GSIクレオス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

GSIクレオス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

GSIクレオスは、東京証券取引所プライム市場に上場し、素材から製品までの繊維事業と、半導体部材や化学品などを扱う工業製品事業をグローバルに展開する事業創造型商社です。直近の業績では、インナー用機能糸・生地やアウターの輸出販売などが好調に推移し、増収増益と過去最高の売上高および当期利益を達成しています。


※本記事は、株式会社GSIクレオスの有価証券報告書(第96期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. GSIクレオスってどんな会社?


繊維事業と工業製品事業を軸に、グローバルな事業創造型商社として素材から製品までを幅広く提供しています。

(1) 会社概要


1931年に林大作商店として設立され、1971年にグンゼ産業へ改称の上で上場を果たしました。2001年に現在のGSIクレオスへ商号を変更しています。米国、欧州、アジアなどへ現地法人を設立しグローバル展開を進める一方、近年はソアロンの子会社化など事業領域の拡大を積極的に推進しています。

従業員数は連結で845名、単体で322名です。大株主としては、信託業務を行う金融機関が筆頭株主となっているほか、生命保険会社や主要取引先であるグンゼなどが上位に名を連ねており、安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.46%
日本生命保険相互 3.61%
みずほ銀行 3.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役 兼社長執行役員 兼 CEOには吉永直明氏が就いています。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
吉永直明 代表取締役 兼社長執行役員 兼 CEO欧米統括兼中国統括兼ナノテクノロジー事業担当 1979年同社入社。米国法人の社長や米州統括などを経て、2017年より代表取締役社長兼社長執行役員に就任。2026年4月より現職。
小野国広 代表取締役 兼副社長執行役員 兼 COO 1992年同社入社。経営企画部長や管理部門統括を歴任し、2024年に取締役兼常務執行役員に就任。2026年4月より現職。
中山正輝 取締役兼 専務執行役員兼 大阪支店長 1980年同社入社。繊維事業部門の統括や大阪支店長を務め、2020年より現職。
西村裕樹 取締役兼 専務執行役員兼 工業製品事業部門統括 2001年同社入社。プラスチック販売部長や工業製品事業部門統括を経て、2024年より現職。
大西文博 取締役監査等委員 1983年同社入社。経営企画部長や管理部門統括などを歴任し、2024年より現職。


社外取締役は、服部和德(元グンゼ代表取締役常務取締役・指名委員会委員長)、千葉櫻えりか(元ダウケミカル日本知財部長)、早野貴文(早野法律事務所弁護士)、八田圭子(元日本航空財務部グループ長・報酬委員会委員長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ファイバー」「アウター」「インナー」「セミコンダクター」「ケミカル」「ホビー&ライフ」「マシナリー&イクイップメント」事業を展開しています。

ファイバー


原糸や繊維原料の国内外での販売、輸出入のほか、メディカル繊維原料や製品の製造加工および販売を行っています。インナー用の機能糸や生地などをアパレルメーカーなどに幅広く提供しています。

収益源は、繊維原料や製品の卸売および販売による売上です。運営は主に同社および子会社のマルロンテックスなどが行っています。

アウター


アパレル製品のOEMやODM、テキスタイル製品の卸売および輸出入、自社ブランド製品の販売を行っています。また、トリアセテート繊維の生産や加工、販売も手がけています。

アパレルメーカーや小売業者からの製品販売代金やOEM受託代金が主な収益源です。運営は主に同社および子会社のソアロンなどが担っています。

インナー


インナー製品のOEMやODM、輸出入販売のほか、インナー用生地の開発や自社ブランド製品の販売を展開しています。高機能素材や自然由来素材の機能性インナーを提供しています。

製品の販売代金やOEM受託による収益が中心となります。運営は主に同社および子会社のいずみ、日神工業などが行っています。

セミコンダクター


最先端の半導体製造装置用部材や汎用性半導体部材、半導体製造設備用の部材などの輸出入および販売を行っています。主に半導体メーカーなどの顧客に向けて製品を提供しています。

半導体関連部材の販売代金が主な収益源となります。運営は主に同社および子会社のGSI Creos Technology (China)などが行っています。

ケミカル


塗料原料やその他化学品の輸出入、機能性プラスチック樹脂の輸入、フィルムの国内販売などを手がけています。また、カーボンナノチューブの開発や製造販売も行っています。

化学品や樹脂、フィルムなどの販売代金が主な収益源です。運営は主に同社および子会社の桜物産などが担っています。

ホビー&ライフ


模型用塗料などのホビー関連商材の国内外への販売のほか、化粧品原料の輸入販売、健康食品の国内販売などを展開しています。多様なライフスタイルや趣味嗜好に合わせた商品を提供しています。

ホビー商材や化粧品原料などの販売代金が収益源となります。運営は主に同社および子会社のジーマークなどが行っています。

マシナリー&イクイップメント


産業機械や理化学機器の輸入販売およびメンテナンス、複合材成形設備や材料の輸入販売、炭素繊維強化樹脂の開発や製造販売を行っています。

機械設備の販売やメンテナンス代金などが主な収益源です。運営は主に同社および子会社のセントラル科学貿易が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、売上高は右肩上がりで順調に成長を続けています。経常利益は期によって多少の変動はありますが、直近では大きく増加して収益力の向上が見られます。利益率も安定して推移しており、強固な事業基盤をもとに堅調な事業運営が行われています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1118億円 1311億円 1462億円 1655億円 1887億円
経常利益 19億円 18億円 30億円 25億円 39億円
利益率(%) 1.7% 1.4% 2.1% 1.5% 2.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 22億円 14億円 7億円 16億円 19億円

(2) 損益計算書


売上高および売上総利益ともに増加しており、順調な事業成長が確認できます。売上総利益率は微減したものの、販管費のコントロールなどにより営業利益と営業利益率の向上を実現しており、本業の収益性が高まっていることが伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1655億円 1887億円
売上総利益 169億円 187億円
売上総利益率(%) 10.2% 9.9%
営業利益 30億円 36億円
営業利益率(%) 1.8% 1.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が17億円(構成比11%)、販売諸掛が16億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力事業であるファイバーセグメントやアウターセグメントが大きく売上を伸ばし、全体の増収を力強く牽引しました。一方、セミコンダクター事業などは減収となっており、事業分野によって明暗が分かれる結果となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
ファイバー 993億円 1183億円
アウター 196億円 267億円
インナー 122億円 114億円
セミコンダクター 106億円 61億円
ケミカル 139億円 151億円
ホビー&ライフ 55億円 50億円
マシナリー&イクイップメント 44億円 61億円
連結(合計) 1655億円 1887億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 27億円 48億円
投資CF -10億円 -19億円
財務CF -42億円 -32億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.1%で非製造業の市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「次代の生活品質を高める 事業の創造者として 人びとの幸せを実現する」というパーパスを理念体系の最上位に掲げています。また、「社員とともに」「地球環境のために」といった6つの経営理念のもと、すべてのステークホルダーとの共存と社会課題の解決を目指して事業活動に取り組んでいます。

(2) 企業文化


同社はESG経営の推進を重視し、社会課題の解決とその先にある人びとの幸せの実現に向けて事業創造型商社として新しい価値を創造し続ける文化があります。「人的資本こそが企業価値を創造する源泉である」との考えを経営の根幹に据え、社員がいきいきと活躍し、自らの意思で成長し挑戦する組織風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2031年の創立100周年に向けたビジョンと目標を見据え、新たな中期経営計画「GSI CONNECT Phase2」(2025-2027)を始動しています。資本コスト経営の実践を掲げ、財務の健全性を維持しながらPBR1倍以上の安定的な維持と、ROEの向上に注力する目標を設定しています。

(4) 成長戦略と重点施策


グローバル経営力の徹底強化に向け、国内9拠点、海外27拠点を密に連携させて顧客への提供価値と事業領域の拡大を図る「グループ基盤強化・協働推進」を掲げています。また、成長投資と株主還元をバランスよく行うとともに、創立100周年に向けた「ありたい姿」の実現に向けてESG経営をさらに推進していく戦略です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


中期経営計画の重点施策として「人材の充実」と「新しい働き方の推進」を掲げています。戦略的人材開発と挑戦する組織風土の醸成を目的とした「GROWプロジェクト」を立ち上げ、グローバル教育の強化やDX人材の育成、新しい職群制度の導入などを推進し、プロフェッショナル人材の育成・開発に積極的に投資しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.9歳 15.2年 7,677,901円


※平均年間給与は賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 16.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 73.3%
男女賃金差異(正規雇用) 78.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 73.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済情勢変動によるリスク


日本、北米、アジア、欧州など広くグローバルに事業を展開しているため、主要市場や調達先において景気後退や金融危機などの急激な経済情勢の変動が生じ、需要の縮小や商品調達力が低下した場合、同社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替レート・金利の変動リスク


同社は多様な通貨での取引を行っており、為替予約等によりリスクの最小化に努めていますが、急激な為替変動は業績に影響する可能性があります。また、事業資金を主に金融機関からの借入で調達しているため、急激な金利変動が生じた場合も業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 消費者の嗜好変化と気候不順によるリスク


衣料品やファッション商品を取り扱っており、流行や消費者の嗜好の変化に対応するため短サイクルでの展開や商品企画精度の向上に取り組んでいます。しかし、ファッショントレンドの短期的な変化や冷夏・暖冬といった気候不順が生じた場合、業績に直接的な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。