERPRISES LTD.などの海外子会社を通じて行っています。

(2) 版権事業


同社が製作したアニメーション作品に登場するキャラクターの使用を、玩具メーカー、ゲームメーカー、アパレルメーカーなどのライセンシー(使用許諾先)に許諾する事業です。

収益は、ライセンシーから受け取る商品化権等のロイヤリティ収入です。運営は同社および海外子会社が行っており、国内外でキャラクターのライセンスビジネスを展開しています。

(3) 商品販売事業


同社のアニメーション作品に関連するキャラクター商品の企画・開発および販売を行っています。

収益は、キャラクターショップやイベント会場、オンラインショップ等における一般消費者への商品販売代金です。運営は主に同社が行っています。

(4) その他事業


着ぐるみショーやミュージカル等の各種イベントの企画運営を行っています。

収益は、イベントの興行収入や運営に伴う対価などです。運営は同社が行うほか、関連会社である東映が着ぐるみショーの運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して増加傾向にあり、特に直近の第87期には1,000億円の大台を突破しました。利益面でも高い水準を維持しており、利益率も30%前後と非常に高い収益性を誇っています。当期純利益も順調に推移しており、強力なIP(知的財産)を基盤としたビジネスモデルが好調を持続していることが読み取れます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 516億円 570億円 875億円 887億円 1,008億円
経常利益 160億円 188億円 298億円 265億円 332億円
利益率(%) 31.1% 33.0% 34.1% 29.8% 32.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 88億円 98億円 165億円 133億円 200億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに大きく伸長しています。売上総利益率は40%台後半まで上昇しており、収益性の高い事業構造となっています。営業利益率も30%を超えており、効率的な経営が行われていることがわかります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 887億円 1,008億円
売上総利益 374億円 484億円
売上総利益率(%) 42.2% 48.0%
営業利益 234億円 324億円
営業利益率(%) 26.4% 32.2%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が40億円(構成比25%)、広告宣伝費が31億円(同20%)を占めています。

(3) セグメント収益


映像製作・販売事業と版権事業が売上・利益の両面で成長を牽引しています。特に版権事業は売上高が500億円を超え、利益率も50%を超える高収益事業として全体の業績を支えています。一方、商品販売事業は減収減益となりましたが、全体への影響は限定的でした。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
映像製作・販売事業 348億円 373億円 68億円 104億円 27.8%
版権事業 394億円 503億円 190億円 259億円 51.5%
商品販売事業 106億円 92億円 18億円 7億円 7.1%
その他事業 38億円 40億円 1億円 2億円 4.4%
調整額 - - -44億円 -47億円 -
連結(合計) 887億円 1,008億円 234億円 324億円 32.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は「健全型」です。本業で稼いだ資金(営業CFプラス)の範囲内で投資(投資CFマイナス)や株主還元(財務CFマイナス)を行っており、財務的に非常に安定した状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 163億円 272億円
投資CF -45億円 -55億円
財務CF -64億円 -64億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.6%で市場平均を大きく上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も80.2%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「世界の子どもたちに「夢」と「希望」を提供する“創発企業”となる。」を経営理念として掲げています。日本アニメーション界のパイオニアとして、豊富なライブラリー作品群と今後創作する新作からなる「IP(Intellectual Property)」を軸に、世界有数の映像製作・事業会社になることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、これまでに蓄積した多彩な作品群と、新たに生み出す魅力的でインパクトのあるIPを事業戦略の軸としています。世界を魅了する「新たな映像表現」を創造し続け、グローバルに展開することを重視しており、堅牢な財務基盤を維持しながら、持続的成長と中長期的な企業価値向上に資する事業機会へ積極的に投資する姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、アニメーションビジネスの不確定要素が多いことから、特定の指標をもって経営目標とはしていません。しかし、堅牢な財務基盤の維持を大前提とし、「IPを戦略の軸に据えたグローバル事業展開」を強化することを目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「IPを戦略の軸に据えたグローバル事業展開」を最重要課題として掲げています。具体的には、新規IPの創出とライフサイクルの長期化による「IP増強」、ライセンス事業に加え自社事業にも注力する「事業拡張」、日本発IPの輸出拡大と海外発IPの展開による「地域展開拡大」、そして伝統技術と革新技術を融合させた「製作能力の進化」に取り組んでいく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、従業員の多様性を尊重し、専門性を高めながらモチベーション高く働ける環境整備を推進しています。特にクリエイターの育成に注力しており、「東映アニメーション作画アカデミー」を開講して、第一線で活躍するトップアニメーターによる指導のもと、優秀な人材の養成を行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.8歳 8.4年 8,273,416円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 25.0%
男性育児休業取得率 22.2%
男女賃金差異(全労働者) 87.5%
男女賃金差異(正規雇用) 88.2%
男女賃金差異(非正規) 90.9%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) アニメーションビジネスの不確実性


同社はアニメーションを主軸としていますが、作品の人気は消費者の嗜好や市場環境に左右され予測が困難です。製作には多額の先行費用がかかるため、作品がヒットせず二次利用収益が伸びない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 企業間競争の激化


メディアの多様化によりコンテンツ数が増加する中、原作やアニメーター等の人材獲得競争が激化しています。また、海外企業の台頭も進んでいます。競合企業の成長により同社の競争力が低下した場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 技術革新への対応


アニメーション業界では配信方法や製作技術(2Dと3Dの融合等)の革新が進んでいます。新技術への対応が遅れた場合や、それに伴う追加規制への対応、人材確保が十分に行えない場合、競争力が低下し業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 著作権の侵害


海賊版や違法配信等の著作権侵害が発生しており、これらにより正規商品の売上が阻害されるリスクがあります。また、第三者から著作権侵害のクレームを受ける可能性もあり、これらの事象は業績に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。