※本記事は、株式会社カノークスの有価証券報告書(第98期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. カノークスってどんな会社?
カノークスは、鋼板や鋼管などの鉄鋼卸売を主力とし、仕入から加工・販売まで一気通貫の供給体制を構築しています。
■(1) 会社概要
1897年に名古屋市で鉄鋼商として創業し、1919年に合名会社加納商店として設立されました。1961年に名古屋証券取引所市場第二部へ上場し、1991年に現在のカノークスへ商号変更しています。2003年にメタルワンが株主となり、2022年には東京証券取引所スタンダード市場への上場を果たしました。
現在、同社グループは連結で349名、単体で303名の従業員を擁しています。筆頭株主は鉄鋼商社であり同社のその他の関係会社にあたるメタルワンで、第2位および第3位には金融機関である三菱UFJ銀行とあいち銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| メタルワン | 34.47% |
| 三菱UFJ銀行 | 4.64% |
| あいち銀行 | 3.50% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は小河正直氏が務めており、取締役7名のうち2名が社外取締役となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小河正直 | 代表取締役社長 | 1990年同社入社。東北支店長、経営企画部長、IR・サステナビリティ推進室長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 小西伸雄 | 取締役営業本部長鋼管建材管掌兼東京支社長 | 1988年同社入社。営業統括部長、関西支店長、財経本部長などを歴任し、2025年4月より現職。 |
| 藤本善久 | 取締役営業本部長鋼板管掌兼西日本支社長 | 1989年同社入社。名古屋本店長、東京支社長などを歴任し、2025年4月より現職。 |
| 田中之介 | 取締役経営企画本部長兼経営企画部長 | 1989年同社入社。東北支店長、名古屋本店長、営業本部長自動車鋼材管掌などを経て、2026年4月より現職。 |
| 花田寛之 | 取締役経営インフラ統括管掌兼管理本部長兼財経部長 | 1993年同社入社。本社経理部長、財務・経理部長、審査部長などを経て、2025年10月より現職。 |
社外取締役は、奥川哲也(奥川哲也税理士事務所所長)、辻佳世子(辻法律事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、鉄鋼販売事業の単一セグメントを展開しています。事業内で主に取り扱っている商品は以下の通りです。
■鋼板類
主に自動車部品や鋼製シャッター等に使用される薄板を中心に扱っています。鉄鋼メーカーから購入した大型コイルを指定の幅に小割、または板に剪断して、自動車業界や建築業界を中心とした各得意先へ販売しています。
顧客からの販売代金が主な収益源となります。事業の運営は、同社および関連会社である空見スチールサービスをはじめとした委託加工先が加工を担い、同社が得意先への販売を行っています。
■鋼管類
主に自動車部品や建築部材等に使用される小中径鋼管、建物の柱として使用される角型鋼管を中心に扱っています。造管メーカーから購入した長尺材を指定の長さに切断、穴開け、曲げ等の加工を行い、得意先へ販売しています。
販売代金が収益源となります。事業の運営は主に同社の事業所および子会社であるカノークス建材、カノークス建材関東などが加工を行い、同社が販売を担当しています。
■ステンレス類
主に自動車のマフラー等に使用されるステンレス薄板やステンレス鋼管を扱っています。鉄鋼メーカーや造管メーカーから購入し、子会社や委託加工先にて加工を行い、得意先へ販売しています。
販売代金が主な収益源となります。事業の運営は同社の子会社や委託加工先にて加工を行い、同社が得意先へ販売する体制をとっています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上高は一時的な増減があるものの1,500億円以上の規模を維持しています。経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益は安定して推移しており、直近の事業年度では利益率の改善も相まって過去最高益を達成するなど、堅調な収益基盤を構築していることが伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,165億円 | 1,517億円 | 1,725億円 | 1,730億円 | 1,588億円 |
| 経常利益 | 27億円 | 26億円 | 28億円 | 29億円 | 30億円 |
| 利益率(%) | 2.3% | 1.7% | 1.6% | 1.7% | 1.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 19億円 | 17億円 | 19億円 | 20億円 | 21億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少したものの、売上総利益は増加しており、売上総利益率も改善しています。これにより、営業利益は前年と同水準を確保しており、効率的な利益創出が進んでいることが分かります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,730億円 | 1,588億円 |
| 売上総利益 | 83億円 | 88億円 |
| 売上総利益率(%) | 4.8% | 5.5% |
| 営業利益 | 25億円 | 25億円 |
| 営業利益率(%) | 1.5% | 1.6% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃諸掛が26億円(構成比41%)、給料手当が14億円(同23%)を占めています。
■(3) セグメント収益
鉄鋼販売事業の単一セグメントですが、販売品種別に売上高を見ると、自動車向けを中心とする鋼板が売上の大半を占めています。当期は各品種で減収となりましたが、適切な在庫・価格コントロールにより収益性を確保しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 鋼板 | 1,116億円 | 1,014億円 |
| 鋼管 | 258億円 | 231億円 |
| 条鋼 | 20億円 | 18億円 |
| ステンレス等 | 330億円 | 315億円 |
| その他 | 7億円 | 9億円 |
| 連結(合計) | 1,730億円 | 1,588億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CF・投資CF・財務CFの推移から、同社は営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」と判定できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 47億円 | 75億円 |
| 投資CF | -0.4億円 | -12億円 |
| 財務CF | -24億円 | -31億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.5%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も39.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は社是として「社業を通じて社会に貢献せん」「和をもって最善をつくさん」「善意と良識を身上として日々を全うせん」を掲げています。また、パーパス(社会的存在意義)として「地域社会と地域産業の持続的成長に信頼のサプライチェーンで貢献する」を定め、地域経済の持続的成長をともに目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、創業以来一貫して社是の精神を全社員の「行動規範」に据えて事業活動を行っています。顧客に丁寧に寄り添い「なくてはならない存在」となることを目指すとともに、個の力を育て尊重する文化が根付いています。また、「Think Global, Act Local」の標語のもと、社員一人ひとりが地域社会や環境への貢献を意識し、自ら考え主体的にやり抜く姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2025年度からの3か年計画「第11次中期経営計画」をスタートし、「第二の創業NEXT~カノークスらしさのシンカ~」をテーマに掲げています。財務的視点から経常利益、ROE、PBR、D/Eレシオを重要な指標と位置付けています。
* 2027年度計画:経常利益32.0億円、ROE7%、PBR0.7倍、配当性向50%水準、事業拠点21拠点
* 2030年度計画:経常利益38.0億円、ROE8~10%、PBR1.0倍、配当性向50%水準、事業拠点25拠点
■(4) 成長戦略と重点施策
中期的な課題として、「顧客ニーズを最優先に考える課題解決型の事業展開」「人的資本投資による価値創造人材の育成」「地域社会・地域産業により密着した企業活動」の3つを推進しています。また、M&Aによる新商圏への参入や環境配慮型鋼材の取り扱い、自前の加工機能の充実などを図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「多様性を尊重した能力発揮の場を提供し、自ら考え主体的にやり抜く人財を求め育て報いる」を人事理念としています。第11次中期経営計画を人的資本改革元年と位置づけ、「人への積極投資」を推し進めています。新入社員研修や階層別研修のほか、通信教育や資格取得支援制度も整備し、一人ひとりの成長をきめ細やかに支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.0歳 | 11.8年 | 7,636,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 83.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 55.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 58.0% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 105.8% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 鋼材価格の急激な変動
同社グループが扱う鋼板、鋼管等の鉄鋼製品は、急激かつ大幅な価格変動が生じ、価格転嫁が困難な場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、市況動向の把握に日々努め、合理的な対応に努めています。
■(2) 自動車業界の環境変化と顧客依存
売上高の約6割が自動車業界向けであり、特定顧客との取引比率も高くなっています。EVシフトによる既存鋼材需要の減少や国内生産の減少など、事業環境が悪化した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 大株主であるメタルワンの動向
大株主であるメタルワンは同業の鉄鋼商社であり、商圏や商流による棲み分けがなされています。経営の独立性は確保されているものの、同社の経営方針の動向によっては同社グループの経営体制に影響を及ぼす可能性があります。



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