神栄 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

神栄 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する企業で、冷凍食品や農産物を扱う食品関連、建材や雑貨等の物資関連、センサ等の電子関連事業を展開しています。当連結会計年度の業績は、繊維事業縮小の影響等はあったものの、食品や電子関連が伸長し売上高はほぼ横ばいで推移しましたが、為替やコスト増の影響により減益となりました。


※本記事は、神栄株式会社 の有価証券報告書(第157期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 神栄ってどんな会社?


1887年の創業以来、生糸問屋から発展し、現在は食品、物資、電子関連等の多角的な事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1887年に有限責任神栄会社として設立され、1949年に株式を上場しました。戦後は繊維から商事、電機部門へ拡大し、2007年には電子関連事業再編により神栄テクノロジーが発足しました。近年では2021年にメディパルホールディングスと資本業務提携を行い、2024年には繊維関連事業を事業開発関連として再編しています。

2025年3月31日時点で、連結従業員数は463名(単体160名)です。筆頭株主は資本業務提携先である株式会社メディパルホールディングスで、第2位および第3位は同社の主要取引銀行である株式会社三井住友銀行、株式会社三菱UFJ銀行となっています。

氏名 持株比率
メディパルホールディングス 5.34%
三井住友銀行 4.80%
三菱UFJ銀行 4.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は赤澤秀朗氏です。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
赤澤 秀朗 代表取締役取締役社長社長執行役員事業部門統括物資事業本部長 1977年同社入社。米国現地法人社長、神栄マテリアル社長等を経て、2020年4月より現職。
中川 太郎 代表取締役専務執行役員食品事業本部長電子製造本部長 1986年同社入社。香港支店長、神栄テクノロジー社長、物資本部長等を歴任し、2023年6月より現職。
長尾 謙一 取締役執行役員企画管理本部長 1990年同社入社。経理・財務部長、執行役員経営戦略部長等を歴任し、2023年7月より現職。
小西 則一 取締役執行役員食品事業本部副本部長食品部長 1990年同社入社。食品部長、食品事業本部副本部長等を歴任し、2023年6月より現職。
山水 教賢 取締役常勤監査等委員 1987年同社入社。米国現地法人社長、経営戦略部長、食品事業本部長等を歴任し、2022年6月より現職。


社外取締役は、渋谷一秀(元あいおいニッセイ同和損害保険執行役員)、西原健二(公認会計士)、中尾一彦(神戸土地建物代表取締役会長)、小島幸保(弁護士・大学教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食品関連」「物資関連」「電子関連」「事業開発関連」および「その他」事業を展開しています。

食品関連


冷凍野菜、冷凍調理品、冷凍水産加工品、農産物の販売を行っています。特に国内冷凍食品事業においては、医療老健施設向けなどの品質管理要求の高いルートへの販売や、生産から物流管理にわたるサプライチェーンに強みを持ち、多様なニーズに対応した商品を顧客に提供しています。

収益は、主に小売店や外食産業、食品メーカー等の顧客に対する商品販売によって得ています。運営は、国内では同社が、海外では神栄商事(青島)貿易有限公司が行っています。また、Shinyei (Thailand) Co., Ltd.は現在清算中です。

物資関連


金属製品、機械機器、建築資材、建築金物、生活雑貨の販売や、防災関連の調査・資機材の販売を行っています。また、不動産業や保険代理店業も含まれます。アゼルバイジャンでの社会インフラ関連調査や、国内における住宅建設関連部材の供給など、幅広い分野で事業を展開しています。

収益は、建設業者やメーカー、商社等への製品販売代金や、防災関連の業務委託料、不動産賃貸収入等から得ています。運営は、同社のほか、神栄ホームクリエイト、神栄リビングインダストリー、米国法人のShinyei Corp. of Americaが行っています。

電子関連


各種センサ、計測機器、試験機、電子部品の製造および販売を行っています。産業・物流・車載用途向けの高付加価値製品や、粒子計測機器、湿度センサ、落下・衝撃試験機、コンデンサなどを取り扱っています。

収益は、電子機器メーカーや自動車関連企業等の顧客に対する製品販売により得ています。運営は、国内では同社、神栄テクノロジー、神栄キャパシタが、海外ではマレーシアのShinyei Kaisha Electronics(M)SDN.BHD.が行っています。

事業開発関連


新規事業開発、衣料品・服飾雑貨の通信販売、食品の輸出販売を行っています。従来の繊維関連事業を再編し、社会課題解決やサステナブルな社会の実現を目指した新たなビジネスモデルの開発に加え、アパレル通販事業の規模拡大や日本産食品の海外展開に取り組んでいます。

収益は、通信販売における消費者からの商品代金や、海外顧客への食品輸出販売代金等から得ています。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は400億円前後で推移しており、安定感があります。利益面では、2024年3月期に利益率が向上し最高益水準となりましたが、当期は減益となりました。全体としては黒字基調を維持しており、自己資本比率も改善傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 373億円 377億円 399億円 402億円 402億円
経常利益 7億円 6億円 13億円 19億円 14億円
利益率(%) 1.8% 1.7% 3.4% 4.7% 3.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 5億円 9億円 16億円 12億円

(2) 損益計算書


直近2期間の傾向として、売上高はほぼ横ばいでしたが、売上原価率の上昇等により売上総利益が減少し、営業利益率は低下しました。販管費も若干増加しており、利益を圧迫する要因となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 402億円 402億円
売上総利益 86億円 84億円
売上総利益率(%) 21.4% 20.9%
営業利益 18億円 14億円
営業利益率(%) 4.5% 3.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が18億円(構成比26%)、運賃及び荷造費が13億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


食品関連は販売量が増加し増収となりましたが、円安による仕入コスト増や物流費高騰により減益でした。物資関連は一部取扱いの減少や新規案件の遅れにより減収減益となりました。電子関連は計測機器等が好調で増収増益でした。事業開発関連は再編や一部撤退により減収となりましたが、赤字幅は縮小しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
食品関連 317億円 320億円 21億円 19億円 5.9%
物資関連 42億円 38億円 6億円 4億円 11.5%
電子関連 37億円 38億円 2億円 2億円 6.5%
事業開発関連 7億円 6億円 -1億円 -0億円 -0.9%
連結(合計) 402億円 402億円 19億円 14億円 3.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

神栄のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、棚卸資産の増加があったものの、利益や減価償却費の計上により収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の売却収入があった一方で、取得による支出もあり、結果として支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い、自己株式の取得、借入金の返済などにより支出となりました。これらの結果、現金及び現金同等物は減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 13億円 7億円
投資CF -1億円 -0億円
財務CF -10億円 -10億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「新しい価値の創造につとめ豊かな社会づくりに貢献します」という経営理念を掲げています。この理念の下、人々の生活に関わる事業分野において、社会課題の解決と企業成長の両立を目指し、暮らしを豊かにする安全で安心な製品・商品およびサービスを提供することを使命としています。

(2) 企業文化


同社グループは、「神栄グループサステナビリティ基本方針」において、倫理憲章の遵守とグローバルなネットワークの活用を重視しています。また、社員が自ら先見的・変革的な行動を取る「プロアクティブな人材」への成長を促し、働きがいのある職場環境の整備や健康経営を推進するなど、人と組織の活力を高める風土づくりに取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2025年3月期から2027年3月期までの中期経営計画「神栄チャレンジプロジェクト2026」を推進しています。最終年度には以下の数値目標の達成を目指しています。

* 連結経常利益:3年間累計55億円以上
* ROE:15%以上
* 自己資本比率:35%以上
* 配当性向:30%程度

(4) 成長戦略と重点施策


「神栄チャレンジプロジェクト2026」では、各セグメントでの収益基盤強化に取り組んでいます。食品関連では国内冷凍食品事業の強化、物資関連では海外インフラ調査や日本製品輸出の拡大、電子関連では高付加価値製品の開発やDX対応を進めます。また、事業開発関連では新規事業開発やアパレル通販の拡大を図り、競争力のある事業ポートフォリオを構築します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


中期経営計画において、「人的資本経営の推進」を掲げ、採用戦略・人材育成、企業風土の変革、健康経営を重点課題としています。社員が「働きやすさ」と「やりがい」を実感できる環境づくりを進めるとともに、階層別研修や選択型研修、自己啓発支援などを通じて、自律的なキャリア形成とプロアクティブな人材への成長を促進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.0歳 14.8年 7,423,000円


※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.6%
男性育児休業取得率 40.0%
男女賃金差異(全) -
男女賃金差異(正規) -
男女賃金差異(非正規) -


※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、1人当たりの年間教育・研修費(55,045円)、男性労働者の育児休業・休暇取得率(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国際情勢およびカントリーリスク


同社グループは中国、東南アジア、米国等で事業を展開しており、これらの地域での戦争、紛争、地政学リスクの増大、テロ、社会的混乱等が事業に影響を与える可能性があります。特に米国の通商政策や中国の景気動向等は、原材料調達や物流、製品販売に影響を及ぼし、業績に悪影響を与えるリスクがあります。

(2) 商品および原材料の調達リスク


食品関連事業において、商品や原材料の多くを中国から輸入しています。調達ルートの分散化を進めていますが、中国の政治・経済情勢の変化、法改正、自然災害や感染症の流行などにより調達が困難になった場合、販売活動に支障をきたし、財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) 取扱商品の品質リスク


国内外に生産拠点や協力工場を持ち、厳格な品質基準で管理を行っていますが、食品の安全問題など予期せぬ品質トラブルが発生する可能性があります。万一、大規模なリコールや賠償責任が生じた場合、社会的信用の低下や対応費用により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 情報システム障害およびサイバー攻撃リスク


事業活動において情報システムの重要性が高まる中、災害やサイバー攻撃などによりシステム障害が発生した場合、業務停止や機密情報の漏洩などの問題が生じる可能性があります。これにより事業継続が困難になったり、社会的信用を失墜したりすることで、経営成績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。