山善 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

山善 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する山善は、工作機械などの生産財関連事業と、住宅設備や家電などの消費財関連事業を展開する専門商社です。2026年3月期の連結業績は、売上高が前期比で増加し、経常利益も大幅な増益となる増収増益を達成しており、国内外で事業領域の拡大を進めています。


※本記事は、株式会社山善の有価証券報告書(第80期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月15日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 山善ってどんな会社?


工作機械などの生産財と住宅設備や家電などの消費財を取り扱う専門商社です。

(1) 会社概要


同社は1947年に福井市で工具等の販売を目的とする山善工具製販として設立されました。1955年に山善機械器具へと商号を変更し、1962年に大阪証券取引所市場第二部に上場を果たしました。1971年に現在の山善へ商号を変更し、国内外に拠点を展開しながら生産財や消費財の専門商社として成長を続けています。

現在の従業員数は連結で3,309名、単体で1,836名です。筆頭株主は事業関係者で構成される山善取引先持株会で、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は投資事業組合である光通信KK投資事業有限責任組合となっています。

氏名 持株比率
山善取引先持株会 7.33%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.53%
光通信KK投資事業有限責任組合 6.34%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は岸田貢司氏が務めており、社外取締役の比率は44.4%となっています。

氏名 役職 主な経歴
岸田 貢司 代表取締役社長社長執行役員最高経営責任者(CEO) 1983年に同社へ入社。機械事業部副事業部長や営業本部副本部長などを経て、2023年4月に代表取締役社長社長執行役員に就任。
佐々木 公久 代表取締役副社長執行役員 1980年に同社へ入社。大阪営業本部長や東京支社長などの要職を歴任し、2025年10月より現職。
山添 正道 取締役専務執行役員最高財務責任者(CFO)経営管理本部長 1982年に同社へ入社。法務審査部長や管理本部長などを経て、2024年4月に経営管理本部長専務執行役員に就任。
中山 尚律 取締役常務執行役員家庭機器事業部長 1987年に同社へ入社。家庭機器事業部営業統括部長などを歴任し、2025年4月に家庭機器事業部長常務執行役員に就任。


社外取締役は、隅田博彦氏(元東洋鋼鈑代表取締役社長)、江口あつみ氏(元サントリーホールディングスR&D担当役員付専任部長)、津田佳典氏(公認会計士)、中務尚子氏(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「生産財関連事業」「住建事業」「家庭機器事業」および「その他」事業を展開しています。

生産財関連事業


国内外の製造業を顧客とし、工作機械や産業ソリューション機器、ツール&エンジニアリング機器などの販売を行っています。また、海外調達や工場生産設備、システムのトータルプランニングによるトータルソリューションも提供しています。

主にメーカーから製品を仕入れ、販売店やエンドユーザーである製造業に販売することで商品代金を得ています。運営は同社および大垣機工、東邦工業、Yamazen, Inc.などの関係会社が行っています。

住建事業


快適な住環境を求める消費者や建築業者に対し、住宅設備機器や空調・換気関連機器、内装・外装建材などを販売するとともに、関連工事やサービスを提供しています。

商品の販売代金や関連工事の施工費が主な収益源となります。運営は同社の住建事業部が主体となって行っています。

家庭機器事業


一般消費者をターゲットとし、家電製品やインテリア家具、アウトドア・レジャー用品、防災用品などの企画、開発および販売を行っています。自社で展開するプライベートブランド商品も多く扱います。

小売店やECサイトを通じて消費者に商品を販売し、商品代金を受け取ることで収益を上げています。運営は同社の家庭機器事業部が主体となって行っています。

その他


前述の報告セグメントに含まれない事業として、イベントの企画や旅行斡旋、倉庫・保管業務などのサービスを展開しています。

サービスの提供対価や業務委託料として料金を受け取っています。運営は同社の子会社であるヤマゼンクリエイト、ロジライズ、トラベルトピアが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は概ね5,000億円台で堅調に推移し、直近期には過去最高水準を記録しています。経常利益は一時的に落ち込む時期がありましたが、直近期は国内外での設備需要回復や付加価値の高い商材の提案が奏功し、増収増益の回復基調にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 5,019億円 5,273億円 5,069億円 5,161億円 5,419億円
経常利益 171億円 173億円 104億円 100億円 130億円
利益率(%) 3.4% 3.3% 2.1% 1.9% 2.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 107億円 94億円 53億円 62億円 70億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。販売費及び一般管理費は増加したものの、増収効果により営業利益は大きく伸びており、本業の収益性が改善していることがわかります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 5,161億円 5,419億円
売上総利益 770億円 830億円
売上総利益率(%) 14.9% 15.3%
営業利益 95億円 120億円
営業利益率(%) 1.8% 2.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料・賞与が227億円(構成比32%)、支払手数料が96億円(同14%)、運賃が85億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の生産財関連事業は、国内外の設備投資需要や自動化・省人化ニーズを捉えて増収となりました。住建事業も空調設備などの販売が好調に推移し、家庭機器事業では猛暑による季節商品の需要増などが寄与して全セグメントで売上を伸ばしています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
生産財関連事業 3,332億円 3,492億円
住建事業 786億円 874億円
家庭機器事業 1,009億円 1,016億円
その他 34億円 37億円
連結(合計) 5,161億円 5,419億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業キャッシュ・フローがプラス、投資キャッシュ・フローがマイナス、財務キャッシュ・フローがプラスとなっており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態である「積極型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 84億円 51億円
投資CF -111億円 -109億円
財務CF -107億円 386億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「ともに、未来を切拓く」をパーパス(存在意義)として定めています。また、2030年に向けた企業ビジョンに「世界のものづくりと豊かなくらしをリードする」を掲げ、事業活動を通じて持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


経営理念の筆頭に「人づくりの経営」を掲げ、人材を最大の財産と位置づけています。人事理念として「挑戦し、考動する人財の育成」を制定し、「挑戦・考動主義(自ら考えて動き、経験から学ぶこと)」をポリシーとして、社員一人ひとりが自主的かつ自律的に活躍できる文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2026年3月期を初年度とする3ヵ年中期経営計画「PROACTIVE YAMAZEN 2027」において、持続的な企業価値向上を実現するための数値目標を設定しています。最終年度である2028年3月期(2027年度)に向けて、以下の指標を目指しています。

* 自己資本利益率(ROE):8.0%
* 基礎的営業キャッシュ・フロー:140億円
* 自己資本比率:40.0%~45.0%

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画に基づき、「価値創造の深化」「グローバル展開の加速」「営業活動の高度化」「経営基盤の強化」「サステナビリティ経営の強化」の5つの戦略を推進します。特に、環境に配慮したグリーンビジネスの拡大や、デジタル技術を活用した顧客価値の最大化に注力し、競争力の向上と新たな収益源の獲得を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様な人材が能力を最大限に発揮できるよう、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を推進しています。複線型人事制度の導入や高度プロフェッショナル職の創設により専門人材の獲得・定着を図るほか、「適材・適職・適処遇」を掲げ、従業員一人ひとりに合った活躍の場と適切な評価・報酬を提供します。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.0歳 13.9年 8,022,209円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.3%
男性育児休業取得率 35.9%
男女賃金差異(全労働者) 66.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 68.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 36.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、月平均残業時間(16.6時間)、残業時間改善率(13.5%)、新職務へ配置転換した女性人数(42名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 設備投資や個人消費の動向による景気変動

同社は生産財および消費財の事業を展開しており、企業の設備投資意欲や個人消費の動向に大きく影響を受けます。世界的な設備投資の抑制や、物価上昇に伴う耐久消費財の買い控えなどが発生した場合、収益性の低下によって同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外事業におけるカントリーリスク

米国、中国、東南アジアなどに拠点を持ち、輸出入取引を広範に行っています。インフレや政情不安、紛争、通商政策の変更などにより、サプライチェーンの分断による物流遅延や仕入コストの高騰が発生した場合、同社グループの事業活動や財政状態に影響を与える可能性があります。

(3) 外貨建て取引に伴う為替変動

グローバルな事業展開に伴い、外貨建てによる輸出入取引を多数行っています。為替予約などで変動リスクの軽減に努めていますが、想定を超える急激な為替変動が進行した場合には、多額の為替差損益の発生や商品の買い控えが生じ、同社グループの業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(4) 不正アクセスやシステム障害による情報セキュリティ

事業全般でシステムやネットワークを活用しており、情報資産の適切な管理に努めています。しかし、外部からの不正アクセスやコンピューターウイルス、自然災害などでシステムが停止した場合、業務の遅延や情報漏洩が発生し、社会的信用の失墜や業績への影響が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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