※本記事は、株式会社カノークス の有価証券報告書(第97期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. カノークスってどんな会社?
老舗の鉄鋼商社として、自動車・建築分野へ鋼材を供給。加工機能と地域密着の物流体制が特徴です。
■(1) 会社概要
同社は1897年に名古屋で創業した老舗の鉄鋼専門商社です。1961年に名古屋証券取引所へ上場し、2022年には東京証券取引所スタンダード市場へ上場しました。自動車や建築業界向けに鋼板や鋼管等の鉄鋼製品を供給し、加工機能を持つ商社として成長を続けています。直近ではカーボンニュートラルへの対応やEVシフトを見据えた事業展開を推進しています。
現在は連結従業員数303名、単体197名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は同業の鉄鋼商社で、第2位は大手都市銀行、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| メタルワン | 34.57% |
| 三菱UFJ銀行 | 4.66% |
| 野村信託銀行(カノークス株式需給緩衝信託口) | 4.34% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は小河正直氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小河 正直 | 代表取締役社長 | 1990年同社入社。東北支店長、経営企画部長、IR・サステナビリティ推進室長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 小西 伸雄 | 取締役営業本部長鋼管建材管掌兼東京支社長 | 1988年同社入社。営業統括部長、関西支店長、財経本部長、経営管理本部長などを歴任し、2025年4月より現職。 |
| 藤本 善久 | 取締役営業本部長鋼板管掌兼西日本支社長 | 1989年同社入社。名古屋本店長、東京支社長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 田中 之介 | 取締役経営企画部長兼IR・サステナビリティ推進室長 | 1989年同社入社。東北支店長、名古屋本店長、営業本部長などを歴任し、2024年4月より現職。 |
| 花田 寛之 | 取締役経営インフラ統括管掌兼管理本部長 | 1993年同社入社。本社財務・経理部長、審査法務部長などを経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、奥川哲也(奥川哲也税理士事務所所長)、辻佳世子(辻法律事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「鉄鋼販売事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) 鉄鋼販売事業
同社は、鉄鋼メーカー等から仕入れた鋼材を、自動車業界や建築業界を中心とした得意先へ販売しています。主な取扱商品は、自動車部品やシャッター等に使われる「鋼板類」、自動車部品や建築部材となる「鋼管類」、マフラー等に使用される「ステンレス類」などです。また、EVシフトに対応するため、鉄以外の素材(マルチマテリアル)の取り扱いにも挑戦しています。
収益は、得意先への鉄鋼製品の販売代金から得ています。同社グループは自社および子会社、関連会社等の加工機能(切断、穴開け、曲げ等)を活用し、ジャストインタイムでの納入や品質管理を行うことで付加価値を提供しています。運営は主にカノークスが行い、加工・物流機能はカノークス鋼管関東などの子会社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高が1,000億円台から1,700億円台へと拡大傾向にあります。2023年3月期以降は売上高1,500億円を超え、利益面でも経常利益20億円台後半を維持しており、安定した収益基盤を築いています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,057億円 | 1,165億円 | 1,517億円 | 1,725億円 | 1,730億円 |
| 経常利益 | 10億円 | 27億円 | 26億円 | 28億円 | 29億円 |
| 利益率(%) | 1.0% | 2.3% | 1.7% | 1.6% | 1.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 19億円 | 17億円 | 20億円 | 20億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高は微増し、売上総利益も増加しています。売上原価率が高い卸売業の特性を示しており、営業利益率は1.5%前後で推移しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,725億円 | 1,730億円 |
| 売上総利益 | 78億円 | 83億円 |
| 売上総利益率(%) | 4.5% | 4.8% |
| 営業利益 | 25億円 | 25億円 |
| 営業利益率(%) | 1.5% | 1.5% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃諸掛が26億円(構成比44%)、給料手当が13億円(同22%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は鉄鋼販売事業の単一セグメントですが、販売品種別に見ると、主力の鋼板が好調に推移し、売上高全体の約6割を占めています。鋼管やステンレス等は横ばいまたは微減となりましたが、全体としては自動車分野向けの販売好調等が寄与し、増収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 鉄鋼販売事業 | 1,725億円 | 1,730億円 |
| 連結(合計) | 1,725億円 | 1,730億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、事業運営に必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
営業活動によるキャッシュ・フローは、自動車分野の好調な生産を背景に安定的に推移すると想定しております。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や長期運転資金の調達を金融機関からの長期借入で賄う方針です。財務活動によるキャッシュ・フローは、運転資金の機動的かつ安定的な調達のため、タームローン契約を締結しております。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 50億円 | 47億円 |
| 投資CF | -1.0億円 | -0.4億円 |
| 財務CF | -47億円 | -24億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は社是として「一.社業を通じて社会に貢献せん」「二.和をもって最善をつくさん」「三.善意と良識を身上として日々を全うせん」を掲げています。また、パーパスとして「地域社会と地域産業の持続的成長に信頼のサプライチェーンで貢献する」を定め、地域に根差した活動を通じて社会的存在意義を発揮することを目指しています。
■(2) 企業文化
創業以来の社是の精神を全社員の「行動規範」としています。経営理念には「常にお客様から第一に求められる企業に」を掲げ、顧客の繁栄の礎となることを目指しています。また、すべてのステークホルダーや環境との「和」を重視し、誠実な事業活動を通じて社会の発展に貢献する姿勢を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
「カノークス第二の創業 ~持続的成長に向けて再起動~」をテーマとする第10次中期経営計画を推進しています。事業活動の成果として経常利益を重要な経営指標とし、財務的視点からはROE、D/Eレシオを重視しています。また、2030年度までの長期的な目標として以下のようなKPIを設定しています。
* 連結経常利益:28億円(2024年度計画)
■(4) 成長戦略と重点施策
自動車のEVシフト、カーボンニュートラル、SDGsへの対応を重点課題としています。EV化に伴う鉄需要の変化を捉え、鉄以外の素材(マルチマテリアル)の取り扱い拡大に挑戦するとともに、CO2排出量の少ない電炉材の拡販を進めています。また、加工機能の充実やきめ細かな供給対応により、顧客にとって「なくてはならない存在」となることを目指しています。
* EV受注比率:2024年度計画 1.0%
* 鉄/MM(マルチマテリアル)比率:2024年度計画 1.0%
* 電炉材比率:2024年度計画 8.0%
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「多様性を尊重した能力発揮の場を提供し、自ら考え主体的にやり抜く人財を求め育て報いる」を人事理念としています。人材を企業の財産と捉え、新入社員研修やOJT、階層別研修、資格取得支援制度などを通じて成長を支援しています。また、女性活躍推進やワーク・ライフ・バランスの実現、健康経営の実践にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.3歳 | 15.4年 | 7,394,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | -% |
| 男性育児休業取得率 | 14.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 55.5% |
| 男女賃金差異(正規) | 58.0% |
| 男女賃金差異(非正規) | 105.9% |
※女性管理職比率については、女性管理職数が0名(単体)のため記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、GHG排出量(768t-CO2)、健康経営優良法人の認定(取得済み)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 鋼材価格変動による業績への影響
同社グループは鉄鋼製品を加工・販売していますが、業績は鋼材価格の変動の影響を受けます。急激な価格変動に対し価格転嫁が困難な場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。在庫過多や品切れ、資金調達等のリスクにも対応が必要です。
■(2) 取引先への依存(自動車業界)
売上高の約6割が自動車業界向けであり、特定の自動車メーカー系列との取引割合が高くなっています。EVシフトによる鋼材需要の減少や海外生産シフトによる国内生産減少など、自動車業界の環境変化が同社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
■(3) オペレーショナルリスク
コンプライアンスや内部統制の強化に取り組んでいますが、役職員の不正や事故が発生するリスクは完全に排除できません。万一、重大な不正行為や事故が発生した場合、経営成績や社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 自然災害その他リスク
地震、洪水等の自然災害や感染症の流行、テロ等の発生により、事業活動の停止や機会損失、復旧費用の負担などが生じた場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。損害保険への加入や耐震工事、リモートワーク推進等の対策を講じています。



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