KPPグループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

KPPグループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するKPPグループホールディングスは、紙や板紙、パルプ・古紙の国内外での販売に加え、パッケージングや不動産賃貸事業などを展開しています。直近の業績は、ペーパー事業におけるグラフィック用紙の需要減少や価格下落などの影響を受け、前年から減収、利益面でも減益のトレンドとなっています。


※本記事は、KPPグループホールディングスの有価証券報告書(第152期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. KPPグループホールディングスってどんな会社?


国内外で紙や板紙、パルプなどの販売を手掛けるほか、環境関連など多様な事業を展開しています。

(1) 会社概要


同社は1924年に設立された大同洋紙店に起源を持ちます。2018年に東京証券取引所市場第一部へ上場し、2019年に豪州のSpicers、2020年に仏国のAntalis等を買収してグローバル展開を加速させました。2022年には持株会社体制へ移行し、現在のKPPグループホールディングスへと社名を変更しています。

現在の従業員数は連結で6,024名、単体で36名となっています。筆頭株主は事業会社の王子ホールディングスで、第2位および第3位にはそれぞれ資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、日本カストディ銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
王子ホールディングス 15.22%
日本マスタートラスト信託銀行(その他信託口) 5.19%
日本カストディ銀行(りそな銀行再信託分・北越コーポレーション退職給付信託口) 3.58%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長兼CEOは坂田保之が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
坂田保之 代表取締役社長 兼 CEO 元東京銀行、日本電産を経て、2017年入社。2025年より現職。
田辺円 代表取締役会長 1971年大同洋紙店入社。社長、CEOなどを歴任し、2025年より現職。
小馬井秀臣 取締役 1985年大永紙通商入社。経営企画本部長、人事本部長などを歴任し、2025年より現職。
デイビッド・マーティン 取締役 Spicers Limited CEOを務め、2024年より現職。
エルベ・ポンサン 取締役 Antalis CEOを務め、2024年より現職。
中川直樹 取締役(監査等委員)(常勤) みずほ銀行出身、内部監査室長等を経て、2025年より現職。


社外取締役は、矢野達司(元三洋化成工業取締役)、伊藤三奈(ZENMONDO代表取締役)、片岡詳子(コーチ・エィ取締役監査等委員)、工藤陽子(元EY新日本有限責任監査法人シニアプリンシパル)です。

2. 事業内容


同社グループは、「北東アジア」「欧州/米州」「アジアパシフィック」「不動産賃貸」の報告セグメントを展開しています。

(1) 北東アジア


日本、中国、台湾、香港、韓国などにおいて、紙、板紙、パルプ・古紙、その他の関連物資を販売しています。国内外の製紙メーカーから仕入れた商品を、印刷会社や出版社をはじめとするさまざまな顧客に提供しています。

商品の販売代金を主な収益源としています。事業の運営は、国際紙パルプ商事や大同紙販売などの子会社が主に行っています。

(2) 欧州/米州


フランス、イギリス、ドイツなどの欧州および米州地域において、紙、板紙、その他関連物資の販売を行っています。また、パッケージングやビジュアルコミュニケーション事業などへも領域を拡大しています。

収益は、商品の販売代金として顧客から受け取っています。事業の運営は、Antalis S.A.S.をはじめとする欧州・米州の各子会社が担っています。

(3) アジアパシフィック


オーストラリア、ニュージーランド、シンガポールを中心とした地域において、紙、板紙、パルプ・古紙、その他関連物資を販売しています。印刷関連機器などのハードウエア販売も手掛けています。

商品の販売代金を収益源としています。事業の運営は、Spicers LimitedやKPP ASIA-PACIFIC PTE. LTD.などの子会社が行っています。

(4) 不動産賃貸


日本国内において、オフィスビルや賃貸住宅、賃貸倉庫などの不動産賃貸事業を展開しています。

入居テナントからの賃貸料を収益源としています。同事業はKPPグループホールディングス自身が運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は安定して6,000億円台で推移していますが、利益面は市況や需要変動の影響を受けやすく、直近ではグラフィック用紙の需要減などにより減益傾向となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 5,634億円 6,597億円 6,444億円 6,700億円 6,504億円
経常利益 88億円 184億円 125億円 97億円 62億円
利益率(%) 1.6% 2.8% 1.9% 1.4% 0.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 75億円 157億円 106億円 80億円 56億円

(2) 損益計算書


売上高は減少したものの、M&Aの効果などにより売上総利益は微増し、売上総利益率も改善しています。一方、販売費及び一般管理費の増加により営業利益は減益となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 6,700億円 6,504億円
売上総利益 1,291億円 1,300億円
売上総利益率(%) 19.3% 20.0%
営業利益 135億円 101億円
営業利益率(%) 2.0% 1.6%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が463億円(構成比39%)、販売費が211億円(同18%)を占めています。売上原価は5,203億円で、売上原価合計に対する構成比は100%です。

(3) セグメント収益


主力の北東アジアは紙需要の減少等により減収減益となりました。欧州/米州は売上を維持したものの減益、アジアパシフィックも減収減益となっています。不動産賃貸は安定して高利益率を維持しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
北東アジア 3,036億円 2,852億円 29億円 19億円 0.7%
欧州/米州 2,985億円 2,990億円 78億円 58億円 1.9%
アジアパシフィック 664億円 647億円 30億円 28億円 4.3%
不動産賃貸 15億円 15億円 6億円 6億円 41.1%
連結(合計) 6,700億円 6,504億円 135億円 101億円 1.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 112億円 198億円
投資CF -166億円 -111億円
財務CF -112億円 -81億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も23.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、グループ社員全員が共有する理念体系「KPPグループウェイ」を定めています。ミッションを実現した先に目指す将来像「ビジョン」として、「Globalization」「Innovation」「Function」「Trust」を掲げています。この「GIFT」に基づき、紙の可能性を追求しつつ事業領域を拡大し、世界トップクラスのグローバル企業を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、循環型社会の実現をミッションとし、持続可能な社会への貢献を重視する文化を持っています。自律的に考え、挑戦と変革を通じて価値を創出し続けることを競争優位の源泉と位置付け、従業員一人ひとりの成長と多様性を尊重する組織づくりを推進しています。

(3) 経営計画・目標


2030年に向けた長期経営ビジョン「GIFT 2030」の達成に向け、第4次中期経営計画(2026年3月期~2028年3月期)を推進しています。

- 営業利益:200億円
- EBITDA:320億円
- ROE:8.0%以上
- 自己資本比率:20~25%
- 連結配当性向:30%を目処

(4) 成長戦略と重点施策


グラフィック用紙市場の縮小を見据え、成長が見込まれるパッケージングやビジュアルコミュニケーション、環境関連分野など周辺領域への事業ポートフォリオの転換と拡大を進めています。また、グローバルシナジーの追求、Eビジネスの拡大やDXの推進、気候変動対策を含むサステナビリティ戦略を強化し、持続的な企業価値向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、持続的な成長を実現するため人的資本を最重要資源と位置付けています。「自律的に成長する人材の育成」を掲げ、多様な人材が活躍できるポートフォリオの構築、役割・成果・行動に基づく公正な評価と処遇、中長期的な成長を支える人材育成と組織基盤の強化を人事戦略の柱として推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.5歳 9.3年 8,727,698円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 23.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 74.8%
男女賃金差異(正規雇用) 74.2%
男女賃金差異(非正規雇用) -


※対象となる非正規雇用の従業員がいないため記載はありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(5.4%)、国内事業拠点からのScope1・2排出量(2,912t-CO2)、Green Biz Projectの売上高(48億円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) インオーガニック戦略に係るリスク


同社グループはM&Aを主とした投資を進めていますが、事業環境の変化等により期待するシナジー効果が得られない場合、のれんの減損損失が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) サプライチェーンに関するリスク


特定の製紙メーカーからの仕入比率が高く、商品供給に支障が生じた場合や、業務プロセスの不全により許認可等の喪失が生じた場合、事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 情報システムおよびセキュリティのリスク


基幹業務を情報システムに依存しており、システム障害やサイバー攻撃等により業務が長期間停止した場合、顧客対応力の低下や機会損失が生じ、業績や社会的信用に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。