神栄 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

神栄 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場し、冷凍食品等の販売を行う食品関連を主力に、物資関連、電子関連、事業開発関連の各事業を展開する企業です。直近の業績は、食品分野での販売伸長などが牽引し、全セグメントで増収を達成。売上高、経常利益ともに前年を上回り、増収増益の堅調なトレンドを維持しています。


※本記事は、神栄株式会社の有価証券報告書(第158期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 神栄ってどんな会社?


冷凍食品を主力とする食品関連事業を中心に、物資や電子関連など幅広い事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1887年5月に生糸問屋として有限責任神栄会社を設立し、1949年5月に上場しました。その後、1966年に神栄に社名変更し、2010年代にかけて食品・電子・物資等の各事業において子会社設立や再編を推進。2021年にはメディパルホールディングスとの間で資本業務提携を締結し、事業基盤の強化を図っています。

従業員数は連結で468名、単体で160名です。筆頭株主は事業会社であるメディパルホールディングスで、同社とは資本業務提携を結んでいます。第2位および第3位には金融機関である三井住友銀行と三菱UFJ銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
メディパルホールディングス 5.32%
三井住友銀行 4.79%
三菱UFJ銀行 4.79%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役は赤澤秀朗氏と中川太郎氏が務めており、社外取締役の比率は44.4%となっています。

氏名 役職 主な経歴
赤澤秀朗 代表取締役取締役社長社長執行役員事業部門統括 1977年同社入社。米国法人社長や企画管理本部長、事業部門統括などを歴任し、2020年より現職。
中川太郎 代表取締役専務執行役員食品事業統括電子製造本部長 1986年同社入社。香港支店長や神栄テクノロジー社長、物資本部長などを経て、2026年より現職。
長尾謙一 取締役執行役員企画管理本部長 1990年同社入社。経理・財務部長や経営戦略部長を経て、2023年より現職。
小西則一 取締役執行役員食品事業本部長 1990年同社入社。食品部長や福岡支店長、食品事業本部副本部長などを経て、2026年より現職。


社外取締役は、渋谷一秀(元あいおいニッセイ同和損害保険熊本支店長)、西原健二(西原健二公認会計士事務所代表)、中尾一彦(元神戸土地建物代表取締役会長)、小島幸保(関西学院大学大学院教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食品関連」「物資関連」「電子関連」「事業開発関連」の4つの報告セグメントを展開しています。

食品関連

冷凍野菜・冷凍調理品・冷凍水産加工品・農産物の販売を行っており、医療老健施設などの幅広い業態をはじめとする多様な顧客ニーズに対応した商品を提供しています。
国内では同社が、海外では神栄商事(青島)貿易有限公司が運営を担い、サプライチェーンを活用した安全・安心な食品の販売によって収益を得ています。

物資関連

金属製品・機械機器・建築資材等の販売や防災関連の調査・資機材の販売、不動産業、保険代理店業を行っています。
同社および神栄ホームクリエイト、神栄リビングインダストリーなどが運営主体となり、商品の販売や調査業務等のサービス提供により収益を得ています。

電子関連

各種センサ・計測機器・試験機・電子部品の開発・製造および販売を行っており、産業・物流・民生分野などの顧客に製品を提供しています。
運営は主に同社および神栄テクノロジーが担っており、高付加価値製品の販売を通じて収益を得ています。なお、コンデンサ事業については撤退を決定しています。

事業開発関連

新規事業開発のほか、テレビショッピング等向けのアパレル通販、香港などをターゲットとした日本産食品の海外輸出販売を行っています。
同社が運営の主体となり、衣料品・服飾雑貨や食品などの商品販売による収益を得ています。サステナブルな社会の実現に向けた事業の基盤確立を進めています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は4期前から当期にかけて増加傾向にあり、堅調な成長を示しています。経常利益は一時的な増減があるものの、当期は増収増益を達成しました。利益率も3〜4%台で安定して推移しており、着実な業績拡大がうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 377億円 399億円 402億円 402億円 433億円
経常利益 6億円 13億円 19億円 14億円 17億円
利益率(%) 1.7% 3.4% 4.7% 3.6% 4.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 9億円 16億円 12億円 15億円

(2) 損益計算書


売上高は前期から大きく増加し、それに伴い売上総利益も拡大しています。営業利益率も改善を見せており、本業における収益性が一段と高まっていることがわかります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 402億円 433億円
売上総利益 84億円 89億円
売上総利益率(%) 20.9% 20.6%
営業利益 14億円 16億円
営業利益率(%) 3.4% 3.8%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が19億円(構成比25%)、運賃及び荷造費が14億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の食品関連は販売量の伸長が寄与し、増収増益を牽引しました。物資関連や電子関連も堅調に推移し増益となりましたが、事業開発関連は在庫適正化のための値下げ販売等の影響で損失を計上しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
食品関連 320億円 349億円 19億円 21億円 6.1%
物資関連 38億円 39億円 4億円 5億円 11.8%
電子関連 38億円 39億円 2億円 3億円 7.9%
事業開発関連 6億円 6億円 -0.1億円 -0.6億円 -9.2%
連結(合計) 402億円 433億円 14億円 17億円 4.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益と資産売却によって得た資金で借入の返済を進めている改善型の局面といえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 7億円 12億円
投資CF -0.1億円 7億円
財務CF -10億円 -17億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「新しい価値の創造につとめ豊かな社会づくりに貢献します」という経営理念を掲げています。各事業領域において、人々の生活に関わる分野で社会課題の解決と企業成長の両立を目指し、暮らしを豊かにする安全で安心な製品・商品およびサービスを提供するよう日々努めています。

(2) 企業文化


同社は、従業員が自分自身や環境に影響を及ぼす先見的・変革的な行動を自ら取ることができる「プロアクティブな人材」へと成長し活躍できる環境づくりを重視しています。多様な人材がそれぞれの経験や価値観に基づき能力を最大限に発揮できるよう、働きやすさと仕事のやりがいを実感できる企業風土の醸成に努めています。

(3) 経営計画・目標


2027年3月期(2026年度)までを対象とする中期経営計画「神栄チャレンジプロジェクト2026」を策定しています。利益目標のみならず財務体質強化や資本コストを意識し、客観的な指標を用いた目標達成を目指しています。

* 2027年3月期までの3年間累計連結経常利益:55億円以上
* 2031年3月期(2030年度)連結経常利益:25億円以上維持
* 期末自己資本比率:35%以上
* ROE:15%以上

(4) 成長戦略と重点施策


競争力のある事業ポートフォリオ組成により安定収益を確保し、総資産の効率的運用による自己資本比率向上と資本コストを上回る収益性の維持を目指しています。食品関連ではサプライチェーンの強みを活かし調達・販売ルートの拡充を推進し、電子関連ではより付加価値の高い製品へのシフトを図るなどの重点施策に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人的資本経営の推進と機会付与による人材力拡充や次世代育成・登用による事業承継の基盤づくり」を方針としています。採用・人材育成戦略の推進、企業風土・文化の変革(働きがいの増進)、健康経営の推進を重点課題とし、自律的でプロアクティブな人材の育成と活躍環境の整備を行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.4歳 14.4年 7,633,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.7%
男性育児休業取得率 50.0%
男女の賃金の差異(全労働者) -
男女の賃金の差異(正規雇用労働者) -
男女の賃金の差異(非正規雇用労働者) -


※男女の賃金の差異については、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、男性労働者の育児休業・休暇取得率(100.0%)、1人当たりの年間教育・研修費(39,776円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 訴訟に係るリスク

同社グループは国内外で事業を展開しており、訴訟等の当事者となる可能性があります。米国でのコンデンサ取引に関する集団訴訟については和解に達していますが、米国外で提起されている訴訟等の動向によっては、事業遂行に制限が加えられ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外からの商品・原材料調達リスク

食品関連を中心に、商品や原材料の多くを中国など海外から輸入しています。他地域からの調達ルート開拓により依存リスクの軽減に努めていますが、現地の政治経済情勢の変化や自然災害等により調達が困難となった場合、販売活動や業績に影響を与える可能性があります。

(3) 食品・製品の品質管理リスク

国内外に生産拠点や協力工場を有し、安全・安心のための独自の品質基準を設けて管理を徹底しています。しかし、食品の安全に関する問題や製品の欠陥など、予期せぬ品質問題が発生した場合には、同社グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 金利上昇と資金調達リスク

輸入商品を国内販売する事業割合が高く、支払サイトに比べ受取サイトが長いため運転資金の負担が発生し、有利子負債が比較的多い状態です。市場金利が上昇する局面では支払利息等の調達コストが増加し、金融情勢の変化によっては資金調達に支障が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。