クラスターテクノロジー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クラスターテクノロジー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クラスターテクノロジーは東京証券取引所スタンダード市場と名古屋証券取引所メイン市場に上場し、高精度・高機能な樹脂製品を提供する企業です。主要事業はナノ/マイクロ・テクノロジー関連とマクロ・テクノロジー関連事業です。当期の業績は全事業が好調に推移し、売上高は13億円、営業利益は1.6億円と大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、クラスターテクノロジー株式会社の有価証券報告書(第35期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月30日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. クラスターテクノロジーってどんな会社?


高精度・高機能に特化した樹脂複合材料や機能性精密成形品、樹脂成形碍子などを開発・製造・販売する企業です。

(1) 会社概要


同社は1991年に安達新産業の子会社として設立されました。複合材料から精密機器デバイス製造の一貫メーカーとして体制を確立し、2006年に大阪証券取引所ヘラクレス市場に上場しました。その後、2013年の東京証券取引所JASDAQ上場等を経て、2026年に同取引所スタンダード市場へ移行しました。

現在の単体従業員数は76名です。大株主の状況をみると、筆頭株主は個人投資家の河野信夫氏で、第2位は大熊崇氏です。第3位には同社代表取締役社長の安達良紀氏が名を連ねており、上位株主は個人や経営陣によって占められている構成となっています。

氏名 持株比率
河野 信夫 4.81%
大熊 崇 4.74%
安達 良紀 4.14%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は安達良紀氏が務めており、社外取締役の比率は約28.6%となっています。

氏名 役職 主な経歴
安達 良紀 代表取締役社長開発本部長 1994年東神電気入社、1997年同社入社。開発本部長や製造第1本部長等の要職を歴任し、2017年10月より現職。
藤田 雅之 取締役営業・マーケティング本部長 1979年日本専売公社入社、1992年同社入社。関東工場長等を経て、2004年取締役に就任し、2018年4月より現職。
駒井 幸三 取締役管理本部長 1981年立花証券入社。タカトリ代表取締役社長等を経て、2013年同社社外取締役。2017年6月より現職。
安達 俊彦 取締役製造本部長 1997年クロースタジオ入社、2011年同社入社。製造第2本部長を経て2023年に製造本部長に就任し、2026年6月より現職。
後藤 史郎 取締役(監査等委員) 1978年安達新産業入社、2000年同社入社。管理本部管理部次長や内部監査室室長を経て、2020年6月より現職。


社外取締役は、松本茂(松本茂法律税務事務所代表)、原哲朗(元東京証券代行上席理事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ナノ/マイクロ・テクノロジー関連事業」「マクロ・テクノロジー関連事業」および「その他事業」を展開しています。

(1) ナノ/マイクロ・テクノロジー関連事業


デジタルカメラやプリンター、精密測定器向けに、要求特性に応じた機能性樹脂複合材料および機能性精密成形品を開発・製造・販売しています。また、ピコリットル単位の微量液滴制御が可能な研究開発用パルスインジェクターシステムも提供しています。

顧客であるカメラや産業機器、レジャー機器メーカー等の各企業・研究機関への製品販売を通じて対価を得るモデルです。本事業の運営および製品開発・製造は、同社自身が主体となって行っています。

(2) マクロ・テクノロジー関連事業


ビルや工場などの屋内受配電設備に設置される樹脂成形碍子(エポキシ碍子)および、そのベースとなるエポキシ樹脂複合材料を製造・販売しています。国内の重電機メーカーにおいて半世紀以上の長年の使用実績があります。

顧客の要望に応じた碍子の製品販売や、成形材料としての販売によって収益を獲得しています。同社は国内で一貫生産できる唯一の樹脂碍子メーカーとして、同社自身が本事業を展開しています。

(3) その他事業


同社の基幹技術や微細加工技術を活用し、医療薬品の容器の異物検査や精密部品の組み立てなどを行っています。

検査業務や部品組み立ての受託による手数料が主な収益源となっています。こちらの事業についても、同社が運営主体となってサービスを提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績をみると、2024年3月期までは売上高9億円台、経常利益0.7億円前後で安定的に推移していましたが、その後は成長軌道に乗っています。特に直近の2026年3月期は、主力事業が好調に推移したことで大幅な増収となり、利益面でも過去最高を更新するなど、顕著な拡大傾向を示しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 9.1億円 9.3億円 9.2億円 10.2億円 13.0億円
経常利益 1.0億円 0.7億円 0.7億円 1.1億円 1.7億円
利益率(%) 11.3% 8.1% 7.7% 10.8% 12.8%
当期純利益 1.1億円 0.6億円 0.6億円 1.0億円 1.3億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な拡大に伴い、売上総利益および営業利益ともに増加しています。工場の稼働率向上や利益率の高い製品の好調により、各段階の利益率も改善傾向にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 10.2億円 13.0億円
売上総利益 4.3億円 5.5億円
売上総利益率(%) 42.4% 42.1%
営業利益 1.1億円 1.6億円
営業利益率(%) 10.6% 12.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が0.7億円(構成比18%)、研究開発費が0.6億円(同16%)、支払手数料が0.6億円(同14%)を占めています。また、当期の総製造費用においては、材料費が2.9億円(構成比40%)、労務費が2.5億円(同33%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力であるナノ/マイクロ・テクノロジー関連事業は、産業用インクジェットプリンター関連製品やレジャー関連部品が好調で大幅な増収増益となりました。マクロ・テクノロジー関連事業も、受電設備のリニューアル需要等を背景に堅調に推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
ナノ/マイクロ・テクノロジー関連事業 8.2億円 10.6億円 3.8億円 4.9億円 45.6%
マクロ・テクノロジー関連事業 1.8億円 2.3億円 0.5億円 0.6億円 26.3%
その他事業 0.2億円 0.1億円 - - -
調整額 - - - - -
連結(合計) 10.2億円 13.0億円 4.3億円 5.5億円 42.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなる改善型の傾向を示しています。本業の営業利益に加え、定期預金の払い戻し等による資金流入を活用し、配当やリース債務の返済を進めている状況です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.4%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は86.7%であり、いずれもスタンダード市場平均を上回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 1.5億円 2.2億円
投資CF -0.5億円 1.0億円
財務CF - -0.2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「日々新たに、社会に役立つ」を経営理念に掲げています。一時の利を考えず、社会貢献から生まれる利益を追求することを信条としており、社会や企業を結び、人心と人格を作り上げることで新しい活力を作り出すことを目指しています。利己の心ではなく、利他の心で活動することを経営の基本スタンスとしています。

(2) 企業文化


同社は「樹脂製品の概念を変える」という価値観を重視しています。「精度がでない」「物性が満足できない」といった従来の常識を打破し、新たな樹脂化の可能性を追求する姿勢を持っています。また、顧客の潜在的課題を顕在化し解決策を提案する「顧客志向」と、チームワークおよび実行力の強化をスローガンに掲げる企業文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は中期経営計画において、「チームワークと実行力の強化!」をスローガンに掲げ、外部環境に大きく影響を受けにくい企業体質への転換を図っています。当事業年度において、最終年度の目標であった数値を前倒しで達成したため、今後はより中長期的な視点での企業価値向上に取り組むとしています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けた重点施策として、新規設備投資による生産能力の拡大や、人材採用の強化を通じた人的資本投資を積極的に進める方針です。また、これまでの産業機器やレジャー分野に加え、ロボット、センサ、通信、医療などの新規市場へのアプローチを強化するとともに、環境対応を意識した未来への商品開発を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人材を今後の事業拡大における重要な鍵と位置づけ、待遇改善や所得の安定化を推進しています。年功序列から脱却し、役割の大きさに応じた等級制度や、成果に応じたメリハリのある報酬体系を導入しています。また、現場責任者の資格取得支援や研修への参加強化、技術継承方法の確立など、教育システムと管理体制の構築にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.1歳 11.3年 4,382,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品開発の方向のズレと技術の陳腐化


顧客や市場の要求特性は常に変化しており、開発の的を絞れず遅れが生じるリスクがあります。また、同社の保有技術以外のまったく新しい技術が登場し、相対的な優位性が損なわれた場合、製品価値が低下し、事業収益に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 主力事業の将来予測と競合他社の参入


パルスインジェクター関連製品等を提供するナノ/マイクロ・テクノロジー関連事業を会社の柱としていますが、ターゲット分野の成長予測には限界があり、売上実績の齟齬が生じるリスクがあります。さらに、多業種や異業種の大手企業が参入した場合、業績に影響を及ぼす恐れがあります。

(3) 専門人材の確保と小規模組織の体制


研究開発には高分子化学や精密成形技術などの多彩な能力を持つ技術者が必要であり、有能な人材を確保できない場合や社外へ流出した場合、事業に悪影響を及ぼします。また、人員規模が小さいため、規模拡大に応じた管理体制の構築が順調に進まないリスクも存在します。

(4) 石油および鉱物資源の価格変動


同社の製品製造には石油や鉄、銅などの鉱物資源が不可欠です。これらの資源価格や電気料金が急激に変動した場合、原材料や部品などの製造原価が上昇し、製品の利益率が大幅に悪化する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。