ツカモトコーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ツカモトコーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ツカモトコーポレーションは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、和装・洋装事業からホームファニシング、健康・生活事業、建物の賃貸業まで幅広く展開しています。直近の業績は、建物賃貸の堅調な推移やユニフォーム事業の受注増により、売上高が増加して黒字転換を達成し、増収増益のトレンドにあります。


※本記事は、株式会社ツカモトコーポレーションの有価証券報告書(第107期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ツカモトコーポレーションってどんな会社?


同社は1812年創業の老舗で、和装から洋装、生活関連事業まで幅広くライフスタイルを提案する企業です。

(1) 会社概要


1812年に近江商人の初代塚本定右衛門が小間物問屋として創業した老舗企業です。1920年に設立され、1963年に東京証券取引所市場第二部へ上場、1973年に第一部へ指定されました。その後、度重なるグループ再編を経て、2022年にスタンダード市場へ移行し、現在はライフスタイル全般を提案しています。

現在の同社の従業員数は連結で180名、単体で117名となっています。筆頭株主は事業会社のフリージア・マクロスで、第2位は保険事業を行う明治安田生命保険、第3位は金融機関の三菱UFJ銀行です。

氏名 持株比率
フリージア・マクロス 18.38%
明治安田生命保険 4.96%
三菱UFJ銀行 4.23%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長は百瀬二郎氏が務めており、取締役8名のうち社外取締役が3名を占める体制(社外取締役比率37.5%)となっています。

氏名 役職 主な経歴
百瀬二郎 代表取締役社長 1981年同社入社。2019年代表取締役社長社長執行役員兼営業本部長を経て、2026年より現職。
田中文人 代表取締役副社長コーポレート本部長兼賃貸事業担当 1990年同社入社。2021年代表取締役専務取締役本部長兼賃貸事業担当などを経て、2026年より現職。
西村隆 常務取締役営業本部長 1992年同社入社。2021年常務取締役営業本部副本部長兼洋装事業担当などを経て、2026年より現職。
齋川敏明 常務取締役営業本部副本部長兼グループ本部長兼ツカモトウェルネス代表取締役社長 1991年同社入社。2021年常務取締役ライフスタイル事業担当などを経て、2026年より現職。
角田英二 取締役コーポレート本部副本部長兼経営企画・総務・経理担当兼経理部長 1992年同社入社。2023年取締役コーポレート本部副本部長兼経営戦略担当などを経て、2025年より現職。


社外取締役は、蒔山秀人(元東急リロケーション取締役常務執行役員)、阿久津正志(阿久津総合法律事務所所長)、野中郁江(明治大学名誉教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「和装事業」「洋装事業」「ホームファニシング事業」「健康・生活事業」「建物の賃貸業」および「その他」事業を展開しています。

和装事業


和装きもの関連を中心とし、和装小物や雑貨等の企画・加工・販売を行っています。全国の百貨店や小売専門店に対して、主に催事や展示会を通じて商品を提供し、多様なニーズに応える和のライフスタイルを提案しているのが特徴です。

収益は主に百貨店や小売専門店への卸売・小売販売によって得ています。事業の運営は、主に連結子会社であるツカモト市田が担当し、長年培ったノウハウを活かして伝統的な和文化の継承と流通革新に努めています。

洋装事業


婦人服や紳士服、企業の制服などのユニフォーム関連商品の企画および販売を行っています。アパレル製品は全国の百貨店や小売専門店等に向けて販売され、ユニフォームは企業向けにデザインやサイズを調整して提供されます。

百貨店との消化取引や卸売を通じた販売代金に加え、企業向けの制服レンタルやサブスクリプションによる収益も得ています。運営は、同社のユニフォーム・SP事業部およびホーム・ファッション事業部のアパレル部が行っています。

ホームファニシング事業


タオル関連を中心としたホームファニシング商品の企画および販売を行っています。主にラルフローレン社との製造卸売販売における契約に基づき、高付加価値な商品を展開して上質な生活空間を提供しています。

収益はラルフローレン社をはじめとする取引先への卸売販売によって得ています。商品の企画・開発から提供による収益獲得までの運営は、同社のホーム・ファッション事業部が担当しています。

健康・生活事業


マッサージ器や扇風機、空気清浄機など健康・環境分野の生活関連機器の企画および販売を行っています。全国の家電量販店やWeb、TV通販を通じて、美しさと快適を求める一般消費者に向けた商品を提供しています。

量販店や通販チャネルを通じた機器の卸売販売により収益を得ています。事業の運営は、同社のエイム事業部および連結子会社であるツカモトウェルネスが共同で展開し、将来の収益の柱として育成を進めています。

建物の賃貸業


自社で保有する賃貸用不動産を活用し、主に一般企業に対して事業用オフィスの賃貸を行っています。東京都内に所有するオフィスビルなどを中心に、強みを活かした安定的な事業基盤を構築しています。

不動産を賃貸することで、入居するテナント企業から定期的な賃貸収益を得るモデルとなっています。事業の運営は、同社の賃貸事業部門が担当し、安定したキャッシュ創出により全社の収益基盤を支えています。

その他


報告セグメントに含まれない新規事業等を含んだその他の事業活動を行っています。時代の変化や新たな顧客ニーズに対応するため、既存の枠組みにとらわれないフロンティア精神を持った取り組みを展開しています。

収益は新規の事業開拓等によって得ています。同社の各事業部門やグループ会社が連携し、中長期的な視点で将来の新たな収益の柱となる事業の育成を目指して活動を進めています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、和装業界の縮小や不採算事業の見直しに伴い売上高は減少傾向にありましたが、直近の2026年3月期には増収に転じています。利益面では2025年3月期に赤字を計上したものの、ユニフォーム事業の受注増と建物賃貸事業の安定した収益により、2026年3月期には経常利益と当期利益ともに黒字転換を達成し、収益性の回復が進んでいます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 156.6億円 128.8億円 98.0億円 96.8億円 101.1億円
経常利益 3.0億円 1.4億円 0.6億円 -2.1億円 1.8億円
利益率(%) 1.9% 1.1% 0.6% -2.2% 1.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -3.3億円 0.6億円 1.8億円 -3.8億円 1.8億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増収となり、売上総利益も増加しています。ユニフォーム事業での原価管理の徹底等による利益率の改善が進み、全社的な経費削減に努めた結果、営業利益は前期の赤字から黒字へと大きく改善し、収益構造が着実に好転しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 96.8億円 101.1億円
売上総利益 28.3億円 31.7億円
売上総利益率(%) 29.3% 31.3%
営業利益 -3.3億円 0.2億円
営業利益率(%) -3.4% 0.2%


販売費及び一般管理費(当期合計31.5億円)のうち、給料が9.7億円(構成比31%)、業務委託費が4.6億円(同15%)、荷造運搬費が3.5億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の業績では、洋装事業がユニフォームの受注拡大により増収増益を牽引し、建物の賃貸業も高い利益率で安定した収益基盤となっています。一方、ホームファニシング事業や健康・生活事業、和装事業は依然として営業赤字が続いており、事業構造の抜本的な見直しと収益性の改善が急務となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
和装事業 10.1億円 9.7億円 -1.0億円 -0.9億円 -9.0%
洋装事業 47.8億円 51.4億円 0.7億円 1.9億円 3.8%
ホームファニシング事業 4.6億円 4.1億円 -1.6億円 -2.2億円 -55.2%
健康・生活事業 24.2億円 25.9億円 -4.7億円 -3.2億円 -12.2%
建物の賃貸業 10.0億円 9.9億円 5.9億円 6.0億円 60.7%
その他 0.0億円 0.0億円 -0.5億円 0.0億円 15.8%
連結(合計) 96.8億円 101.1億円 -3.3億円 0.2億円 0.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


直近のキャッシュ・フローは、営業CFがマイナス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなっており、本業が低迷し、事業の見直しが迫られる状況を示す「事業検討型」のパターンです。なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -2.6億円 -10.5億円
投資CF -1.4億円 3.7億円
財務CF -2.1億円 -0.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「社訓」と「私たちの信条(Credo)」で構成される経営理念を掲げています。社訓として「道義を重んじる」「共存同栄を旨とする」「自立し協力する」を定め、信条では商人魂とフロンティア精神のもと、美しさと快適を求める生活者に応え、和文化の継承と流通革新の進展のため前進することを使命としています。

(2) 企業文化


「美しい生活がいい。」(Amenity & Beauty Company)という企業スローガンのもと、ライフスタイル提案型の企業として日本の消費生活を高めていく文化を重視しています。長年培った「信頼ある製品」「ブランド」「提案力」への信用を強みとし、社会や地域との「共存同栄」を実践する姿勢が組織に根付いています。

(3) 経営計画・目標


創業220年に向けた成長基盤の構築を目的とする、2026年度からの3カ年中期経営計画「受け継ぐ力、未来へ~創業220年に向けた基盤づくり~」を推進しています。不採算事業の改善を進め、黒字体質への転換を最優先事項としています。

* 売上高:100億円
* 営業利益:0.7億円
* 経常利益:2億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:1.5億円
* ROE:2%(2028年度目標)

(4) 成長戦略と重点施策


「組み方・商品・売り方・考え方」の4つの改革を全社で推進しています。各事業を「成長」「安定」「改善」「再生」の4領域に再定義し、成長領域であるツカモトウェルネス事業などへ資源をシフトします。また、生成AIなどのデジタル技術の活用を推進し、データに基づく予測型経営への転換と資本効率の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「個の尊重と働きがいの向上」を基本方針とし、自律性と多様性を備えた人材の創造と成長に向けた人的投資を推進しています。教育・研修制度の充実や次世代経営幹部の育成、シニア人材の活躍推進などを通じて、社員一人ひとりのポテンシャルを引き出し、組織の活性化と持続的な企業価値の向上を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.1歳 19.1年 5,754,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は従業員規模が300人以下のため公表義務の対象ではなく、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理専門職の登用率(75%)、新入社員の3年後定着率(70%)、男性育児休業取得率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 消費者動向の変化と不採算事業の継続リスク


国内経済の変動や個人消費の低迷による収益悪化のリスクがあります。特に和装事業等において不採算催事からの撤退やストック型ビジネスへのモデル転換が遅れた場合、会社全体の経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(2) 自然災害と気候変動による事業中断リスク


地震や水害、新型感染症の発生により営業活動が中断されるリスクがあります。また、異常気象や冷夏・暖冬などの気候変動によって商品の流通や販売シーズンが影響を受け、在庫価値が下落する可能性があります。

(3) 専門人材の不足と後継者養成の遅れ


若手や専門人材の確保が難航し、事業の継続に支障をきたすリスクがあります。積極的な採用活動を進めているものの、従業員の年齢構成の偏りから後継者の養成が計画通りに進まない懸念があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。