ラサ商事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ラサ商事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。資源・金属素材、産機・建機、環境設備、化成品、プラント工事等を展開する専門商社。当連結会計年度の業績は、売上高266億円で前期比減収となったものの、利益率の高いメンテナンス需要等が寄与し、営業利益25億円、経常利益28億円と増益を確保しました。


※本記事は、ラサ商事株式会社 の有価証券報告書(第123期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ラサ商事ってどんな会社?


ラサ商事は、鉱産物やポンプ等の産業機械、環境設備などを扱う専門商社です。資源・機械・環境・化成品など多角的な事業を展開しています。

(1) 会社概要


1939年にラサ工業の製品販売を目的に設立されました。1958年に現在の主力商品の一つであるワーマンポンプの販売を開始し、1969年にはジルコンサンドの輸入販売代理店契約を締結しました。1989年にはドイツ製高圧ポンプの取り扱いを開始し環境分野へ進出、2022年に東証スタンダード市場へ移行しました。

連結従業員数は258名、単体では215名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行です。第3位は大手生命保険会社となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.06%
日本カストディ銀行(信託口) 6.65%
日本生命保険相互会社 4.47%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は井村周一氏です。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
井 村 周 一 代表取締役社長 1975年同社入社。大阪支店長、常務取締役管理本部長等を経て、2005年代表取締役社長に就任。2018年4月より現職。
青 井 邦 夫 専務取締役物資営業本部長 2008年同社入社。業務部長、取締役物資営業本部長、イズミ代表取締役社長等を経て、2024年6月より現職。
桜 木 和 陽 常務取締役管理本部長 1986年三井信託銀行入行。同社入社後、総務部長、執行役員総務部長等を経て、2024年6月より現職。
倉 持 正 見 取締役機械営業本部長 1992年同社入社。環境営業部長、執行役員機械営業本部副本部長等を経て、2024年6月より現職。
大 内 陽 子 取締役管理本部副本部長 2003年弁護士登録。同社入社後、総務人事企画部担当部長、管理本部付部長等を経て、2024年4月より現職。
川 内 裕 之 取締役物資営業本部副本部長 1997年同社入社。産業機械二部長、執行役員機械営業本部副本部長等を経て、2024年4月より現職。
山 口 浩 取締役 1986年シンワ工業入社。同社営業部長、専務取締役等を経て、2001年4月よりシンテック代表取締役社長。
川尻恵理子 取締役 2003年判事補。検事、判事を経て2015年弁護士登録。ハロー法律事務所入所。2023年6月より現職。
朝 倉 正 取締役(監査等委員) 1992年同社入社。産業機械一部長、機械営業本部副本部長、札幌支店長等を経て、2019年6月より現職。


社外取締役は、山口浩(シンテック代表取締役社長)、川尻恵理子(弁護士・元検事)、永戸正規(元ラサ工業代表取締役専務)、原田彰(元中央信託銀行執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「資源・金属素材関連」「産機・建機関連」「環境設備関連」「化成品関連」「プラント・設備工事関連」および「不動産賃貸関連」事業を展開しています。

(1) 資源・金属素材関連


ジルコンサンドを中心とする鉱産物や、チタン関連素材、アルミナ等の輸出入及び販売を行っています。ジルコンサンドは耐火材やセラミックス製品原料などに、チタン関連素材等は溶接材料や耐火物原料として供給されています。

オーストラリアのアイルカ社と日本における総販売代理店契約を締結しており、商品を安定的に確保・販売することで収益を得ています。主な運営は同社が行っています。

(2) 産機・建機関連


各種スラリー液等に対応する流送機器(ポンプ)や、シールド掘進機、小型建設機械の販売・レンタル・メンテナンス等を行っています。製鉄、精錬、半導体等の幅広い業界に製品を提供しています。

国内外のメーカーと総販売代理店契約を締結し、製品販売やメンテナンスサービスにより収益を得ています。特に主力製品のワーマンポンプは関連会社の大平洋機工株式会社が製造し、同社が販売・メンテナンスを行っています。

(3) 環境設備関連


ドイツ製などの高性能高圧ポンプを輸入し、バイオガス発電や下水汚泥処理等の用途に販売しています。また、独自技術である水砕スラグ製造設備「ラサ・システム」の販売および改修・改造も手掛けています。

製鉄所や環境関連施設に対し、機器の販売やメンテナンス、システムの改修工事を提供することで収益を得ています。主な運営は同社が行っています。

(4) 化成品関連


自動車関連をはじめ、建材、電気、電子分野などの幅広い業界に対し、多種多様な合成樹脂や化学製品を販売しています。

仕入先から調達した合成樹脂・化学製品を顧客企業に販売することで収益を得ています。主な運営は同社が行っています。

(5) プラント・設備工事関連


石油精製、石油化学、ガス、クリーンルーム関連等のプラント及び関連工事に係る設計、施工、メンテナンスを行っています。特に配管工事や動機械仕上工事を得意としています。

プラントや各種工場の設備工事、定期修繕、メンテナンス工事を受注・施工することで収益を得ています。運営は同社および旭テック株式会社が行っています。

(6) 不動産賃貸関連


同社グループが保有する不動産を有効活用し、都市部を中心としたビルや土地の賃貸を行っています。

保有物件をテナントに賃貸することで、賃貸料収入を得ています。運営は同社およびラサ・リアルエステート株式会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は2022年3月期をピークに減少傾向にありますが、利益面では高い水準を維持しています。特に経常利益率は10%前後で推移しており、効率的な経営が行われていることがわかります。当期純利益も安定して確保しており、堅実な収益基盤を有しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 267億円 313億円 297億円 279億円 266億円
経常利益 24億円 28億円 30億円 28億円 28億円
利益率(%) 9.0% 9.0% 10.1% 10.1% 10.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 11億円 18億円 17億円 26億円

(2) 損益計算書


前期と比較して売上高は減少しましたが、売上総利益率は向上しています。これは収益性の高い案件やメンテナンス需要が貢献したことによるものと考えられます。営業利益率も改善しており、減収下でも利益を確保できる体質となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 279億円 266億円
売上総利益 66億円 69億円
売上総利益率(%) 23.7% 25.8%
営業利益 25億円 25億円
営業利益率(%) 8.9% 9.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が13億円(構成比29%)、賞与引当金繰入額が4億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


資源・金属素材関連とプラント・設備工事関連で減収となりましたが、産機・建機関連や不動産賃貸関連は堅調に推移しました。利益面では環境設備関連が増益となった一方、資源・金属素材関連は減益となりました。全体としては減収ながらも営業利益は微増となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
資源・金属素材関連 64億円 55億円
産機・建機関連 103億円 104億円
環境設備関連 19億円 19億円
化成品関連 62億円 62億円
プラント・設備工事関連 28億円 24億円
不動産賃貸関連 2.5億円 2.6億円
その他 - -
調整額 - -
連結(合計) 279億円 266億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 7億円 28億円
投資CF 0.3億円 1億円
財務CF -16億円 -19億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.6%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「世界に通用する一流技術商品と有用な価値ある資源を国内外に販売し、豊かな社会に貢献すること」を企業理念としています。伝統型企業としての実績を基盤に、永続的な発展と社会への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、コーポレート・ガバナンスを機能させるためのリスクマネジメントの徹底とコンプライアンスの強化を重視しています。また、高度な商品知識や技術力を持つ人材の育成に注力し、人的基盤の充実を図る姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


2028年3月期を最終年度とする中期経営計画「“Step Forward”Rasa 2027~成長のステージへ~」を策定しています。社会インフラを支える付加価値創出企業として、以下の数値目標を掲げています。

* 売上高:315億円
* 営業利益:29億円
* 経常利益:31.5億円
* 当期純利益:23億円
* ROE:10%以上
* 売上高営業利益率:9%以上

(4) 成長戦略と重点施策


新規・成長分野への取り組み、既存領域の深耕、事業活動を通じたサステナビリティ経営の推進を重点施策としています。資源関連では新素材の開拓、産機関連では環境対応製品の市場展開やメンテナンスの最適化、環境設備関連では新技術の開発や海外メーカーとの連携強化などを進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「組織と人材の活性化」を掲げ、能力や経験を重視する人物本位の人材登用を進めています。特に女性従業員や管理職の比率向上を目指し、積極的な採用と育成強化に取り組んでいます。また、オンライン営業やリモートワークなど新たな働き方を取り入れ、社内環境の整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.0歳 13.3年 8,381,040円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 71.9%
男女賃金差異(正規雇用) 71.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 47.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用者数(11名)、女性管理職比率(14.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 商品市況の変動について


資源・金属素材関連及び化成品関連において取り扱う商品は、相場変動による商品価格リスクがあります。在庫保有期間の最適化や年間販売量の事前交渉等でリスク軽減を図っていますが、想定以上の相場変動が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替相場の変動について


外貨建てによる販売、仕入については、為替相場の変動リスクを負っています。原則として取引契約成立の都度、為替予約を行うことでリスクを減少させていますが、想定以上の為替変動が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 特定商品の依存について


ジルコンサンドは大半を豪アイルカ社から仕入れており、ワーマンポンプは関連会社の大平洋機工株式会社と総販売代理店契約を締結しています。これら供給元において安定的な確保ができなくなった場合や関係に変更があった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 気候変動によるリスク


炭素税導入等の移行リスクや、事業拠点の被災等の物理的リスクがあります。TCFD提言への賛同を表明し影響評価及び情報開示に取り組んでいますが、気候変動の影響が顕在化した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。