※本記事は、株式会社日本一ソフトウェアの有価証券報告書(第33期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本一ソフトウェアってどんな会社?
家庭用ゲームソフトの開発を強みとし、国内外へエンターテインメントを提供する企業です。
■(1) 会社概要
1991年に家庭用ゲームソフトの開発を目的にプリズムが設立され、1993年に企画・販売部門として同社が設立されました。1994年に開発業務を統合し日本一ソフトウェアに商号変更しています。その後、2003年の米国子会社設立による海外展開を経て、2007年にジャスダックへ上場しました。
現在の体制は、連結従業員数が182名、単体従業員数が110名となっています。筆頭株主は同社の前身企業であり創業関連のローゼンクイーン商会で、第2位は資産管理業務などを行う外国法人等の信託口座、第3位は金融商品取引業者のSBI証券となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ローゼンクイーン商会 | 46.30% |
| INTERTRUST TRUSTEES(CAYMAN)LIMITED AS TRUSTEE OF THE UBIQUITOUS MASTER SERIES TRUST MELCO GROUP MASTER FUND (常任代理人 立花証券) | 7.70% |
| SBI証券 | 5.10% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は猿橋健蔵氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 猿橋 健蔵 | 代表取締役社長 | 2006年4月同社入社。営業部長、ベトナム子会社のセールスマネージャー、開発二部長、管理部長などを経て、2025年1月より現職。 |
| 北角 浩一 | 取締役会長 | 1991年9月プリズム設立、代表取締役就任。1993年7月同社設立、代表取締役社長就任。米国子会社会長などを歴任し、2024年6月より現職。 |
| 多々内 良則 | 取締役開発部長 | 1993年4月三菱電機中部コンピュータシステム入社。2007年4月同社入社。開発部長などを経て、2022年11月より現職。 |
| 平岡 三知 | 取締役 | 1995年4月コーエー入社。エレクトロニック・アーツ、同社米国子会社COO等を経て、2025年4月同社入社。同年6月より現職。 |
社外取締役は、後藤昭人(ジー・パートナーズ代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「エンターテインメント事業」および「学生寮・その他事業」を展開しています。
■エンターテインメント事業
家庭用ゲームソフトの開発、製造、販売を主力としています。国内向けのパッケージ版やダウンロード版の販売に加え、既存タイトルの北米・欧州・アジア地域に向けたローカライズ展開や、他社へのライセンス提供、受託開発も行っています。
ゲームユーザーや販売代理店からのソフト購入代金、プラットフォームを通じたダウンロード販売収益、他社からのライセンス収入を得ています。運営は同社のほか、米国子会社のNIS America, Inc.などが担っています。
■学生寮・その他事業
学生支援を目的として、岐阜県内にある大学の学生寮の運営や管理を行っています。エンターテインメント領域とは異なる安定した収益基盤として、地域に根ざした事業活動を展開しています。
学生寮の入居者からの寮費や賃貸収入などを主な収益源としています。この事業の運営は、同社の連結子会社である楽しみチームが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績を見ると、売上高は50億円前後で推移していましたが、直近で36.1億円まで減少しています。利益面では過去には高い経常利益率を誇っていたものの、直近2期は連続して経常赤字となり、当期純損失も3.5億円と厳しい事業環境が続いています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 57.2億円 | 48.3億円 | 53.4億円 | 53.0億円 | 36.1億円 |
| 経常利益 | 16.9億円 | 9.4億円 | 8.4億円 | -0.8億円 | -0.6億円 |
| 利益率(%) | 29.5% | 19.5% | 15.8% | -1.4% | -1.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5.4億円 | 3.6億円 | 3.4億円 | -3.8億円 | -3.5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な減少に伴い、売上総利益も縮小しています。売上総利益率は改善したものの、固定費負担を吸収できず、営業赤字幅が拡大する結果となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 53.0億円 | 36.1億円 |
| 売上総利益 | 19.5億円 | 15.4億円 |
| 売上総利益率(%) | 36.8% | 42.7% |
| 営業利益 | -2.7億円 | -4.1億円 |
| 営業利益率(%) | -5.2% | -11.3% |
販売費及び一般管理費(当期19.5億円)のうち、給与手当が6.3億円(構成比32.5%)、広告宣伝費が2.9億円(同14.9%)、役員報酬が1.9億円(同9.6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
エンターテインメント事業はパッケージタイトルの販売数減少などが響き、大幅な減収となりました。学生寮・その他事業は増収となったものの、規模は小さく全体業績をカバーするには至っていません。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| エンターテインメント事業 | 52.0億円 | 34.9億円 |
| 学生寮・その他事業 | 1.0億円 | 1.2億円 |
| 連結(合計) | 53.0億円 | 36.1億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-3.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.4%で市場平均を上回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4.0億円 | 0.5億円 |
| 投資CF | -2.3億円 | -12.2億円 |
| 財務CF | 4.7億円 | -0.4億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
創業理念「ゲームは作品ではなく商品である」に基づき、商品を購入するユーザーのみならず、取引先や株主、投資家など、同社グループに関わるすべてのお客様と喜びを分かち合える企業として発展していくことを使命として掲げています。
■(2) 企業文化
同社グループは利益追求集団ではなく付加価値追求集団であり、付加価値を重要な指標と考え、ゲームという分野に限らず、商品やサービスを通じて年齢・性別・地域を超えたすべての人々に楽しさを提供し、その結果としてすべての人々が豊かになることを目指す文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、年齢・性別・地域に関わらず、すべての方にあらゆるエンターテインメント分野で楽しさを提供するため、中期的な経営計画として国内販売20万本を超えるIP(知的財産)を作り出すことを目標としています。また、成長性を確保する観点から売上高の確保を重視し、成長維持のために営業利益および経常利益を重要指標と位置付けています。
■(4) 成長戦略と重点施策
長期的な付加価値を追求し、永続的な発展を目指すため、「開発力の強化」「販売力の強化」「生産性の向上」の3点に取り組んでいます。各従業員の能力の発掘による組織力強化や、既存顧客の満足度向上、新規顧客の創出、知的財産の再活用を通じ、ブランド価値の向上と売り上げの拡大を推進する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
競争力の源泉となる優秀な開発人材の採用および育成を最重要課題と位置づけ、専門性に特化した従業員への「特別手当」の導入など、高付加価値を追求する組織体制の構築に努めています。また、従業員一人ひとりの能力開発と経験蓄積による成長、組織力の強化を推進し、人的資本投資の成果である生産性の最大化に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 35.7歳 | 8.3年 | 3,971,810円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定のゲームソフトへの依存
『ディスガイア』シリーズ等、特定のゲームソフトへの売上高依存度が高くなる傾向があります。ユーザーの嗜好に合わない場合や製品に不具合が生じた場合、また同業他社との発売時期の重複による延期が発生した場合、同社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 顧客嗜好の変化と技術革新
ネットワークを前提とするエンターテインメントに対する消費者ニーズが急速に高まっています。同社は家庭用ゲーム機向けのゲームソフトを強みとしていますが、通信環境の変化や技術革新の進展に応じた開発が遅れた場合、相対的な評価が下がり業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 金利変動と資金調達
同社グループは資金調達を主に銀行借入によって行っているため、金利の変動による影響を受けます。金利上昇によるコスト増加を事業活動で吸収できない場合や、将来的に必要資金の調達が困難になった場合、同社グループの事業展開や業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。



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