ナイス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ナイス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する、建築資材と住宅の専門商社です。木材や建材・住宅設備機器の販売を行う建築資材事業と、マンションや一戸建住宅の販売等を行う住宅事業を展開しています。2025年3月期の連結業績は、売上高が増加したものの、利益面では減益となり、増収減益でした。


※本記事は、ナイス株式会社 の有価証券報告書(第76期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ナイスってどんな会社?


建築資材の卸売と住宅分譲を柱とする企業です。木材市場の運営から住宅建築まで幅広い事業を手掛けています。

(1) 会社概要


1950年に市売木材として設立され、木材の受託販売を開始しました。1962年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1971年にはマンション分譲事業に進出しました。その後、1980年に特販事業部を開設、1993年にはケーブルテレビ事業を開始するなど多角化を進めました。2020年には持株会社体制から事業会社体制へ移行し、現在の商号に変更しています。

連結従業員数は2,816名、単体では1,052名です。筆頭株主は家電量販店大手のヤマダホールディングスで、第2位は建設関連事業を行う技研ホールディングス、第3位は主要取引銀行である横浜銀行の常任代理人となっています。

氏名 持株比率
ヤマダホールディングス 17.70%
技研ホールディングス 17.19%
横浜銀行(常任代理人 日本カストディ銀行) 3.92%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性1名の計15名で構成され、女性役員比率は6.7%です。代表者は取締役社長(代表取締役)の津戸裕徳氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
津戸 裕徳 取締役社長(代表取締役) 1998年同社入社。資材事業本部副本部長、管理本部長などを経て、2024年4月より現職。
杉  田  理  之 取締役会長 1983年同社入社。資材事業本部長、代表取締役社長、住宅事業本部長などを歴任し、2024年4月より現職。
原口 洋一 取締役 1984年同社入社。住宅事業本部副本部長、住宅事業本部長などを経て、2022年6月より現職。
清 水 利 浩 取締役 1988年同社入社。資材事業本部首都圏統括部長、資材事業本部副本部長などを経て、2024年1月より現職。
田 部   博 取締役 1990年日榮ファイナンス入社。同社人事部長、管理本部副本部長などを経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、鈴木 信哉(元林野庁中部森林管理局長)、小久保 崇(弁護士)、濱田 清仁(公認会計士)、田村 潤(元キリンビール代表取締役副社長)、筧 悦子(元日本アイ・ビー・エム理事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建築資材事業」「住宅事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 建築資材事業


木材の調達から木材製品の製造・加工、販売を行うほか、建材や住宅設備機器の販売および施工、木材市場の経営を行っています。工務店や住宅メーカー等を主な顧客とし、住宅建築に必要な資材を幅広く供給しています。

収益は、顧客への商品販売による対価や施工サービスの提供による対価が中心です。運営は主にナイス、ナイスプレカット、セレックス、アルボレックス、三友、伊予木材などが行っています。

(2) 住宅事業


新築マンションおよび新築一戸建住宅の販売、注文住宅の建築請負を行っています。また、中古マンションの買取再販事業や、マンション等の総合管理、賃貸物件の仲介・管理業務も展開しています。

収益は、住宅購入者への物件引渡しによる売買代金や建築請負代金、管理組合やオーナーからの管理委託料等が中心です。運営は主にナイス、リナイス、菊池建設、ナイスコミュニティー、ナイスアセットなどが行っています。

(3) その他


木材・建材店向けの業務支援ソフトウェアの開発・販売や、一般放送事業(ケーブルテレビ等)を行っています。

収益は、ソフトウェアのライセンス料や保守料、放送サービスの利用料等が挙げられます。運営は主にナイスコンピュータシステム、YOUテレビなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2,100億円から2,400億円台で推移しており、当期は過去最高水準となっています。利益面では、経常利益が40億円台で安定的に推移しています。当期純利益については変動が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,141億円 2,295億円 2,363億円 2,259億円 2,431億円
経常利益 39億円 96億円 49億円 43億円 43億円
利益率(%) 1.8% 4.2% 2.1% 1.9% 1.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 20億円 45億円 38億円 42億円 29億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は約7.6%増加しました。売上総利益も増加しましたが、販売費及び一般管理費も増加しており、営業利益は微増にとどまりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,259億円 2,431億円
売上総利益 324億円 347億円
売上総利益率(%) 14.3% 14.3%
営業利益 44億円 46億円
営業利益率(%) 1.9% 1.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与・賞与が108億円(構成比36%)、支払運賃が43億円(同14%)、支払手数料が35億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


建築資材事業は、建材・住宅設備機器の販売が伸長し増収となりました。住宅事業もマンション販売が好調で増収となっています。その他事業は減収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
建築資材 1,699億円 1,831億円
住宅 456億円 508億円
その他 103億円 92億円
調整額 - -
連結(合計) 2,259億円 2,431億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

当連結会計年度末の資金は、前連結会計年度末に比べ減少しました。

営業活動による資金は、税金等調整前当期純利益はあったものの、棚卸資産の増加や仕入債務の減少が影響し、減少となりました。投資活動による資金は、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が主な要因となり、減少しました。財務活動による資金は、借入金の純増加額があったものの、配当金の支払いにより、増加となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 101億円 -49億円
投資CF 6億円 -75億円
財務CF -66億円 0.5億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「樹とともに、人と暮らしをつなぎ、はぐくみ、彩りある未来をつくります」を社会的存在意義(パーパス)として掲げています。地球環境保護に貢献する木材の利活用を通じて、経済価値のみならず、社会価値および環境価値の向上と社会課題解決の一翼を担うことを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「無信不立(信無くば立たず)」という創業の精神を重視しています。これは、取引先や顧客からの信頼に応え続けることで、豊かな住まいと暮らしを実現するという企業責務を遂行する姿勢を表しています。また、法令遵守や企業倫理を尊重する文化の醸成に努めています。

(3) 経営計画・目標


同社は、「中期経営計画 Road to 2030」を策定し、2030年3月期に向けた定量目標を設定しています。

* 売上高:3,000億円
* 営業利益:75億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:45億円
* ROE:6.0%超
* EBITDA:100億円
* ROA:2.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、2030年目標の達成に向けて、「超・新築」「超・物流」「超・領域」をキーワードとする成長ドライバーを掲げています。「超・新築」では、国産材の供給拡大や非住宅木造建築、中古マンション買取再販等を強化します。「超・物流」では、エネルギー関連商品の供給や物流機能の強化を図ります。「超・領域」では、無垢国産材のコンポーネント展開や木造建築業界の流通プラットフォーム構築を目指します。

* 売上高:3,000億円(2030年3月期計画)
* 営業利益:75億円(2030年3月期計画)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人材こそが最大の財産であると考え、「働きやすさ」と「働きがい」を高める投資を行っています。「主体的な風土の確立」を目指し、自律的なキャリア形成の支援や、建築士等の有資格者1,500人体制の構築、DXや経営人材などの外部人材登用、キャリア採用の拡充を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.2歳 18.5年 6,871,109円


※平均年間給与は賞与及び所定外労働に対する手当を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.5%
男性育児休業取得率 26.7%
男女賃金差異(全労働者) 60.8%
男女賃金差異(正規雇用) 62.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 51.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、建築関連資格保有者(1,500人)、自社排出量削減率(50.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 住宅・不動産市場の動向


同社グループの事業は国内の経済状況および住宅・不動産市場の動向に大きく依存しています。国内経済の悪化や市場構造の変化により需要が後退した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、環境貢献度の高い木材の活用やリノベーション等の住宅ストックビジネスの拡大により収益基盤の安定化を図っています。

(2) 調達および価格変動


木材や建材・住宅設備機器を国内外から調達しており、自然災害や地政学的リスクによる調達難、市況変動による価格の乱高下が業績に影響を与える可能性があります。国内外の調達ネットワークを活用した複数ソースからの調達や、物流拠点のストック機能を活用することで、安定供給と適正価格の維持に努めています。

(3) 法令違反等


事業活動において宅地建物取引業法や建設業法など多くの法的規制を受けています。重大な法令違反や不正行為が発生した場合、業務停止処分や社会的信用の失墜により業績に影響を及ぼす可能性があります。行動倫理規範の周知徹底、コンプライアンス研修の実施、内部通報制度の運用等を通じてコンプライアンス体制を強化しています。

(4) 人材の確保・育成


専門性の高い人材の確保と育成が不可欠であり、人材不足や流出、モチベーション低下は事業継続に影響を及ぼす可能性があります。資格取得支援やキャリア採用の拡充、エンゲージメント向上施策、多様な働き方への対応、健康経営の推進などを通じて、魅力ある職場環境の整備に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。