極東貿易 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

極東貿易 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のエンジニアリング商社。産業設備、産業素材、機械部品の3セグメントを展開。当連結会計年度は、産業設備や素材部門が好調に推移し、子会社取得に伴う負ののれん発生益等もあり、売上高530億円(前期比21.4%増)、経常利益25億円(同69.8%増)の増収増益となりました。


※本記事は、極東貿易株式会社 の有価証券報告書(第105期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 極東貿易ってどんな会社?

機械関連を主体とするエンジニアリング商社です。「人と技術と信頼と」を掲げ、ニーズとシーズをつなぐ事業を展開しています。

(1) 会社概要

1947年、旧三井物産の解散に伴い機械部門の関係者を主体として設立されました。2000年に東京証券取引所市場第一部に指定され、2022年の市場区分見直しによりプライム市場へ移行しました。2011年以降、株式会社ゼットアールシー・ジャパンやサンコースプリング株式会社などを子会社化し、メーカー機能を強化しています。

同グループは連結648名、単体141名の従業員を擁しています。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)で、第2位はみずほ信託銀行株式会社退職給付信託IHI口、第3位は株式会社三菱UFJ銀行です。主要取引先や金融機関が上位株主となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.24%
みずほ信託銀行 退職給付信託 IHI口 6.30%
三菱UFJ銀行 3.28%

(2) 経営陣

同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は岡田義也氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
岡田 義也 代表取締役社長社長執行役員営業統括本部長 1984年同社入社。KBK Europe GmbH支配人、産業システム部長などを経て、2019年4月より現職。
佐久間 慎治 取締役副社長副社長執行役員営業統括本部副本部長機械部品関連部門長 1986年同社入社。極東貿易(上海)有限公司総経理、産業システム部長などを経て、2024年6月より現職。
佐藤 匡玄 取締役 1983年同社入社。プラスチック部長、素材グループ長、常務執行役員などを経て、2025年4月より現職。
八田 忠道 取締役常務執行役員コーポレート統括本部長コーポレート部門長 三菱化成工業(現三菱ケミカル)入社。同社理事役、ブリヂストンを経て2023年同社入社。2025年4月より現職。
前田 英彦 取締役常勤監査等委員 1984年同社入社。人事総務部長、執行役員コーポレート部門長などを経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、藤野隆(元伊勢化学工業社長)、貝塚光啓(弁護士)、日高真理子(公認会計士)です。

2. 事業内容

同社グループは、「産業設備関連部門」、「産業素材関連部門」、「機械部品関連部門」事業を展開しています。

(1) 産業設備関連部門

鉄鋼、自動車、化学等のプラント関連機械装置や、資源開発機器、電子機器、航空機用機材などを提供しています。顧客は重電、鉄鋼、自動車メーカーや官公庁など多岐にわたります。

機器や設備の販売対価が主な収益です。運営は同社のほか、試験装置等の製造を行うオートマックス株式会社、メンテナンスを行うプラント・メンテナンス株式会社、地震計等の日本システム工業株式会社、KBK Europe GmbHなどが担っています。

(2) 産業素材関連部門

樹脂・塗料、複合材料、食品関連製品、溶射材などを提供しています。自動車部品用樹脂やインフラ用塗料、食品加工機械などを扱っています。

製品の販売対価が収益源です。運営は同社のほか、塗料販売の株式会社ゼットアールシー・ジャパン、スチールベルト製造のKBKスチールプロダクツ株式会社、樹脂販売の株式会社三幸商会などが担っています。

(3) 機械部品関連部門

ねじ類(精密ファスナー)、ばね、工具、船舶補修部品などを提供しています。産業機械や建設機械、自動車業界などが主な顧客です。

部品の販売や製造販売による対価が収益となります。運営は同社のほか、ばね製造のサンコースプリング株式会社、ねじ類販売のヱトー株式会社、船舶部品の株式会社ウエルストンなどが担っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、2022年3月期に収益認識会計基準の適用等により売上が減少しましたが、その後は回復基調にあります。特に当期は売上高が500億円を超え、経常利益も25億円と大きく伸長しました。当期純利益は負ののれん発生益の計上等により過去最高水準となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 574億円 397億円 427億円 437億円 530億円
経常利益 7億円 13億円 15億円 15億円 25億円
利益率(%) 1.3% 3.3% 3.6% 3.4% 4.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 8億円 10億円 12億円 37億円

(2) 損益計算書

前期と比較すると、売上高は約21%増加し、売上総利益も増加しました。販管費も増加しましたが、増収効果により営業利益は約1.8倍に拡大しています。営業利益率も改善しており、本業の収益性が高まっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 437億円 530億円
売上総利益 91億円 109億円
売上総利益率(%) 20.9% 20.6%
営業利益 11億円 20億円
営業利益率(%) 2.5% 3.8%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給料手当が35億円(構成比40%)、従業員賞与が3億円(同4%)を占めています。

(3) セグメント収益

全セグメントで増収となりました。産業設備関連部門はプラント設備等が好調で利益も大幅増。産業素材関連部門は増収ですが、取得関連費用等により減益。機械部品関連部門はM&A効果もあり増収増益でした。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
産業設備関連部門 123億円 147億円 2億円 10億円 7.0%
産業素材関連部門 132億円 194億円 2億円 1億円 0.7%
機械部品関連部門 182億円 188億円 7億円 9億円 4.6%
調整額 -9億円 -11億円 0億円 -0億円 -
連結(合計) 437億円 530億円 11億円 20億円 3.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

極東貿易は、事業活動に必要な流動性維持と財務の健全性・安定性維持を基本方針としています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権や仕入債務の増減により、前年より支出額が減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、子会社株式の取得があったものの、定期預金の払い戻しや投資有価証券の売却により収入となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加などにより、前年の支出から収入へと転じました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -10億円 -8億円
投資CF 4億円 2億円
財務CF -5億円 11億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は「ニーズとシーズの橋になる」を経営理念として掲げています。目に見える技術だけでなく、仕組みやノウハウまでを含めたプラスワンを社会へ提供し、取引先や社会全体に「充実」「満足」を提供する企業集団への進化を目指しています。

(2) 企業文化

社是である「人」を重んじ、「技術」に長じ、「信頼」を基本とする『人と技術と信頼と』という精神と価値観を重視しています。全てのステークホルダーと共に歩む姿勢を持ち、ものづくり商社としての機能も併せ持つ企業文化を形成しています。

(3) 経営計画・目標

中期経営計画「KBKプラスワン2025」を推進しており、最終年度である2026年3月期の数値目標を見直しています。
* 連結経常利益:19億円
* ROE:5.4%
* M&A等投資枠:総額50億円(5年間)

(4) 成長戦略と重点施策

サステナブルな社会実現に向けた新分野での事業展開、株主価値向上に資する資本政策、人材育成を重点施策としています。特に再生可能エネルギー、バイオプロダクツ、産業向けDX・IoTの3分野を成長ドライバーと位置づけ、M&Aを含む積極的な事業投資によりポートフォリオの最適化を図ります。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「パラダイムシフトの中で『想像』し『創造』できる人材の育成」を掲げています。個人の属性にとらわれず人権を尊重し、能力を最大限発揮できる人事制度や教育研修体系を整備することで、社員が活躍できる環境づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.0歳 20.4年 7,750,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) マクロ経済環境の影響

グローバルにビジネスを展開しており、輸出入等の取引が売上の約5割を占めています。米国の関税政策や地政学リスク、原材料・エネルギー価格の高騰、為替変動などの世界経済の動向が、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 製品に関するリスク

輸入販売する製品の製造物責任(PL)の主体となるほか、輸出製品の欠陥による賠償請求を受ける可能性があります。PL保険で対策していますが、賠償額が多額となる場合、業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

(3) 投資に関するリスク

第三者との合弁事業や投資を通じて多様な事業に参入しています。パートナーの業績や財政状態など制御不能な要因により事業進展が予測困難となり、重大な損失を被る可能性があります。

(4) カントリーリスク

海外取引や進出において、各国の法規制変更、政治不安、テロ・戦争等のカントリーリスクが存在します。特にロシア・ウクライナ情勢などの地政学リスクや各国の政治経済の変化により、事業遂行や代金回収に問題が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。