※本記事は、ナイス株式会社の有価証券報告書(第77期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ナイスってどんな会社?
建築用資材の供給から住宅の分譲や管理まで、住まいに関する事業を総合的に手掛ける企業です。
■(1) 会社概要
1950年6月に市売木材として設立され、同年7月より横浜市で木材の受託販売を開始しました。1962年7月に東京証券取引所市場第二部へ上場し、1971年には住宅事業部を開設してマンション分譲事業を始めました。1973年5月に東証第一部銘柄に指定され、2000年10月に現在のナイスへ商号を変更しています。
従業員数は連結で2,827名、単体で1,063名です。筆頭株主は家電量販店を展開するヤマダホールディングスで、第2位も事業会社である技研ホールディングスが名を連ねています。また、第3位には信託業務を行う日本カストディ銀行が入っています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ヤマダホールディングス | 17.15% |
| 技研ホールディングス | 16.67% |
| 日本カストディ銀行(信託E口) | 5.14% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性14名、女性1名の計15名で構成され、女性役員比率は6.7%です。代表取締役社長は津戸裕徳氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 津戸裕徳 | 取締役社長(代表取締役) | 1998年同社入社。資材事業本部首都圏第一ブロック長、管理本部副本部長等を経て、2024年4月より現職。 |
| 杉田理之 | 取締役会長 | 1983年同社入社。資材事業本部長、代表取締役社長等を経て、2024年4月より現職。 |
| 原口洋一 | 取締役 | 1984年同社入社。住宅事業本部首都圏営業部統括部長、住宅事業本部長等を経て、2022年6月より現職。 |
| 清水利浩 | 取締役 | 1988年同社入社。資材事業本部首都圏統括部長、資材事業本部長等を経て、2026年1月より現職。 |
| 田部博 | 取締役 | 1990年日榮ファイナンス入社、1996年転籍。人事部長、管理本部長等を経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、鈴木信哉(ノースジャパン素材流通協同組合理事長)、小久保崇(弁護士法人小久保法律事務所代表社員)、濱田清仁(よつば総合会計事務所パートナー)、田村潤(100年プランニング代表取締役)、筧悦子(データライブ顧問)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建築資材」「住宅」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 建築資材事業
木材製品の調達から製造・加工、建材や住宅設備機器の販売・施工のほか、木材市場の経営などを行っています。ハウスメーカーや工務店などを顧客とし、国産木材の利用拡大や環境配慮型商品の提案を通じたビジネスを展開しています。
収益は、顧客への木材および建材などの商品販売代金や施工代金から得ています。同社のほか、ナイスプレカットやセレックス、アルボレックス、三友、伊予木材などのグループ各社が事業を運営しています。
■(2) 住宅事業
新築マンションや一戸建住宅の販売、中古マンションの買取再販、注文住宅の建築請負、マンション等の総合管理および賃貸仲介・管理などを手掛けています。個人顧客に向けて、安全・安心な住まいと暮らしを支えるサービスを提供しています。
収益は、物件の販売代金や建築請負代金、物件オーナーや入居者からの管理費や賃貸料などから得ています。同社のほか、リナイスや菊池建設、ナイスコミュニティー、ナイスアセットなどが事業を運営しています。
■(3) その他
ソフトウェアの開発・販売や一般放送事業(有線テレビ放送事業)、電気通信事業などを展開しています。建築業向けの業務支援システムから地域密着型のケーブルテレビ事業まで、多岐にわたるサービスを提供しています。
収益は、システム利用料や放送・通信サービスの料金などから得ています。ナイスコンピュータシステムやYOUテレビなどのグループ会社が事業の運営を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の売上高は一時的な減少があったものの概ね2,200億円以上の規模を維持しており、利益面も黒字を継続しています。特に当期は、建築資材および住宅の両事業において販売が順調に推移したことで増収となり、営業利益も増加を見せています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2295億円 | 2363億円 | 2259億円 | 2431億円 | 2592億円 |
| 経常利益 | 96億円 | 49億円 | 43億円 | 43億円 | 52億円 |
| 利益率(%) | 4.2% | 2.1% | 1.9% | 1.8% | 2.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 12億円 | 30億円 | 35億円 | 13億円 | 28億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の拡大に伴い売上総利益も増加基調にあります。また、物流費などのコスト上昇がありながらも販売費及び一般管理費をコントロールし、営業利益および営業利益率のいずれも前期間から改善を見せています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2431億円 | 2592億円 |
| 売上総利益 | 347億円 | 362億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.3% | 14.0% |
| 営業利益 | 46億円 | 53億円 |
| 営業利益率(%) | 1.9% | 2.1% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与・賞与が112億円(構成比36%)、支払運賃が46億円(同15%)を占めています。
■(3) セグメント収益
建築資材事業は国産木材の供給拡大やエネルギー関連商品の販売増により増収となりました。また、住宅事業は中古マンションの買取再販などが伸長し、全セグメントにおいて売上が増加しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 建築資材 | 1831億円 | 1935億円 |
| 住宅 | 508億円 | 549億円 |
| その他 | 92億円 | 107億円 |
| 連結(合計) | 2431億円 | 2592億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
当期は営業活動と投資活動で資金がマイナスとなり、借入等によって資金を確保して将来に向けた投資を継続する「勝負型」のキャッシュ・フローとなっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -49億円 | -32億円 |
| 投資CF | -75億円 | -46億円 |
| 財務CF | 0.5億円 | 4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も34.3%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、目指す姿としてのビジョンや全ての活動の礎となる企業理念を掲げています。社会的存在意義として「樹とともに、人と暮らしをつなぎ、はぐくみ、彩りある未来をつくります」とし、企業理念を具現化するために「誠実」「成長と進化」「社会課題の解決」を経営方針として定めています。
■(2) 企業文化
同社グループの基本的な姿勢として「誠実」を重視し、行動指針や行動倫理規範を通じて社員一人ひとりの行動として体現することを求めています。また、多様な人材が主体的・自律的に能力や個性を発揮できる環境を整え、多様な人材の採用や育成を通じてイノベーションを創出する組織風土の醸成に努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、2026年3月期から2030年3月期までの中期経営計画「Road to 2030」を策定し、持続的な企業価値の向上を目指しています。最終年度に向けて以下の定量目標を設定しています。
・売上高:3,000億円
・営業利益:75億円
・親会社株主に帰属する当期純利益:45億円
・EBITDA:100億円
・ROE:6.0%超
■(4) 成長戦略と重点施策
同社グループは、新築市場の縮小に対応するため、既存住宅流通、非住宅、そして「暮らし」領域へと事業ポートフォリオの最適化を進めています。建築資材事業では国産木材の供給体制を拡充し、住宅事業では中古マンションの買取再販事業や一棟収益不動産事業の拡大を図り、周辺収益事業や成長領域へのシフトを推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人材が最大の財産であるという考えのもと、経営戦略の中核に人材戦略を位置付けています。「働きやすさ」と「働きがい」を高める投資を通じて、多様な人材が自律的にキャリアを形成し、強みを発揮して活躍できる「主体的な風土の確立」を目指しています。また、専門人材やキャリア採用を拡充し、事業戦略の実現を支えています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.3歳 | 18.2年 | 6,661,745円 |
※平均年間給与は、賞与及び所定外労働に対する手当を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.2% |
| 男性育児休業取得率 | 38.9% |
| 男女賃金差異(全従業員) | 65.3% |
| 男女賃金差異(正規従業員) | 66.4% |
| 男女賃金差異(非正規従業員) | 52.3% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 住宅・不動産市場の動向に関するリスク
同社グループの事業は国内の経済状況および住宅・不動産市場の動向に依存しており、新設住宅着工戸数の減少や資材価格の高騰などが進んだ場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、国産木材の供給体制強化やストックビジネスの拡充など事業領域の拡大を進めています。
■(2) 資材の調達および価格変動に関するリスク
国内外での自然災害や地政学的リスクにより、資材の調達が困難となる場合や調達価格が大きく変動する可能性があります。同社は調達ネットワークを活用した多角的な仕入れや物流拠点の活用などにより、供給体制の安定確保に努めています。
■(3) 建設技能者の減少に関するリスク
建設業界における技能労働者の高齢化や若手入職者の減少により、施工能力の安定的な確保が課題となっています。必要な技能者が確保できない場合、工期の遅延や労務費の高騰を招くため、現場の省力化や適正な賃金水準の維持による定着・確保を図っています。



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