日産東京販売ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日産東京販売ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する日産東京販売ホールディングスは、新車や中古車の販売、自動車整備などの自動車関連事業を主軸に、不動産事業も展開する企業です。直近の業績トレンドとしては、新車及び中古車販売台数の減少などを背景に、前年と比較して減収減益となる厳しい経営環境となっています。


※本記事は、日産東京販売ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第114期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日産東京販売ホールディングスってどんな会社?


自動車関連事業を主軸に、新車・中古車販売や自動車整備、さらには不動産事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1942年に東京府自動車配給として設立され、1957年に上場を果たしました。2004年に持株会社体制へ移行し、2011年に現在の日産東京販売ホールディングスへ商号を変更しました。2021年には傘下の販売会社3社を統合して日産東京販売を設立し、ディーラー事業を大幅に拡大しています。

同社グループは、連結で2,589名、単体で53名の従業員を擁しています。筆頭株主は日産自動車の子会社である日産ネットワークホールディングスで、その他の上位株主には海外の機関投資家やファンドなどが名を連ねており、自動車メーカーとの強固な資本関係を基盤に事業を展開しています。

氏名 持株比率
日産ネットワークホールディングス 38.02%
NIPPON ACTIVE VALUE FUND PLC(常任代理人 香港上海銀行東京支店) 4.14%
MORGAN STANLEY &CO. INTERNATIONAL PLC(常任代理人 モルガン・スタンレーMUFG証券) 3.54%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は菊池毅彦氏が務めており、取締役7名のうち3名を社外取締役として選任しています。

氏名 役職 主な経歴
菊池毅彦 代表取締役社長 日産自動車に入社後、韓国日産代表取締役社長、タイムズモビリティネットワークス商品企画部長などを経て、2026年より現職。
竹林彰 取締役会長 日産自動車にて国内M&S業務部長などを歴任後、中央日産代表取締役社長を経て、日産東京販売代表取締役社長を務め、2026年より現職。
米澤領一 取締役 東京日産自動車販売に入社後、同社経理部長や執行役員を務め、2017年より現職。日産東京販売の執行役員も歴任。
髙濵圭裕 取締役 日産自動車に入社し、インドネシア日産自動車会社などを経て日産プリンス福島販売代表取締役社長を務め、2025年より現職。


社外取締役は、遠藤健(元損保ジャパン日本興亜保険サービス代表取締役社長)、長谷川直哉(法政大学人間環境学部人間環境学科教授)、小暮恵理子(元電通テック執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「自動車関連事業」の単一セグメントおよび「その他」の事業を展開しています。

自動車関連事業


新車・中古車および部用品の販売、自動車整備等のサービスを提供しています。顧客は自動車の購入やメンテナンスを必要とする個人および法人であり、カーライフのワンストップサービスを提供しています。

収益は、顧客からの車両代金や整備・点検等のサービス料金から得ています。事業の運営は、主に日産東京販売が新車や中古車の販売と自動車整備を担い、エヌティオートサービスと車検館が車体整備や車検整備などを行っています。

その他(不動産事業)


不動産の賃貸を行っており、その一部は関係会社にも貸与しています。地域社会やグループ内の企業に対して、安定した事業基盤となる不動産設備やオフィス環境を提供しています。

収益は、不動産の借り手から毎月受け取る賃貸収入(家賃)から得ています。この不動産事業の運営は、親会社である日産東京販売ホールディングス自身が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は一時期増加傾向にありましたが、直近では新車および中古車の販売台数減少などの影響を受け減収となっています。利益面でも、過去最高益を記録した時期を経て、直近は利益率の低下とともに減益傾向にあり、業績はやや伸び悩んでいる状況です。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1384億円 1377億円 1490億円 1416億円 1290億円
経常利益 42億円 61億円 84億円 74億円 48億円
利益率(%) 3.0% 4.4% 5.6% 5.2% 3.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 12億円 19億円 41億円 59億円 42億円

(2) 損益計算書


売上高は前期から減少しており、それに伴い売上総利益も縮小しています。売上総利益率はほぼ横ばいを維持しているものの、販売費及び一般管理費の負担を吸収しきれず、営業利益は前期比で大きく減少し、営業利益率も低下する結果となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1416億円 1290億円
売上総利益 354億円 322億円
売上総利益率(%) 25.0% 24.9%
営業利益 74億円 48億円
営業利益率(%) 5.2% 3.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が89億円(構成比32.3%)、賃借料及び設備費が53億円(同19.2%)、減価償却費が31億円(同11.2%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は自動車関連事業の単一セグメントですが、事業ごとの売上構成を見ると、主力の新車販売および中古車販売の売上が落ち込んでいる一方で、整備事業の売上は前期を上回って推移しており、サービス部門が業績を下支えしていることが分かります。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
新車 776億円 656億円
中古車 235億円 220億円
整備 317億円 329億円
その他 83億円 81億円
その他の収益 5億円 4億円
連結(合計) 1416億円 1290億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」の状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 49億円 64億円
投資CF -126億円 -87億円
財務CF 31億円 12億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「モビリティの進化を加速させ、新しい時代を切りひらく 笑顔あふれる未来のために、わたしたちは走り続ける」を企業理念に掲げています。モビリティとその関連商品・サービスの提供を通してお客様に快適な暮らしをお届けすると同時に、地域・社会への積極的な貢献によって地域の人々と共に繁栄することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、事業活動を支える最も重要な財産は「人」であると考え、社員一人ひとりの成長支援や働きやすい職場環境の整備に力を入れています。多様な価値観や個性を尊重しながら、社員が主体的に挑戦し活躍できる企業風土の醸成を重視し、コンプライアンスの徹底を経営の根幹として誠実かつ公正な企業活動を行っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、持続的かつ安定的な収益構造の確立を目指し、2026年度までの4カ年の中期経営計画を推進しています。本計画では、事業ポートフォリオの変化に対応しながら着実に取り組みを進め、2027年度から始まる次期中期経営計画につなげることを目標としており、安定した配当を行うべく配当方針をDOE(株主資本配当率)3%以上に設定しています。

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画において、「電動化リーダー」「安全・運転支援技術」「モビリティ事業」の3つを重点成長戦略として掲げています。過去にない300億円規模の積極的な投資戦略を進め、店舗ネットワークの強固化を図ることで、環境性能や安全技術に優れた最新車両の普及を促進し、持続的な成長と収益力の強化を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人的資本の充実」を重要な経営課題と位置づけ、組織の持続的成長を実現するため、自ら考え行動できる人材の育成に取り組んでいます。多様な人材が長期的に活躍できるよう、ワークライフバランスを重視した職場環境の整備や、教育体系の強化、エンゲージメントの向上など、多角的・包括的な施策を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 52.4歳 21.7年 7,662,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.4%
男性育児休業取得率 58.6%
男女賃金差異(全労働者) 75.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 75.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 61.7%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、日産東京販売における外国籍社員数(65名)、同社における女性店長数(5名)、入社5年以内の退職者数(44名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内景気と自動車需要の変動


日本国内、特に東京都内を中心とした自動車販売が主軸であるため、国内の景気動向や少子高齢化による運転免許取得人口の減少、若年層の車離れなどにより将来的な需要が減少した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 法令改正や異業種参入による競争激化


自動車整備事業は道路運送車両法に準拠しており、車検期間の延長や点検項目の減少などの法改正があった場合、収益に影響が生じるリスクがあります。また、規制緩和による異業種からの参入による競争激化も業績に影響を与える可能性があります。

(3) 特定メーカーの生産・供給への依存


新車販売において日産自動車など特定の取引先と特約販売契約を結んでおり、新車の投入サイクルはメーカー主導となっています。そのため、メーカー側での生産状況の変動や販売停止などが発生した場合、業績に直接的な影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。