KPPグループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

KPPグループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する同社グループは、紙・板紙・パルプ等の卸売事業を国内外で展開する専門商社です。グローバルな事業基盤を持ち、不動産賃貸業も手掛けています。当連結会計年度の業績は、売上高が前期比で増収となった一方、経常利益は減益となりました。


※本記事は、KPPグループホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第151期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. KPPグループホールディングスってどんな会社?


紙パルプ商社として国内トップクラスの規模を誇り、世界各国で事業を展開するグローバル企業です。

(1) 会社概要


同社は1924年に大同洋紙店として設立され、数々の合併を経て事業を拡大してきました。2018年に東京証券取引所市場第一部へ上場し、グローバル展開を加速させます。2019年には豪州のSpicers Limited、2020年には仏Antalis S.A.S.を子会社化しました。2022年には持株会社体制へ移行し、現商号に変更しています。

連結従業員数は5,974名、単体では34名が在籍しています。筆頭株主は同社の主要仕入先でもある製紙メーカーの王子ホールディングスで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位も信託銀行の信託口が保有しており、安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
王子ホールディングス 17.45%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.72%
日本カストディ銀行(りそな銀行再信託分・北越コーポレーション退職給付信託口) 3.42%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役会長 兼 CEOは田辺円氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
田辺 円 代表取締役会長 兼 CEO 1971年旧株式会社大同洋紙店入社。2013年同社社長、2015年社長執行役員CEOを経て、2020年6月より現職。
坂田 保之 代表取締役社長 兼 COO 1982年株式会社東京銀行入行。日本電産株式会社(現ニデック株式会社)を経て2017年同社入社。2024年6月より現職。
栗原 正 取締役 1979年旧大永紙通商株式会社入社。2020年同社社長執行役員、2022年社長を経て、2024年6月より現職。
デイビッド・マーティン 取締役 1993年Avery Dennison入社。2016年7月よりSpicers Limited Chief Executive Officer。2024年6月より現職。
エルベ・ポンサン 取締役 1986年Renault Automation Germany入社。2017年6月よりAntalis Chief Executive Officer。2024年6月より現職。
富田 雄象 取締役(監査等委員)(常勤) 1981年住友商事株式会社入社。2014年同社入社、常務執行役員等を経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、矢野達司(元トーメン執行役員)、伊藤三奈(ZENMONDO代表取締役)、片岡詳子(元ファーストリテイリング法務部リーダー)、近江惠吾(千代田監査法人代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「北東アジア」「欧州/米州」「アジアパシフィック」「不動産賃貸」および「その他」事業を展開しています。

(1) 北東アジア


日本、中国、台湾、香港、韓国等において、紙、板紙、パルプ・古紙、その他関連物資の販売を行っています。情報媒体としての紙需要が減少する中、パッケージング用紙や環境配慮型素材へのシフトが進んでいます。

主な収益源は、製紙会社等から仕入れた商品の販売代金です。運営は主に国際紙パルプ商事、大同紙販売、むさし野紙業などの事業会社が行っています。

(2) 欧州/米州


フランス、イギリス、ドイツ、スイス、カナダ、チリ等において、紙、板紙、その他関連物資の販売を行っています。欧州経済の動向やデジタル化の影響を受けつつも、広範なネットワークで事業を展開しています。

主な収益源は、紙類および関連商品の販売収益です。運営は、Antalis S.A.S.を中心とした各国のAntalisグループ各社が行っています。

(3) アジアパシフィック


オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール等において、紙、板紙、パルプ・古紙、その他関連物資の販売を行っています。パッケージング事業やビジュアルコミュニケーション事業の強化を図っています。

主な収益源は、商品の卸売による販売代金です。運営は、Spicers Limitedおよびその傘下のグループ会社が行っています。

(4) 不動産賃貸


日本国内において、保有する不動産の賃貸事業を行っています。オフィスビル等の有効活用により安定的な収益確保を目指しています。

主な収益源は、テナントからの不動産賃貸料です。運営は主にKPPグループホールディングスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高はM&Aなどの効果もあり拡大傾向にあります。2021年3月期は損失を計上しましたが、翌期以降は黒字化し、利益水準を回復させています。当期は前期比で増収となりましたが、利益面では減少しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 4,304億円 5,634億円 6,597億円 6,444億円 6,700億円
経常利益 -120億円 88億円 184億円 125億円 97億円
利益率(%) -2.8% 1.6% 2.8% 1.9% 1.4%
当期利益(親会社所有者帰属) -18億円 18億円 19億円 11億円 69億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は増加し、売上総利益および売上総利益率も改善しています。一方、販管費の増加などにより営業利益および営業利益率は低下しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 6,444億円 6,700億円
売上総利益 1,199億円 1,291億円
売上総利益率(%) 18.6% 19.3%
営業利益 158億円 135億円
営業利益率(%) 2.5% 2.0%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が439億円(構成比38%)、販売費が202億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


北東アジアセグメントは減収減益となりました。欧州/米州セグメントは増収となりましたが利益は減少しました。アジアパシフィックセグメントは増収増益となり、利益率も相対的に高い水準を示しています。不動産賃貸事業は高い利益率を維持しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
北東アジア 3,046億円 3,036億円 34億円 29億円 1.0%
欧州/米州 2,857億円 2,985億円 105億円 78億円 2.6%
アジアパシフィック 526億円 664億円 22億円 30億円 4.5%
不動産賃貸 15億円 15億円 6億円 6億円 40.0%
調整額 -25億円 -29億円 -8億円 -7億円 -
連結(合計) 6,444億円 6,700億円 158億円 135億円 2.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

KPPグループホールディングスは、子会社株式の取得や長期借入金の返済に資金を充当した結果、期末の資金は減少しました。営業活動では、税金等調整前当期純利益の計上や売上債権の減少により資金を獲得しました。投資活動では、子会社株式や固定資産の取得により資金を使用しました。財務活動では、長期借入金やリース債務の返済により資金を使用しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 198億円 112億円
投資CF -55億円 -166億円
財務CF -224億円 -112億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、長期経営ビジョンとして「GIFT 2030」を掲げています。このビジョンの下、環境負荷低減に資する商品やサービスの開発・流通、循環型ビジネスの構築・提案に取り組み、ステークホルダーへ貢献するとともに、社会に開かれた企業としてグローバルな成長を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「KPPグループウェイ」を理念体系として定めています。これは「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の3層から形成されており、グループ社員全員が共有し、すべての活動の基本としています。また、「紙でつなぐ、未来をつくる」をコーポレートメッセージとして掲げています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、長期経営ビジョン「GIFT 2030」の期間における中期的な経営戦略として、第4次中期経営計画(2026年3月期~2028年3月期)を策定しています。「業界トップクラスのグローバル企業へ」をテーマに、以下の数値目標を掲げています。

* 営業利益:200億円
* EBITDA:320億円
* ROE:8.0%以上
* 自己資本比率:20~25%
* 連結配当性向:30%を目処(DOE3.0%を下限)

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けて、「事業戦略」「サステナビリティ戦略」「財務戦略」を基本戦略としています。事業領域の拡大やポートフォリオ転換、グローバルシナジーの追求、DX推進に加え、グリーンビジネスの展開や人的資本経営の推進などに取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人」を最も重要な経営資源と捉え、人的資本として位置づけています。トップマネジメントで構成される人事委員会の主導のもと、人的資本戦略の策定や、採用・育成・評価に関する制度整備を推進しています。また、リスキリングやエンゲージメント向上にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.8歳 9.6年 9,361,201円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 16.7%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 69.3%
男女賃金差異(正規雇用) 68.1%
男女賃金差異(非正規雇用) -


※男女賃金差異(非正規雇用)については、対象となる従業員がいないことを示しております。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(5.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) カントリーリスク


同社グループは世界各国に事業を展開しており、海外売上高比率は61.7%に達しています。投資先国・地域の政治、経済、社会情勢の変化により、代金回収の遅延や事業遂行上の問題が発生する可能性があります。これに対し、取引信用保険の活用や与信管理の徹底、情報収集、販路の分散によりリスク低減を図っています。

(2) 競争力/業績(海外投資)


事業ポートフォリオ改革のため海外投資を進めており、多額ののれんを計上しています。事業環境の変化等により期待するシナジー効果が得られず、収益性が低下した場合は減損損失が発生し、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。投資の採算性を慎重に審議し、業績推移のモニタリングを行っています。

(3) サプライチェーンマネジメント(主要取引先への依存等)


主要商品である紙・板紙は、主要株主のグループ会社を含む特定の大手製紙会社からの仕入に依存しています。天災等により商品供給に支障が生じた場合、事業に影響を及ぼす可能性があります。仕入先の多様化や、紙・板紙以外の事業領域の拡大を進めることで対応しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。