蝶理 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

蝶理 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の蝶理は、繊維、化学品、機械などをグローバルに展開する専門商社です。直近の業績は、売上高が約2993億円、当期純利益が約120億円と、減収ながらも増益を達成し、堅調な推移を見せています。東レを親会社に持ち、高機能・高専門性を活かした付加価値の提供で持続的な成長を目指しています。


※本記事は、蝶理株式会社の有価証券報告書(第79期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 蝶理ってどんな会社?


同社は繊維や化学品を中心とした商材を扱う専門商社であり、グローバルな事業展開を特徴としています。

(1) 会社概要


1861年に京都西陣において生糸問屋として創業し、1948年に現在の蝶理が設立されました。1953年には東洋レーヨン(現東レ)のウーリーナイロンの一手販売を開始し、1959年に株式を上場しています。2004年に東レの連結子会社となり、繊維と化学品の専門商社としてグローバルに事業を拡大しています。

同社の従業員数は連結で1,444名、単体で391名です。筆頭株主は事業会社の東レで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
東レ 52.33%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.32%
ビービーエイチ フオー フイデリテイー ロープライス ストツク フアンド 3.84%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長CEO & COOは迫田竜之氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
迫田竜之 代表取締役社長CEO & COO 1989年同社入社。主計部副担当兼経営政策部長などを経て2024年より現職。
吉田裕志 取締役 1990年同社入社。繊維本部長兼素材事業部長兼北陸支店長などを経て2026年より現職。
垰和博 取締役社長特命(繊維本部関連) 1984年東レ入社。産業資材・衣料素材事業部門長などを経て2019年より現職。
猪原伸之 取締役 1983年東レ入社。樹脂・ケミカル事業本部長などを経て2024年より現職。
藪茂正 取締役(監査等委員) 1985年同社入社。主計部長、経営政策本部長兼中国総代表などを経て2022年より現職。


社外取締役は、関根千津(元住化技術情報センター社長)、澤野正明(シティユーワ法律事務所創立パートナー)、鈴木博正(元富士レビオ社長)、野田弘子(プロビティコンサルティング代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、繊維事業、化学品事業、機械事業およびその他事業を展開しています。

繊維事業


各種合成繊維及び天然繊維の原料、各種織物、編み物、不織布及び関連商材、各種衣料製品、産業用繊維資材及び関連商材を提供しています。国内外のアパレルメーカーや資材メーカーなどを主要な顧客としています。

顧客への商品販売による収益を主な収入源としています。商品の仕入や国内外への販売を担い、事業の運営は主に蝶理やSTXなどのグループ会社が行っています。

化学品事業


ウレタン原料、樹脂原料、樹脂添加剤、化粧品原料、医薬品・農薬中間体、表面処理剤、食品・飼料原料等の各種化学品を提供しています。化学・素材メーカーや医薬品・食品メーカーなどを顧客としています。

専門性の高い化学品の販売を通じた収益を主な収入源としています。国内外での幅広い商材の取引を展開しており、運営は主に蝶理やミヤコ化学などのグループ会社が行っています。

機械事業


四輪車、二輪車、トラックなどの輸送機器及び関連資材を提供しています。主に海外の自動車関連企業や輸送機器メーカーなどを顧客として事業を展開しています。

輸送機器の販売による収益を主な収入源としています。グローバル市場における需要に応じた販売活動を展開しており、運営は主に蝶理マシナリーが行っています。

その他事業


報告セグメントに含まれない事業として、事務処理受託などの各種役務提供を行っています。主に同社グループ内の企業を対象に各種サービスを提供しています。

業務受託に伴う手数料を主な収益源としています。グループ全体の業務効率化をサポートする役割を担っており、運営は主にビジネスアンカーなどのグループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、売上高は一時期増加した後に落ち着きを見せていますが、利益面では着実な成長傾向がうかがえます。特に経常利益と当期利益は変動を伴いながらも中長期的に拡大しており、収益力の向上が確認できます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2841億円 3294億円 3077億円 3115億円 2993億円
経常利益 103億円 124億円 145億円 162億円 142億円
利益率(%) 3.6% 3.8% 4.7% 5.2% 4.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 60億円 76億円 62億円 85億円 113億円

(2) 損益計算書


直近2期の損益状況を見ると、売上高は減少したものの、売上総利益は増加しており、売上総利益率も改善しています。一方で、販売費及び一般管理費の増加などが影響し、営業利益および営業利益率は前年度を下回る結果となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3115億円 2993億円
売上総利益 405億円 411億円
売上総利益率(%) 13.0% 13.7%
営業利益 145億円 131億円
営業利益率(%) 4.7% 4.4%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が77億円(構成比28%)、運賃諸掛が40億円(同14%)を占めています。売上原価は2582億円と売上高に対して大きな割合を占めており、専門商社としての事業構造が表れています。

(3) セグメント収益


各事業セグメントの売上動向を見ると、繊維事業は素材および資材分野の伸び悩みなどにより減収となっています。化学品事業もパフォーマンスケミカル分野の市況低迷の影響を受け、売上高が減少しました。機械事業等のその他の事業についても総じて前年を下回る結果となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
繊維事業 1527億円 1458億円
化学品事業 1579億円 1527億円
機械事業 9億円 8億円
その他事業 1億円 1億円
連結(合計) 3115億円 2993億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 71億円 115億円
投資CF -10億円 -18億円
財務CF -48億円 -50億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.4%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も66.7%といずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「選ばれ続ける商社 新地図を拓き、価値を創り、未来を紡ぐ」というありたい姿を掲げています。グローバルで新しい市場やサプライチェーンを開拓し、高機能・高専門性の追求で世の中に価値を創出することで、会社・事業を未来につなぎ、ステークホルダーから選ばれ続ける商社を目指すという意志が込められています。

(2) 企業文化


同社は「高機能・高専門性を基盤として常に進化する企業集団を目指す」ことを基本方針としています。自ら提案し、創造し、開拓する「自力・自立の経営」を重視するとともに、「信用と確実」を旨とし浮利を追わず投機的取引を行わないという堅実な価値観が根付いています。目標達成への強い意志を持った人材育成と組織的活動を推進しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2028年度を最終年度とする中期経営計画「Chori Innovation Plan 2028」を策定し、さらなる企業価値の向上を図っています。同計画の最終年度における経営指標として、以下の数値目標を掲げています。

* 売上高:3,500億円
* 営業利益:192億円
* ROE:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は中期経営計画の基本方針である「専門性×グローバル×事業投資」の推進のもと、事業領域の拡大に注力しています。海外新規エリアへの進出と既存エリアの事業深化を両輪で進め、積極的な人材派遣や戦略的事業投資を行います。また、資本効率を重視した財務運営により、成長投資と株主還元を両立させる方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人」を最重要経営資本と位置づけ、従業員が働きがいを感じ成長を実感できる環境づくりを推進しています。「人的資本投資」「エンゲージメント向上」「健康経営の推進」を3つの柱とし、多様な業務経験や研修機会の提供、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進により、持続的に成長できる企業を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.7歳 12.6年 10,360,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.8%
男性育児休業取得率 60.0%
男女賃金差異(全労働者) 64.3%
男女賃金差異(正規雇用) 65.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 82.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 中国地域・市場への集中


同社グループは中国を消費市場・製造拠点として重要な事業対象地域と位置づけており、多くの経営資源を投入しています。そのため、人民元の変動、法制や税制の変更、日中関係の悪化や米中貿易摩擦などの動向により中国における事業環境が悪化した場合には、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替レート及び金利の変動


同社グループはグローバルに事業活動を展開しており、様々な通貨で取引を行っています。予測を超えた為替レートの変動により、商材の仕入コストや運賃等の販売費が変動するリスクがあります。また、金融政策の変動に伴う金利上昇により、資金調達コストが増加する可能性もあります。

(3) 原材料価格の変動


繊維素材や化学品、輸送機器など固有の市況を持つ商品を扱っているため、需給バランスや通商政策、地政学的な要因によって原材料価格が変動するリスクがあります。仕入コストの変動を販売価格へ適時適切に転嫁できない場合、同社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 在庫に関するリスク


繊維や化学品などの多岐にわたる商品を扱っているため、市況の悪化などにより販売価格の下落や在庫回転期間の長期化が生じるリスクがあります。需要予測や顧客からの引取り保証の確保により適正な在庫水準の維持に努めていますが、予期せぬ評価損の計上を余儀なくされる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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