東映アニメーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東映アニメーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東映アニメーションは東京証券取引所スタンダード市場に上場する企業です。国内外で劇場・テレビ向けアニメ作品の企画や製作、版権許諾、商品販売などの事業を展開しています。直近の業績は、一部作品の反動減により減収および営業減益となったものの、経常利益と最終利益は増益を確保しています。


※本記事は、東映アニメーション株式会社の有価証券報告書(第88期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東映アニメーションってどんな会社?


日本最大級の規模を誇るアニメーション製作会社として、多様なIPを軸としたグローバル事業を展開しています。

(1) 会社概要


1948年に設立され、1956年に東映の傘下に入り東映動画として新たなスタートを切りました。その後数々のアニメ作品を世に送り出し、1998年に現在の東映アニメーションへ商号変更しました。2000年に株式を店頭公開し、現在は東京証券取引所スタンダード市場に上場してグローバル展開を加速させています。

従業員数は連結で1048名、単体で758名です。筆頭株主は親会社であり資本業務提携の要となる東映で、第2位は主要な取引先でもある事業会社のテレビ朝日となっています。第3位には海外機関投資家の常任代理人を務めるみずほ銀行が名を連ねており、事業パートナーと機関投資家が上位を占めています。

氏名 持株比率
東映 34.32%
テレビ朝日 20.0%
JP MORGAN CHASE BANK 380752(常任代理人 みずほ銀行) 4.9%

(2) 経営陣


同社の役員は男性17名、女性0名の計17名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は高木勝裕が務めており、取締役における社外取締役の比率は約23.1%となっています。

氏名 役職 主な経歴
高木勝裕 代表取締役社長 1980年同社に入社。版権営業部長や企画営業本部副本部長などを歴任。2006年に取締役に就任し、常務取締役を経て2012年より現職。
森下孝三 代表取締役会長 1970年同社に入社。企画営業部長や国際部担当などを歴任。2004年に取締役に就任し、取締役副社長や取締役副会長を経て2022年より現職。
篠原智士 常務取締役営業企画本部長 1986年東映に入社。テレビ商品化権営業部長などを経て2014年に取締役に就任。2022年より同社常務取締役および営業企画本部長に就任し現職。
山田喜一郎 常務取締役製作本部長兼営業企画本部副本部長 1995年同社に入社。企画営業本部商品事業部長などを経て2016年に取締役に就任。2022年より常務取締役および製作本部長などに就任し現職。
辻秀典 常務取締役経営管理本部長兼コンプライアンス担当 1995年同社に入社。版権事業部長などを経て2016年に取締役に就任。2023年に常務取締役に就任し、2025年より現職。
布施稔 取締役経営管理本部副本部長兼業務効率改善担当 1993年同社に入社。経営管理本部経理部長や業務推進部長などを経て2020年に取締役に就任。2023年より現職。
鈴木篤志 取締役営業企画本部副本部長兼企画特命担当 2008年同社に入社。コンテンツ事業部長や企画部長などを歴任。2020年に取締役に就任し、2023年より現職。
伊東浩治 取締役経営管理本部副本部長兼財務戦略担当 1989年三菱銀行に入行後、2020年同社に入社。経営戦略部長などを経て2022年に取締役に就任。2026年より現職。
多田憲之 取締役 1972年東映に入社。2014年に東映代表取締役社長と同社取締役に就任。2023年より東映代表取締役会長および同社取締役として現職。
吉村文雄 取締役 1988年東映に入社。2023年に東映代表取締役社長および同社取締役に就任。2024年より東映映像本部長も兼務し現職。


社外取締役は、角南源五(テレビ朝日ホールディングス取締役)、清水賢治(フジ・メディア・ホールディングス代表取締役社長)、重村一(ニッポン放送顧問)です。

2. 事業内容


同社グループは、映像製作・販売事業、版権事業、商品販売事業およびその他事業を展開しています。

(1) 映像製作・販売事業


劇場・テレビ向け等アニメ作品の企画や製作、国内外への放映権やビデオ化権の販売、映像配信サービスを行っています。世界中の放送局や配信事業者、一般消費者が主な顧客です。

作品の納品時や配信開始時に放映権料や販売代金を受け取るほか、再生回数等に応じたロイヤリティを収益としています。運営は東映アニメーションのほか、海外の現地法人が担っています。

(2) 版権事業


製作したアニメ作品に登場するキャラクターなどの使用許諾を、玩具、ゲーム、文具、アパレル等のメーカーに付与する事業です。国内外の様々なライセンシー企業が主な顧客となります。

使用許諾を開始した時点での契約金のほか、顧客の売上高や使用量に応じたロイヤリティを収益として受け取っています。運営は東映アニメーションおよび海外の各販売子会社が行っています。

(3) 商品販売事業


アニメ作品のキャラクターを用いた商品を自ら開発し、実店舗やオンラインショップ等を通じて販売する事業です。アニメ作品のファンをはじめとする一般消費者が主な顧客層となっています。

購入者に商品を引き渡した際の販売代金を直接の収益として受け取っています。一部商品の製造から販売までは他社に委託し、使用許諾料を得る場合もあります。運営は東映アニメーションが中心となって行っています。

(4) その他事業


アニメ作品のキャラクターを用いた着ぐるみショーやミュージカルといった各種イベントの企画運営を行う事業です。イベントの主催者や来場者が主な顧客となります。

イベント興行が終了した時点で、主催者からの興行収入やチケット販売代金を収益として受け取っています。運営は東映アニメーションのほか、親会社の東映などが協力して展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、主力アニメ作品のグローバル展開や配信権販売の好調により売上高が大きく拡大する傾向にあります。一時的な反動減は見られるものの、経常利益率は概ね30%を超える高い水準を維持しており、安定した高収益体質を築き上げています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 570億円 875億円 887億円 1008億円 937億円
経常利益 188億円 298億円 265億円 332億円 335億円
利益率(%) 33.0% 34.1% 29.8% 32.9% 35.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 98億円 165億円 133億円 200億円 186億円

(2) 損益計算書


売上高は前年度から減少したものの、収益性の高い海外での商品化権販売が好調に推移したことなどから売上総利益率は上昇しました。営業利益率も引き続き高水準を維持しており、効率的なコストコントロールとIPの高付加価値化が進んでいることがうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1008億円 937億円
売上総利益 484億円 492億円
売上総利益率(%) 48.0% 52.5%
営業利益 324億円 310億円
営業利益率(%) 32.1% 33.1%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が46億円(構成比25.5%)、広告宣伝費が32億円(同17.8%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別に見ると、版権事業が最大の収益源として売上の過半を占めており、映像製作・販売事業がそれに続いています。当期は主要作品の劇場公開や商品販売における前年からの反動減が影響し、その他事業を除く各セグメントで減収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
映像製作・販売事業 373億円 311億円
版権事業 503億円 485億円
商品販売事業 92億円 79億円
その他事業 40億円 62億円
連結(合計) 1008億円 937億円


営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益や資産の現金化等で得た資金を用いて株主還元や借入返済等を進める改善型のキャッシュ・フロー状況を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 272億円 170億円
投資CF -55億円 10億円
財務CF -64億円 -92億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.5%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も84.6%と市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念は「世界の子どもたちと人々に「夢」と「希望」を届ける“創発企業”となる」です。同社は日本最多および世界有数の規模のアニメ作品を製作してきた歴史を持ち、これらの多彩なIP(知的財産)を軸として新たな映像表現を創造し続けるトップランナーを目指しています。

(2) 企業文化


長きにわたり日本のアニメ業界を牽引してきたパイオニアとしての矜持を持ち、自ら進化し続けるための挑戦を重んじる文化があります。伝統的な製作技術と最新テクノロジーを融合させ、自律的に考え行動する「自律人材」の育成を重視しながら、クリエイターが表現に専念できる環境づくりを推進しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「VISION2030」において、持続的成長と企業価値の向上を目指し、具体的な定量目標を掲げています。

* 2031年3月期の売上高2,000億円、営業利益500億円
* 2035年度には売上高5,000億円規模を目指す
* 自己資本比率70%以上、配当性向40%以上
* 最終年度のROE15%以上、総還元性向50%目途

(4) 成長戦略と重点施策


オーガニックな成長と戦略的M&A等を組み合わせた市場平均を超える成長を目指し、4つの戦略を柱としています。スタジオの進化によるグローバル製作体制の構築、IPポートフォリオ戦略の高度化によるIP強化、海外売上比率の拡大を目指す地域展開の強化、および顧客接点の拡大を重点施策として展開しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「IPを戦略の軸に据えたグローバル事業展開」の実現に向け、次世代型クリエイターとグローバルビジネスプロフェッショナルの育成および獲得を推進しています。独自の育成体制を敷くほか、多様な才能を開拓するための地域連携や、クリエイターの挑戦を後押しする企画公募プロジェクトを展開しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.5歳 9.8年 8,550,112円

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 24.5%
男性育児休業取得率 35.3%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 84.9%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 86.0%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 84.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、製作人材の採用数(19名)、作画アカデミー修了者からの採用数(7名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ヒットの不確実性と先行投資負担


アニメーション製作には多額の先行費用を要しますが、消費者の嗜好や市場環境により人気が左右されるため、正確な予測が困難です。期待通りの成績に達せず二次利用による収益が伸びない場合、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2) コンテンツ市場の競争激化


メディアの多様化により展開されるコンテンツ数が増加する中、原作やクリエイターの獲得競争が激化しています。国内外の競合企業が急速に成長し、同社の競争力が相対的に低下した場合には、事業展開に悪影響が生じるおそれがあります。

(3) 新たな映像表現・技術革新への対応


アニメ業界における配信方法の変化や、2Dと3D技術の融合といった新たな映像表現の開発が急務となっています。新技術の導入に伴う規制対応や人材確保が適時適切に進まない場合、競争力が低下するリスクをはらんでいます。

(4) グローバル展開におけるカントリーリスク


海外市場への展開においては、各国の地政学リスクや法規制、商慣習、言語の違いによるトラブルが想定されます。現地企業との協業不調や従業員の労働問題等が顕在化した場合、海外事業の成長に支障をきたす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。