※本記事は、日産東京販売ホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第113期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日産東京販売ホールディングスってどんな会社?
日産車の新車・中古車販売や整備を行う自動車関連事業を中核とし、不動産賃貸事業も展開する持株会社です。
■(1) 会社概要
1942年11月、東京府自動車配給として設立され、1946年に東京日産自動車販売へ商号変更しました。1961年10月に東証一部へ上場し、2004年4月の持株会社体制への移行を経て東日カーライフグループとなりました。その後、2011年4月に日産プリンス東京販売などを子会社化し、現在の商号に変更しています。
連結従業員数は2,626名、単体では52名です。筆頭株主は日産自動車の子会社で不動産賃貸等を行う日産ネットワークホールディングスです。第2位は証券代行業務を行うINTERACTIVE BROKERS LLC、第3位はNIPPON ACTIVE VALUE FUND PLCです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日産ネットワークホールディングス | 38.02% |
| INTERACTIVE BROKERS LLC | 4.36% |
| NIPPON ACTIVE VALUE FUND PLC | 3.71% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名、計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は竹林 彰氏です。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 竹林 彰 | 代表取締役社長 | 1982年4月日産自動車入社。同社日本営業本部副本部長等を経て、2019年4月同社副社長執行役員、同年6月より現職。 |
| 菊池 毅彦 | 取締役 | 1991年4月日産自動車入社。韓国日産代表取締役社長等を経て、2021年4月同社執行役員。2025年6月より現職。 |
| 米澤 領一 | 取締役 | 1984年4月東京日産自動車販売(現同社)入社。同社経理部長、執行役員を経て、2017年6月より現職。 |
| 髙濵 圭裕 | 取締役 | 2002年4月日産自動車入社。日産プリンス福島販売代表取締役社長等を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、遠藤 健(元損害保険ジャパン専務執行役員)、長谷川 直哉(法政大学人間環境学部教授)、小暮 恵理子(元電通テック執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「自動車関連事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 自動車関連事業
日産自動車および同社グループ会社より仕入れた新車・中古車、部用品の販売を行っています。また、自動車の車体整備および車検整備などのアフターサービスも提供しており、個人および法人顧客を対象としています。
収益は、顧客への車両販売代金や整備・点検に伴う技術料・部品代などから得ています。運営は、主に子会社である日産東京販売、エヌティオートサービス、車検館が行っています。
■(2) その他(不動産事業)
保有する不動産の賃貸事業を行っています。グループ内の関係会社への賃貸のほか、外部への賃貸も含まれると考えられます。
収益は、賃借人からの賃貸料収入です。運営は主に親会社である日産東京販売ホールディングスが行っており、一部は関係会社に貸与しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高は1,400億円前後で推移しています。2024年3月期には売上高が増加しましたが、2025年3月期は減少に転じました。利益面では、2024年3月期まで経常利益が増加傾向にありましたが、2025年3月期は減益となりました。当期純利益も前期の特別利益計上の反動等により減少しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,404億円 | 1,384億円 | 1,377億円 | 1,490億円 | 1,416億円 |
| 経常利益 | 31億円 | 42億円 | 61億円 | 84億円 | 74億円 |
| 利益率(%) | 2.2% | 3.0% | 4.4% | 5.6% | 5.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 16億円 | 21億円 | 33億円 | 73億円 | 43億円 |
■(2) 損益計算書
2024年3月期と2025年3月期を比較すると、売上高は減少し、売上総利益も減少しました。売上総利益率は前期からわずかに低下しています。営業利益も減少しており、営業利益率も低下しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,490億円 | 1,416億円 |
| 売上総利益 | 369億円 | 354億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.8% | 25.0% |
| 営業利益 | 87億円 | 74億円 |
| 営業利益率(%) | 5.8% | 5.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が92億円(構成比32.9%)、賃借料及び設備費が53億円(同19.0%)を占めています。
■(3) セグメント収益
当期より「自動車関連事業」の単一セグメントに変更されたため、セグメント別の比較は省略します。なお、前期(2024年3月期)において「自動車関連事業」は売上高の大部分を占めていました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 自動車関連事業 | 1,450億円 | - |
| 情報システム関連事業 | 36億円 | - |
| 連結(合計) | 1,490億円 | 1,416億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 112億円 | 49億円 |
| 投資CF | -45億円 | -126億円 |
| 財務CF | -34億円 | 31億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、サステナビリティ基本方針として、モビリティおよび関連の商品・サービスの提供を通じて顧客に快適な暮らしを届け、地域・社会への積極的な貢献により共に繁栄することを目指しています。また、法令遵守と高い透明性を持った事業活動のもと、全てのステークホルダーを尊重し、持続可能な社会の発展を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、顧客を基盤とする安定したビジネスを土台に、ベストプラクティス(好事例)の推進によりグループ内のシナジーを深化させることを重視しています。また、多様な人材がやりがいを持って働ける環境づくりや、自主・自発的で心理的安全性が確保された組織風土の醸成を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、2023年4月から2026年度までの4カ年の中期経営計画を推進しています。計画前半の現段階において、売上高、営業利益、ROE、配当性向、営業利益率といった財務目標は達成軌道に乗っていると認識しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「電動化リーダー」「安全・運転支援技術」「モビリティ事業」の3つを重点成長戦略として掲げ、これらを推進しています。また、過去にない大規模な投資戦略により持続的な成長を目指しており、店舗ネットワークの再編や設備投資等を積極的に行っています。
* 投資戦略:4カ年で300億円規模を計画(2024年度までに223億円の投資を決定)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、多様な人材がやりがいを持って働ける環境づくりを最重要課題の一つと捉えています。人材への投資や人事制度の改定を進めるとともに、社員のスキルアップ支援や活躍の場の提供に取り組んでいます。また、個人の能力を最大限に発揮できる企業風土の醸成を目指し、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 51.1歳 | 18.8年 | 8,218,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.7% |
| 男性育児休業取得率 | 13.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 73.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 59.5% |
※ 上記数値は連結子会社である日産東京販売の実績です。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(50.0%)、営業職(サービスフロント職を含む)の新卒・中途採用における女性比率(44.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 景気及び需要動向について
同社グループの主な収益源である自動車関連事業は、国内景気や法人・個人の需要動向に大きな影響を受けます。また、少子高齢化による運転免許取得人口の減少や、東京都内における若年層の車離れなどが進行し、将来的に自動車需要が減少した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 法的規制等について
自動車整備事業における車検や法定点検は道路運送車両法に準拠しており、車検期間の延長や点検項目の減少といった法改正が行われた場合、整備事業の収益に影響が出る可能性があります。また、規制緩和による異業種からの参入や、消費税・自動車関連諸税の引き上げなどもリスク要因となります。
■(3) 特定の取引先等について
新車販売事業は日産自動車等との特約販売契約に基づいており、新型車の投入サイクルや商品の供給は同社の方針や状況に依存しています。そのため、供給元の経営戦略や生産状況の変動、または災害や不正行為等による販売停止などが発生した場合、同社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
■(4) 自然災害等の発生に伴う事業中断について
地震や洪水などの大規模な自然災害、または感染症のパンデミック等により、店舗設備の損壊や人的被害が発生し事業が中断した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社グループでは、BCP(事業継続計画)等に基づき対策を講じていますが、リスクを完全に排除できるものではありません。



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