※本記事は、株式会社弘電社 の有価証券報告書(第146期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 弘電社ってどんな会社?
電気設備工事と三菱電機製品の販売を二本柱とする総合エンジニアリング商社です。三菱電機グループの一員として強固な事業基盤を有しています。
■(1) 会社概要
1917年に創業者の業務を承継して設立され、1960年に子会社の弘電工事を設立しました。1962年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しています。2024年12月には施工力強化の一環として東新電気工業の全株式を取得し、完全子会社化しました。
連結従業員数は687名、単体では614名です。筆頭株主は親会社である三菱電機で、発行済株式の51.40%を保有しています。第2位は弘電社従業員持株会、第3位は三菱地所となっており、三菱グループとの関係が深い資本構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三菱電機 | 51.40% |
| 弘電社従業員持株会 | 4.20% |
| 三菱地所 | 3.30% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長執行役員は梶川 裕司氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 梶川 裕司 | 代表取締役社長執行役員 | 1985年三菱電機入社。FAシステム事業本部FA海外事業部長などを経て、2022年弘電社副社長執行役員に就任。2023年4月より現職。 |
| 金沢 正二 | 代表取締役専務執行役員技術戦略・イノベーション本部長 | 1986年入社。電力・産業・プラント事業本部副本部長、大阪支店長などを歴任。2023年より現職。 |
| 竹村 隆一 | 取締役上席常務執行役員経営企画本部長 | 1991年三菱電機入社。同社神戸製作所営業部長などを経て、2021年弘電社入社。2024年より現職。 |
| 本多 重人 | 取締役上席常務執行役員電力・産業・プラント事業本部長 | 1987年入社。大阪支店営業統括部長、九州支店長などを歴任。2024年6月より現職。 |
| 山名 克英 | 取締役 | 1985年入社。総務本部長、執行役員などを歴任。2025年4月よりコーポレート・ガバナンス担当。 |
| 原田 寛之 | 取締役 | 1992年三菱電機入社。同社情報技術総合研究所総務部長、関係会社部次長などを経て、2023年6月より現職。 |
| 永嶋 靖史 | 取締役(常勤監査等委員) | 1984年入社。九州支店長、大阪支店長、内線事業本部長などを歴任。2023年6月より現職。 |
社外取締役は、加藤淳一(元富士ゼロックス執行役員)、村田佳生(元野村総合研究所専務執行役員)、東哲也(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電気設備工事事業」、「商品販売事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 電気設備工事事業
屋内線工事、送電線工事、発変電工事、通信工事、空調工事の設計・施工・請負を行っています。オフィスビルや工場、社会インフラなど幅広い分野で電気設備の構築を手掛けており、顧客は官公庁から民間企業まで多岐にわたります。
主な収益源は、顧客から受け取る工事請負代金です。運営は主に弘電社が行い、施工の一部を子会社の弘電工事に、設計積算業務の一部を子会社の弘電社機電工程(北京)有限公司に発注しています。また、機器の一部については親会社の三菱電機に発注し、工事の一部を同社から受注する関係にあります。
■(2) 商品販売事業
汎用電気機器、産業用電気・電子機器、冷熱住設機器等の販売を行っています。三菱電機グループの製品を中心に取り扱っており、顧客に対して最適な機器やシステムを提案・販売しています。
主な収益源は、顧客への商品販売代金です。運営は主に弘電社が行っています。親会社の三菱電機との代理店契約に基づき同社製品を仕入・販売しているほか、同社子会社の三菱電機住環境システムズからも住宅設備機器等を仕入れています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は順調に拡大しており、特に直近の決算では大幅な増収となりました。利益面でも、経常利益と当期利益がともに大きく伸長しており、利益率も向上傾向にあります。全体として成長性と収益性が高まっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 324億円 | 292億円 | 336億円 | 349億円 | 393億円 |
| 経常利益 | - | - | - | - | - |
| 利益率(%) | - | - | - | - | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 9億円 | 3億円 | 5億円 | 11億円 | 28億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。営業利益は前年から大幅に増加しており、収益性が大きく改善しました。本業の儲けを示す営業利益率も上昇しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 349億円 | 393億円 |
| 売上総利益 | 47億円 | 68億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.5% | 17.4% |
| 営業利益 | 12億円 | 31億円 |
| 営業利益率(%) | 3.3% | 7.8% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が21億円(構成比42.0%)、賞与引当金繰入額が3億円(同6.4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
電気設備工事事業は、高水準な設備投資需要を背景に大幅な増収となりました。一方、商品販売事業は前年比で微減収となっています。全体としては電気設備工事事業の成長が業績を牽引しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 電気設備工事事業 | 257億円 | 303億円 |
| 商品販売事業 | 91億円 | 89億円 |
| 連結(合計) | 349億円 | 393億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2億円 | 11億円 |
| 投資CF | 0.1億円 | -2億円 |
| 財務CF | -4億円 | -11億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「創造する喜びを通して、豊かな社会の実現に貢献します。」を企業理念として掲げています。高い倫理観と遵法精神のもと、日々の事業活動を通じてこの理念を実践し、社会に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
「Create the bright future」をコーポレートメッセージとし、信頼、技術革新、最高品質、健康・安全・多様性の尊重、地球環境保護、法令順守を基本姿勢としています。全てのステークホルダーを大切にし、社員一人ひとりが切磋琢磨しながら技術力の向上に挑戦し続ける文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2027年度目標の中期経営計画において、「ありたい姿」の実現を目指しています。優良顧客との信頼関係を基盤に、事業構造の最適化と高水準な収益体制の構築を図っています。フェーズ2(2027年度以降)の継続目標として、以下の数値を掲げています。
* 営業利益:20億円以上
* 営業利益率:5%以上
* 当期純利益:15億円以上
* ROE:8%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「カーボンニュートラル」と「安心・安全・快適な社会作り」を重点的に取り組むべき社会課題領域と位置付け、全社総合力の結集と他社協業により高付加価値ソリューションを提案・提供する方針です。M&AやDXへの成長投資を実施し、持続的な成長を通じて企業価値向上を図ります。
* 施工力強化の一環として東新電気工業を完全子会社化
* DXによる業務革新の推進
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「誰もが健康で働き易く、働き甲斐のある会社・職場」の実現を目指しています。人的資本経営として、M&Aや事業パートナー連携、リファラル採用等による人材確保に加え、人事処遇制度の改定や健康経営の推進によるエンゲージメント向上、女性管理職比率向上などのダイバーシティ経営に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.8歳 | 18.3年 | 7,030,837円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.4% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 69.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 76.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、高ストレス者率(11.5%)、賃金改定率(5.0%)、初任給(250,000円)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 親会社の業績変動
同社の親会社は三菱電機であり、議決権の過半数を所有しています。同社グループは親会社より多くの工事を受注しており、全受注工事高の約3割を占めています。そのため、親会社の経営成績や設備投資状況が同社グループの業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 建設資材価格の変動
電気設備工事事業の遂行にあたり、多くの建設資材を調達しています。建設資材価格が急激に高騰した場合、業績に影響が生じる可能性があります。これに対し、国内外の原材料相場や建材価格動向を注視し、集中購買による価格安定策を図ることでリスク低減に努めています。
■(3) 人材の確保
事業規模拡大の前提となる技術員の確保・拡充に向け、新卒・中途採用を積極的に実施しています。しかし、少子化による人材不足や採用競争激化により必要な人材を確保できない場合、施工及び営業活動が低下し、業績に影響が生じる可能性があります。福利厚生の充実等により魅力ある職場づくりを推進しています。
■(4) 海外投資
中国・北京の子会社により設備工事事業等を展開していますが、為替変動や人件費高騰、日系企業の投資抑制等の影響を受ける可能性があります。また、予期せぬ規制変更等のカントリーリスクも存在し、これらが顕在化した場合には経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。



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