ラサ商事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ラサ商事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ラサ商事は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、資源・金属素材や産機・建機、環境設備などを扱う専門商社事業を展開しています。直近の連結業績では、環境設備関連での大型案件や産機関連の整備需要が寄与し、売上高が266億円から282億円へ増収、経常利益も28億円から32億円へと増益を達成しています。


※本記事は、ラサ商事の有価証券報告書(第124期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ラサ商事ってどんな会社?


同社は専門商社として、資源・金属素材や産業・建設機械、環境設備の販売・メンテナンス事業を展開しています。

■(1) 会社概要


同社は1939年に設立され、1958年に日曹製鋼(現大平洋金属)のポンプの総販売代理店契約を締結し、事業を拡大しました。1969年にはジルコンサンドの輸入販売代理店契約を結び、素材分野での地位を確立しています。その後、2006年に東証二部へ上場し、2014年には旭テックを子会社化してプラント・設備工事分野にも事業領域を広げています。

現在は連結で262名、単体で221名の従業員を抱える体制で事業を推進しています。株主構成を見ると、筆頭株主と第2位は資産管理業務を行う信託銀行となっており、第3位には生命保険会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.67%
日本カストディ銀行(信託口) 5.78%
日本生命保険相互会社 4.51%

■(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は青井邦夫氏が務めています。全取締役12名のうち、社外取締役は4名です。

氏名 役職 主な経歴
井村 周一 代表取締役会長 1975年同社入社。大阪支店長、常務取締役管理本部長を経て、2005年代表取締役社長。2025年より現職。
青井 邦夫 代表取締役社長 2008年同社入社。業務部長、執行役員物資営業本部長、専務取締役などを歴任し、2025年より現職。
川内 裕之 常務取締役物資営業本部長 1997年同社入社。産業機械二部長、取締役物資営業本部副本部長などを経て、2025年より現職。
桜木 和陽 常務取締役管理本部長 三井住友信託銀行を経て2019年同社入社。総務部長、取締役管理本部長などを経て、2024年より現職。
倉持 正見 取締役機械営業本部長 1992年同社入社。環境営業部長、産業機械一部長、執行役員機械営業本部副本部長を経て、2024年より現職。
大内 陽子 取締役管理本部副本部長 弁護士。法律事務所を経て2015年同社入社。総務人事企画部担当部長などを経て、2024年より現職。
早川 一郎 取締役管理本部副本部長 1992年同社入社。札幌支店長などを経て、旭テック代表取締役社長に就任。2025年より現職。
朝倉 正 取締役(監査等委員) 1992年同社入社。大阪支店長、札幌支店長などを経て、2019年より現職。


社外取締役は、山口浩(シンテック代表取締役社長)、川尻恵理子(弁護士)、永戸正規(元ラサ工業代表取締役専務)、龍田俊之(元室町不動産クリエイト会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「資源・金属素材関連」「産機・建機関連」「環境設備関連」「化成品関連」「プラント・設備工事関連」「不動産賃貸関連」の事業を展開しています。

■資源・金属素材関連


ジルコンサンドを中心とする鉱産物やチタン関連素材、アルミナなどの輸出入および販売を行っています。これらの素材は、耐火材、鋳造用部材、ファインセラミックス製品の原料として広い用途で供給されています。

国内外の取引先への素材販売を通じて収益を得ています。オーストラリアのアイルカ社などから商品を安定的に仕入れ、国内各社へ供給するモデルであり、同社が運営を担っています。

■産機・建機関連


産業機械分野では各種流体に対応できる流送機器等の販売やメンテナンスを行い、建設機械分野ではシールド掘進機などの小型建機の販売、レンタル、メンテナンスを行っています。

主に機械の販売、レンタル費用、およびメンテナンスの技術サービス料によって顧客から収益を得ています。同社および大平洋機工などが運営を行っています。

■環境設備関連


ドイツから優れた性能を持つ高圧ポンプ類を輸入し、バイオガス発電や下水汚泥処理向けに販売しています。また、独自の「ラサ・システム」を用いた水砕スラグ製造設備の販売や改修・改造も手がけています。

主に自治体や製鉄所などの顧客に対する設備の販売、ならびに改修やメンテナンス工事による手数料として収益を得ています。本事業は同社が運営を行っています。

■化成品関連


自動車関連をはじめとして、建材、電気、電子分野などの幅広い業界に対して、多種多様な合成樹脂や化学製品の販売を行っています。

国内外の顧客へ向けた合成樹脂や各種化学素材の販売代金によって収益を得るモデルとなっています。本事業は同社が運営を担当しています。

■プラント・設備工事関連


石油精製、石油化学、ガス、地域冷暖房関連など、多種多様な分野のプラントや関連工事に係る設計、施工、およびメンテナンス工事を行っています。

主に定期修繕工事や各種プラントの新設・増改修工事に伴う施工費およびメンテナンス費用によって顧客から収益を得ています。本事業は主に旭テックが運営を担っています。

■不動産賃貸関連


同社グループが保有する付加価値の高い都市部の好条件な物件を中心に、優良なテナントへ向けた賃貸事業を展開し、不動産の有効活用を図っています。

保有するオフィスビル等のテナントから毎月受領する賃料によって安定的な収益を確保するモデルです。主にラサ・リアルエステートが運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

■(1) 業績推移


直近5年間の売上高は260億円から310億円程度の規模で推移しており、経常利益も安定して28億円から32億円の黒字を計上しています。利益率も堅調に維持されており、効率的な事業運営による安定的な収益基盤が構築されていることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 313億円 297億円 279億円 266億円 282億円
経常利益 28億円 30億円 28億円 28億円 32億円
利益率(%) 9.0% 10.1% 10.1% 10.7% 11.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 11億円 18億円 17億円 26億円 20億円

■(2) 損益計算書


売上高および売上総利益が増加しており、収益力の向上が見られます。売上総利益率は25.8%から26.9%へと上昇し、営業利益率も改善しているため、本業における効率的なコストコントロールと付加価値の創出が進んでいると分析できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 266億円 282億円
売上総利益 69億円 76億円
売上総利益率(%) 25.8% 26.9%
営業利益 25億円 30億円
営業利益率(%) 9.5% 10.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が13億円(構成比29%)、賞与引当金繰入額が4億円(同9%)を占めています。

■(3) セグメント収益


多くのセグメントで堅調な売上が維持される中、特に環境設備関連の売上が19億円から31億円へと大幅に伸長しています。一方で産機・建機関連は官庁向けの販売低調などにより減収となりましたが、全体としては増収に寄与しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
資源・金属素材関連 55億円 55億円
産機・建機関連 104億円 100億円
環境設備関連 19億円 31億円
化成品関連 62億円 67億円
プラント・設備工事関連 24億円 26億円
不動産賃貸関連 3億円 4億円
連結(合計) 266億円 282億円

■(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 28億円 21億円
投資CF 1億円 0億円
財務CF -19億円 -22億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.5%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.1%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

■(1) 経営理念


同社グループは、「世界に通用する一流技術商品と有用な価値ある資源を国内外に販売し、豊かな社会に貢献すること」を企業理念として掲げています。伝統型企業としての強みを活かしつつ、新たなコア・コンピタンスを創造・育成し、永続的な発展と更なる飛躍を目指しています。

■(2) 企業文化


コーポレート・ガバナンスを機能させるため、リスクマネジメントの徹底とコンプライアンスの強化を図ることを経営の基本方針としています。また、高度の商品知識や技術力を持つ人材の育成に注力し、自己資本の一層の充実による財務基盤の強化など、堅実かつ着実な企業運営を重視する文化を持っています。

■(3) 経営計画・目標


2028年3月期を最終年度とする3か年の中期経営計画「“Step Forward”Rasa 2027~成長のステージへ~」において、持続的な企業価値の向上に向けた具体的な経営指標を掲げています。

・売上高 315億円
・営業利益 29億円
・経常利益 31.5億円
・親会社株主に帰属する当期純利益 23億円
・ROE(自己資本当期純利益率) 10%以上
・売上高営業利益率 9%以上

■(4) 成長戦略と重点施策


社会インフラを支える付加価値創出企業として、既存事業の安定的成長にとどまらず、新たなステージへの一歩を踏み出し、更なる企業価値の向上に努める方針です。

・新規・成長分野への取り組み
・既存領域の深耕
・事業活動を通じたサステナビリティ経営の推進

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

■(1) 人材戦略・方針


「組織と人材の活性化」を重要課題に掲げ、性別や採用形態を問わず能力・経験を重視する人物本位の人材登用を推進しています。特に女性活躍の機会拡大のため、女性の積極的採用や営業職での育成強化とともに、オンライン営業やリモートワークの導入、仕事と育児の両立支援など、柔軟な働き方の環境整備に注力する方針です。

■(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.4歳 13.1年 8,764,121円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

■(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.4%
男性育児休業取得率 120.0%
男女賃金差異(全従業員) 71.8%
男女賃金差異(正規雇用) 72.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 41.4%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用者数(5名)、役員に占める女性の割合(16.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

■(1) 気候変動によるリスク


炭素税の導入等による調達・エネルギーコストの上昇(移行リスク)や、異常気象に伴う事業拠点の被災、サプライチェーンの寸断(物理的リスク)が想定されています。同社はサステナビリティ委員会を中心にTCFD提言に基づくシナリオ分析を行い、影響の評価と対策に継続して取り組んでいます。

■(2) 情報セキュリティリスク


商品に関する技術情報や顧客の営業情報などを保有しており、外部からのサイバー攻撃(ランサムウェアなど)や自然災害、システム障害によりデータが流出または消失した場合、事業継続が困難となり、同社グループの業績に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

■(3) 特定商品への依存リスク


ジルコンサンドの多くをオーストラリアのアイルカ社から仕入れており、また主力のワーマンポンプは関連会社の大平洋機工と総販売代理店契約を結んでいます。採掘量の減少やこれらの供給元との取引関係に変更が生じた場合、安定供給に支障をきたすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。