第一実業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

第一実業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する機械専門商社。プラント・エネルギー、エナジーソリューションズ、産業機械、エレクトロニクス、自動車など多岐にわたる分野で機械設備の販売を行う。直近の業績は、リチウムイオン電池製造関連などが牽引し、売上高・各利益ともに過去最高を更新する増収増益となった。


#第一実業転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、第一実業株式会社 の有価証券報告書(第102期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 第一実業ってどんな会社?


産業機械等の販売を行う総合機械商社。エンジニアリング機能を持ち、グローバルなモノづくりを支援します。

(1) 会社概要


1948年に設立され、1962年に東京証券取引所市場第二部に上場、1974年に同第一部へ指定替えしました。1972年には米国現地法人を設立するなど早期から海外展開を進めています。2022年の市場区分見直しによりプライム市場へ移行。2024年には子会社を統合しDJ-WAVEエンジニアリングを発足させました。

2025年3月31日現在の従業員数は連結1,467名、単体661名です。主要株主の筆頭は投資事業を行うと見られる株式会社UH Partners 2、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には通信サービス等の事業会社である光通信が名を連ねており、同社グループ会社等が株式を共同保有しています。

氏名 持株比率
UH Partners 2 9.53%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.46%
光通信 7.49%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表取締役会長執行役員CEOは宇野一郎氏、代表取締役社長執行役員COOは船渡雄司氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
宇 野 一 郎 代表取締役会長執行役員 1982年同社入社。執行役員大阪事業本部長、常務取締役を経て2017年代表取締役社長に就任。2025年4月より現職。
船 渡 雄 司 代表取締役社長執行役員 1987年同社入社。DJK EUROPE GMBH Managing Directorなどを経て2021年常務執行役員。2025年4月より現職。
二 宮 隆 一 取締役専務執行役員 1984年同社入社。執行役員名古屋事業本部長、常務取締役名古屋支社長、代表取締役専務執行役員などを経て2025年4月より現職。
府 川    治 取締役常務執行役員 1992年同社入社。米国現地法人Secretary & Treasurer、執行役員経理本部長などを経て2024年4月より現職。
上 野 雅 敏 取締役常務執行役員 1985年同社入社。執行役員エレクトロニクス事業本部長、常務取締役などを経て2025年4月より現職。
丸 本    靖 取締役常務執行役員 1990年同社入社。執行役員プラント・エネルギー事業本部長、常務取締役大阪支社長などを経て2022年4月より現職。


社外取締役は、坂本嘉和(税理士)、山田奈美香(弁護士)、中山和夫(元JA三井リース副社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「プラント・エネルギー事業」、「エナジーソリューションズ事業」、「産業機械事業」、「エレクトロニクス事業」、「自動車事業」、「ヘルスケア事業」、「航空・インフラ事業」および「その他」事業を展開しています。

プラント・エネルギー事業

エネルギー開発生産、ガス石油精製、化学、エンジニアリング、建設、紙・パルプ関連の機械・器具・部品の販売を行っています。主な顧客はエネルギー関連企業や化学メーカー、建設会社などです。

収益は、顧客への機器販売やエンジニアリングサービスの提供による対価から得ています。運営は主に同社が行い、一部の仕入は連結子会社の第一メカテックやDJ-WAVEエンジニアリング、関連会社から行っています。海外では米国やアジア各国の現地法人が販売を担っています。

エナジーソリューションズ事業

リチウムイオン電池製造に関連する機械・器具・部品の販売を行っています。電気自動車(EV)や電子デバイス向けのバッテリー需要に対応し、製造設備等を供給しています。

収益は、リチウムイオン電池メーカー等への設備販売代金から得ています。運営は同社が主体となり、一部の関係会社を通じて仕入販売を行っています。米国や欧州、中国等の海外連結子会社も販売活動を行っています。

産業機械事業

プラスチック、ゴム、鉄鋼、食品に関連する機械・器具・部品の販売を行っています。成形機や製造ラインなどを幅広い産業分野の顧客へ提供しています。

収益は、各種製造業の顧客への機械装置等の販売代金から得ています。運営は同社が行うほか、連結子会社の第一メカテックや関連会社の浅野研究所から一部仕入れています。海外では各国の現地法人が展開しています。

エレクトロニクス事業

電子、情報通信、電機、精密、光学、音響、楽器に関連する機械・器具・部品の販売を行っています。実装機や検査装置などを電子機器メーカー等に提供しています。

収益は、電子部品・機器メーカー等への設備・部品販売代金から得ています。運営は同社が主体となり、一部は連結子会社の第一メカテックから仕入れています。グローバルネットワークを活用し、各国の現地法人が販売を担っています。

自動車事業

自動車製造に関連する機械・器具・部品の販売を行っています。自動車メーカーや部品メーカーに対し、組立ラインや加工設備などを提供しています。

収益は、自動車業界の顧客への設備販売代金から得ています。運営は同社および一部の関係会社が行っています。自動車産業の集積地である米国、メキシコ、中国、アジア各国の連結子会社が現地での販売活動を行っています。

ヘルスケア事業

薬品、医薬品に関連する機械・器具・部品の販売を行っています。製薬会社向けに製造装置や検査装置などを提供しています。

収益は、製薬メーカー等への機器販売代金から得ています。運営は同社が行い、一部製品は連結子会社の第一実業ビスウィルや第一メカテックから仕入れて販売しています。海外子会社を通じた販売も行っています。

航空・インフラ事業

航空、防災に関連する機械・器具・部品の販売を行っています。空港地上支援機材や防災関連設備などを提供しています。

収益は、航空関連企業や官公庁等への設備販売代金から得ています。運営は同社および一部の関係会社が行っています。米国や欧州の連結子会社も事業に関与しています。

その他

各種機械・器具の賃貸等を行っています。

収益は、顧客からの賃貸料等から得ています。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあり、特に直近の2025年3月期は大幅な増収となりました。利益面でも、経常利益、当期純利益ともに右肩上がりで推移しており、収益性が向上しています。直近の利益率は過去5期間で最も高い水準となっており、好調な業績トレンドを示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,400億円 1,481億円 1,537億円 1,878億円 2,218億円
経常利益 65億円 78億円 71億円 90億円 136億円
利益率(%) 4.6% 5.3% 4.6% 4.8% 6.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 33億円 36億円 50億円 65億円 79億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も拡大しています。売上総利益率は17.0%と前年同水準を維持しています。営業利益は前年から大幅に伸長し、営業利益率も改善しました。販売費及び一般管理費は増加していますが、売上高の伸びがそれを上回っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,878億円 2,218億円
売上総利益 319億円 378億円
売上総利益率(%) 17.0% 17.0%
営業利益 91億円 131億円
営業利益率(%) 4.8% 5.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当(役員報酬含む)が94億円(構成比38%)、その他経費が34億円(同14%)を占めています。売上原価については商品評価損等が計上されていますが、詳細は割愛します。

(3) セグメント収益


全セグメントにおいて売上高が増加または横ばいで推移していますが、特に「プラント・エネルギー事業」と「エナジーソリューションズ事業」が大幅な増収増益を達成し、全体の業績を牽引しました。「ヘルスケア事業」も利益を大きく伸ばしています。一方で、「産業機械事業」や「エレクトロニクス事業」は増収または微減収ながら減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
プラント・エネルギー事業 157億円 239億円 4億円 18億円 7.7%
エナジーソリューションズ事業 342億円 541億円 10億円 27億円 5.0%
産業機械事業 279億円 295億円 11億円 9億円 3.0%
エレクトロニクス事業 504億円 500億円 29億円 27億円 5.4%
自動車事業 388億円 407億円 19億円 22億円 5.4%
ヘルスケア事業 128億円 157億円 10億円 17億円 10.5%
航空・インフラ事業 75億円 76億円 5億円 5億円 6.7%
その他 4億円 1億円 0.3億円 0.0億円 3.3%
調整額 - - 3億円 6億円 -
連結(合計) 1,878億円 2,218億円 91億円 131億円 5.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

第一実業グループは、営業活動によるキャッシュ・フローが大きく増加し、手元資金は潤沢に確保されています。営業活動では、税金等調整前当期純利益の計上や、前渡金、売上債権及び契約資産の減少が主な要因となりました。投資活動では、有形・無形固定資産や投資有価証券の取得による支出がありましたが、投資有価証券の売却収入もありました。財務活動では、短期借入金の返済や配当金の支払いにより資金が減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -17億円 116億円
投資CF -5億円 -13億円
財務CF -9億円 -77億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「人をつなぎ、技術をつなぎ、世界を豊かに」というミッションを掲げています。目指すべき姿(ビジョン)として「次世代型エンジニアリング商社」を標榜し、時代の一歩先を行くモノづくりパートナーとして、独自のエンジニアリング機能を核に継続的な価値を提供し、グローバルな顧客事業の成長と持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「協力一致、堅実運営、積極活動」の社是三原則を掲げています。バリューとして「信頼(ステークホルダーとの協調と個人の尊重)」「成長(エンジニアリング機能による貢献と成長市場への投資)」「貢献(経営の透明性と社会課題への取り組み)」を重視しています。また、法令遵守だけでなく社会的規範に則る「第一実業グループ行動規範」に基づいた行動を求めています。

(3) 経営計画・目標


2030年度に向けた成長戦略「V2030」を策定しており、以下の数値目標を掲げています。
* 売上高:3,000億円
* 営業利益:180億円
* ROE:10%以上

また、2025年度からの中期経営計画「MT2027」では、2027年度に売上高2,500億円、営業利益150億円、ROE10%以上を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「成長を加速する事業戦略」と「変化に対応するレジリエントな経営基盤」をテーマに掲げています。事業戦略では、事業ポートフォリオの最適化、事業投資の推進、グローバルビジネスの拡大、エンジニアリング機能の拡充に注力します。経営基盤においては、人的資本の価値向上、資本効率の最大化、ガバナンスとリスク管理の強化、DXによる競争力強化を進めていきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「環境の変化に対応できる、しなやかさと強さを兼ね備えた人材の育成と組織形成」を育成方針とし、高度専門性、自律、多様性、健康経営を軸に環境整備を進めています。自ら考え行動するビジネスパーソンを育成し、エンジニアリング機能強化のための専門性向上や、多様な人材の確保によるグローバル対応力の強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.5歳 11.3年 10,055,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.1%
男性育児休業取得率 78.6%
男女賃金差異(全労働者) 65.7%
男女賃金差異(正規) 65.6%
男女賃金差異(非正規) 46.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、職長教育受講者数(46人)、全社員に占める技術系職群の割合(8.2%)、中途入社者比率(50.9%)、外国籍社員比率(2.4%)、エンゲージメント調査総合満足度(76.2%)、有給休暇取得率(67.8%)、社員一月当たりの平均残業時間(16.2時間)、健康診断受診率(84.9%)、ストレスチェック受検率(84.6%)、海外駐在経験者比率(21.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) マクロ経済環境の変化によるリスク

海外事業展開を加速しており、各国の景気動向や政治動向が業績に影響を与える可能性があります。特に保護主義の台頭、中国や新興国経済の減速、地政学リスク、米国の関税措置などが懸念材料です。サプライチェーンの再編や投資動向の変化に対応するため、情報収集体制の強化や事業ポートフォリオの機動的なシフトを行っています。

(2) 海外売上高比率増大に伴うリスク

連結売上高に占める海外比率が50%を超えており、今後も高まる予想です。そのため、国際的な金融環境、為替変動、各国の法規制変更や政治体制の変動などが業績に影響を及ぼす可能性があります。グローバルネットワークを活かした迅速な情報把握や最適な取引形態の選択により、リスクの最小化に努めています。

(3) 金利・資金調達に関わるリスク

金融市場の不安定化や信用格付の低下により、資金調達条件が悪化する可能性があります。また、金利上昇による金融収支の悪化もリスク要因です。これに対し、金融機関との良好な関係維持、資金調達先の多様化、良好な財政状態の維持に努めています。

(4) IT・システムリスク

システムやネットワークへの依存度が高まる中、自然災害やサイバー攻撃、障害等により事業活動に支障が生じる可能性があります。データセンターやクラウドサービスの利用、セキュリティ対策の強化、事業継続対応マニュアルの整備等により対策を講じています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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