カワセコンピュータサプライ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

カワセコンピュータサプライ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する企業です。ビジネスフォーム(帳票類)の印刷事業と、データ印字や封入封緘などの情報処理事業を展開しています。直近の決算では、売上高28億円で増収となり、経常損益および当期純損益ともに黒字転換を果たしました。


※本記事は、カワセコンピュータサプライ株式会社 の有価証券報告書(第70期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. カワセコンピュータサプライってどんな会社?


ビジネスフォームの製造販売と、データプリント等の情報処理サービスを提供する老舗企業です。

(1) 会社概要


1955年に川瀬紙工として設立され、コンピュータ用連続伝票の販売を開始しました。1976年に現社名へ変更し、1995年にはデータ処理事業に着手して業容を拡大しました。2001年に大阪証券取引所市場第二部へ上場し、2013年の市場統合を経て、2022年の市場区分見直しに伴い東京証券取引所スタンダード市場へ移行しました。

同社(単体)の従業員数は99名です。筆頭株主は山田株式会社で、第2位は個人の山田芳弘氏です。

氏名 持株比率
山田株式会社 14.16%
山田芳弘 8.52%
川瀬三郎 3.88%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は川瀬啓輔氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
川瀬啓輔 代表取締役社長 日本製紙入社後、2016年に同社入社。執行役員、取締役経営企画部長等を経て2020年より現職。
吉村泰明 取締役営業部長 1987年同社入社。東京営業部長、営業本部長、生産本部管掌等を経て2020年より現職。
窪津薫 取締役(監査等委員) 1979年同社入社。大阪工場長、営業推進本部長、業務管理部長等を経て2020年より現職。


社外取締役は、伊藤彰彦(元三井住友海上火災保険取締役副社長執行役員)、松木昭(元東洋近畿建物管理代表取締役社長)、荻野正和(たつの法律事務所所長・弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ビジネスフォーム事業」「情報処理事業」を展開しています。

(1) ビジネスフォーム事業

帳票デザインから製版、印刷、加工に至るまで、ビジネスフォーム(帳票類)の生産工程を一貫して行っています。各種伝票や帳票などの印刷物を顧客企業に提供しています。

収益は、顧客企業からの製品販売代金によって構成されています。運営は主に同社が行っています。

(2) 情報処理事業

システム開発によるデータの編集・加工から、インクジェット高速プリンタ等を用いたデータ印字・印刷、さらには封入封緘・発送業務(メーリングサービス)までを受託しています。また、Web化や電子化に対応したサービスも展開しています。

収益は、これらの業務のアウトソーシング受託料やサービス利用料から得ています。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は25億円から28億円の範囲で推移しています。利益面では2023年3月期から2期連続で赤字を計上していましたが、直近の2025年3月期には黒字回復を果たしました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 26億円 25億円 25億円 26億円 28億円
経常利益 0.3億円 0.5億円 -0.2億円 -0.2億円 1.1億円
利益率(%) 1.3% 2.0% -0.8% -0.6% 3.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.9億円 0.0億円 -1.4億円 -1.1億円 1.0億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに改善が見られます。特に営業利益は前期の赤字から黒字へと転換し、収益性が向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 26億円 28億円
売上総利益 6億円 7億円
売上総利益率(%) 24.3% 26.0%
営業利益 -0.3億円 0.8億円
営業利益率(%) -1.0% 2.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が2.0億円(構成比30%)、運搬費が1.1億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


ビジネスフォーム事業、情報処理事業ともに増収増益となりました。特に情報処理事業は自治体やアウトソーシング案件の獲得により収益を伸ばし、利益率も高水準で推移しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ビジネスフォーム事業 15億円 16億円 1.5億円 1.8億円 11.3%
情報処理事業 11億円 12億円 0.9億円 1.7億円 13.4%
調整額 - - -2.7億円 -2.7億円 -
連結(合計) 26億円 28億円 -0.3億円 0.8億円 2.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、営業活動で資金を生み出し、事業投資や借入金の返済に充当しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、事業の拡大に伴い、増加した売上債権や棚卸資産の増加等により、前期より収入額が減少しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産や投資有価証券の取得等により支出となりましたが、前期より支出額は減少しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や配当金の支払い等により支出となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1.7億円 1.2億円
投資CF -3.9億円 -0.3億円
財務CF -1.3億円 -1.3億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


創業以来培ってきた印刷・印字技術とデジタル技術を融合し、「顧客第一主義」のもと、高品質な製品や「one to one」のオンデマンドサービスを提供することを基本方針としています。これにより顧客の利益創造に貢献し、「情報を届けたい人」に「情報を届けることをお手伝いする」コミュニケーション創造企業への進化を目指しています。

(2) 企業文化


「会社=一緒に目的を達成していくワンチーム」を運営基軸としています。社員一人ひとりをチームメイトと位置づけ、自律的に主体性を持って「個」の力を発揮できる環境整備に注力しています。透明な人事評価制度やワークライフバランスへの配慮を通じて、インクルーシブな職場環境づくりを推進しています。

(3) 経営計画・目標


企業の存続と安定性の指標として、以下の財務数値を目標として掲げています。

- 自己資本比率:70%以上
- 流動比率:200%以上

(4) 成長戦略と重点施策


市場動向の変化に対応するため、情報処理事業への傾斜を強め、「紙」「電子」「デザインQR・AR」などを組み合わせた「クロスメディア」企業としてのポジション確立を目指しています。特に首都圏における新規開拓や既存顧客の深耕、情報セキュリティ体制の強化に取り組んでいます。また、生産面では最新設備の導入による効率化や内製化を進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


社員が心身の健康を保ちつつ、自律的に能力を発揮できる環境整備を重視しています。「お客様価値創造型」人材の育成を目指し、研修制度の充実や資格取得促進、コミュニケーションの活性化に取り組んでいます。また、適切な指導ができる管理職人材の育成にも注力しており、これらが企業価値向上の源泉となると考えています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.8歳 12.7年 4,274,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は「公表義務の対象ではない」等の理由により公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 生産拠点の一極集中

同社の生産拠点は千葉県の「情報センター」1ヶ所に集約されています。そのため、災害などの不測の事態が発生した場合、生産活動が停止し、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) ビジネスフォーム市場の縮小

主力事業の一つであるビジネスフォーム市場は、ペーパーレス化や電子化の進展により縮小傾向にあります。同社売上の過半を占める事業であるため、市場のさらなる縮小や価格競争の激化が進んだ場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 個人情報の漏洩

情報処理事業において顧客から大量の個人情報を預かっています。セキュリティ体制の強化や認証取得に取り組んでいますが、万が一情報漏洩が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償責任により、業績に多大な影響が出る可能性があります。

(4) 特定株主との関係

筆頭株主である山田株式会社は、同社の大株主第2位である山田芳弘氏らが支配する会社です。現在経営への関与はありませんが、将来的な意向や株式保有方針の変化によっては、経営方針や事業運営に影響が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。