ツカモトコーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ツカモトコーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ツカモトコーポレーションは、東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、和装・洋装などの繊維製品の加工販売や、健康・生活関連機器の企画販売、ビルの賃貸事業を展開しています。第106期の連結業績は、売上高が前期比微減となり、各段階利益で損失を計上するなど減収減益となりました。


※本記事は、株式会社ツカモトコーポレーションの有価証券報告書(第106期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ツカモトコーポレーションってどんな会社?


創業200年を超える歴史を持ち、和装・洋装から健康家電まで幅広いライフスタイル商品を提案する企業です。

(1) 会社概要


同社は1920年に株式会社塚本商店として設立されました。1963年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1973年には第一部に指定されました。2003年の会社分割により持株会社体制へ移行し、現在の商号に変更しています。2017年にはグループ再編によりツカモト市田を設立し和装事業を統合、2024年にはツカモトウェルネスを設立するなど、事業体制の最適化を進めています。

2025年3月31日時点で、連結従業員数は189名、単体従業員数は125名です。筆頭株主はフリージア・マクロスで、第2位は明治安田生命保険、第3位は三菱UFJ銀行です。

氏名 持株比率
フリージア・マクロス 17.23%
明治安田生命保険(相) 4.96%
三菱UFJ銀行 4.23%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長兼営業本部長は百瀬二郎氏です。社外取締役比率は約27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
百瀬 二郎 代表取締役社長兼 営業本部長 1981年同社入社。ツカモトユーエス代表取締役社長、同社洋装事業担当、営業本部長などを歴任。2021年4月より現職。
田中 文人 代表取締役副社長コーポレート本部長兼 人事担当兼 賃貸事業担当 1990年同社入社。本部人事部長、業務管理統括部長などを経て、2023年4月より現職。
西村 隆 常務取締役営業本部副本部長兼 商事事業本部長 1992年同社入社。ツカモトアパレル代表取締役社長、ファッション事業本部長などを経て、2022年4月より現職。
齋川 敏明 常務取締役エイム事業本部長兼 新規担当 兼 ツカモトウェルネス代表取締役社長 1991年同社入社。ツカモトエイム代表取締役社長、エイム事業部長などを経て、2022年4月より同社常務取締役、2024年2月より現職。
角田 英二 取締役コーポレート本部副本部長兼 経営企画・総務・経理担当兼 経理部長 1992年同社入社。本部経営企画部長、営業企画部長などを経て、2025年4月より現職。


社外取締役は、蒔山秀人(東急住宅リース顧問)、阿久津正志(弁護士)、野中郁江(明治大学名誉教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「和装事業」「洋装事業」「ホームファニシング事業」「健康・生活事業」「建物の賃貸業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 和装事業


きもの関連を中心とし、和装小物、雑貨等の加工および販売を行っています。商品は主に催事や展示会を通じて、全国の百貨店や小売専門店等へ提供されています。

収益は、商品の引渡しにより顧客から対価を受け取ります。運営は、連結子会社であるツカモト市田が行っています。

(2) 洋装事業


婦人服、紳士服のアパレル商品や、企業の制服を中心としたユニフォーム関連商品の企画および販売を行っています。アパレルは百貨店や小売専門店へ、ユニフォームは企業へ提供しています。

収益は、商品の販売代金やユニフォームのレンタル料などです。運営は、主にユニフォーム・SP事業部およびホーム・ファッション事業部のアパレル部を有するツカモトコーポレーションが行っています。

(3) ホームファニシング事業


ラルフローレン社に対するタオル関連の製造卸売販売など、ホームファニシング商品の企画および販売を行っています。

収益は、商品の引渡しによる販売代金です。運営は、ツカモトコーポレーションのホーム・ファッション事業部が行っています。

(4) 健康・生活事業


マッサージ器、扇風機、空気清浄機などの健康・環境分野の生活関連機器の企画および販売を行っています。量販店やWeb、TV通販等を通じて商品を展開しています。

収益は、商品の販売代金です。運営は、ツカモトコーポレーションのエイム事業部および連結子会社であるツカモトウェルネスが行っています。

(5) 建物の賃貸業


同社が東京都に所有する賃貸用オフィスビル等の不動産賃貸を行っています。主に一般企業に対して事業用オフィスを賃貸しています。

収益は、テナントからの賃貸料です。運営は、ツカモトコーポレーションの賃貸事業部門が行っています。

(6) その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、新規事業等が含まれています。

収益は、それぞれの事業活動に伴う対価です。運営は、主にツカモトコーポレーションが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は長期的に減少傾向にあり、直近では横ばいで推移しています。利益面では、経常利益が減少傾向にあり、当期は赤字に転落しました。当期利益も赤字となり、損失幅が拡大しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 178億円 157億円 129億円 98億円 97億円
経常利益 2.6億円 3.0億円 1.4億円 0.6億円 -2.1億円
利益率(%) 1.5% 1.9% 1.1% 0.6% -2.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.5億円 -3.3億円 0.6億円 1.7億円 -3.8億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微減となり、売上総利益も減少しました。これに伴い売上総利益率も低下しています。営業損失は前期よりも拡大しており、収益性の改善が課題となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 98億円 97億円
売上総利益 30億円 28億円
売上総利益率(%) 30.4% 29.3%
営業利益 -2.2億円 -3.3億円
営業利益率(%) -2.3% -3.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料が9.8億円(構成比31%)、業務委託費が4.8億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


洋装事業は増収で黒字化を達成しましたが、健康・生活事業やホームファニシング事業、和装事業は営業損失となりました。建物の賃貸業は安定して利益を確保しています。全体としては、不採算事業の損失が全体の利益を圧迫している状況です。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
和装事業 10億円 10億円 -0.9億円 -1.0億円 -10.1%
洋装事業 44億円 48億円 -1.3億円 0.7億円 1.4%
ホームファニシング事業 8億円 5億円 0.2億円 -1.6億円 -35.6%
健康・生活事業 26億円 24億円 -3.4億円 -4.7億円 -19.6%
建物の賃貸業 10億円 10億円 5.9億円 5.9億円 58.4%
その他 0.2億円 0.0億円 -0.5億円 -0.5億円 -947.5%
調整額 -1億円 -1億円 -2.2億円 -2.0億円 -
連結(合計) 98億円 97億円 -2.2億円 -3.3億円 -3.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 2.7億円 -2.6億円
投資CF 4.4億円 -1.4億円
財務CF -1.9億円 -2.1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出できませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.6%で市場平均とほぼ同じ水準です。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「道義を重んじる」「共存同栄を旨とする」「自立し協力する」という社訓と、美しさと快適を求める生活者に応え、和文化の継承と流通革新の進展のために前進するという「私たちの信条(Credo)」を経営理念としています。また、「美しい生活がいい。」(Amenity & Beauty Company)を企業スローガンとして掲げています。

(2) 企業文化


同社グループは、培った商人魂とフロンティア精神を重視しています。これらの精神のもと、ライフスタイル提案型の企業グループとして、社会的認知度と企業価値を高めることに尽力し、日本の消費生活を高めていくことに貢献していく姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2025年度を初年度とする中期経営計画の策定を予定していましたが、外部環境の不透明さ等から困難と判断し、単年度計画での黒字化を目指しています。2026年3月期の連結業績予想として以下の数値を掲げています。

* 売上高:100億円
* 営業利益:0.1億円
* 経常利益:0.5億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:1.5億円

(4) 成長戦略と重点施策


高採算事業へリソースを集中するため事業ポートフォリオの見直しを断行し、組織体制を強化して事業構造改革の基盤づくりに注力します。和装事業は小売領域や加工サービスの拡大、洋装事業はOEMの体質強化と自社ブランド売場の再編、ユニフォーム事業は高付加価値化、健康・生活事業は商品開発体制の再編とサービス事業の拡充を進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、自立性と多様性を備えた人材の創造と成長に向けた人的投資を重視しています。「変革を推進する組織の醸成」と「社員パフォーマンスの最大化」を軸に、社員教育や経営幹部の育成加速、変革型リーダーの育成、多様な人材の採用と定着に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.6歳 19.6年 5,642,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※女性管理職比率および男女賃金差異について、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理専門職の登用率(50%)、入社3年後定着率(12%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 消費者動向に関するリスク


同社グループの製品は、国内経済状況の変動による個人消費の低迷、同業他社との競合、消費者ニーズの急激な変化等の影響を受ける可能性があります。これにより計画した収益を確保できず、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 不採算事業の継続リスク


和装事業においては、業界の縮小傾向とともに事業規模が縮小し、損失計上が続いています。コスト削減や生産性向上により黒字化を目指していますが、不採算催事からの撤退や催事外ビジネスへのシフトが遅れた場合、経営成績や財政状態に大きな影響を与える可能性があります。

(3) 災害に関するリスク


地震や水害などの自然災害、火災、事故、感染症の拡大等により、営業活動の中断や仕入商品調達の遅れが発生する可能性があります。これにより販売機会の損失や回収額の減少が生じ、経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があるため、最重要リスクとして位置付けています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。