※本記事は、株式会社YUASAの有価証券報告書(第147期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. YUASAってどんな会社?
同社は産業・建設・住宅設備など幅広い分野の商材を扱う複合専門商社として事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1666年に京都で創業し、1919年に各種金属製品の販売を目的に会社を設立しました。1961年に株式を店頭公開し、その後東京・大阪両証券取引所の市場第一部に上場しました。1992年にユアサ産業と合併して社名をユアサ商事に変更し、2026年4月には現在のYUASAへと社名を変更しています。
同社グループは連結で3,088名、単体で1,286名の従業員を擁しています。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行であり、第2位は持株会、第3位も資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 12.31% |
| ユアサ炭協持株会 | 4.69% |
| 野村信託銀行 | 4.38% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長CEOは田村博之氏が務めています。役員のうち社外取締役の比率は約31%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 田村博之 | 代表取締役社長CEO海外事業推進担当 | 1982年同社入社。海外現地法人社長や工業マーケット事業本部長などを歴任し、2017年4月より現職。 |
| 田中謙一 | 代表取締役専務取締役経営管理部門統括地域・グループ担当輸出管理委員会委員長倫理・コンプライアンス委員会委員長内部統制委員会委員長 | 1982年同社入社。建築設備本部長や住環境マーケット事業本部長などを経て、2024年4月より現職。 |
| 濱安守 | 常務取締役営業部門統括工業マーケット事業本部長 | 1984年同社入社。東アジアエリア統括や子会社代表取締役社長などを歴任し、2024年4月より現職。 |
| 大村貴臣 | 取締役営業部門副統括建設マーケット事業本部長 | 1993年マクロス(現ユアサマクロス)入社。同社社長や建材本部長などを経て、2024年4月より現職。 |
| 竹尾希典 | 取締役住環境マーケット事業本部長 | 1991年同社入社。マルボシ代表取締役社長や西部・東部住環境本部長などを歴任し、2024年4月より現職。 |
社外取締役は、前田新造(元資生堂代表取締役会長兼執行役員社長)、平井嘉朗(元イトーキ代表取締役社長)、光成美樹(FINEV代表取締役)、町田悠生子(五三・町田法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、産業機器、工業機械、住設・管材・空調などの報告セグメントおよびその他事業を展開しています。
■(1) 産業機器
自動車関連産業や食品製造工場向けに、切削工具、制御機器、物流機器、省エネ機器、食品機械などを提供しています。顧客の生産現場におけるスマートファクトリー化や、自動化・省人化ソリューションへの投資意欲に応える商材を幅広く扱っています。
収益源は、顧客企業への機器や設備の販売による代金です。運営は主にYUASAが行い、国興や中川金属などの子会社も製品の販売を担っています。
■(2) 工業機械
半導体・データセンター向け冷却装置等の製造設備や、精密板金市場・脆性材加工市場向けの工業機械、自動化設備を販売しています。国内外の製造業を顧客とし、生産現場の課題を解決する高付加価値商品の提案を継続しています。
収益源は、製造業顧客への機械や設備の販売代金です。運営はYUASAが行い、ユアサネオテックや海外の現地法人が販売活動を分担しています。
■(3) 住設・管材・空調
管材、空調機器、住宅設備機器、再生可能エネルギー関連機器などを販売し、建設工事の設計監理や請負を行っています。データセンターや大型再開発の空調設備、物流倉庫の省エネ設備など、幅広い建設・住宅市場の顧客にサービスを提供しています。
収益源は、顧客への設備機器の販売代金および設置・建設工事の請負代金です。運営はYUASAのほか、ユアサクオビスやマルボシなどの子会社が行っています。
■(4) 建築・エクステリア
建築資材、景観・エクステリア、土木資材などの販売に加え、外構資材の設置工事の設計監理および請負を行っています。商業施設や公共施設、一般住宅向けに防災関連商品や宅配ボックスなどを提供しています。
収益源は、資材の販売代金および工事の請負代金です。運営はYUASAが担い、協栄ジェネックスやフジクレストなどの子会社も事業に関わっています。
■(5) 建設機械
建設機械・資材の販売とリース・レンタルに加え、組立式仮設ハウスの製造販売、イベント設営事業などを展開しています。国土強靭化に向けたインフラ整備や再開発を担う建設業者などに対して、AIやIoT技術を用いた省人化ソリューションを提案しています。
収益源は、機械の販売代金、レンタル・リース料、および製造・イベント請負代金です。運営はYUASAのほか、ユアサマクロスやラインナップなどが担っています。
■(6) エネルギー
東海地方などを中心にガソリンスタンドを展開し、石油製品の販売や自動車関連サービスを提供しています。また、京浜地区においては船舶用燃料の販売も行い、個人客から法人顧客まで幅広く対応しています。
収益源は、ガソリンや石油製品の販売代金、洗車や車検などのサービス利用料です。運営は主にユアサ燃料が行っています。
■(7) その他
生活関連商品や木材製品の販売、システムの開発・保守・運用管理などを行っています。季節ごとの消費財提案や、国産材を用いた特注木材製品の開発などを通じて、多様な顧客ニーズに対応しています。
収益源は、消費財や木材の販売代金、およびシステム開発・保守の受託代金です。運営はYUASA、ユアサプライムス、ユアサ木材、ユアサシステムソリューションズなどが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高が4,627億円から5,450億円へと順調に拡大しており、増収傾向が続いています。経常利益も117億円から172億円へと着実に増加し、利益率も2.5%から3.2%へと緩やかな改善を見せており、安定した成長軌道を描いています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 4,627億円 | 5,048億円 | 5,266億円 | 5,284億円 | 5,450億円 |
| 経常利益 | 117億円 | 154億円 | 157億円 | 160億円 | 172億円 |
| 利益率(%) | 2.5% | 3.0% | 3.0% | 3.0% | 3.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 65億円 | 94億円 | 77億円 | 79億円 | 91億円 |
■(2) 損益計算書
直近の損益状況を見ると、増収に伴い売上総利益と営業利益の双方が増加しています。売上総利益率は約12%前後で推移し、営業利益率も3%台を維持するなど、堅実な収益構造を保ちながら安定的に利益を創出しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 5,284億円 | 5,450億円 |
| 売上総利益 | 613億円 | 650億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.6% | 11.9% |
| 営業利益 | 158億円 | 167億円 |
| 営業利益率(%) | 3.0% | 3.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が155億円(構成比32%)、福利厚生費が49億円(同10%)、支払手数料が43億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の住設・管材・空調セグメントや建築・エクステリアセグメントが売上を大きく牽引し、全社の増収に寄与しています。一方で、工業機械やエネルギーセグメントなどは市場環境の影響を受けて売上がやや減少しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 産業機器 | 778億円 | 777億円 |
| 工業機械 | 1,074億円 | 1,054億円 |
| 住設・管材・空調 | 2,097億円 | 2,235億円 |
| 建築・エクステリア | 573億円 | 638億円 |
| 建設機械 | 369億円 | 371億円 |
| エネルギー | 186億円 | 175億円 |
| その他 | 207億円 | 200億円 |
| 連結(合計) | 5,284億円 | 5,450億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で得た資金を元に借入金の返済を進めつつ、投資活動も手元資金の範囲内で賄っている、健全なキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 160億円 | 196億円 |
| 投資CF | -100億円 | -64億円 |
| 財務CF | -48億円 | -91億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.5%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「誠実と信用」「進取と創造」「人間尊重」の3つを企業理念として掲げています。地球環境との調和を基軸とし、双利共生の環境を重視した企業活動を通じて豊かな社会づくりに貢献することを目指すとともに、イノベーションを志向する先進企業集団の形成を目標としています。
■(2) 企業文化
創業以来360年以上にわたって培われてきた「良品奉仕」の精神を土台としています。人的資本への投資を重視し、多様な視点をイノベーションの源泉とする風土があります。社員の自己効力感と組織効力感を高め、自律的な挑戦が連鎖する「攻めの風土」の確立に向けて、人間尊重の経営を実践しています。
■(3) 経営計画・目標
2036年の創業370周年を見据えた長期ビジョン「YUASA vision 370」を掲げており、その実現に向けた定量目標を設定しています。
* 経常利益額:300億円以上
* ROIC:10%以上
* 海外売上高:1,000億円以上
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画「Reborn 2031」に基づき、事業基盤、人財基盤、経営基盤の3つの強化を推進します。環境貢献型製品や再生可能エネルギー、資源循環ビジネスなど、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーに資する領域を注力分野としています。また、AIやデジタル技術の活用を含めた次世代の経営基盤構築を進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は社員一人ひとりの創造力と経験こそが持続的成長の原動力であるとし、人財を「投資して価値を高めていく大切な財産」と位置づけています。働きがいの追求や自律的なキャリア形成を支援し、戦略的な人財配置、評価制度の刷新、柔軟な働き方支援などの人事制度改革を通じて、多様な人材が活躍できる環境を整備しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.3歳 | 11.4年 | 8,391,849円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.2% |
| 男性育児休業取得率 | 75.7% |
| 男女賃金差異(全従業員) | 57.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 58.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 44.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性総合職比率(7.1%)、有給休暇取得率(70.5%)、平均労働時間(1,876時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 景気変動リスク
同社の事業は産業設備関連投資や新設住宅着工戸数などの建設投資の動向と密接な関連性を持っています。新領域や海外市場の拡大に注力していますが、予想外の経済動向や市場環境の変動が発生した場合には、同社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) コンプライアンスリスク
同社は広範な事業領域で活動しており、会社法、税法、独占禁止法、各種業界法など多岐にわたる法令や規制が関係しています。倫理・コンプライアンス委員会を設置してグループ全体の指導を徹底していますが、関係する法規制の大幅な変更や予期せぬ解釈の適用が事業活動に影響を与えるリスクがあります。
■(3) 情報システム・情報セキュリティに関するリスク
同社グループは業務効率化のために情報システムを構築し、セキュリティ運用細則を定めていますが、外部からの不正アクセスやウイルス侵入による情報漏洩、自然災害によるシステムダウンのリスクを完全に排除することはできず、業務効率の低下や経営成績への悪影響が生じる可能性があります。
■(4) カントリーリスク
同社グループは海外における取引や事業活動を行っています。対象となる国や地域での政策変更、政治的・経済的な環境変化により、債権や投融資の回収が困難になるリスクがあります。特定の地域における地政学リスクの増大や資源価格の高騰などが、同社の事業継続に影響を与える可能性があります。



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