弘電社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

弘電社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

弘電社は、東京証券取引所スタンダード市場に上場する企業です。屋内線工事や送電線工事などを手掛ける電気設備工事事業と、汎用電気機器や冷熱住設機器などを扱う商品販売事業を主力事業として展開しています。直近の業績は、手持工事の着実な遂行や売上規模の増加等により、前年比で増収増益と順調な推移を見せています。


#記事タイトル:「弘電社転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」

※本記事は、株式会社弘電社の有価証券報告書(第147期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 弘電社ってどんな会社?


電気設備工事事業および商品販売事業を主力とし、社会インフラを支える企業です。

(1) 会社概要


1910年に創業した弘電舎の業務を承継し、1917年に設立されました。1951年に親会社となる三菱電機の資本参加を受け、1962年に東京証券取引所市場第二部に株式を上場しました。その後も事業を拡大し、2022年に東京証券取引所スタンダード市場へ移行しています。

現在の従業員数は連結で696名、単体で631名です。筆頭株主は事業展開で緊密な関係を持つ親会社の三菱電機で、株式の51.4%を保有しています。第2位は弘電社従業員持株会、第3位は継続的な取引関係のある三菱地所となっています。

氏名 持株比率
三菱電機 51.40%
弘電社従業員持株会 3.50%
三菱地所 3.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表取締役社長執行役員は梶川裕司氏です。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
梶川裕司 代表取締役社長執行役員 1985年三菱電機入社。FA海外事業部長、FAシステム業務部長などを経て、2022年より弘電社副社長執行役員。2023年より現職。
金沢正二 代表取締役 1986年同社入社。電力・産業・プラント事業本部副本部長、大阪支店長、技術戦略・イノベーション本部長などを経て、2026年より現職。
古谷友明 代表取締役副社長執行役員 1989年三菱電機入社。名古屋製作所営業部長、機器事業部長、中部支社長などを経て、2025年より現職。
竹村隆一 取締役上席常務執行役員経営企画本部長 1991年三菱電機入社。社会環境計画部長、神戸製作所営業部長などを経て、2021年同社入社。2024年より現職。
本多重人 取締役上席常務執行役員電力・産業・プラント事業本部長 1987年同社入社。九州支店長、電力・産業・プラント事業本部副本部長などを経て、2024年より現職。
山名克英 取締役 1985年同社入社。総務部長、総務本部長などを経て、2026年より現職。
桂雄一郎 取締役 1992年三菱電機入社。発電・エネルギーシステム海外営業部長などを歴任。2025年より現職。


社外取締役は、村田佳生(元野村総合研究所専務執行役員)、高野恭子(元富士通人事労政部長)、友常理子(田辺総合法律事務所パートナー)、西村誉弘(リーダーズサポート税理士法人代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電気設備工事事業」および「商品販売事業」を展開しています。

(1) 電気設備工事事業


屋内線工事、送電線工事、発変電工事、通信工事、空調工事の設計・施工・請負を行っています。官公庁や民間企業など幅広い顧客に対し、社会インフラを支える多様な設備工事を提供しています。

収益は、顧客からの工事請負代金として受け取ります。事業の運営は主に同社が行い、施工の一部を子会社の弘電工事、設計積算等業務の一部を子会社の弘電社機電工程(北京)有限公司に発注しています。

(2) 商品販売事業


汎用電気機器、産業用電気・電子機器、冷熱住設機器等の販売を行っています。幅広い産業分野の顧客に向けて、多様な電気・電子機器や設備機器を提供しています。

収益は、顧客への商品販売代金として受け取ります。親会社の三菱電機との代理店契約等に基づき同社製品を仕入・販売するほか、同社子会社の三菱電機住環境システムズからも住宅設備機器等を仕入・販売しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高および経常利益ともに右肩上がりの成長を続けています。特に直近2年間では、利益率が大幅に改善し、収益力が飛躍的に向上していることが特徴です。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 292億円 336億円 349億円 393億円 442億円
経常利益 5億円 9億円 13億円 32億円 40億円
利益率(%) 1.8% 2.6% 3.7% 8.1% 9.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 6億円 9億円 27億円 28億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も順調に拡大しています。原価低減策などの取り組みが奏功し、売上総利益率および営業利益率ともに前年を上回る水準で推移しており、本業の収益性が高まっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 393億円 442億円
売上総利益 68億円 81億円
売上総利益率(%) 17.4% 18.3%
営業利益 31億円 39億円
営業利益率(%) 7.8% 8.8%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が23億円(構成比41%)、賞与引当金繰入額が4億円(同6%)を占めています。売上原価については、完成工事原価が274億円(構成比79%)、商品売上原価が74億円(同21%)となっています。

(3) セグメント収益


主力事業である電気設備工事事業は、手持工事の着実な遂行などにより大幅な増収増益を達成し、全社の業績を牽引しています。一方、商品販売事業は前年並みの売上を維持したものの、利益面ではやや減少する結果となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
電気設備工事事業 303億円 355億円 45億円 54億円 15.4%
商品販売事業 89億円 88億円 4億円 3億円 3.9%
連結(合計) 393億円 442億円 31億円 39億円 8.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業を示す健全型のキャッシュ・フローです。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 11億円 34億円
投資CF -2億円 -23億円
財務CF -11億円 -9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.1%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も63.8%で同じく市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、高い倫理観と遵法精神のもと、『創造する喜びを通して、豊かな社会の実現に貢献します。』という企業理念を掲げています。また、自社のアイデンティティを示すコーポレートメッセージとして『Create the bright future』を制定し、すべての行動の原点となる基本姿勢を明確にして事業活動を実践しています。

(2) 企業文化


同社は、すべてのステークホルダーを大切にして信頼される会社であり続けることを基本姿勢としています。社員一人ひとりが切磋琢磨して技術力の向上を図るとともに、さらなる技術革新に挑戦し続ける文化を重視しています。また、すべての人の健康と安全に配慮しながら多様性を尊重し、地域社会との協調・共存を図る姿勢を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2027年度以降の「ありたい姿」を実現するため、安定的に利益を創出しつつ成長投資と株主還元を推進する中期経営計画を策定しています。持続的に達成すべき経営目標として、以下の数値を掲げています。

・営業利益:30億円以上
・当期純利益:20億円以上
・ROE:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、「カーボンニュートラル」と「安心・安全・快適な社会作り」の2つを重点的に取り組むべき社会課題領域と位置付けています。全社総合力(電気設備および商品販売)の結集と他社との協業推進により、高付加価値ソリューションを提案・提供する方針です。また、現場業務支援や効率化を目的としたDX投資や、従業員の処遇制度改善などの人的投資を通じて、企業価値の向上を図っていきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、持続的な成長と企業価値の向上を実現するため、人材を最も重要な経営資源と位置づけています。新卒および経験者採用を強化し、長期ビジョンに基づいた体系的な人材育成や技術力強化を推進しています。「人的資本の確保と育成」「従業員エンゲージメントの向上」「ダイバーシティ経営の実現」を重点的に取り組み、誰もが健康で働きやすく、働きがいのある職場環境の整備を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.7歳 18.1年 7,377,774円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.7%
男性育児休業取得率 53.8%
男女賃金差異(全労働者) 71.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 69.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 76.3%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、高ストレス者率(12.0%)、新卒採用2025年度実績(25人)、経験者採用2024年度実績(13人)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気変動と建設市場の動向


民間設備投資や公共投資の増減による建設市場規模の変化や、受注競争の激化による粗利率の低下が、同社の業績に影響を与える可能性があります。同社は社内における設計・技術連携による提案力の強化や、他社との連携推進を通じて営業基盤を強化し、事業領域の拡大に努めています。

(2) 親会社の業績変動


同社の親会社である三菱電機は、同社の議決権の51.5%を所有しています。同社グループは親会社から多くの工事を受注しており、全受注工事高の約3割を占めています。そのため、親会社の経営成績の状態や設備投資状況が、同社の業績に直接的な影響を及ぼす可能性があります。

(3) 建設資材価格の高騰


電気設備工事事業を遂行するにあたり多くの建設資材を調達していますが、建設資材価格が急激に高騰した場合、同社の業績に影響が生じるリスクがあります。これに対し、国内外の原材料相場や建材価格動向を注視し、資材部門による集中購買で効果的な価格安定策を図ることでリスクの低減に努めています。

(4) 人材の確保と施工体制の維持


経営基盤強化策として人材と施工力の強化を重要項目に掲げていますが、少子化による新卒採用人材の不足や同業他社との採用競争激化により人材不足に陥った場合、施工および営業活動が低下するリスクがあります。同社は採用から退職に至るまでの福祉充実を図り、働きやすい職場づくりを推進しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。