※本記事は、株式会社日本一ソフトウェアの有価証券報告書(第32期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本一ソフトウェアってどんな会社?
家庭用ゲームソフトの企画・開発・販売を主力とし、独自性の高いIP(知的財産)と海外展開に強みを持つ企業です。
■(1) 会社概要
1993年に有限会社プリズム企画(現日本一ソフトウェア)として設立され、翌年に現商号へ変更しました。2003年には米国子会社NIS America, Inc.を設立し、海外展開を本格化させています。2007年にジャスダック証券取引所(現東証スタンダード)へ上場を果たしました。2018年には学生寮事業を行う子会社(現楽しみチーム)を設立し、事業の多角化を進めています。
同社グループの連結従業員数は177名、単体では107名です。筆頭株主は創業者の資産管理会社である有限会社ローゼンクイーン商会で、第2位は外国法人の常任代理人である証券会社、第3位は短資会社となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社ローゼンクイーン商会 | 44.33% |
| INTERTRUST TRUSTEES(CAYMAN)LIMITED AS TRUSTEE OF THE UBIQUITOUS MASTER SERIES TRUST MELCO GROUP MASTER FUND | 7.73% |
| 上田八木短資 | 2.99% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は猿橋健蔵氏が務めています。社外取締役比率は12.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 猿橋 健蔵 | 代表取締役社長 | 2006年に入社し、営業部長やNippon Ichi Software Vietnam Co., Ltd.のマネージャー、管理部長を歴任。2025年1月より現職。 |
| 北角 浩一 | 取締役会長 | 1991年に有限会社プリズム(現ローゼンクイーン商会)を設立。1993年に同社を設立し社長に就任。会長兼社長などを経て2024年6月より現職。 |
| 多々内 良則 | 取締役開発部長 | 三菱電機中部コンピュータシステムを経て2007年に入社。開発部長を務め、2019年より現職。STUDIO ToOeuf等の子会社社長も兼任。 |
| 平岡 三知 | 取締役 | コーエー、エレクトロニック・アーツを経てNIS America, Inc.に入社しCOOを務める。2025年4月に同社に入社し、同年6月より現職。 |
社外取締役は、後藤昭人(スライヴパートナーズ社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「エンターテインメント事業」および「学生寮・その他事業」を展開しています。
■(1) エンターテインメント事業
家庭用ゲームソフトの開発・製造・販売を主軸とし、国内だけでなく北米・欧州・アジア地域へのローカライズ販売も行っています。また、スマートフォン向けゲームアプリの配信やカードゲームショップの運営、関連商品のライセンスアウトなども手掛けています。
収益は主に一般消費者からのゲームソフトや関連グッズの購入代金、および他社へのライセンス許諾によるロイヤリティ収入等から成り立っています。運営は日本一ソフトウェア、米国子会社のNIS America, Inc.、開発子会社のSTUDIO ToOeufなどが担っています。
■(2) 学生寮・その他事業
学生支援を目的として、岐阜県内において大学学生寮の運営・管理を行っています。地域社会への貢献とともに、安定的な収益基盤の確保を目指す事業です。
収益は主に利用者からの寮費や管理費等によって構成されています。運営は連結子会社である楽しみチームが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は50億円前後で推移していますが、利益面では変動が見られます。特に2025年3月期は、売上高が横ばいとなる一方で、経常損益および当期純損益が赤字に転落しました。利益率は低下傾向にあり、収益性の改善が課題となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 53.0億円 | 57.2億円 | 48.3億円 | 53.4億円 | 53.0億円 |
| 経常利益 | 12.9億円 | 16.9億円 | 9.4億円 | 8.4億円 | -0.8億円 |
| 利益率 | 24.2% | 29.5% | 19.5% | 15.8% | -1.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4.7億円 | 5.4億円 | 3.6億円 | 3.4億円 | -3.8億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較します。2025年3月期は、売上高が微減となる中、売上総利益率が大きく低下しました。これは開発コスト等の増加によるものです。さらに、販売費及び一般管理費の負担も重なり、営業損益は赤字となりました。コスト構造の見直しや収益性の高いタイトルの開発が求められる状況です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 53.4億円 | 53.0億円 |
| 売上総利益 | 25.8億円 | 19.5億円 |
| 売上総利益率(%) | 48.3% | 36.8% |
| 営業利益 | 4.0億円 | -2.7億円 |
| 営業利益率(%) | 7.5% | -5.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が8.3億円(構成比37%)、広告宣伝費が3.7億円(同17%)を占めています。売上原価は33.5億円で、売上高に対する構成比は63%となっています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの状況を見ると、主力のエンターテインメント事業は売上高が微減となりました。一方、学生寮・その他事業は増収となっています。全社的な減収は主にエンターテインメント事業の影響によるものです。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| エンターテインメント事業 | 52.5億円 | 52.0億円 |
| 学生寮・その他事業 | 0.9億円 | 1.0億円 |
| 連結(合計) | 53.4億円 | 53.0億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、事業運営に必要な資金の流動性と源泉を安定的に確保することを基本方針としています。営業活動によるキャッシュ・フローは、ゲームソフトの製造・販売等を通じて安定的に創出されていると考えられます。投資活動によるキャッシュ・フローは、将来の事業成長に向けた投資が行われている可能性があります。財務活動によるキャッシュ・フローは、資金調達や返済の状況を示しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7.9億円 | 4.0億円 |
| 投資CF | -10.4億円 | -2.3億円 |
| 財務CF | 0.8億円 | 4.7億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「ゲームは作品ではなく商品である」という創業理念を掲げています。この理念に基づき、ユーザーだけでなく、取引先、株主、投資家など、グループに関わるすべてのお客様と喜びを分かち合える企業として発展していくことを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は「利益追求集団」ではなく「付加価値追求集団」であることを重視しています。付加価値とは商品やサービスであり、営業利益に人件費を加えた指標と捉えています。年齢・性別・地域を超えたすべての人々に楽しさを提供し、その結果としてすべての人々が豊かになることを目指す文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
年齢・性別・地域に関わらず、すべての方にあらゆるエンターテインメント分野で楽しさを提供するため、中期的な経営計画として、強力なIP(知的財産)を作り出すことを目指しています。
* 国内販売20万本を超えるIP(知的財産)の創出
■(4) 成長戦略と重点施策
永続的な発展を目指し、「開発力の強化」「販売力の強化」「生産性の向上」に取り組んでいます。開発面では従業員の能力発掘と組織力強化、販売面では顧客満足度向上と知的財産の再活用を推進し、これらを通じて長期的な付加価値を追求することで生産性の向上を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人材育成と社内環境整備を経営方針として掲げ、適材適所を旨とした人物本位の人事考課を行っています。多様性を確保するため、短時間勤務や育児休暇などを取得しやすい環境を整備し、女性や中途採用者の管理職登用も積極的に進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 35.7歳 | 7.9年 | 3,807,397円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 四半期毎の業績変動リスク
同社グループは開発人員が限られており、年間の発売可能タイトル数が限定されています。そのため、売上が主要ソフトの発売時期に集中する傾向があり、四半期ごとの業績が著しく変動する可能性があります。
■(2) 特定タイトルへの依存リスク
「ディスガイア」シリーズ等の特定ゲームソフトへの売上依存度が高くなる傾向があります。これらの作品がユーザーの嗜好に合わない場合や不具合が生じた場合、または開発遅延により計画通り販売できない場合、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 海外事業展開に伴うリスク
米国子会社NIS America, Inc.を通じた海外展開が進んでいますが、現地政府の規制、関税、租税リスク、為替変動などの影響を受けます。また、欧米の商慣行による売上値引(プライスプロテクション)負担が想定以上になった場合、業績に悪影響を与える可能性があります。
■(4) 資金調達・金利変動リスク
資金調達を主に銀行借入により行っているため、金利上昇によるコスト増加のリスクがあります。また、現状は金融機関との関係は良好ですが、将来にわたり必要な資金調達が継続的に可能である保証はありません。



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