※本記事は、築地魚市場株式会社 の有価証券報告書(第77期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 築地魚市場ってどんな会社?
東京都中央卸売市場豊洲市場の荷受会社として、水産物の卸売を中核に、冷蔵倉庫や不動産賃貸も手がけています。
■(1) 会社概要
1948年に設立され、築地市場で水産物の売買を開始しました。1963年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2018年には市場移転に伴い豊洲へ本社を移転しました。その後、2022年の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行しました。近年はグループ会社を通じて水産加工や冷蔵保管機能を強化しています。
連結従業員数は284名、単体では149名です。筆頭株主は丸紅グループの食品商社である丸紅シーフーズで、第2位は水産養殖や飼料販売を行うヨンキュウです。第3位には即席麺や水産加工品大手の東洋水産が名を連ねており、業界内の有力企業が主要株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 丸紅シーフーズ | 11.82% |
| ヨンキュウ | 9.82% |
| 東洋水産 | 5.48% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長には吉田猛氏、代表取締役社長には山﨑康司氏が就任しています。社外取締役比率は22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山﨑 康司 | 代表取締役社長 | 1978年丸紅入社。ダイエー取締役専務執行役員、丸紅常務執行役員食品本部長などを経て、2021年同社入社。2024年4月より現職。 |
| 吉田 猛 | 代表取締役会長 | 1975年丸紅入社。札幌中央水産常務執行役員などを経て、2006年同社入社。2013年代表取締役社長に就任し、2024年4月より現職。 |
| 大竹 利夫 | 取締役常務執行役員管理本部長 | 1982年同社入社。経理部長、執行役員経理部長、取締役執行役員管理本部長補佐などを経て、2023年4月より現職。 |
| 関 均 | 取締役執行役員冷蔵事業本部長 | 1984年同社入社。総務部長、経営企画部長などを経て、2018年より取締役執行役員冷蔵事業本部長兼東市ロジスティクス代表取締役社長。 |
社外取締役は、石川誠(石川公認会計士事務所代表)、池邊吉博(元名村造船所取締役兼常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「水産物卸売業」「冷蔵倉庫業」「不動産賃貸業」の3つの報告セグメントを展開しています。
■(1) 水産物卸売業
生鮮・冷凍・加工水産物の委託販売および買付販売を行っています。全国の生産地や海外から水産物を集荷し、仲卸業者や売買参加者へ販売するほか、中国上海市での販売業務も手がけています。
収益は主に販売に伴う売買差益や手数料から得ています。運営は、同社が卸売業務を担うほか、共同水産やキタショクが加工および販売を、築地市川水産が仲卸業務を行っています。また、東市築地水産貿易(上海)有限公司が中国向け販売を担当しています。
■(2) 冷蔵倉庫業
豊洲市場内および周辺地域において、水産物等の冷蔵保管業務およびそれに付随する荷役作業を提供しています。市場機能の一翼を担うインフラとして、適切な温度管理下での保管サービスを展開しています。
収益は、寄託者からの冷蔵倉庫保管料や荷役作業料などから得ています。運営は、同社の子会社である東市ロジスティクスが冷蔵倉庫業を営み、築地企業が庫内荷役作業を担当しています。
■(3) 不動産賃貸業
同社グループが所有する不動産の一部を、外部テナントやグループ会社へ賃貸しています。
収益は、テナントからの賃貸料収入です。運営は、同社および子会社の共同水産が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 666億円 | 550億円 | 580億円 | 587億円 | 624億円 |
| 経常利益 | 1.9億円 | 1.7億円 | 2.3億円 | 0.8億円 | 3.3億円 |
| 利益率(%) | 0.3% | 0.3% | 0.4% | 0.1% | 0.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5.2億円 | 2.6億円 | 2.2億円 | 2.0億円 | 2.9億円 |
売上高は回復基調にあり、直近では600億円台を回復しました。利益面では、経常利益が前期の0.8億円から3.3億円へと大幅に改善しており、利益率も向上しています。当期利益も増加傾向を維持し、安定した黒字経営を続けています。
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較します。売上高は前期比で増加し、売上総利益も拡大しました。営業利益は前期の0.4億円から3億円へと大きく伸長しており、本業の収益性が改善していることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 587億円 | 624億円 |
| 売上総利益 | 37億円 | 42億円 |
| 売上総利益率(%) | 6.3% | 6.7% |
| 営業利益 | 0.4億円 | 3.0億円 |
| 営業利益率(%) | 0.1% | 0.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が12億円(構成比32%)、保管附帯費が3億円(同9%)を占めています。売上原価は売上高に対して約93%を占めており、卸売業特有の原価率の高さが特徴です。
■(3) セグメント収益
水産物卸売業は増収となりましたが、仕入コスト増等の影響でセグメント損失が続いています。一方、冷蔵倉庫業と不動産賃貸業は安定して利益を計上しており、特に冷蔵倉庫業は増益となり全社の利益を下支えしています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 水産物卸売業 | 572億円 | 609億円 | -4億円 | -2億円 | -0.3% |
| 冷蔵倉庫業 | 14億円 | 14億円 | 3億円 | 4億円 | 29.2% |
| 不動産賃貸業 | 2億円 | 2億円 | 1億円 | 1億円 | 52.9% |
| 連結(合計) | 587億円 | 624億円 | 0億円 | 3億円 | 0.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、事業運営に必要な流動性と資金源泉の確保を基本方針としています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、水産物取引における市況変動リスクを管理し、在庫適正化や採算管理の細分化により営業費用の適正化を図ることで、収益力のあるセグメントへの転換を図っています。投資活動によるキャッシュ・フローは、豊洲市場内の多機能型冷蔵庫を組み込んだ商流拡大や、養殖魚の取扱拡充に向けた連携強化に取り組んでいます。財務活動によるキャッシュ・フローは、金融機関からの借入金を基本として、安定した資金繰りの確保に努めています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 12億円 | -4億円 |
| 投資CF | -0億円 | -4億円 |
| 財務CF | -8億円 | 3億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「安全安心な水産物を、卸売市場の流通網を通して消費者にお届けし、日本の豊かな食生活に貢献する」ことを企業理念として掲げています。また、株主、取引先、従業員、地域社会への貢献を目指し、ステークホルダーからの信頼獲得による持続的な企業基盤の構築を経営理念としています。
■(2) 企業文化
法令、社内規則、社会規範を遵守し、業務遂行の健全性、透明性、公正性を確保することを重視しています。また、商道徳に則った商活動を旨とし、CSR(企業の社会的責任)を重視する姿勢を打ち出しています。食品安全方針の実践やコンプライアンスの徹底を通じて、信頼される企業風土の醸成に努めています。
■(3) 経営計画・目標
2024年度から2026年度までの中期経営計画「MF-2026」を策定し、最終年度である2027年3月期に向けた数値目標を設定しています。
* 売上高:650億円程度
* 営業利益:6億円程度
* 経常利益:6億円程度
* 親会社株主に帰属する当期純利益:5億円程度
* ROE:7%以上を目指す
■(4) 成長戦略と重点施策
「旧来型の荷受会社から、広範な機能を有する販売会社への転換」を掲げ、生鮮水産物の取扱拡大や冷凍水産物の加工製造販売事業の強化を進めています。また、人員採用拡大によるダイバーシティ推進や、物流2024年問題を見据えた市場内外の物流効率化にも注力しています。
* 産地との連携による仲卸等への商流拡大
* 「鮮冷」・「養殖魚」・「一般凍魚」の強化
* 産地加工・消費地加工のさらなる深堀
* 「商・物流」の一元化推進
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人員採用拡大によりダイバーシティを推進し、強靭な組織力を構築」することを重点課題としています。新卒・キャリア採用を強化して組織を活性化させるとともに、シニア世代や女性が活躍できる職場づくりを目指し、規程類の改訂やワークライフバランスの改善に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 47.3歳 | 17.9年 | 6,672,707円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員に占める女性社員比率(19.0%)、管理職に占める女性管理職比率(3.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 卸売市場を取り巻くリスク
東京都中央卸売市場豊洲市場での卸売販売に強く依存していますが、市場内仲卸業者の経営状況悪化や市場流通の減少、量販店の取扱拡大などの影響を受ける可能性があります。取引先への貸倒引当金は設定していますが、不良債権の発生や豊洲市場の設備コスト増などが業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 資金調達に関するリスク
運転資金や設備資金を金融機関からの借入で調達しているため、金融機関の貸出動向や金利情勢の変化が財政状態に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、営業キャッシュ・フローの黒字維持やネット借入金の削減による財務基盤の強化で対処しています。
■(3) 在庫に関するリスク
市況を勘案して商品を買い付けていますが、保有商品の価格変動が業績に影響を与える可能性があります。特に水産物は相場変動が大きいため、在庫の適正化と回転期間の短縮を図るため、営業各部の目標月末在庫残高を設定し、定期的なレビューを実施するなどの管理体制をとっています。



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