山善 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

山善 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の山善は、工作機械などの生産財や、住宅設備、家電等の消費財を扱う専門商社です。2025年3月期は、生産財の自動化需要や住建事業の好調により売上高は増収となりましたが、投資負担等で経常利益は減益でした。一方、特別利益の計上等により最終利益は大幅な増益を達成しています。


#記事タイトル:山善転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社山善 の有価証券報告書(第79期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 山善ってどんな会社?

工作機械や産業機器を扱う「生産財」と、住宅設備や家電を扱う「消費財」の2本柱で展開する複合専門商社です。

(1) 会社概要

1947年に福井市で山善工具製販として設立され、1963年に東証二部へ上場しました。1970年には東証一部へ上場し、1978年に家庭機器部門を設置して現在の事業基盤を確立しました。2022年の市場区分見直しに伴い、東証プライム市場へ移行しています。2025年4月には、海外事業部やICT本部を新設する組織再編を行いました。

2025年3月31日現在、連結従業員数は3,276名、単体では1,842名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位は事業投資等を行う光通信、第3位は取引先で構成される山善取引先持株会となっており、機関投資家や取引先が主要株主となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.32%
光通信 7.52%
山善取引先持株会 7.41%

(2) 経営陣

同社の役員は男性8名、女性2名(常勤監査等委員1名を含む)の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長社長執行役員最高経営責任者(CEO)営業本部長は岸田貢司氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
岸田貢司 代表取締役社長社長執行役員最高経営責任者(CEO)営業本部長 1983年入社。機械事業部副事業部長、生産財統轄部長、TFS支社長などを経て2023年4月より現職。
佐々木公久 代表取締役副社長執行役員 1980年入社。大阪営業本部長、大阪支社長、営業本部長などを歴任。2024年4月より副社長執行役員・国内営業管掌・東京支社長を務める。
長尾雄次 取締役会長 1977年入社。住建事業部長、生産財統括などを経て、2017年より代表取締役社長を務めた後、2023年4月より現職。
山添正道 取締役専務執行役員最高財務責任者(CFO)経営管理本部長 1982年入社。法務審査部長、管理本部長、経営企画本部長などを経て、2024年4月より現職。
中山尚律 取締役常務執行役員家庭機器事業部長 1987年入社。家庭機器事業部営業統括部長を経て、2018年より家庭機器事業部長。2025年4月より常務執行役員。
村井諭 取締役(常勤監査等委員) 1981年入社。東京管理部長、人事部長などを歴任し、2019年6月より現職。


社外取締役は、隅田博彦(元東洋鋼鈑代表取締役社長)、江口あつみ(元江崎グリコ執行役員)、津田佳典(公認会計士)、中務尚子(弁護士)です。

2. 事業内容

同社グループは、「生産財関連事業」、「住建事業」、「家庭機器事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 生産財関連事業

工作機械、鍛圧・板金機械、産業用ロボット、物流機器(マテハン)、メカトロ機器、切削工具などを製造業の現場向けに提供しています。国内外の生産現場における自動化・省人化ニーズや脱炭素への対応を含め、生産設備やシステムのトータルプランニングを行っています。

商品の販売による代金が主な収益源です。運営は主に山善が行い、海外においてはYamazen, Inc.(米国)、Yamazen (Thailand) Co.,Ltd.(タイ)などの現地法人が事業を展開しています。

(2) 住建事業

住宅設備機器(キッチン、バス、空調等)、建材、太陽光発電システム、蓄電池などを、住宅メーカーや工務店、リフォーム業者等に提供しています。また、非住宅分野における設備改修提案や、環境商材と施工をセットにしたサービスも行っています。

商品の販売および関連工事・サービスの提供による代金が収益源です。運営は主に山善が行っています。

(3) 家庭機器事業

家電(扇風機、暖房機器、調理家電等)、インテリア家具、アウトドア用品、防災用品などを企画・開発し、量販店やECサイトを通じて一般消費者に提供しています。「YAMAZEN」ブランドでのプライベートブランド商品の展開を強化しています。

商品の販売による代金が収益源です。運営は主に山善が行っており、法人・個人事業主向けECサイト「山善ビズコム」の運営も行っています。

(4) その他

イベント企画、旅行斡旋、倉庫・保管業務などを行っています。

サービスの提供による手数料や倉庫保管料等が収益源です。運営は主にヤマゼンクリエイト、ロジライズ(旧ヤマゼンロジスティクス)、トラベルトピアが行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

過去5期間の業績を見ると、2023年3月期までは売上高・利益ともに拡大傾向にありましたが、直近2期間は利益面で調整局面が見られます。2025年3月期は売上高が過去最高水準に近づいたものの、経常利益率は2%弱で推移しています。一方、当期利益は特別利益の計上などもあり、前期比で回復しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 4,347億円 5,019億円 5,273億円 5,069億円 5,161億円
経常利益 112億円 171億円 173億円 104億円 100億円
利益率(%) 2.6% 3.4% 3.3% 2.1% 1.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 61億円 107億円 94億円 53億円 62億円

(2) 損益計算書

直近2期間の損益構成を見ると、売上高は増加し、売上総利益率も改善傾向にあります。一方で販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益率は若干低下しました。営業外収益の増加等もあり、経常利益の減少幅は営業利益の減少幅と同程度にとどまっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,069億円 5,161億円
売上総利益 744億円 770億円
売上総利益率(%) 14.7% 14.9%
営業利益 99億円 95億円
営業利益率(%) 2.0% 1.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料・賞与が216億円(構成比32%)、支払手数料が89億円(同13%)、運賃が83億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益

2025年3月期は、主力の生産財関連事業と住建事業が増収となりました。生産財は自動化需要等が寄与し、住建事業は空調設備等の販売が好調でした。一方、家庭機器事業は消費者の節約志向等の影響で微減収となりました。利益面では住建事業が増益となりましたが、家庭機器事業は減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
生産財関連事業 3,287億円 3,332億円 82億円 83億円 2.5%
住建事業 718億円 786億円 27億円 32億円 4.1%
家庭機器事業 1,011億円 1,009億円 53億円 44億円 4.4%
その他 52億円 34億円 0億円 0億円 0.2%
調整額 -79億円 -87億円 -63億円 -64億円 -
連結(合計) 5,069億円 5,161億円 99億円 95億円 1.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は営業活動で得たキャッシュを元に、借入返済や配当支払い等の財務活動を行いつつ、投資活動も自己資金の範囲内で行う健全な財務状態にある「健全型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 112億円 84億円
投資CF -9億円 -111億円
財務CF -48億円 -107億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、メーカー、販売店、ユーザー、投資家などを含む社会全体とともにサステナブルな未来を切り拓くという想いの下、「パーパス(存在意義)」を「ともに、未来を切拓く」と定めています。また、2030年に向けてありたい姿を示す「企業ビジョン」として「世界のものづくりと豊かなくらしをリードする」を掲げています。

(2) 企業文化

同社は「人づくりの経営」を経営理念の筆頭に掲げ、人材を最も重要な経営資源と捉えています。人事理念として「挑戦し、考動する人財の育成」を制定し、人財マネジメントポリシーである「挑戦・考動主義」に基づき、自主的かつ自律的に考え行動する人材(自業員)の育成と活躍を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標

新3ヵ年中期経営計画「PROACTIVE YAMAZEN 2027」において、持続的な企業価値向上を目指しています。2027年度(最終年度)の数値目標として以下を掲げています。

* 自己資本利益率(ROE):8.0%
* 基礎的営業キャッシュ・フロー:140億円
* 自己資本比率:40.0%~45.0%

(4) 成長戦略と重点施策

中期経営計画では、「働きがいのある職場の実現」「グリーンビジネスの拡大」「デジタル化による顧客価値の最大化」「持続可能な調達・供給の実現」「透明性のあるガバナンス体制の確立」の5つの重要課題に取り組みます。生産財事業では技術専門性とグローバル網を活かした提案、消費財事業では快適な住環境やライフスタイル充実に向けた新商品・サービスの提案を加速させます。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「人づくりの経営」を具現化するため、「挑戦・考動主義」に基づく人材マネジメント戦略を実行しています。DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を推進し、多様な人材の能力開発と登用を行うとともに、女性の職務領域拡大や管理職候補層の育成に注力しています。また、「山善健康宣言」のもと、社員の心身の健康増進にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.7歳 13.8年 7,595,060円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.9%
男性育児休業取得率 35.1%
男女賃金差異(全労働者) 64.7%
男女賃金差異(正規雇用) 67.0%
男女賃金差異(非正規) 34.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用における女性割合(24.4%)、男女の平均勤続年数差異(35.8%改善)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気変動

生産財関連事業と消費財関連事業を展開していますが、両事業とも企業の設備投資や個人消費の動向により需要が大きく変動します。米国政府の関税措置やグローバルな設備需要、国内消費の減退等が起きた場合、収益性の低下や在庫評価損等により、業績が下振れする可能性があります。

(2) カントリーリスク

米国、中国、東南アジア等に拠点を持ち、海外売上高は858億円にのぼります。特定の地域でのインフレ、政情不安、紛争、サプライチェーンの混乱等が発生した場合、商品供給の遅延や事業活動の中断を余儀なくされ、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 新たなビジネスモデルへの対応

中期経営計画において、新たな収益源の獲得や持続的成長に向けた積極的な事業投資を行う方針です。しかしながら、事業投資により期待した効果を得ることができない場合には、将来の成長、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 製造物賠償責任等

多くのプライベートブランド商品を開発・販売しており、その取扱高比率は高まっています。品質管理を徹底していますが、大規模なリコールや製造物責任賠償が発生した場合、多額の費用発生やブランド価値の毀損により、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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