蝶理 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

蝶理 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場しており、繊維事業、化学品事業、機械事業を展開しています。2025年3月期の連結売上高は3,115億円(前期比1.3%増)、経常利益は162億円(前期比11.9%増)となり、増収増益を達成しました。


※本記事は、蝶理株式会社 の有価証券報告書(第78期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月13日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 蝶理ってどんな会社?


繊維、化学品、機械事業をグローバルに展開する専門商社です。創業160年を超える歴史を持ち、東レグループの一員として強固な事業基盤を有しています。

(1) 会社概要


1861年に京都西陣で生糸問屋として創業し、1961年に東京証券取引所へ上場しました。2004年に東レ株式会社の連結子会社となり、事業基盤を強化しています。2013年以降、蝶理GLEX株式会社やミヤコ化学株式会社などを完全子会社化し、2022年には東証プライム市場へ移行しました。

連結従業員数は1,354名(単体371名)です。筆頭株主は親会社で繊維・化学品等の製造・販売を行う東レ株式会社、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)、第3位はカストディ業務を行うビービーエイチ フオー フイデリテイー ロープライス ストツク フアンドです。

氏名 持株比率
東レ 52.33%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.48%
ビービーエイチ フオー フイデリテイー ロープライス ストツク フアンド 3.89%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は13.0%です。代表取締役社長CEO & COOは迫田竜之氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
迫田 竜之 代表取締役社長CEO & COO 1989年入社。主計部副担当、経営政策本部長、蝶理アメリカ社長、ミヤコ化学社長などを歴任。2022年取締役常務執行役員を経て、2024年6月より現職。
吉田 裕志 取締役 経営政策本部長兼、薬事総合管理室担当 1990年入社。繊維原料部長、繊維本部長、北陸支店長などを歴任。2021年常務執行役員を経て、2024年6月より現職。
垰 和博 取締役社長特命(繊維本部関連) 1984年東レ入社。短繊維事業部長、産業資材・衣料素材事業部門長などを経て、2018年同社取締役執行役員。2019年6月より現職。
猪原 伸之 取締役 1983年東レ入社。樹脂事業部門長、東レプラスチック精工社長、東レ上席執行役員関連事業本部長などを歴任。2024年6月より現職。
藪 茂正 取締役(監査等委員) 1985年入社。主計部長、経営政策本部長、中国総代表などを歴任。2021年取締役専務執行役員を経て、2022年6月より現職。


社外取締役は、澤野正明(シティユーワ法律事務所創立パートナー)、鈴木博正(元富士レビオ代表取締役社長)、野田弘子(プロビティコンサルティング代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「繊維事業」、「化学品事業」、「機械事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 繊維事業


各種合成繊維や天然繊維の原料、テキスタイル(織物・編み物)、アパレル製品、産業用資材などを取り扱っています。素材開発から製品供給までを手掛け、独自のビジネスモデルを展開しています。

国内外の顧客に対して商材を販売し、その対価として売上収益を得ています。運営は、同社を中心に、株式会社STX、株式会社アサダユウ、CHORI AMERICA, INC.、蝶理(中国)商業有限公司などの国内外の子会社が行っています。

(2) 化学品事業


ウレタン原料、樹脂原料、高機能樹脂、電子材料、医薬品・農薬中間体、食品原料など、多岐にわたる化学品を取り扱っています。中国やアセアン地域を中心にグローバルなネットワークを活用した事業を行っています。

顧客への化学品販売により収益を得ています。運営は同社のほか、ミヤコ化学株式会社、株式会社小桜商会、蝶理GLEX株式会社、CHORI SINGAPORE PTE LTDなどの子会社が担っています。

(3) 機械事業


四輪車、二輪車、トラックなどの輸送機器および関連資材を取り扱っています。車両や部品の輸出入および三国間取引を行っています。

顧客への輸送機器等の販売により収益を得ています。運営は主に子会社の蝶理マシナリー株式会社が行っています。

(4) その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、事務処理受託などの各種サービスを提供しています。

グループ会社等に対する事務代行サービス等の対価として収益を得ています。運営は主に株式会社ビジネスアンカーが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2021年3月期から2023年3月期にかけて大きく伸長し、その後も3,000億円台を維持しています。経常利益は5期連続で増加傾向にあり、利益率は2%台から5%台へと改善しています。当期純利益も順調に拡大し、収益性の向上が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,162億円 2,841億円 3,294億円 3,077億円 3,115億円
経常利益 47億円 103億円 124億円 145億円 162億円
利益率(%) 2.2% 3.6% 3.8% 4.7% 5.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.0億円 60億円 76億円 62億円 85億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微増となりましたが、売上総利益は増加し、売上総利益率も改善しています。営業利益は若干減少しましたが、高い利益水準を維持しています。全体として、収益性の向上が継続していることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,077億円 3,115億円
売上総利益 387億円 405億円
売上総利益率(%) 12.6% 13.0%
営業利益 150億円 145億円
営業利益率(%) 4.9% 4.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が70億円(構成比27%)、運賃諸掛が38億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


繊維事業は増収となり、利益率も安定しています。化学品事業は売上が微減したものの、利益および利益率は向上しました。機械事業は売上が大幅に減少しましたが、黒字転換を果たしました。全体として、主力の繊維・化学品事業が利益を牽引しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
繊維事業 1,459億円 1,527億円 80億円 77億円 5.0%
化学品事業 1,600億円 1,579億円 76億円 89億円 5.6%
機械事業 17億円 9億円 -6億円 6億円 71.2%
その他 0.7億円 0.8億円 - - -
調整額 5億円 6億円 0.5億円 0.3億円 4.5%
連結(合計) 3,077億円 3,115億円 147億円 163億円 5.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

蝶理の当連結会計年度の資金は、前連結会計年度末に比べ増加し、期末残高は大幅な水準となりました。

営業活動による資金は、税金等調整前当期純利益や棚卸資産の減少が主な増加要因となった一方、仕入債務の減少や法人税等の支払いが主な減少要因となりました。投資活動による資金は、投資有価証券の売却による収入があったものの、無形固定資産や有形固定資産の取得による支出が主な減少要因となりました。財務活動による資金は、配当金の支払いと短期借入金の純減が主な減少要因となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 97億円 71億円
投資CF -27億円 -10億円
財務CF -54億円 -48億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「私たちは地球人の一員として、公正・誠実に誇りを持って行動し、顧客満足度の高いサービスを提供し続け、より良い社会の実現に貢献します。」という企業理念を掲げています。また、「あなたの夢に挑戦します。」をコーポレートスローガンとし、顧客や社会の夢の実現に向けた挑戦を続けています。

(2) 企業文化


「高機能・高専門性を基盤として常に進化する企業集団」を目指し、「自力・自立の経営」や「信用と確実」を重視する風土があります。また、「人を活かし、人と活きる。人を育て、人と育つ。人を繋ぎ、人に繋げる。」という人事スローガンのもと、人材育成と組織的活動を通じて総合力を発揮することを大切にしています。

(3) 経営計画・目標


2025年度を最終年度とする中期経営計画「Chori Innovation Plan 2025」を推進しています。「連結グローバル事業軸運営の推進」「変化に即応したサステナブルなビジネスの創出」「ESG経営の推進」を基本戦略とし、更なる企業価値の向上を目指しています。

* 2025年度セグメント利益目標:繊維事業75億円、化学品事業95億円

(4) 成長戦略と重点施策


「連結グローバル事業軸運営の推進」として、海外事業の強化・拡大に注力し、海外拠点の運営基盤強化や駐在員派遣による事業拡大を図ります。また、「変化に即応したサステナブルなビジネスの創出」に向け、環境配慮型ビジネスへの転換や新規事業開発、M&Aを実行します。さらに、「DXによるビジネス変革・経営変革」を優先課題とし、基幹システムの刷新などを通じて業務効率化と経営管理の高度化を推進します。

* 2026年3月期連結業績予想:売上高3,300億円
* 同営業利益:150億円
* 同経常利益:160億円
* 同親会社株主に帰属する当期純利益:110億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人」を最重要経営資本と位置づけ、従業員一人ひとりの成長が会社の成長と社会貢献に繋がると考えています。人的資本への投資を推進し、多様な業務経験や研修を通じた「人材育成」、女性活躍推進を含む「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」、そしてエンゲージメント向上や健康経営の推進に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.7歳 12.8年 9,885,000円


※平均年間給与は賞与及び時間外手当を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.0%
男性育児休業取得率 53.8%
男女賃金差異(全労働者) 65.2%
男女賃金差異(正規雇用) 66.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 90.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、総合職の採用人数に占める女性割合(24.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 中国地域・市場への集中に関するリスク


中国を重要な事業対象地域としており、売上高の一定割合を占めています。そのため、人民元の変動、法制・税制の変更、日中関係や米中貿易摩擦などの政治・経済情勢の変化により、現地の事業環境が悪化した場合、グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替レート及び金利の変動に関するリスク


グローバルに事業を展開しているため、予測を超えた為替レートの変動は仕入コストや販売費等に影響を与え、業績に波及する可能性があります。また、国内外の金利上昇により支払利息が増加したり、資金調達環境が悪化したりした場合も、経営成績や財政状態に悪影響が生じるおそれがあります。

(3) 原材料価格変動に関するリスク


繊維素材や化学品など市況商品を取り扱っているため、需給バランス等による原材料価格の変動リスクがあります。仕入コストの上昇を販売価格へ適時に転嫁できない場合、利益率の低下などを招き、グループの業績や財政状態に影響を与える可能性があります。

(4) 在庫に関するリスク


繊維製品や化学品等の在庫を保有しており、市況の悪化等により販売価格の下落や在庫回転期間の長期化が生じた場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。これにより、グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。