三共生興 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三共生興 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所 スタンダード市場に上場する同社は、ファッション関連事業、繊維関連事業、不動産関連事業を展開しています。「DAKS」「LEONARD」等の海外ブランドビジネスとOEM事業が主力です。当連結会計年度の業績は、売上高226億円(前期比6.2%増)、経常利益26億円(同21.4%減)の増収減益でした。


※本記事は、三共生興株式会社 の有価証券報告書(第88期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三共生興ってどんな会社?


英国「DAKS」や仏国「LEONARD」などの海外有名ブランドを保有・展開するファッション企業であり、OEM事業や不動産事業も手掛けています。

(1) 会社概要


同社は1920年に横浜で三木商店として創業し、1944年に三共生興へ商号変更しました。1968年に東京・大阪両証券取引所市場第一部に指定され、長らくファッション業界で事業を展開しています。1991年には英国のDAKS SIMPSON GROUP PLCを買収し、2022年には仏国のLEONARD FASHION SASを子会社化するなど、海外ブランドの保有・育成に注力しています。

同社の従業員数は連結251名、単体49名です。筆頭株主は奨学財団で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には外国法人が名を連ねており、創業家に関連する財団や機関投資家が主な株主構成となっています。

氏名 持株比率
公益財団法人三木瀧蔵奨学財団 20.09%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 8.48%
NORTHERN TRUST CO.(AVFC) RE IEDP AIF CLIENTS NON TREATY ACCOUNT 6.46%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名(南部真知子氏、高槻史氏)の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長CEOは井ノ上明氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
井ノ上 明 取締役社長CEO(代表取締役) 1986年同社入社。香港カンパニープレジデントなどを経て2020年社長COO就任。2022年より現職。横浜テキスタイル倶楽部社長などを兼任。
宮 澤 哲 次 常務取締役 1994年同社入社。三共生興アパレルファッション社長などを経て2025年4月より現職。繊維部門を担当。
日 野 尚 彦 取締役 1997年同社入社。財務経理部門を歴任し、2023年より現職。本社ホールディングス部門経営戦略室を担当。
西 祐 一 取締役 1998年同社入社。香港ディビジョンやDAKS・ライセンスグループなどを担当し、2023年より現職。LEONARD FASHION SAS CEOを兼任。


社外取締役は、南部真知子(神戸クルーザー会長)、服部一史(元電通関西支社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ファッション関連事業」「繊維関連事業」および「不動産関連事業」を展開しています。

(1) ファッション関連事業


「DAKS」「LEONARD」といった欧州高級ファッションブランドの製品について、企画、生産、販売を行っています。また、海外ブランド商品の輸入販売およびライセンスビジネスも手掛けており、国内だけでなく、香港、台湾、中国などのアジア市場や、ブランド本国である英国、仏国などグローバルに展開しています。

主な収益源は、自社製品の販売代金およびライセンス契約に基づく商標使用料(ロイヤルティ)です。運営は、親会社である三共生興のほか、三共生興ファッションサービス、北陸三共生興、海外子会社のDAKS SIMPSON LIMITED、LEONARD FASHION SASなどが担っています。

(2) 繊維関連事業


繊維衣料製品のOEM(相手先ブランドによる生産)事業を中心とした繊維事業全般を行っています。原料の調達から企画、生産、販売に至るまでトータルで手掛け、アパレルメーカー等の顧客ニーズに対応した製品を提供しています。近年では東南アジアでの生産背景整備を強化しています。

収益は、アパレルメーカー等の取引先に対する製品販売代金から得ています。運営は主に三共生興アパレルファッションが担ってきましたが、同社は2025年4月1日付で親会社である三共生興に吸収合併されました。また、2024年7月に子会社化した株式会社Twelveも事業を行っています。

(3) 不動産関連事業


同社グループが所有する不動産の有効活用を図る事業です。東京、大阪、横浜、神戸などの主要都市において、オフィスビル、貸ホール、貸ビル、ビジネスホテル、賃貸マンションなどを展開しています。また、ビルメンテナンス事業や内装工事事業も行っています。

収益源は、テナントからの賃貸料、ホテル運営会社からの賃料、およびビルメンテナンスや内装工事の請負代金です。運営は、三共生興、株式会社サン・レッツ、北陸三共生興、株式会社横浜テキスタイル倶楽部が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は2022年3月期を底に回復傾向にあり、直近では226億円まで伸長しています。利益面では、経常利益率が10%台半ばで推移していましたが、当期は11.7%とやや低下しました。当期利益は安定して20億円台を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 172億円 169億円 195億円 213億円 226億円
経常利益 27億円 23億円 29億円 34億円 26億円
利益率(%) 15.8% 13.9% 15.0% 15.8% 11.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 19億円 12億円 10億円 22億円 23億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高が増加した一方で、売上総利益率はほぼ横ばいです。営業利益率は前年の11.6%から7.8%へ低下しており、販管費の増加が利益を圧迫しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 213億円 226億円
売上総利益 99億円 99億円
売上総利益率(%) 46.3% 43.7%
営業利益 25億円 18億円
営業利益率(%) 11.6% 7.8%


販売費及び一般管理費のうち、販売スタッフ費等が18億円(構成比22%)、従業員給料及び手当が13億円(同15%)を占めています。売上原価は売上高の56%を占めています。

(3) セグメント収益


当期は、繊維関連事業と不動産関連事業が増収となりました。特に繊維関連事業は売上が13.0%増加しましたが、利益率は低下傾向です。ファッション関連事業は減収減益となり、利益率も大きく低下しました。不動産関連事業は安定して高い利益率を維持し、増益に貢献しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ファッション関連事業 104億円 103億円 20億円 13億円 12.2%
繊維関連事業 87億円 99億円 4億円 4億円 4.4%
不動産関連事業 22億円 25億円 7億円 8億円 32.4%
その他 - - - - -%
調整額 - - -7億円 -7億円 -%
連結(合計) 213億円 226億円 25億円 18億円 7.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは「健全型」です。本業の営業活動で得た資金の範囲内で投資を行い、同時に借入金の返済や株主還元を進めています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 32億円 11億円
投資CF -59億円 -8億円
財務CF -4億円 -31億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人の企業である」「挑戦の企業である」「共存共栄の企業である」「社会的責任の企業である」を企業理念としています。また、生活文化提案企業として、人々の生活の質の向上に寄与し、豊かな夢のある社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


これまでの株主・顧客・社員の三者共生の基本方針「共生トライアングル」を発展させ、社会との共生を図る経営方針「共生NEXT100」を定めています。グループを取り巻く社会のあらゆる課題に取り組むべく、長期的視点でSDGs経営を推進し、持続可能な世界の実現を目指す姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2025年3月期を初年度とする3ヶ年の第2次中期経営計画「CHALLENGE NEXT 100」を策定しています。最終年度である2027年3月期に向け、以下の数値目標を掲げています。

* 連結売上高CAGR(年平均成長率):5.0%
* 連結営業利益率:11%
* 連結経常利益率:14%
* ROE(自己資本利益率):6.5%
* 連結売上高:250億円
* 連結営業利益:28億円
* 連結経常利益:35億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、「DAKS」「LEONARD」の2つの欧州高級ファッションブランドと、アジアでの強固な販売ネットワーク、多様な人材という強みに財務基盤を融合させ、事業ポートフォリオの強化を図ります。基本戦略として、「グローバルなブランドビジネスの拡大」「OEMビジネスモデルの変革」「積極的な成長投資」の3つを掲げ、着実な成長とイノベーションの創出を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人の企業である」という理念のもと、人を最も重要な経営資源と位置付けています。性別や国籍等を問わない公平公正な採用を行い、次世代のプロフェッショナル人材の育成を推進しています。グローバル人材育成のための海外登用やリスキリング支援、デジタル人材育成研修などを通じ、社員一人一人の付加価値向上と、質の高い少数精鋭集団の形成を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 35.8歳 8.6年 6,176,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(61.4%)、女性管理職比率(27.3%)、外国人比率(22.7%)などです(いずれもグループ計)。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ファッショントレンドの変動や消費者の嗜好の変化などによる影響


主要事業であるファッションおよび繊維関連事業は、衣料品を中心としたファッション性の高い商品を取り扱っています。主なターゲットはファッション動向に敏感な層であり、競合も激しいため、トレンドや消費者の嗜好が短期的に変化した場合、業績に影響を受ける可能性があります。

(2) 気候変動、自然災害による影響


取り扱っている衣料品等は気候変動の影響を受けやすい商品です。冷夏や暖冬といった天候不順、または風水害や震災などの自然災害が発生した場合、商品の販売動向や生産体制に支障をきたし、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) ライセンスブランド契約等の状況による影響


事業の主軸は海外有名ブランドの独占輸入やライセンス契約に基づくビジネスです。契約更新の成否や条件変更、ブランド自体の販売動向が業績を左右します。特に主力ブランドである「DAKS」への依存度が高いため、同ブランドの販売成否が業績に大きな影響を与える可能性があります。

(4) 取引先の信用リスクによる影響


国内外の取引先に対して売掛債権等を有しており、信用リスク管理を行っています。しかし、特定の取引先の信用状態が悪化し、債務履行に問題が生じた場合、貸倒れ等によって業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。