#記事タイトル:GSIクレオス転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社GSIクレオス の有価証券報告書(第95期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. GSIクレオスってどんな会社?
繊維と工業製品の2つの事業を柱に、グローバルに展開する事業創造型商社です。
■(1) 会社概要
1931年に株式会社林大作商店として設立され、1952年に東京・大阪へ進出しました。1978年に東証・大証市場第一部へ上場し、2001年に現社名であるGSIクレオスへ商号変更を行いました。2003年の中国現地法人設立など海外展開を進め、2025年には株式会社ソアロンを連結子会社化するなど、事業拡大を続けています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は823名、単体では301名です。大株主の構成は、信託銀行や生命保険会社に加え、主要な取引先である事業会社が名を連ねています。第3位株主の東レは、繊維事業および工業製品事業における重要な販売・仕入先であり、強固な取引関係を維持しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.81% |
| 日本生命保険相互会社 | 3.60% |
| 東レ | 3.23% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名(社外取締役含む)の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表者は代表取締役兼社長執行役員の吉永直明氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 吉永直明 | 代表取締役兼社長執行役員欧米統括兼中国統括兼ナノテクノロジー事業担当 | 1979年入社。米国現地法人社長、工業製品事業部門統括を経て、2017年代表取締役社長に就任。GSI Holding Corporation CEO等を兼務し、2020年より現職。 |
| 中山正輝 | 取締役兼専務執行役員繊維事業部門統括兼大阪支店長 | 1980年入社。テキスタイル第一部長、繊維事業部門統括補佐などを経て、2013年繊維事業部門統括。2014年より大阪支店長を兼務し、2020年より現職。 |
| 西村裕樹 | 取締役兼専務執行役員工業製品事業部門統括兼工業製品事業戦略室長 | 2001年入社。プラスチック販売部長、工業製品事業戦略室長を経て、2018年工業製品事業部門統括。2024年より現職。 |
| 小野国広 | 取締役兼常務執行役員管理部門統括兼IR担当 | 1992年入社。経営企画部長、執行役員管理部門副統括を経て、2024年より現職。 |
| 大西文博 | 取締役監査等委員 | 1983年入社。経営企画部長、取締役執行役員、管理部門統括などを歴任。社長補佐を経て2024年6月より現職。 |
社外取締役は、服部和德(元グンゼ代表取締役常務)、千葉櫻えりか(元ダウケミカル日本知財部長)、早野貴文(セントラル法律事務所弁護士)、八田圭子(有限会社八光代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ファイバー」「アウター」「インナー」「セミコンダクター」「ケミカル」「ホビー&ライフ」「マシナリー&イクイップメント」の7つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) ファイバー
原糸や繊維原料の国内外での販売および輸出入を行っています。また、メディカル繊維原料や製品の製造加工、販売も手掛けています。アパレルメーカーや繊維製品メーカーなどが主な顧客です。
収益は、主に顧客への繊維原料販売による代金および加工賃から得ています。運営は、GSIクレオスや連結子会社のGSIマルロンテックスが行っています。
■(2) アウター
アパレル製品のOEM・ODM生産、テキスタイル・アパレル製品の卸売りや輸出入を行っています。また、自社ブランド製品の販売も展開しています。
収益は、アパレルメーカーや小売店への製品販売、および自社ブランド製品の消費者への販売代金です。運営は、GSIクレオスや連結子会社のクレオスアパレル、株式会社SHARE、株式会社ソアロンなどが行っています。
■(3) インナー
インナー製品のOEM・ODM生産、販売、輸出入に加え、インナー用生地の開発・販売を行っています。自社ブランド製品の販売も手掛けています。
収益は、インナーウェアメーカーや小売店への製品・生地販売代金です。運営は、GSIクレオスや連結子会社のいずみ、GSI ABROS、日神工業などが行っています。
■(4) セミコンダクター
最先端半導体製造装置用部材、汎用性半導体部材、半導体製造設備用部材などの輸出入を行っています。半導体デバイスメーカーや製造装置メーカーなどが顧客です。
収益は、顧客への半導体関連部材の販売代金から得ています。運営は、GSIクレオスや海外連結子会社のGSI Creos Technology (China) Co. Ltd.などが担っています。
■(5) ケミカル
塗料原料やその他化学品の輸出入、機能性プラスチック樹脂の輸入、フィルムの国内販売を行っています。また、カーボンナノチューブの開発・製造・販売も手掛けています。
収益は、化学品メーカーや樹脂加工メーカー等への製品販売代金です。運営は、GSIクレオスや海外連結子会社のGSI Creos Brasil Ltdaなどが主に行っています。
■(6) ホビー&ライフ
模型・ホビー関連商材の国内外での販売、化粧品原料の輸入・国内販売、健康食品の国内販売を行っています。一般消費者やホビーショップ、化粧品メーカーなどが顧客です。
収益は、ホビー商材や化粧品原料等の販売代金です。運営は、GSIクレオスや連結子会社のジーマークなどが行っています。
■(7) マシナリー&イクイップメント
産業機械や理化学機器の輸入販売およびメンテナンス、複合材成形設備・材料の輸入販売を行っています。また、炭素繊維強化樹脂の開発・製造・販売も手掛けています。
収益は、機械装置や材料の販売代金およびメンテナンス料から得ています。運営は、主に連結子会社のセントラル科学貿易が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあり、特に直近の2025年3月期には過去最高の1,655億円に達しました。利益面では、経常利益ベースで一時的な変動が見られるものの、当期利益は増加基調を維持しています。利益率は1〜2%台で推移しており、堅調な収益性を確保しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,164億円 | 1,118億円 | 1,311億円 | 1,462億円 | 1,655億円 |
| 経常利益 | 37億円 | 19億円 | 18億円 | 30億円 | 25億円 |
| 利益率(%) | 3.2% | 1.7% | 1.4% | 2.1% | 1.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 18億円 | 22億円 | 14億円 | 7億円 | 16億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で約13%増加し、売上総利益も増加しました。一方、販売費及び一般管理費も増加傾向にありますが、営業利益は微増を確保しています。売上総利益率はほぼ横ばいで推移しており、安定した利益構造が見て取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,462億円 | 1,655億円 |
| 売上総利益 | 162億円 | 169億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.0% | 10.2% |
| 営業利益 | 29億円 | 30億円 |
| 営業利益率(%) | 2.0% | 1.8% |
販売費及び一般管理費のうち、その他が46億円(構成比33%)、役員報酬及び給料手当が32億円(同23%)を占めています。売上原価は1,487億円で、その内訳の詳細は記載がありませんが、商品仕入高が主な構成要素と考えられます。
■(3) セグメント収益
全セグメントにおいて、前期比で売上高の変動が見られます。特にファイバー事業とセミコンダクター事業が増収を牽引しました。利益面では、ケミカル事業が高い利益率を示している一方、マシナリー&イクイップメント事業は減益となりました。全社的に売上規模は拡大していますが、利益貢献度はセグメントにより濃淡があります。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ファイバー | 814億円 | 993億円 | 5億円 | 6億円 | 0.6% |
| アウター | 208億円 | 196億円 | 9億円 | 8億円 | 4.2% |
| インナー | 118億円 | 122億円 | 2億円 | 2億円 | 1.4% |
| セミコンダクター | 89億円 | 106億円 | 4億円 | 5億円 | 4.3% |
| ケミカル | 129億円 | 139億円 | 7億円 | 9億円 | 6.6% |
| ホビー&ライフ | 53億円 | 55億円 | 6億円 | 6億円 | 10.8% |
| マシナリー&イクイップメント | 50億円 | 44億円 | 3億円 | 1億円 | 3.1% |
| その他 | - | - | - | - | -% |
| 調整額 | △1億円 | △1億円 | △7億円 | △8億円 | -% |
| 連結(合計) | 1,462億円 | 1,655億円 | 29億円 | 30億円 | 1.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
GSIクレオスは、営業活動によるキャッシュ・フローが売上債権の減少などにより大幅に増加しました。一方で、投資活動によるキャッシュ・フローは連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは短期借入金の純増減額などが影響し、支出に転じました。これらの結果、期末の現金及び現金同等物は前期末比で減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2億円 | 27億円 |
| 投資CF | 15億円 | △10億円 |
| 財務CF | 0.4億円 | △42億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同グループは、パーパスとして「次代の生活品質を高める 事業の創造者として 人びとの幸せを実現する」を最上位概念に掲げています。「次代の生活品質を追求するビジネスプロデューサー」として、株主、取引先、従業員をはじめとするすべてのステークホルダーの信頼と期待に応え、その幸せを実現することを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
同グループは、「社員とともに」「株主とともに」「取引先とともに」「市場とともに」「地球環境のために」「会社組織のために」という6つの経営理念を行動の指針としています。すべてのステークホルダーとの共存を目指し、事業活動を通じてESG経営の推進に取り組む姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「GSI CONNECT 2024」は最終年度を迎え、掲げていた「過去最高純利益の更新」という最終目標を達成しました。現在は、次期中期経営計画「GSI CONNECT Phase2」(2025-2027)を策定し、さらなる進化と成長を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「事業創造型商社」としての進化を目指し、ニッチな分野での新価値提供とサステナブルな社会への貢献をビジョンとしています。具体的には、既存事業の深耕に加え、国内外拠点の拡充やグループ連携強化による高付加価値事業の拡大を進めます。また、トリアセテート繊維事業の譲受などの事業投資、人的資本経営の推進、DX認定事業者としてのデジタル基盤構築に向けた人材・インフラ投資に取り組む方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人的資本を核とした事業競争力の強化を目指し、「人材の充実」と「新しい働き方の推進」を掲げています。具体的には、教育制度の体系化によるプロフェッショナル人材の育成、DX人材の育成と活用、および多様な人材が活躍できる人事・賃金制度の改革を進めています。また、社員の幸福度向上を重視し、ハピネスサーベイを毎年実施しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.1歳 | 15.6年 | 7,436,053円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 15.6% |
| 男性育児休業取得率 | 33.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 74.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 68.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職人数(6人)、GHG排出量Scope1(108tCO2e)、GHG排出量Scope2(2,143tCO2e)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済情勢変動によるリスク
日本、北米、アジア、ヨーロッパなど広範な地域で事業を展開しているため、主要市場や調達先における景気後退や金融危機などの経済情勢の急激な変動が発生した場合、需要の縮小や商品調達力の低下を招き、経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 為替レート変動によるリスク
多様な通貨で取引を行っており、為替予約等でリスク低減を図っているものの、急激な為替レートの変動が生じた場合、外貨建の金銭債権債務等の価値変動により、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
■(3) 金利変動によるリスク
事業資金を主として金融機関からの借入金で調達しています。営業資産の多くは金利変動リスクを転嫁可能ですが、金利が急激に変動した場合、支払利息の増加等を通じて経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 株価変動によるリスク
取引先を中心に市場性のある株式を保有しており、価格変動リスクを負っています。株式市場の動向によっては保有株式の価値が変動し、評価損の計上等により経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。



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