※本記事は、株式会社カナデンの有価証券報告書(第176期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. カナデンってどんな会社?
エレクトロニクス分野の総合商社として、FA機器やビル設備、インフラシステムの提供を通じて社会課題の解決に貢献する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1907年に神奈川電気合資会社として創立し、1912年に神奈川電気へと改組しました。1962年に三菱電機と代理店契約を締結して以降、順調に業容を拡大し、1989年に東京証券取引所市場第一部(現在のプライム市場)に上場しました。1990年に現在のカナデンに商号を変更し、直近の2024年12月には髙島電機の全株式を取得するなど、グループ基盤の強化を推進しています。
現在の従業員数は連結で904名、単体で620名となっています。筆頭株主は事業提携先でもある三菱電機で、第2位は取引先で構成されるカナデン取引先持株会、第3位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三菱電機 | 21.17% |
| カナデン取引先持株会 | 13.28% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.96% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長は守屋太氏が務めています。取締役7名のうち3名が社外取締役であり、社外取締役比率は42.9%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 守屋太 | 代表取締役 取締役社長 | 1986年同社入社。FA事業部長や関西支社長などを歴任し、専務取締役を経て2025年より現職。 |
| 中竹春美 | 常務取締役 事業統括室長及びビル設備事業部、交通事業部、ディフェンス&メディカル事業部担当 | 1984年三菱電機入社。同社中部支社長を経て、2023年同社入社。ビル設備事業部長を経て2025年より現職。 |
| 菅井貴典 | 取締役 関西支社長 | 1991年同社入社。ビル設備事業部副事業部長や同事業部長などを歴任し、執行役員を経て2024年より現職。 |
| 黒田暢彦 | 取締役 管理本部長及び管理部門担当 | 1990年同社入社。総務人事部長などを経て、執行役員管理本部長として経理や総務を統括し、2025年より現職。 |
社外取締役は、永島義郎氏(元三菱UFJ銀行虎ノ門支社長)、伊藤弥生氏(元ヤマトホールディングスIT戦略担当戦略部長)、今戸智恵氏(アイ・アールジャパン所属弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「FAシステム」「ビル設備」「インフラ」「情通・デバイス」の4つの報告セグメントを展開しています。
■(1) FAシステム
製造ラインの品質や生産性向上に貢献する自動化・IoTソリューションをはじめ、FA機器、レーザ加工機、放電加工機などのメカトロニクス商品を販売しています。製造業を中心とした顧客の自動化ニーズに応えています。
収益源は、顧客への機器販売代金および据付・サービス料です。運営は同社を中心に、販売を担う髙島電機や海外子会社のKANADEN (THAILAND)、据付・サービスを担うテクノクリエイトや日本制御エンジニアリングなどが共同で行っています。
■(2) ビル設備
無停電電源装置や昇降機のほか、省エネ化を踏まえた空調機器、住宅設備機器、低温機器、エネルギーマネジメントシステムなどを販売しています。ビルオーナーや建設業者などを主な顧客としています。
収益源は、ビルや商業施設への各種設備機器の販売代金および据付・保守サービス料です。事業の運営は同社が主体となり、据付・サービス業務についてはカナデンエンジニアリングが提供しています。
■(3) インフラ
交通事業者向けに変電電力設備、LED機器、情報通信機器および車両用電機品等を販売するほか、社会基盤整備に貢献する交通安全システム、防衛装備品、太陽光発電設備などを販売しています。
収益源は、鉄道などの交通事業者や官公庁に対する機器販売代金およびシステム構築費用です。この事業は主に同社単体で運営が行われています。
■(4) 情通・デバイス
情報通信機器、自動車、産業機器に不可欠な半導体や電子デバイス部品のほか、映像ソリューションシステム、セキュリティシステム、電子医療装置などを販売しています。
収益源は、産業機器メーカーや医療機関等からの半導体・電子デバイス部品やシステムの販売代金です。運営は同社のほか、カナデンエンジニアリングや科拿電(香港)有限公司などが連携して行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高が1008億円から1456億円へと順調に拡大しています。経常利益も31億円から58億円へと力強い成長を見せており、大口案件の獲得や子会社の貢献などにより収益性の向上が進んでいることが分かります。
| 項目 | 172期 | 173期 | 174期 | 175期 | 176期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1008億円 | 1064億円 | 1163億円 | 1257億円 | 1456億円 |
| 経常利益 | 31億円 | 42億円 | 50億円 | 47億円 | 58億円 |
| 利益率(%) | 3.0% | 4.0% | 4.3% | 3.8% | 4.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 18億円 | 25億円 | 39億円 | 54億円 | 31億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、売上高が約200億円の増収となったことに伴い、売上総利益・営業利益ともに拡大しています。売上総利益率はほぼ横ばいで推移しており、堅実な事業運営がうかがえます。
| 項目 | 175期 | 176期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1257億円 | 1456億円 |
| 売上総利益 | 180億円 | 201億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.3% | 13.8% |
| 営業利益 | 45億円 | 53億円 |
| 営業利益率(%) | 3.6% | 3.7% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料諸手当が54億円(構成比37%)、賞与引当金繰入額が13億円(同8%)を占めています。
■(3) セグメント収益
インフラ事業は鉄道事業者の設備投資回復により大幅増収増益となりました。FAシステムや情通・デバイス事業も堅調に増収を達成しており、全体としてバランスよく成長を遂げています。
| 区分 | 売上(175期) | 売上(176期) | 利益(175期) | 利益(176期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| FAシステム | 482億円 | 549億円 | 23億円 | 22億円 | 4.0% |
| ビル設備 | 175億円 | 183億円 | 3億円 | 3億円 | 1.7% |
| インフラ | 289億円 | 391億円 | 2億円 | 8億円 | 2.0% |
| 情通・デバイス | 310億円 | 333億円 | 19億円 | 22億円 | 6.5% |
| 連結(合計) | 1257億円 | 1456億円 | 47億円 | 58億円 | 4.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社の営業CFはプラス、投資CFおよび財務CFはマイナスとなっており、本業で稼いだキャッシュを用いて投資を行いながら借入の返済や株主還元を進める「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 175期 | 176期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 51億円 | 92億円 |
| 投資CF | -19億円 | -2億円 |
| 財務CF | -40億円 | -17億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「技術と創意で一歩先の未来へ導く」をミッションとし、「Creating New Value for Society」をビジョンとして掲げています。高い技術力と培ったノウハウをもとに顧客や社会課題の解決に貢献し、持続的な成長を実現する「エレクトロニクスソリューションズ・カンパニー」を目指しています。
■(2) 企業文化
カナデングループ倫理・行動規範に基づき、法令順守や社会規範を尊重し、良識ある企業活動を心がけています。多様な価値観、属性、ライフスタイルの交差を「イノベーションの原点」と捉え、自由闊達な議論ができる風土や、挑戦を後押しして失敗を許容する文化の醸成を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2028年度を最終年度とする3ヵ年中期経営計画「True Solution 2028」を策定しています。前計画で構築した連携強化による収益基盤を活かし、高収益構造の確立を目指しています。株主資本コストを上回る成長と資本効率の向上を意識し、積極的な投資を計画しています。
・成長投資:150億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「強みの掛合せ」による高収益構造の確立を基本戦略としています。高付加価値ビジネスを拡大して収益性の向上を図るとともに、人的資本や知的資本への積極的な投資により成長基盤を強化し、新たな価値を生み出す好循環の構築に注力します。強固なガバナンスと高い資本効率による持続的な成長を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「自ら考え、行動する自律した人材」の育成を人的資本の基本戦略に掲げています。これを具現化するため、役割や成果に応じて報いる人事制度を定着させ、教育・研修体系の再整備を行っています。また、多様な人材の参画と自由闊達な議論を促進するダイバーシティ・エクイティ・インクルージョンも推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 176期 | 42.7歳 | 17.3年 | 8,262,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.4% |
| 男性育児休業取得率 | 70.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 57.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 57.9% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 53.7% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取り組み」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、人的資本投資額(11.8億円)、エンプロイーエンゲージメントスコア(46.4)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済状況による需要変動リスク
同社が取り扱うFA機器、ビル設備、半導体デバイスなどの需要は、顧客や業界の市場動向の影響を強く受けます。主要市場での需要減退や、鉄道・官公庁の公共投資の動向によっては、同社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 主要仕入先への依存リスク
同社グループの主要な仕入先は三菱電機であり、総仕入高に対する割合は過半を占めています。取引関係は安定しているものの、何らかの理由で関係継続が困難となった場合や、仕入先の製品供給に問題が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 業績の第4四半期偏重リスク
社会インフラ事業やビル設備事業では、官公庁や建設業界向けのビジネス特性上、工事完了や検収時期が年度末(第4四半期)に集中する傾向があります。工事や検収が年度内に完了しない案件が多数発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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